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ヤマハ、DACをESSに刷新したAVアンプ「AVENTAGE」
VPSでリアプレゼンススピーカーも仮想化。約12万円~
(2013/6/12 13:07)
ヤマハは、ハイクラスAVアンプ「AVENTAGE」(アベンタージュ)の新モデル3機種を、7月に発売する。価格と発売時期は、7.1chの「RX-A1030」が126,000円で7月上旬、9.2chの「RX-A2030」が199,500円で7月下旬、9.2chアンプで11.2chまで拡張できる「RX-A3030」が283,500円で7月下旬。
AVENTAGEの第3世代モデル。カラーバリエーションは「RX-A3030」のみブラック(B)とゴールド(N)の2色、それ以外のモデルはブラックのみ。いずれのモデルも5年保証がついている。
DACはESS製。ネットワークオーディオは192kHz対応に
いずれのモデルも、左右対称設計のフルディスクリート構成を採用。DACを、従来モデルで採用していたバーブラウンのものから、3機種ともカナダESS TechnologyのDACに変更したのが特徴。「ESS製DACの特長である卓越した微小信号の再現性と高SN比を活かし、高域の透明感と豊かな響き、密度感と暖かみのある中域、引き締まったリアルな低音を再現する」としている。
7.1chの「RX-A1030」は、8ch用DACの「SABRE Premiere DAC ES9006」を1基、9.2chの「RX-A2030」は、「ES9006」を2基、9.2chで11.2chまで拡張できる「RX-A3030」は、32bitタイプで8ch用の「SABRE32 Ultra(ES9016)」を7.1ch部分に使い、残りのフロントプレゼンス用に「ES9006」を採用している。
また、従来のAVENTAGEは1人の設計者が手掛けていたが、今回は3モデルとも異なるエンジニアが担当。それぞれに音質傾向も異なり、「RX-A1030」は「力強く芯のある低音をベースにしたエネルギッシュな音」、「RX-A2030」は「自然なサウンドバランスで個々の楽器やボーカルの質感、空間感を重視した音」、「RX-A3030」は「SNの良さ、高域の情報量を活かした明るくクリアで見通しの良い音」をそれぞれキーワードとしている。
機能面での共通強化ポイントは、DLNA 1.5に準拠したネットワークプレーヤー機能において、従来モデルはハイレゾのWAV/FLACファイルが24bit/96kHzまでの対応だったが、新モデルでは24bit/192kHzに対応。他にも、MP3/WMA/AACの再生をサポートしている。
また、AirPlayにも対応し、iPhoneやiPadなどのiOSデバイスや、PCのiTunesから、ワイヤレスで音楽再生が可能。iPhone/iPod/iPadを接続し、デジタル再生が可能なUSB入力も備えている。さらに、インターネットラジオ聴取のvTunerにも対応する。
別売の新Bluetoothレシーバ「YBA-11」(8,400円)との接続にも対応。レシーバはBluetooth 3.0に準拠し、プロファイルはA2DP、コーデックはSBCとaptXに対応。同軸デジタル出力を備えているのが特徴で、AVアンプの同軸デジタル入力と接続すれば、AVアンプ側で高音質にアナログ変換・再生できる。AVアンプ側に、YBA-11用の電源供給が可能なUSB端子を備えている。
さらに、前面にMHL対応のHDMI入力を装備。スマートフォンの映像・音声を、AVアンプを経由してテレビなどに出力できる。
HDMI ZONE出力機能「HDMIゾーンスイッチング」にも対応。アンプを設置したメインルームで再生しているのとは異なるコンテンツを、別の部屋のHDMI対応テレビやホームシアターでも同時再生できる。なお、「RX-A2030」と「RX-A3030」は、HDMI入力、デジタル/アナログ入力されたオーディオ、インターネットラジオ、USB入力したオーディオ、内蔵FM/AMラジオなどからいずれかを選び、伝送可能。RX-A1030はHDMI入力されたコンテンツのみとなる。
筐体には、リジッドボトムフレームやHD型クロスフレーム構造を採用。底面には、電源トランスの微細な振動も抑制するというアンチレゾナンステクノロジーを応用したインシュレータ「5番目の脚」も装備。A3030はさらに、ダブルボトムコンストラクションを採用。インシュレータは鉄製となる。
A3030はリアプレゼンススピーカーを仮想的に生成可能
I/P変換に強いという、ヤマハオリジナルの映像処理回路を新たに搭載。RX-A3030/2030の2機種は、アナログ映像からアナログ映像へのビデオコンバージョンと、ディテール&エッジ強調、コントラストや輝度、色の濃さなどの映像カスタマイズ機能も備えている。
全モデルに、フロントプレゼンススピーカーを仮想的に再現し、立体感のある音場を再現するという「VPS」(バーチャル・プレゼンス・スピーカー)機能を搭載。プレゼンススピーカーを使い、立体的なサラウンド空間を再現するという「シネマDSP <3Dモード>」も備えるほか、センターの音像を任意の位置まで上げられる「ダイアログリフト」機能も搭載する。
さらに、A3030のみ、空間情報をより忠実に再現するという「シネマDSP HD3(エイチディ キュービック)」を9.2ch環境で再生できるほか、外部アンプを加える事で最大11.2chに発展できるよう11.2chプリアウトも装備する。さらに、フロントプレゼンススピーカーを使った7.1chスピーカー構成において、リアプレゼンススピーカーを仮想的に生成する機能も備えている。
RX-A2030とRX-A1030は、「シネマDSP-plus」に、“高さ”方向の音場データを加え、立体的なサラウンド空間を実現する「シネマDSP <3Dモード>」に対応する。なお、シネマDSPプログラム数はA3030とA2030が23、A1030が17。
視聴環境最適化システムの「YPAO」は、3機種とも部屋の初期反射音を厳密に制御する高精度な「YPAO-R.S.C.」(Reflected Sound Control)を搭載する。RX-A3030のみ、「スピーカー角度計測」機能を備え、RX-A3030/A2030は、測定性能を向上させた改良型YPAOマイクを同梱する。
最大出力は、A1030が170W×7ch(6ch)、A2030が220W×9ch(6Ω)、A3030が230W×9ch(6Ω)。HDMI入力は、いずれのモデルも8入力、2出力。4K映像や3D映像、ARC、CECにも対応する。
圧縮音楽ファイルを活き活きと再現するという「ミュージックエンハンサー」機能に加え、A3030/A2030では「ハイレゾリューション・ミュージックエンハンサー」を用意。非圧縮のCDやWAVファイル、FLACなどの音声も最大24bit/96kHzまで拡張して処理する。
iOSやAndroid端末を使い、アンプを操作するアプリ「AV CONTROLLER」も用意。電源ON/OFFや音量調整、入力ソース選択、シネマDSPのサラウンドモード選択などをリモコン感覚でスマートフォン/タブレットから操作できる。端末内の音楽コンテンツを高音質でワイヤレス・ストリーミング再生する機能も用意。また、PCのWebブラウザから操作する「ウェブコントロールセンター」も作られている。
各モデルのスペックは以下の通り。
型番 | RX-A3030 | RX-A2030 | RX-A1030 |
最大出力(6Ω) | 230W×9ch | 220W×9ch | 170W×7ch |
HDMI入出力 | 8入力2出力(前面入力1系統はMHL対応) | ||
DAC | ES9006×1 ES9016×1 | ES9006×2 | ES9006×1 |
その他の入力 | D4×1、コンポーネント×4 S映像×4、コンポジット×5 アナログ音声×10(Phono入力×1) 8chアナログ入力×1 光デジタル入力×4 同軸デジタル入力×3 | ||
その他の出力 | コンポーネント×1、コンポジット×2 S映像×2、アナログ音声×1 光デジタル音声×1 11.2chプリアウト×1など | コンポーネント×1、コンポジット×2 S映像×2、アナログ音声×1 光デジタル音声×1、7.2chプリアウト×1など | |
シネマDSPモード | HD3 | 3D | 3D |
プログラム数 | 23 | 23 | 17 |
最大拡張チャンネル数 | 11ch | 9ch | 7ch |
VPS | ○ | ○ | ○ |
VPSを使った 仮想リア生成 | ○ | - | - |
YPAOの スピーカー角度補正 | ○ | - | - |
ハイレゾリューション ミュージックエンハンサー | ○ | ○ | - |
消費電力 (待機時 HDMIコントロールOFF スタンバイスルーOFF時) | 280W (0.3W以下) | 280W (0.3W以下) | 275W (0.3W以下) |
外形寸法 (幅×奥行き×高さ) | 435×467×192mm | 435×467×192mm | 435×432×182mm |
重量 | 19.9kg | 17.1kg | 15.1kg |
音を聴いてみる
アンプの素の音を比較するため、同軸デジタルケーブルでCDプレーヤーを接続。2chのCDを再生し、3機種の音を聴き比べてみた。
前述の通り、今年のAVENTAGE最大の特徴は、搭載しているDACがバーブラウンから、ESS Technologyに変更された事。また、各モデルを、それぞれ別のエンジニアが手掛けているのも特徴で、そうした違いが顕著に現れている。
3機種に共通して感じるのは、DACがESSのものに変更された事で、細かな音の描写が繊細かつ丁寧で、情報量の多いサウンドに変化した事。パワフルさをキャラクターとして感じるバーブラウンのDACに比べると、スッキリと見通しが良く、音の輪郭が細くなった印象がある。しかし、そこを出発点とし、3機種の音の傾向には違いがある。
下位モデルとなる「RX-A1030」は、「力強く芯のある低音をベースにしたエネルギッシュな音」をテーマに開発されており、繊細で丁寧な描写を基本としながらも、中低域に迫力があり、元気の良い描写が持ち味。ウッドベースの張り出しや、ヴォーカルのブレスが前へと張り出し、心地が良い。音場の広さや定位も、昨年までのモデルと比べると広く、明瞭だ。しかし、新しい3機種の中で比べると、音像の分離や奥行きの深さはやはり3番手で、低域もパワフルだが、余裕を感じさせるという鳴り方よりも、“やんちゃ”な印象だ。
「A2030」に切り替えると、非常にニュートラルで、ESSのDACらしい、精密で静かな音場が展開。音像が前へと迫り出すA1030とは異なり、音像同士の分離や距離感がしっかりと感じられ、定位もシャープだ。低域の派手さはA1030ほどではないが、低音の描写が細かく、アコースティックベースの弦の動きも丁寧。ピュアオーディオライクなバランスだ。
「A3030」では、SNがさらに良くなり、音像の静粛さに磨きがかかる。A2030で、どちらかと言うと“さっぱり目”に感じた低域に、ズシンと深みや重さが加わり、楽曲全体のコントラストが向上。上位モデルならではの余裕を感じる低域だ。また、オーケストラなど、音の数が増える楽曲では、下位モデルとの分解能の違いが顕著。細かな音が聴き分けやすくなる。