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ヤマハ、24/192対応の7.1ch AVアンプ「RX-V775」
電源やレイアウト改善でアンプ能力向上。DAC刷新
(2013/4/25 13:00)
ヤマハは、ネットワークプレーヤー機能を備え、AirPlayにも対応した7.1ch AVアンプ「RX-V775」を5月下旬に発売する。価格は92,400円。カラーはブラック(B)とゴールド(N)の2色展開。
定格出力95W/ch(20Hz~20kHz/2ch駆動/6Ω)、130W/ch(1kHz/1ch駆動/6Ω)、最大出力160W/ch(1kHz/1ch駆動/6Ω)の7.1chアンプ。従来モデル「RX-V773」から、電源回路や内部基板のレイアウト変更、DACの刷新などで高音質化を図っているほか、MHL対応のHDMI端子を前面に備えるなど、スマートフォンとの親和性も強化。さらに、ネットワークオーディオ機能は新たに24bit/192kHzのFLAC/WAV再生に対応した。また、「Zone 2」機能も備えている。
DLNA 1.5に準拠したネットワークプレーヤー機能を内蔵。従来モデルはハイレゾのWAV/FLACファイルが24bit/96kHzまでの対応だったが、新モデルでは24bit/192kHzに対応。他にも、MP3/WMA/AACの再生をサポート。
また、AirPlayにも対応し、iPhoneやiPadなどのiOSデバイスや、PCのiTunesから、ワイヤレスで音楽再生が可能。インターネットラジオ聴取のvTunerにも対応している。
音質面の変更点として、電源部を見直し。アナログ回路用とデジタル回路用に別トランスを用い、相互の影響を排除。それだけでなく、デジタル/ビデオ/アナログオーディオ/表示系でそれぞれ独立させた「4回路分離パワーサプライ」構造となっている。
また、内部レイアウトも見直し、従来はメイン基板と別の基板に搭載していたDACを、メイン基板に移動。配線の短縮化を行なっているほか、DAC自体も、従来採用していた8ch用のバーブラウン「PCM1681」から、2ch用の「PCM5101」×5個構成に変更。SNの向上など、高音質化を図っている。
また、スマートフォンとの親和性を向上。前面にMHL対応のHDMI端子を備え、対応するスマートフォンを接続する事で、スマホの画面をAVアンプを経由し、テレビなどに表示できる。映像は1080/30pまで対応。音声も24bit/192kHzの、リニアPCM 2~7.1ch音声を伝送できる。
さらに、スマホ/タブレット向けにコントロールアプリ「AV CONTROLLER」も提供。AVアンプの制御だけでなく、プレーヤー機能も備え、iOS機器、Android機器からのワイヤレス音楽再生にも対応する。なお、4月に公開されたバージョン3.50では、7型タブレット表示モードも追加している。
また、別売の新Bluetoothレシーバ「YBA-11」(8,400円)との接続にも対応。このレシーバはBluetooth 2.1+EDRに準拠し、プロファイルはA2DP、コーデックはSBCとaptXに対応。同軸デジタル出力を備えているのが特徴で、AVアンプの同軸デジタル入力と接続すれば、AVアンプ側で高音質にアナログ変換・再生できるという。
視聴環境最適化システムの「YPAO」は、部屋の初期反射音を厳密に制御する高精度な「YPAO-R.S.C.」(Reflected Sound Control)を搭載。従来モデルと比べ、アルゴリズムを改良しており、同じ位置にマイクを置いて計測した場合も、補正の結果は僅かに変化しているという。
ドルビーTrueHDやDTS-HD Master AudioなどのHDオーディオのデコードが可能。同社AVアンプの特徴である「シネマDSP」もHDオーディオに対応。マルチチャンネルリニアPCMだけでなく、ドルビーTrueHDやDTS-HD Master Audioなどの音声フォーマットに対し、シネマDSPをかけて再生できる。また、シネマDSPは、従来の「シネマDSP-plus」に、“高さ”方向の音場データを加え、立体的なサラウンド空間を実現する「シネマDSP <3Dモード>」に対応。仮想スピーカーを追加できるVPS(バーチャル・プレゼンス・スピーカー)機能や、VPSを使ったダイアログリフト機能(映画などの音声の音像位置を調整する機能)なども利用できる。
HDMIは6入力(前面1系統がMHL入力兼用)、2出力装備。4K映像のパススルーや、HD/SD映像を4K相当に変換するアップスケーリングする機能も搭載。日本語のオンスクリーンディスプレイも搭載した。HDMI CECにも対応する。
音声入力端子は光デジタル×2、同軸デジタル×2、アナログ音声×5(Phono入力×1含む)。音声出力はアナログ音声×2(ヘッドフォン×1含む)、7.2chプリアウトも備えている。映像入力は、コンポーネント×2、D端子×1、コンポジット×5。映像出力はコンポーネント×1、コンポジット×2。USBとEthernet端子も備えている。
省電力機能としてECOモードを搭載。通常使用時の消費電力を抑えるもので、トランスから出力される電力そのものを抑制。これにより、どのような機能を利用している場合でも、約20%程度の消費電力を抑えられるという。ながら視聴やBGMユースなど、長時間使用する場合に特に効果があるとしている。通常時の消費電力は220W。待機時の消費電力は0.1W以下(HDMIコントロール/スタンバイスルーOFF時)。HDMIコントロール/スタンバイスルーON時では3W以下。
外形寸法は435×368×171mm(幅×奥行き×高さ)。重量は10.5kg。
前モデルと比較してみる
RX-V773とRX-V775を比較した場合、機能面の大きな違いは少ないが、前述の通り、電源の改良やDACの刷新など、ある意味で、音質と言う“アンプの基本性能の向上”に注力した新モデルと言える。そこで、CDプレーヤーと同軸デジタルで接続。2chの再生能力を比較してみた。
V773の再生音は、レンジが広くてニュートラルな傾向。ヴォーカルの口の開閉もクリアで、低域の伸びも深く、音の広がりに枠を感じるような音場の制約も感じない。2chアンプとしても高い実力を持っている事がわかる。
だが、V775に切り替えると、さらに低域の沈み込みが深くなり、目の前の音場からはみ出して、足元まで低音が広がるように感じる。さらに、厚みと解像感もアップしており、迫力が増す。細かく聴き比べて気付くというレベルではなく、音が出た瞬間にまるで違う“激変”と言って良いレベルだ。
オーケストラのフォルテッシモが「バーン」と張り出すような場面でも、左右の広がりに限界地点を感じるV773に対し、V775は音場自体がブワッと拡大し、勢いのある音が風のように吹きつけて来る。自分の真横の空間にまで押し寄せるようなスケール感がある。
この傾向は、マルチチャンネルのBD映画でも同様。「9<ナイン>~9番目の奇妙な人形~」で比べると、もともと「カチャカチャ」と言うような金属音の多い作品ではあるが、V773では、その硬質な音が冷たく、耳にキツく残る。V775では、硬質さはあるが、その金属音が広がる周囲の空間、街に薄く響く風や、どこかで何かが唸る音など、低く、細かい音がシッカリと再生されるため、高音だけが耳に残らない。ワイドレンジで、空間全体を聴きとるような再生が実現できており、アンプとしての能力アップが、サラウンドの空間表現力の底上げにも繋がっている事が確認できた。