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One Sonyの集大成。Xperia Z5の進化と秘密とは?

4Kは動画/静止画再生のみ。Xperiaは次への一歩へ

 ソニーモバイルはIFAで記者向けのラウンドテーブルを開催し、先日発表されたばかりのフラッグシップモデル「Xperia Z5」シリーズについて解説を行なった。

ソニーブースに展示されていたXperia Z5シリーズ。IFAでのZシリーズの発表は定例となりつつあり、多くの来場者が手にとって試していた

 中心となって解説を担当したのは、ソニーモバイルでXperiaシリーズを統括している、同社プロダクトビジネスグループ UXクリエイティブデザイン&プランニング・プロダクトプランニングの伊藤博史氏だ。

ソニーモバイル プロダクトビジネスグループ UXクリエイティブデザイン&プランニング・プロダクトプランニングの伊藤博史氏

3モデル構成で電源ボタンもデザイン変更へ

 各論に入る前に、Xperia Z5シリーズの概要をおさらいしておこう

 今回のZ5シリーズはサイズ別に3モデルに分かれる。もっとも小さく4.6インチのディスプレイを採用した「Xperia Z5 Compact」、5.2インチの「Xperia Z5」、そして5.5インチで4K/3,840×2,160ドットのパネルを採用する「Xperia Z5 Premium」だ。

 パネル解像度が1,280×720、1,920×1,080、3,840×2,160と異なること、Compactのみメインメモリーが2GBであり、他の2モデルが3GBである、という違いはある。だが、基本設計は共通である。SoCは同じQualcommの「Snapdragon 810」を使い、カメラモジュールも、同じ2,300万画素のCMOSセンサー「Exmor RS for mobile」をベースにしたものだ。

Xperia Z5シリーズ。サイズ以外はかなり似通っている
指紋センサーが内蔵された電源ボタン。Xperia Z伝統の「丸」は姿を消した。若干奥まった形状だが、ここに指を押し付けるとセンサーが働く

 今回から電源ボタン部に指紋センサーが内蔵されたこともあり、Xperia Zシリーズ共通のアイコニックなデザインであった「丸い電源ボタン」は姿を消した。結果的に、よりすっきりとしたシルエットになっている。指紋センサーは電源を押す動作で自然につかえる形状だ。3モデルとも同じモジュールが使われており、使い勝手も変わらない。

 デザインについては「今回から方向性を少し変えた」と伊藤氏は言う。

伊藤氏(以下敬称略):Z5シリーズのデザインを考える上で、スマホというものがお客様とどう使われているか、デザイナーと改めて議論しました。スマートフォンが、お客様の生活の中でより欠かせないものになってきています。商品を含めた背景、使っている時や机の上に置いた時など、生活の中で上質さ・心地よさを感じていただけるようにデザインを考えています。

Z5では、生活になじむようなデザインを考えたという

 結果、Xperia Z5 compactとZ5では、背面にこれまでと同じガラスを使いつつも、いわゆるすりガラス的な「フロストグラス」仕上げとした。一方、Z5 Premiumでは、より高級感を演出するために、ガラスを使いつつ、今までのガラス仕上げ以上に金属光沢が目立つデザインとしている。

Z5。フロストグラスになり、今まで以上に落ち着いたテイストになった
Z5 Premium。こちらは他の2機種とはうって変わって、鏡のような光沢仕上げ
ハイレゾかつデジタルノイズキャンセリング搭載の「MDR-NC750」

 Xperiaはハイレゾでの音楽再生に対応しており、ノイズキャンセリングにも対応してきた。だがこれまで、その機能を生かすリーズナブルな価格のヘッドセットがなく、オーディオ用のものを選べない人からは生かしづらい状況もあった。

 今回からは、ウォークマン部隊と共同で、ハイレゾかつデジタルノイズキャンセリング搭載の「MDR-NC750」が、別売で用意される。これを使うことで、ハイレゾへのハードルはさらに低くなる。なお、MDR-NC750はZ5専用ではなく、Z4など過去のモデルと組み合わせても使える。

4Kは「エンタメ限定」、基本動作は実用性重視で2Kに

 AV的な視点で言えばまず気になるのは、Premiumで「4K」になったことだ。5.5インチで4Kだと806ppi。単純に密度で言えば、グラビア印刷の要求水準を超え、最も難しいと言われる、モノクロ二階調印刷の水準(いわゆるマンガのトーンを確実に再現できるもの)に入ってくる。当然ドットを目で認識するレベルではなく、「絵の自然さ」で把握するレベルとなる。

 ただ、これを「スマホのスペックアップ」と単純に捉えるべきではないようだ。

伊藤:我々もスマホの高解像度化は検討してきましたが、一方でソニーはコンテンツもやっている企業ですので、コンテンツが合う解像度、すなわち4Kからやることに決めました。

 Z5 Premiumでの4Kは動画と静止画に特化しており、動画や静止画を再生した時にのみ、アプリと再生コーデックを判別し、4Kで動作します。それ以外のアプリ、ホーム画面やブラウザなどでは、フルHDの解像度で描画し、液晶パネルの持つダブラーで解像度に合わせて表示します。

 これはなかなかに驚きだ。4KパネルだがAV系コンテンツ以外4Kネイティブで描画しないわけで、より精細な文字表示を求めていたような人には残念なことである。ただ、正直なことを言えば、会場などでZ5 Premiumをいろいろ触ったが、このことを説明されるまで、文字などが4Kネイティブで描画されていないことには気づかなかった。現在のパネル解像度は、すでにそういうレベルなのだ。一方で映像については、あくまで現状「高付加価値を求める人向けで、万人が求めるものではない」とは思うが、差異は感じられる。

伊藤:やはり、すべてを4Kで描画すると、処理がかなり重くなります。それは発熱にも消費電力にも影響してきます。4Kパネルは透過率も下がり、全体での消費電力も上がります。しかし、こういった手法を使いつつ、バッテリーの搭載量も増やすことで、他のZ5と同じ「2日間のバッテリー動作」を実現しています。

 正直筆者は、現状でのスマホの4K化には疑問があった。フルHDを超える解像度を採用した他社の機種は、未だパフォーマンスの問題を抱えている。そして、詳しくは後で述べるものの、Xperia Z5でも採用している「Snapdragon810」は、発熱問題に苦しめられてきた。4K採用はバランスの面で厳しいのでは、と考えていたわけだ。だが、こうした方法をとれば、画質とパフォーマンスのバランスは維持できる。

 一方で、スマホの一般的な用途においては実質的に、従来通りの「2Kスマホ」である。その点はきちんと理解しておく必要がある。よく言えば「用途に合わせて解像度を使い分ける」構造だし、悪く言えば「4Kへの対応が限定的である」ということになる。

伊藤:4Kの判別はアプリ種別による場合と、動画再生時にSoC内部のデコーダーを使うか否かで見ています。それらに適合しない場合は2Kになります。一方で、動画の場合、低い解像度の映像が再生された場合には、弊社の技術を使ってアップスケーリングします。アップスケーリングはGPUを使い、ソフトウエア的に処理しています。

 こうした仕組みではあるのですが、一定のお客様には「プレミアム」として求めていただけると考えています。

2年ぶりにセンサーを完全刷新、像面位相差AFを全面導入

 もう一つ、Xperia Z5シリーズで大きく変わっているのが「カメラ」だ。Zシリーズでは、ソニーのカメラ部隊との連携が強調されてきた。特にZ1では、1/2.3型2,070万画素 のセンサーが採用され、以後、レンズ径の拡大やソフト改善、モジュールとしての改善などを積み重ね、進化をさせてきた。

 だが今回、伊藤氏は「Z1以来の大きな変化」という。センサーが新規に作りおこされたものに変わったからだ。Z5シリーズ用のセンサーは、画素数が増えたことに加え、像面位相差オートフォーカスの導入があったため、全く新しいものに変わった。

伊藤:これまではサイバーショットの部隊と連携して開発をしてきたのですが、像面位相差の技術を持っていることもあり、今回はαの部隊と連携して開発を行なっています。また、厚木(ソニー・厚木テクノロジーセンター)でセンサーの開発をしている部隊にも入ってもらっています。

Z5シリーズに採用された、新CMOSセンサー。ブランド名としてはこれまでと同じく「Exmor RS for Mobile」だが、像面位相差AFが搭載されている

 デジタルイメージングの部隊はソニーモバイルの隣のビルにいて、行き来もそもそも頻繁だという。今回、αシリーズのノウハウが持ち込まれることになるが、実際には「カメラごとに差別化して協力体制を作っているわけではない」(伊藤氏)とのことなので、センサーの素性という面で、まだスマホではノウハウも少ない像面位相差技術に対する知見を生かす、という意味合いが大きいようだ。

 結果として、Z5シリーズのカメラは大幅な進歩を遂げた。オートフォーカス速度は0.03秒(これはCIPAの基準に則った値なので、他のデジカメと同列で比較できる)と劇的に早くなり、動画でのフォーカス追従性も改善している。

 オートフォーカス速度については、動画を見ていただけるとわかりやすいかと思う。ラウンドテーブルでのデモで、画面にZ5のカメラ映像を映したものを、さらに撮影したものなので、手ぶれの大きさや周囲の不要物が写り込んでいる点はご容赦願いたい。

 フォーカス位置を示す丸の周囲に注目してみていると、非常に高速に、しかもフォーカス位置が前後に迷うことなく決まっていることがわかると思う。

フォーカス位置を示す丸の周囲に注目。フォーカス反応の良好さがわかる

 こうしたことは、像面位相差AFの特徴である、物体までの距離をつかむ能力によって実現されているものだ。像面位相差AFを搭載したセンサーを使うスマホは、Z5が最初ではない。だが、他の像面位相差AF搭載スマホに比べても、Z5のフォーカス速度はひときわ早い。その辺は、「カスタマイズしたセンサー」「ピント用アクチュエーターを最適化したモジュール」「特に像面位相差AFを組み合わせたアルゴリスムの改善」をセットにして成し遂げたという。

像面位相差AFでフォーカス速度が速くなる仕組み。フォーカスを合わせる物体までの距離を測って一発で合わせようとするため、他より速くなる
Z5の像面位相差AFが、他のものより早い理由は、ハードとソフトの両面で改良を加えたからだという

 動画撮影時のオートフォーカスについては、オートフォーカス対象エリアは狭くなるものの、中央で捉えた物体へのフォーカス速度がぐっと正確であるため、過去のZシリーズを含め、他のスマホよりも正確にフォーカスが追随する。

左上がZ5。電車が走ってきて中央に入るとZ5は電車にフォーカスしているが、他はフォーカス追従が間に合わず、背景の人形にピントが合ったまま。結果、電車はボケてしまっている
Z5でのフォーカスエリアの例。他のスマホ向けは、写真撮影時でも像面位相差AFの効く範囲が狭いが、Z5は全域。動画撮影時にも中央でフォーカスが高速に追従する

 なお、画素数の増加分については、もちろん静止画の画質アップにも使われるのだが、別のことも想定している。

伊藤:動画の手振れ補正に、増えた分の画素を活用しています。光学式手振れ補正は静止画向けの技術であり、弊社としては、現状の選択が正しい、と考えています。また、ズームについても、画素数が増えた結果、800万画素相当の画像までのズーム倍率が3倍から5倍に拡大しています。これも、使い勝手の面では大きなことだと考えます。

「完成形」か「集大成」か?

 他社が1年おきにフラッグシップ機を出す中、ソニーはXperia Zシリーズを、半年程度という短いスパンで切り替える戦略を採ってきた。特にXperia Z4からZ5は、実質的に4か月程度しかない。一方、Z4が「Xperia Zシリーズのひとつの完成形」と表現されるなど、進化の状況がめまぐるしく、消費者側として信頼しづらい部分もある。

 では今回のZ5は、どういう位置付けになるのだろうか?

伊藤:Z4の時に「ひとつの完成形」という表現を使ったのは、Z3のデザインランゲージを継承しながら、カメラも進化させた、その世代での完成形、という意味です。

 Z5では、特に技術面の進化が大きい。ソニーの中に、4Kや像面位相差AFなどの新しい技術が生まれています。今回も、ワンソニーの集大成であり、究極の形ではあるのです。Z1からの流れが、今回搭載したカメラを持って「集大成」ができたと思っています。

 Zシリーズが今後も続くのかは、今はコメントできないのですが、今後に続く新しいものを議論していて、実はZ5の特徴としてご紹介した中にも、次のストーリーに続く序章のようなものがいくつか入っています。そう言ったところを感じていただければと思います。「集大成であり、次のストーリーへの序章」です。

 フラッグシップの方向性については、少しずつリードタイムを長くしていくことを考えています。ただ、技術革新も早く、それが特にソニーのDNAに根ざしたものだと、いち早くお客様にお届けしたい、というのも正直な気持ちとしてあります。適切な時期にアジャストしていきたいとは思っています。

 一方で、今回「Premium」を含めた3モデル構成となった背景には、技術と市場の変化のバランスを見ての判断もあった。

伊藤:エンドユーザーの方々の「フラッグシップ」の考え方も変わってきています。

 以前はとにかく最新のものが入っていればフラッグシップ、だったものが、だんだんバランス型のものが、フラッグシップとして求められるようになってきました。そういう意味では、今回の4Kや今後のまったく新しいテクノロジーが入っている時には、今のZ5を求めていらっしゃるお客様とは、ちょっと違ったニーズのものになる可能性も認識しています。

 そういう意味では、今回の4Kは、「あまねくすべてのお客様に」というより、ディスプレイクオリティへの感度の高い方にまず提供するもので、今後広がっていくものかと思います。

 これまでは、そうしたものを提供できる場がなかなかありませんでした。また、Z5のようなバランス型のフラッグシップとの関係もあります。ですので、1モデル、提案を加えた「Premium」を出した、ということになります。

 Premiumは「最上位機種」、Z5は「フラグッシップ」と、日本語にすると少々わかりづらい形になっているのですが、フラッグシップを求めるお客様がいて、一部、技術的にはさらに上を求める方もいる。そこに提案できる商品があれば、今回のように「Premium」とした、ということです。

発熱問題にはハードとソフトの両面で対応

 Z4はユーザーから評判が良くない。前出のように、Snapdragon810に起因する発熱問題が大きく、快適な製品とは言えない部分があったからだ。Z5でも同じSoCを採用するのだが、パフォーマンスと発熱の問題はどうなるのだろうか?

伊藤:Z4発売以降、発熱についてはいろいろなお言葉をいただいています。我々もエンジニアチームとともに、真摯に受け止めて改善に努めています。Z4でも改善を進めます。

 Z5のタイミングでは、詳細はお伝えできないのですが、ハードとソフトの両面で改善を試みています。ハードについては、熱源に近いところの熱をうまく逃がすソリューションを入れましたし、ソフト的には、使用頻度・ユースケースに合わせて最適化を行なうものを入れました。Z5では問題が起きないよう、改善を加えています。

西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、GetNavi、デジモノステーションなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。
 近著に、「顧客を売り場へ直送する」「漂流するソニーのDNAプレイステーションで世界と戦った男たち」(講談社)、「電子書籍革命の真実未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「ソニーとアップル」(朝日新聞出版)、「スマートテレビ」(KADOKAWA)などがある。
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