小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第656回:普通のビデオカメラに見えて5m防水/耐衝撃。JVCの「GZ-RX130」でスキー撮影に挑戦!
“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”
第656回:普通のビデオカメラに見えて5m防水/耐衝撃。JVCの「GZ-RX130」でスキー撮影に挑戦!
(2014/3/26 10:00)
ビデオカメラに新風を
JEITA(電子情報技術産業協会)の資料で、ビデオカメラの国内出荷台数のここ数年の推移を眺めてみると、3月と9月にピークがあるのは相変わらずで、季節商品であることがわかる。ただ年々台数としては減少し続けており、今年のスタートも低調が予想される動きとなっている。
動画を撮るニーズ自体は減ってはおらず、むしろインターネットの普及で増加傾向にあるわけだが、旧来タイプのビデオカメラは、そこのムーブメントにほとんど貢献していないという事になる。やはり家族の記録というところに収まってしまう商品なのだろう。
そんな中、各社ともなんとか新しい使い方提案を模索しているわけだが、JVCはアクションカム方向に芽がありとして、「Everio」シリーズながら、水深5mまでの防水機能や、防塵、耐低温、耐衝撃を備えたカメラ「オールウェザームービー GZ-RX130」を発売する。発売時期は4月上旬で、日本のピークからは多少ずれる。店頭予想価格は81,000円前後だが、ネットの通販サイトでは7万円強で予約が始まっているようだ。
このモデル、実は今年1月のCESでも同型機が出展されていた。あちらはSDカードスロットのみと、32GBメモリ内蔵の2機種展開だったが、日本向けは米国とは違い、内蔵メモリ容量を64GBに増やした1モデルのみで販売するようだ。色はブラックとレッドの2色。今回はレッドをお借りしている。
JVCはアクションカメラの「ADIXXION」シリーズがそうだが、ハウジングなしでタフ仕様の技術が強く、それを横型の一般的なビデオカメラにも展開し、「強いカメラ」を打ち出した、ということのようだ。今回はせっかくの機能なので、いつものレビュー形式ではなく、実際にスキー場に持ち出して、子供撮りとして使ってみた。実際の使い勝手はどうなのか、さっそくご覧頂こう。
一見すると普通のカメラだが……
まずはいつものようにデザインから見ていこう。サイズ的にはいわゆる低価格路線の小型ビデオカメラといったタイプで、女性の手でも持ちやすい大きさだ。グリップ部が出っ張っており、グリップ感はなかなかいい。
目に付くのは大型のズームレバーだ。コンシューマ機では過去ハイエンドモデルにはこのクラスのズームレバーが付いたことはあったが、普及機クラスでこのズームレバーは珍しい。
レンズはコニカミノルタHDレンズで、スペックシートによれば画角は35mm換算で40.5~1,990mm(ダイナミックズームOFF時)となっているが、これはワイド端は手ブレ補正OFF、テレ端はアクティブモードONの数値だそうだ。光学ズームは40倍ということなので、アクティブモードONで逆算すると、ワイド端はほぼ50mmという事になる。昨今のカメラとしては、かなり狭い。なおダイナミックズームを入れると60倍ズーム、テレ端で2,757mmとなる。
レンズ前面には保護のための強化ガラスがはめ込まれているが、この機構のためにレンズ部を奥に配置しなければならず、ワイドには出来なかったのだろう。なおフィルタ用のネジは切られておらず、ワイコンの装着もできない。まあこのまま5mまで潜れることを考えれば、外側には何も付けられないと考えるべきだろう。
撮像素子は1/5.8型の裏面照射CMOSセンサーで、251万画素。動画の有効画素数は229万画素~101万画素となる。手ぶれ補正は電子式のみ。
液晶モニタは3.0型23万ドットの16:9液晶で、タッチパネル方式。タッチは静電式ではなく、感圧式となっている。昨今はスマートフォンにように軽いタッチで反応する静電式のほうが人気だが、これはおそらく手袋などした状態で操作できるようにとの配慮だろう。
液晶の内側にはボタン類は何もなく、すべて液晶画面上の操作で設定変更を行なう。背面は録画ボタンがあるだけで、写真のシャッターもこのボタンで行なう。電源は液晶を開くとON、閉じるとOFFになるというシンプルさだ。
背面は底部のロックを外して横にスライドさせると開く。中にはminiHDMI、アナログAV、USB端子、SDカードスロットがあり、ゴム素材で密閉されるようになっている。
バッテリは完全に内蔵されており、ユーザーは取り外すことはできない。背面のUSB端子から充電するのみである。この手の横型ビデオカメラでバッテリ完全内蔵は珍しいが、これも防水機構のためだろう。
バッテリー容量は大きく、連続撮影約4時間半、実撮影時は約2時間25分となっている。とりあえず1日の撮影には十分だろう。なお充電時間は約4時間40分と、かなり長い。
スキー場で撮影。使い勝手は良いがやはりワイド端が……
では実践投入である。今回は子供連れでスキー場に来たわけだが、サイズ的には小型なので、スキーウェアのポケットに余裕で入るサイズだ。そのままズボッと突っ込んでおいても、転倒して壊れるような事はない。
場内ではずっとグローブを着けたままになるので、カメラも必然的にグローブ越しに握ることになる。ズームレバーの長さが短いと、グローブをした指では2本乗せられないところだが、本機のレバーは全長36mmぐらいあるので、楽に操作できる。
初日は若干吹雪いており、当然カメラも雪まみれになるわけだが、操作には支障がなかった。普通のカメラだったらアウトだっただろう。ただ、液晶を開けるときにどこにもひっかかりがないので、グローブしたままでは滑ってしまって開けにくい。裸の指なら簡単に開くのだが、ここは何らかの工夫が必要だろう。
本機は電源ONが液晶の開閉と連動するわけだが、撮影チャンスと思って液晶を開いても、そこから撮影可能になるまで5秒ぐらいかかるので、撮影シーンを逃す事が多かった。通常の風景撮りならそんなに急ぐ必要はないのだが、子供相手のレジャーシーンでは、5秒待たされるのは致命的で、それならスマホで撮った方が早いということになってしまう。多少バッテリーを消費しても、1秒程度で起動して欲しかった。
タッチパネルは感圧式なので、グローブをしたままでも操作できる。ボタン類は大きめになってはいるものの、「閉じる」や「戻る」のボタンが小さくて、これがうまく押せない。結局はグローブを外して操作する事になるので、このあたりも、少し工夫が欲しい。
今回は細かくマニュアルで設定を変えている余裕はないので、ほとんど「インテリジェントオート」で撮影した。天候によって光の条件が色々変わる環境下でありながら、ホワイトバランスも含め、雰囲気を出しながら、わりとうまく追従できていると思う。
こういう景色のいい場所では、やはりワイドな絵が撮りたいところである。しかし全景が撮れるほどのワイド端がないので、パンなどして全体を撮るしかない。リフトに乗って隣に座った子供を撮ったりしたが、これもワイド端が足りなくてもう顔がいっぱいいっぱいである。
ズームで光学40倍もあるのはすごいが、こういう現場では手持ちしかあり得ないので、手ブレ補正に頼ることになる。だがアクティブモードを使っても、2,000mm近い望遠を安定させて撮るのは相当難しい。さらにダイナミックズームの60倍ともなると、2,757mmである。画質云々の前に狙ったターゲットが手持ちでは撮れないので、意味がない。運動会でも使わないだろう。
ものすごく基本的な話になるが、こういうタフカメラは、撮影者もそのタフな現場に一緒に行くという事が前提なのであり、遠くからズームして撮る必要があんまりない。こんなにズーム倍率を稼ぐより、もっとレンズをワイドに振って、ズームなど5倍ぐらいあれば十分だったのではないだろうか。
不安が残る液晶周り
構造上で心配なのは、液晶のヒンジである。タフ仕様ということである程度の強度は確保されてはいるのだろうが、ヒンジは90度以上開かないので、液晶画面方向に強い圧力がかかったときに、壊れないか心配である。
例えばスポーツ中に自分で撮影する場合、安全のために液晶を閉じてノーファインダで撮影するというニーズはありうる。そもそも液晶を開いていても、画角を確認するような余裕がない事もあるだろう。だが本機の場合、液晶の開閉が電源のON/OFFなので、液晶を閉じて撮影できない。
一部の業務用機では、液晶画面を90度以上倒れるようなヒンジにする事で、かかる圧力を逃がすものもある。これは報道現場などでカメラ同士押し合いへし合いしたときに、液晶ヒンジが折れてしまう事故があるからだ。タフを売りにするなら、こういう工夫も必要だろう。
液晶の輝度は、最大で+4まで明るくできるが、スポーツの現場では日差しや反射のために、サングラスやゴーグルを着用している事が多い。今回もそういう状況だったが、液晶輝度を最大にしてもモニタリングできない場面があった。
仕様上は水深5mまで潜れるわけだが、そこまで潜ってこの輝度でモニタリングできるだろうか。液晶の明るさはバッテリーの保ち時間とリンクするわけだが、バッテリを1時間で消費しても、ガンガンに明るいモードがあっても良かっただろう。
本機では「アニメ撮影」機能として、画面内にアニメーションを付加するエフェクトを備えている。多くのプリセットは時間で勝手にアニメーションするだけだが、中には液晶画面上でターゲットをタッチして、そこにアニメーションを付加するタイプのものもある。
これも実際使ってみると、液晶のタッチは感圧式なので、かなりがっつり液晶を押す必要がある。だがそこまで押し込むと、カメラ自体がぶれてしまい、ターゲットとなる被写体が捉えられなくなる。結局ターゲットにアニメーションを付けるつもりが、狙いを外しまくりという現象が起こる。おそらく静電式のタッチパネル採用機なら問題なく動く機能だろうが、感圧式ではどうも上手く動かない。
本機にはWi-Fi機能もあり、スマホ連携のリモート撮影や撮影動画の転送にも対応する。これらはJVCの強い部分ではあるが、あいにくスマホ側が防滴・防塵ではないため、今回は使用できなかった。普通のビデオカメラとして使う場合には活用できるが、このカメラが行くような場所で、組み合わせるスマホが防水などでない場合は、必然的に一緒に使うケースは限られるだろう。
総論
これまで全天候対応、水中撮影も可能というモデルは縦型に多かったが、横型カメラで全天候対応は珍しい。バッテリを内蔵、USBチャージャーでの充電にも対応するなど今風の工夫もあり、スマホ時代にありながら、スマホではできない撮影にチャレンジした一台である。
ただバッテリの内蔵については、そもそもビデオカメラは買い換えサイクルが比較的長いため、バッテリの実動寿命に不安が残る。バッテリ交換はメーカー側で対応するのか、いくらぐらいかかるのかといった情報も、メーカー側から欲しいところだ。
画角が狭い点は、レジャーの現場に限らず普通のビデオカメラとしても使いづらい部分である。スポーツ・レジャー用途として狙ったというより、既存技術で全天候型にしていったら“最終的にこうなりました”的な成り行きを感じさせる。
アクションカム系で光学ズームが使えるものはおそらくないと思うので、ハンディタイプでアクションに強いという方向性はアリだと思う。ただ普通のビデオカメラとしても使えます的な部分は、すでにスマートフォンに侵食されて減少し続ける部分なので、そこはもう割り切らないといけないところではないだろうか。
JVC GZ-RX130 |
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