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ソニーテレビ事業が約11年振りの2四半期連続黒字。PS4は330万台。全体は1,360億の赤字

 ソニーは31日、2014年度第2四半期(7-9月)決算を発表した。売上高は、前年同期比7.2%増の1兆9,015億円。営業利益は856億円の赤字、税引前利益は900億円の赤字。純利益は1,360億円の赤字となった。

吉田憲一郎CFO

 売上高の増加については、PlayStation 4(PS4)が貢献したG&NS(ゲーム&ネットワークサービス)分野の大幅な増収や、イメージセンサーが好調なデバイス分野、並びに為替の好影響。

 営業損益は前年同期の139億円の黒字に対し、856億円の赤字となった。これは9月に発表済みのモバイル(MC)の営業権の減損1,760億円などが響いた。一方、G&NS分野、イメージング・プロダクツ&ソリューション(IP&S)分野、ホームエンターテイメント&サウンド(HE&S)分野、デバイス分野、映画分野などモバイル以外の全分野で損益改善している。

 HE&S分野に含まれるテレビ事業の営業利益49億円で、2四半期連続の黒字。ソニーテレビ事業の2四半期連続の黒字は、「2003年度第3、4四半期以来」(代表執行役 EVP CFO 吉田憲一郎氏)とのことで、10年半振りの2四半期連続黒字となった。販売増と為替の好影響によるもの。ただし、販売台数見通しは100万台引き下げており、これは「中南米で数を追わない決定をしたため」(吉田CFO)。

 また、PS4の販売台数も今期から公表開始し、第2四半期は330万台。なお、苦境が続くモバイル事業の今後の展開については「中国の大幅縮小や、地域、商品の絞込という方向性。詳しくは、11月のIR DAYで説明する」とした。

セグメント別業績

数を追わない戦略でテレビ黒字化

 テレビを含む、HE&S分野は、売上高が前年比7%増の2,824億円、営業利益は前年の121億円の赤字から、49億円の黒字になった。増収の理由は、液晶テレビの大幅な増収によるもので、欧州、北米、アジア、太平洋地域での販売が増加。一方で中南米地域では販売台数が大幅に減少。中南米はオーディオ・ビデオカテゴリも減収となるなど不調。

HE&S分野の概要

 黒字化の要因はコスト削減に加え、高付加価値モデルへのシフトによる製品ミックスの改善。テレビは、前述の通り49億円の営業利益で、2四半期連続の黒字。ただし、中南米での販売不振に伴う戦略変更により、通期の販売目標台数は100万台マイナスの1,450万台に下方修正した。

 通期のテレビ事業売上高も販売目標減に伴い、300億円下方修正し、8,300億円とした。吉田CFOは、テレビ事業の業績改善について、構造改革の成果や高付加価値モデルシフト、販売会社の固定費削減などの効果を説明。「これまでは量を追い、最終的にマーケットに値崩れを起こして、PL(損益)を崩していた。今回も当初より販売目標台数を下げたが、市場環境が悪いところにはものを入れず、数を追わない戦略。引き続き慎重に見ていく」と語った。

 HE&S分野全体の通期目標は、売上高が1兆2,000億円、営業利益100億円。

PS4販売は330万台。ゲームやカメラは好調

G&NS分野の概要

 ゲームを中心としたG&NS分野は、売上高が前年同期比83.2%増の3,095億円、営業利益は218億円。主にPS4のハードウェアが貢献したほか、PS4導入に伴い、ネットワークサービス収入も大幅に増加し、分野全体で増収となった。

 据置型ハードウェア販売は410万台で、うちPS4が330万台。携帯型ハードウェア(PS Vitaなど)は70万台。G&NSの通期業績予測は、売上高を500億円上方修正し、1兆2,900億円。為替の好影響とPS4の好調を見越したものだが、一方でドル高の悪影響もあり、営業利益の上方修正は100億円にとどまり、350億円と見込む。

ミラーレスや高級コンパクトカメラが人気

 デジタルカメラなどのIP&S分野は、売上高が前年同期比1.8%増の1,786億円、営業利益が201億円と好調。販売台数は大幅に減少したものの、為替の好影響やデジタルカメラの高付加価値モデルへのシフトにより、売上と利益を確保した。

 デバイス分野は、売上高が前年比23.1%増の2,477億円、営業利益が同149%増の296億円。イメージセンサーの大幅増収や為替の好影響、ならびに電池事業の損益改善などで、業績に寄与した。

モバイル失速。十時新社長は「収益重視」

 一方、大幅に損益悪化し、記者からの質問が集中したのが、モバイル・コミュニケーション(MC)分野。売上高は前年同期比1.2%増の3,084億円だが、9月に発表済みの1,760億円規模の営業権減損などにより、営業利益は1,720億円の赤字となった。減損を除くと営業利益40億円となる。

モバイル事業が失速

 通期の売上高見通しは100億円下方修正の1兆3,500億円、営業利益は280億円下方修正し、マイナス2,040億円とした。主に中国市場における人員削減などの構造改革費用がマイナス要因となる。

 モバイル事業の今後の展開については、11月後半のIR DAYで案内するとしているが、上期で不振だった中国展開の大幅な縮小を予定。中国展開の反省点としては、「販路開拓が充分でなかった」としており、今後は中国専用モデルなどは投入しない予定。ただし、テレビなどほかの製品について、中国市場を重視する方針は変わらないという。

ソニーモバイル新社長に就任予定の十時裕樹 業務執行社員 SVP

 11月16日よりソニーモバイルの社長兼CEOに就任予定のソニー 業務執行社員 SVP 十時裕樹氏は「すでに改革に着手しているが、9月に示した地域や商品の絞込という方向性は変わらない」と説明。ソニー銀行の立ち上げに関わり、So-netのCFOを務めた十時氏は、モバイル事業を担当するにあたり、「So-netで、MVNOなどにも関わり通信事業の経験は積んでおり、そこはモバイルでも活用できる。課題はグローバルな会社のマネジメントだが、商品自体は競争力がある。私のミッションは、モバイル事業の収益性を高めること。そのためにスピード経営を高めていく」と語った。

 なお、前任の鈴木国正社長の退任は事実上の更迭か? との問いに対し、吉田CFOは「今後の収益改善施策などを考え、CEOの平井が判断した」と回答した。

 映画分野は、売上化が1,822億円、営業利益は10億円の赤字。音楽分野は売上高が1,168億円、営業利益は前年同期比21.9%増の118億円。金融分野は売上高が同10.6%が2,696億円、営業利益が24.2%増の477億円。

 前提為替レートはドルが110円前後、ユーロが138円前後。31日には円安が進んだが、ソニーでは1円の円安で、売上に対して30億円のマイナス要因となり、カテゴリ別では、モバイルとゲーム&ネットワーク、テレビなどに悪影響が出るという。

 通期業績予測は9月時から変更無く、売上高が7兆8,000億円、営業利益がマイナス400億円、純利益がマイナス2,300億円と、最終損益も赤字見込み。

通期業績予測は変更なし

(臼田勤哉)