【新製品レビュー】

「M3」の兄貴分? ボーズの新PCスピーカーを聴く

-迫力の低域を余裕で再生する「Companion 20」


「Companion 20 multimedia speaker System」(ペア33,600円)

 ボーズのPC用人気スピーカーと言えば、2006年に登場した「M3」ことMicro Music Monitor(49,980円)がお馴染みだ。既に販売を終了しているが、ユーザーの要望に応えて何度か再発売もされている。先月も心斎橋の大型店舗オープンに合わせて20台限定で復活販売されたが、すぐに完売したそうだ。この「M3」は現在、電池駆動を省くなど、仕様を若干変更した「Computer MusicMonitor」(M2/ペア39,480円)に切り替わっている。

 そんな「M3」や「M2」の兄貴分(?)と言えそうなPCスピーカーが、7月28日に登場した。「Companion 20 multimedia speaker System」だ。“兄貴”と表現したのはサイズが大きいからだが、実は価格は「M2」よりも低価格なペア33,600円となっている。

 どんな音になっているか、早速聴いてみた。




■PCスピーカーラインナップのおさらい

 まず、ボーズのPC用スピーカーのラインナップを整理してみたい。現行機種で説明すると、低価格な2chタイプの「Companion 2 Series II multimedia speaker system」(ペア12,600円)と、2.1chシステムの「Companion 5 multimedia speaker system」(1セット59,850円)が「Companion」シリーズとして存在する(Companion 3 Series IIは販売終了)。これとは別ラインとして、前述のコンパクトな「M2」(ペア39,480円)があるという状況だ。

 

「Companion 2 Series II multimedia speaker system」(ペア12,600円)「Computer MusicMonitor」(M2/ペア39,480円)中央が「Companion 20」。左が「Companion 2 Series II」、右が「M2」

 新モデルの「Companion 20」はCompanionシリーズだが、Companion 2、3、5と来て、いきなり「20」に飛んでいるのが面白い。そういえば、ノイズキャンセリングヘッドフォンの「QuietComfort」シリーズも、2、3ときて、いきなり「15」に飛んだことがあったが、「特に自信作の時は桁が変わる」みたいなルールがあるのだろうか?

 同じ2chスピーカーである「M2」や「Companion 2 Series II」と比べると、背が高いのが特徴。だが、奥行きは「Companion 2 Series II」よりも短く、全体としてはスリムな印象。外形寸法は90×147×220mm(幅×奥行き×高さ)で、設置時の机の上の占有面積としては、M2(65×123×123mm)より一回り大きい程度だ。質感は高く、プラスチック感が漂う「Companion 2 Series II」と比べると、上位モデルの風格がある。

左からM2、Companion 20、Companion 2 Series II
M2のロゴマーク部分Companion 20のロゴマーク部分

 

Companion 20の内部構造。ユニットは下の方に搭載している
 外からユニットは見えないが、筐体の下側に新開発のユニットを採用している。口径は非公開。筐体内の上部には長い音道が設けられているそうで、これがスリムなスピーカーで低域を出すための秘密のようだ。背面にまわるとバスレフポートが見える。

 入力端子は右スピーカーの背面にまとめられており、ステレオミニを1系統装備。さらに、ACアダプタの接続端子と、左スピーカーをドライブするための出力、コントロールポッドを接続するための独自端子を備えている。デジタル入力やUSB入力などは備えていない。

 アンプは右スピーカーに内蔵されているため、重量は右スピーカーが1.13kg、左スピーカーが1.07kg(接続ケーブル含む)と、右の方が若干重い。なお、内蔵アンプはデジタルアンプだ。


「Companion 20」(左)と「Companion 2 Series II」(右)の奥行き比較。傾斜角度が違うためズレて見えるが、下部で揃えている右スピーカーの背面コントロールポッドは専用ケーブルで接続する

 付属のコントロールポッドは、手元に置いて利用する。スピーカー背面にアナログ入力を1系統備えていたが、コントロールポッドの前面にも1系統のステレオミニ入力と、イヤフォン出力を備えている。スピーカー背面の入力はPC接続に使い、コントロールポッドの入力はiPodなどのプレーヤーと接続する時に使うと便利だろう。

 コントロールポッドで可能な操作は音量調節。外側の円形ダイヤルがラバー仕上げになっており、これを指で回すとボリュームがUP/DOWNする。回し心地は極めて滑らかで、指で触っていると意味もなくクリクリと音量を上げ下げしてしまう。天面はミュートスイッチで、触れると瞬時に音が出なくなる。PCでWebブラウジングなどをしていると、急に大きな音が出るサイトなどもあるので、直感的に音量をコントロールできるのはありがたい。なお、音声信号入力が無いまま、もしくは音量が最小のまま2時間経過すると自動的にスピーカーがスタンバイ状態になる。この機能はON/OFFが可能で、天面を約6秒長押しすると切り替えられる。

コントロールポッドでボリューム調整前面にはアナログ入力とイヤフォン出力を備えている上にあるのがCompanion 20のACアダプタ。その下が、昔のM2に付属していたACアダプタ。実はM2のACアダプタは変更されており、現在は一番下のコンパクトなタイプになっている


■姿勢の違いが示す、利用シーンの違い

 スピーカーと並べてみると、面白い事に気付く。どのスピーカーも若干上向きに傾いているのだが、その傾きの角度が異なるのだ。具体的には「M2」が最も上向きで、「Companion 2 Series II」、「Companion 20」と続く。スピーカーが上を向いているのは、デスクトップに設置した時にユーザーの耳に向けて音を放出するためで、卓上で音が反射して位相干渉して音が濁る「バウンダリー現象」を回避するためだ。そしてこの角度を見れば、それぞれのスピーカーが想定している利用シーンの違いがわかる。

手前がM2、真ん中がCompanion 2 Series II、一番奥がCompanion 20左がCompanion 20、右がM2。角度がずいぶん違う

 つまり「M2」はノートPCなどと組み合わせ、リスナーとスピーカーの距離が近い置き方が想定されており、思いきって上を向く必要がある。「Companion 20」の場合は、机の奥に設置されたPC用ディスプレイの左右などに設置し、その先にキーボードがあり、さらにその先にユーザーが座る事をイメージしているのだろう。ユーザーが常に前のめりで近くにいるのではなく、スピーカーと正対するような姿勢でいる事を前提に作られているようだ。



■音を出してみる

 ノートPCやポータブルプレーヤー(iPod nano)などと接続し、音を出してみた。まず、「M2」と「Companion 20」を交互に繋ぎ、比較してみる。

 「M2」のサウンドは、サイズからは信じられないほど深く沈み込む低域の迫力に特徴がある。その低域もボワンと膨らんだものではなく、「山下達郎/アトムの子」冒頭のドラム乱打でも、硬い芯のある低い音がズシンと響く。何度聴いても、この小型筐体からよくこんな低域が出るなと感心する。

 「Companion 20」に切り替えると、一気に音場が拡大。同時にレンジも広くなり、高域の伸びやかさに意識が向く。低域は、一部の硬い音がズシンと沈むのではなく、低音全体が一緒に沈み込む。音量を上げていくと、「Companion 20」の低域は、PC用デスクを貫通し、椅子に座った下腹部に「ズズンズズン」と響き、さらに上げていくと床に到達、足の裏から地鳴りのような振動として響いてくる。M2の低音にも驚かされたが、「Companion 20」も、このサイズでサブウーファを使わず、これだけ低い音が出るのは凄い。

 M2の低域もボリュームを上げると下腹部までは届くが、足の裏までは沈まない。だが、そもそもM2は部屋に音を充満させるようなボリュームで再生するスピーカーではなく、パーソナルに楽しむニアフィールド用だ。今度は、M2が得意とする小音量再生に戻し、「Companion 20」で同じようなボリュームにすると、M2の方が低域がズシンと沈み込む。おそらくM2は、小音量再生時に音楽がリッチに楽しめるような低域バランスになっているのだろう。

 全体的なイメージとしては、「小さな筐体で頑張ってパンチの効いた低域を出すM2」に対して、「大きな筐体で余裕を持って低い音を出すCompanion 20」という印象。コンパクトなブックシェルフスピーカーと、フロア型スピーカーの音の鳴り方の違いと例えると、わかりやすいだろうか。

M2とノートPCを組み合わせたところCompanion 20とノートPCを接続したところ

 音場の広さも大きく違う。M2は、ノートPCの左右に設置すると、音場がノートPCのディスプレイから少しはみ出す程度しか広がらない。「Companion 20」の場合は、ノートPCの両脇を遥かに超え、デスクトップPC用の24型程度のディスプレイにマッチするほど、横に広い音場が現れる。

 ディスプレイサイズで音場の広さを例えるのも妙なものだが、音場が展開する場所はまさに、ノートPCを覗き込んでいる時と、デスクトップPCのディスプレイを眺めている時の違いそのままだ。

 ヴォーカルのセンター定位もまるで違う。「M2」は、ノートPCの液晶の前に小さな人間が立って歌っているように聴こえるが、「Companion 20」は自分の顔の目の前に、自分と同じくらいのサイズの顔がポッカリ浮かび、歌っている感覚だ。そのため、「Companion 20」でヴォーカルを聴いていると、ノートPCの液晶から視線が上に移動して、つい何もない正面の空間を見つめてしまう。逆に、デスクトップPCの大型ディスプレイの左右に設置すると、視線と音場の位置がピッタリはまる。ノートPCの場合は、PCの左右ではなく、少し奥に設置すると良い。少し距離をとった方が実力が発揮しやすいのだろう。

 そのため、YouTubeで動画を楽しんだり、PCでDVDを再生するなど、椅子に深く腰掛けて鑑賞するスタイルになると、「Companion 20」の良さがよくわかる。ボリュームを上げていってもクリアさが維持され、音場が気持ちよく広がり、音に包み込まれるような感覚が味わえる。アナログ入力なので、PCだけでなく、薄型テレビなどと繋いで映画などを楽しんでも、十分迫力のあるサウンドが楽しめるだろう。ソファに複数人で座るような状況でも、余裕を持って大音量再生ができるポテンシャルを感じさせる。

 なお、「Companion 20」には広がりのある音を出すために、独自の「TrueSpace ステレオ・デジタル・プロセッシング回路」が搭載されている。ほかにも、DSPとアクティブ・エレクトロニック・イコライゼーションを組み合わせる事で、大音量再生時の歪の発生なども防いでいるそうだ。

 個人的に最も大きな違いとして感じたは、付帯音の少なさだ。「M2」や「M3」では、ある程度ボリュームを上げると、再生音に筐体が振動する金属的な「キンキン」、「カンカン」した鳴きがまとわりつき、高域の明瞭度が低下する。女性ヴォーカルやピアノでわかりやすいのだが、Kenny Barron Trio「The Moment」から「Fragile」を再生すると、ケニー・バロンのピアノが金属質になり、まるで金属の箱にピアノを入れて、箱の外から音を聴いているように感じる。

 「Companion 20」では、ボリュームを上げても音が極めてクリアで、付帯音はほとんど感じない。ピアノはピアノの音で、人間の声は人間の声と、音色の描き分けがしっかりできている。個々の音の輪郭がしっかり聴き取れるため、音像もシャープで、厚みがあり、音場にも奥行きがあって立体的だ。

 ここで、下位モデルの「Companion 2 Series II」に切り替えてみる。「Companion 2 Series II の筐体はプラスチックだが、普通のボリュームでは付帯音はあまり感じず、「Companion 20」に近いクリアなサウンドだ。だが、ボリュームを上げていくと、今度はプラスチックの「コンコン」した音が特に中低域にまとわりつく。「藤田恵美/camomile Best Audio」から「Best of My Love」を再生すると、アコースティックベースの低域がボワンボワンと膨らみ、解像感はイマイチ。ヴォーカルも若干頭を抑えられた感じになる。

Companion 2 Series IIとノートPC低域はCompanion 20の方が数段ランクが上だ

 低域も「Companion 20」の方が数段ランクが上で、「Companion 2 Series II」ではボリュームを上げると中低域の音は大きくなるが、芯が無くなり、全体が膨らんでしまう。下腹部に響くような鋭さは無い。ホワイトノイズ量にも差があり、「Companion 2 Series II」では音が鳴っていない状態でも、電源をONにすると「サーッ」というノイズが聴こえる。「Companion 20」はまったく聞こえず、ボリュームを最大にして耳を近づけるとかろうじて「サーッ」と小さく聴こえる



■他社スピーカーとも比較してみる

 以前、アクティブスピーカーの特集をした時に、良い音を出していたクリプトンの「KS-1HQM」(直販49,800円)とも比較してみよう。

 

クリプトンの「KS-1HQM」

 手嶌葵の「The Rose」を「Companion 20」で再生した後で、「KS-1HQM」に切り替えると音の鮮度がアップし、ハッとする。ぼんやり空中に浮かんでいたヴォーカルの音像が、いきなり生身の人間の顔になったような違いだ。

 「Companion 20」でもヴォーカルはキッチリ定位し、口が開閉する動きも見えるような描写力があるが、「KS-1HQM」では、開いた口の中の湿り気まで感じるような、生々しさがプラスされる。「KS-1HQM」はオーディオボードもセットで、三点支持した特殊なスピーカーだが、この音を比べると、「付帯音が少ない」と褒めた「Companion 20」の音にも、筐体の固い付帯音がわずかに乗っている事がわかる。

 一方、中域の豊かさ、最低音の沈み込みは「Companion 20」の方が一枚上手で、地鳴りのように沈み込む低域を「KS-1HQM」から出すのは難しい。「Companion 20」の低域は、原音のバランスに忠実なのかという疑問も若干湧くが、ゆったりとボリュームのある中域と、そこから突き抜けるように沈む低域に身をまかせていると「これはこれで気持ちいいから良いか」という気がしてくる。

 音の生々しさや、原音に忠実なサウンドという面で、ピュアオーディオマニアには「KS-1HQM」の方が魅力的と感じるだろう。一方、難しい事は抜きにして、「迫力があって、気持ちの良い音だなぁ」と多くの人が感じるのは「Companion 20」の方だと思われる。



■まとめ

 M2やM3には、「こんな小さなスピーカーで、こんな音が出るとは」という面白さがある。一方で「Companion 20」は、サイズが大きいので“驚き”は薄いものの、M2やM3とは文字通りサイズが違う音場の広さや、ワイドレンジ再生が余裕を持って行なえるのが特徴だ。占有面積的にはそれほど大きな違いは無いため、スペースが許して、純粋に再生音のクオリティで選べば「Companion 20」という事になるだろう。だが、M2には気軽に別の場所に移動させたり、仕舞ったりできるコンパクトさもある。利用シーンに合わせて選びたい2台だ。

 気になるのは機能面だ。ペア33,600円という価格は、M2の39,480円と比べると低価格だが、PC用アクティブスピーカーとしては高価だ。しかし、接続はアナログのみで、光デジタル入力や、USBオーディオ機能などのトレンド要素は無い。価格を考えると、そうした付加価値がもう1つ欲しかったところ。ただ、このオーソドックスさがボーズらしいとも言えるだろう。

 「シンプルで、とにかく音が良いPCスピーカーが欲しい」、「低音に迫力が欲しいけれど、巨大なサブウーファを床に置きたくない」という時は、必ず聴いてみて欲しいスピーカーだ。


(2011年 8月 5日)

[AV Watch編集部山崎健太郎 ]