小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第627回:広角&1080/60pに進化した第2弾、JVC GC-XA2

“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第627回:広角&1080/60pに進化した第2弾、JVC GC-XA2

そのまま水中OKなアクションカム。特殊撮影も

定着するアクションカム

 最近筆者の周りの映像クリエイターの間でも、もはやアクションカムが普通に使われるようになってきた。というかここ1年足らずで、クリエイターなら何らかのものは最低1つは持っているというぐらいにまで普及したのは、驚くべき事である。

 やはり以前からの流れでGoProのユーザーは多いが、2台目はちょっと違ったタイプということで、JVCの「GC-XA1」やソニー「HDR-AS15」のユーザーも増えている。

 中でもGC-XA1は、アクションカムの中でも別途ハウジングを使わずに本体を固定可能、水中も防水ケースなどに入れず、そのままOKということで、一番手がかからないカメラとして人気が高い。モニターが標準で本体に付いていることも、ポイントの一つである。

左が「GC-XA1」、右が「GC-XA2」。パッケージデザインはかなり変わった

 さてそんなXA1に、後継機「GC-XA2」が登場した。8月上旬から発売されており、価格はオープン。想定売価は35,000円前後だが、通販サイトの安いところでは3万円を切っているようだ。

 JVCのアクションカムには「ADIXXION」(アディクション)というシリーズ名がついているが、そんなめんどくさいネーミングは筆者のまわりでは全く普及しておらず、みんな普通に“JVCのヤツ”と呼んでめっちゃ愛用している。したがって後継機も“JVCのヤツ2(ツー)”と呼ばれる気配濃厚なわけだが、その第2弾の実力をさっそく試してみよう。

外観はほぼ同じだが…

 まず外観だが、基本的な形状は初代XA1とほとんど変わっていない。防水・防塵・耐衝撃・耐低温という4つの耐性もそのまま継承している。ボタンの色や保護ガラスの周囲のリングのカラーが黒っぽく変更され、全体的に黒さが増した印象だ。またシリーズロゴも赤で記載され、よりタフさを強調したデザインとなっている。

より黒っぽくなったXA2
XA1(左)とXA2。サイズは全く同じ
ボタンのカラーもやや黒っぽくなっている

 ボディサイズはまったく変わっていないが、ハードウェアはだいぶ変わっている。まずレンズだが、明るさが従来のF2.8からF2.4となっている。画角も初代が最大で128.2度だったのに対し、今回は137度まで広角になった。手ぶれ補正は電子式で、ONにすると画角が10%ほど狭くなる。また初代は1080モードにすると画角が狭くなっていたが、今回はアスペクトが4:3のモードを除いて、どのモードでも画角は変わらない。

レンズ部分
上部に録画ボタン
本体に三脚穴
見た目は変わらないが、レンズ、センサーともに新しくなっている

 センサーは従来の1/2.5型、504万画素から、1/3.2型、799万画素の裏面照射CMOSに変更された。これにより静止画の画素数も上がっており、3,264×2,448ドットで撮影できるほか、超解像を使って4,608×3,456ドットまでの撮影が可能だ。

 撮影モードとしては、今回新たに1080/60pまで対応した。前回は60pで撮影するなら720pしかなかったが、昨今のトレンドに合わせた格好となった。なおビットレートは、実測で以下のようになっている。

記録モード解像度FPSbps
1080p601,920×1,08060p22M/CBR
1080p301,920×1,08030p15M/VBR
960p301,280×96030p15M/VBR
720p601,280×72060p15M/VBR
720p301,280×72030p10M/VBR
WVGA848×48030p6M/VBR

 記録系でもう一つのポイントは、音声のビットレートが大幅に向上した点だ。前モデルはAAC 36kbpsしかなく、普通に人の声を録りたいだけの用途には使えなかった。だが今回はAAC 128kbpsに向上しており、音声もギスギスせず普通に収録できるようになった。ただし、マイクはモノラルである。

 液晶モニタも、従来は1.5型6.2万画素しかなく、目視でもドットが見える程度の荒さだったが、今回はサイズは同じで11.2万画素となっている。視野角が相変わらず狭いのは残念だが、視認性の面では大幅に向上している。

解像度が大幅に上がった液晶モニタ
前モデルXA1のモニタ。ドットの荒さが見える
端子やSDカードサイズはやや余裕あり

 後部のカバーを開けると、バッテリや端子類が見える。使用メディアはフルサイズのSDカードで、出力用のHDMIミニ端子、ミニUSB端子も備えている。それぞれmicro規格を使えばもう少し小さくなるのではないかという気がするが、本体サイズに余裕があるのだろうか。

 操作ボタン類はボディの両脇に別れており、ゴムの上からギュッと押し込まないと動作しないので、設定変更がやたら疲れる点は前モデルと同じである。このあたりはもっと内部のボタンの位置を明確に示すとか、押し込みポイントのガイダンスが欲しいところだ。

 今回はアクセサリとして、新登場のチェストマウントハーネス「MT-CH001」(6,090円)もお借りしてみた。体に取り付けることで、手放しで正面を撮影するためのベルトである。これもあとで試してみよう。

新登場のチェストマウントハーネス
胸に固定して撮影する
サクションカップマウント「MT-SC001」(3,570円)
ロールバーマウント「MT-RB001」(1,995円)など、様々なアクセサリが用意されている

1080/60pの広角撮影

 では実際の撮影である。今回は新搭載モードである1080/60pで撮影を行なってみた。まずお馴染みの防水機能だが、ハウジングに入れなくて済むので、普通にその辺を撮っておいて、そのまま水中に至るまで何にもしなくてもいいというのが楽ちんだ。当然濡れても全く平気なので、子どもを連れて海や川などで遊ぶ際にも役に立つ。

キャンプに行った湖でそのまま水中撮影してみた。元の動画ファイルは以下のリンクから
water.mp4
(57.9MB)
※編集部注:動画は編集しています。編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 今回の水中撮影は、宮崎県高原町からほど近い御池(みいけ)である。透明度が高いため、特にホワイトバランスの変更も必要なく、綺麗に撮れた。水音がかなりボコボコするのは、マイクがむき出しだから仕方がないといえるが、空気中から水中まで同じマイクがそのまま使えるというのも珍しい。

 画質面では、1080/60pでビットレート22Mbpsでは不足かと思ったが、実際に撮影動画を見てみると、圧縮に起因する荒れは少ない。広角で手ぶれ補正も効くので、揺れが少ないという事もあるだろう。

 ただ、発色がやや淡泊なところがある。だいたいスポーツの現場は往々にして光量が多く、色味が飛ぶ現場が多いので、そのあたりを見越してもう少し発色を強めにチューニングしても良かったかもしれない。

 なお、このカメラは無線LANを内蔵しており、スマートフォンをビューファインダとして使うこともできる。iOSとAndroid用に専用アプリ「ADIXXION Sync.」を用意しており、画角の確認などができる。また、YouTube/Ustreamのアカウントを設定すれば、PC無しで直接UstreamやYouTubeにWi-Fiストリーミングする機能も搭載。新モデルでは1度に4台のカメラの映像を確認できる「クアッドビュー」にも対応している。

 今回は水中撮影が湖で波がないので、アプリを使って水中の様子をモニターしようと思ったのだが、30cmほど水に沈めると無線LANで通信できなくなってしまった。調べてみると、無線LANの2.4GHzと5GHz帯は水中でかなり減衰してしまうため、水中から水上への通信は難しいということがわかった。案外実際にやってみないと、知らない事も多いものだ。

無線LANアプリはADIXXION Syncというアプリに変更された
従来アプリよりも細かい設定変更に対応している

 本機には、取り付け位置をフレキシブルにするために、画像を上下に反転する機能がある。今回水中撮影するにあたり、底部の三脚穴を使ってリストバンドを取り付けたため、上下逆にして撮影を行なった。

 この場合、「映像の反転」機能を使うと、モニターの表示が上下逆になるほか、録画される映像も上下逆になるので便利だ。

【お詫びと訂正】
 記事初出時、反転機能を利用すると「モニター表示は反転するものの、録画映像は反転しない」と記載しておりましたが誤りでした。録画映像も反転して記録できます。お詫びして訂正します。(2013年8月21日)。

 今回新登場のアクセサリ、チェストマウントハーネスも試してみよう。従来はヘルメットに取り付けるぐらいしか体に固定する方法がなかったのだが、これは胸のあたりでカメラを固定可能だ。体で振動を吸収できるため、揺れの少ない映像が期待できる。

最初がハンドルバー、次がチェストマウントで撮影したもの。チェストマウントの映像では、白いハンドル全体が見えている
stab.mp4
(145MB)
※編集部注:動画は編集しています。編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 今回は同じ路面を自転車で走行し、ハンドルバーマウントに取り付けた場合と、チェストマウントハーネスを付けた場合で比較してみた。

 チェストマウントでは視点が上がるので、走行映像としては気持ちがいいが、いかんせん水平がきちんととれているか、なかなか装着具合を自分で確認できない。スマートフォンで画角を確認してから撮影すれば良かったのだが、本体モニターがあるからと油断した。ベルトの長さ調整で傾きが変わるので、最初の位置決めは誰かに手伝って貰った方がいいかもしれない。

 振動に関しては、チェストマウントがかなり有利な事がわかる。またロードノイズもチェストマウントはほとんど拾わず、風音がする程度でかなり良好だ。

 ただ今回はロードバイクに乗っていたため、かなり体が前傾し、あまり正面が撮影できなかった。できるだけ胸を反らせていたのだが、マウントの仰角に限界があり、これ以上は上に向けられなかった。もう少しマウントの仰角が広いほうが使いやすかっただろう。

チェストマウントハーネスで仰角を調整しているところ
このベルトで体と固定する

特殊撮影も楽しい

動画のエフェクト撮影
eff.mp4
(39.1MB)
※編集部注:動画は編集しています。編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 本機にはスポーツ向けに限らず、特殊撮影機能も充実している。前回はテストしていなかったが、動画エフェクトも4種類搭載している。

 本機が充実しているのは、タイムラプス撮影機能だ。これは数秒おきに1コマずつ、長時間撮影しておき、あとでつなぎ合わせると早回し映像になるというもの。

 なお、動画撮影機能の中には、普通に動画を撮影しながら、5秒に1枚静止画を撮影するモードがある。これを使えば、普通の動画と同時に、タイムラプスの素材となる連続写真が手に入る事になる。まあ普通に撮影したものを、編集ソフトを使って早回し映像を作れば一緒だが、こういう機能は珍しい。

動画と静止画を同時に撮るモードも
動画・静止画同時撮影機能を使ったタイムラプス
laps.mp4
(20.1MB)
※編集部注:動画は編集しています。編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 タイムラプスのモードで面白いのは、動画でタイムラプスをやる機能があることだ。通常この手の機能は静止画をインターバル撮影するだけなので、撮影後すぐに動画として確認する事ができない。だが最初から動画モードでのタイムラプス機能を使えば、撮ったあとすぐに結果が確認できるというメリットがある。

動画のタイムラプス機能搭載
動画タイムラプス1秒間隔で撮影
CLIP0240.mp4
(17.1MB)
※編集部注:動画は編集しています。編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 静止画のタイムラプス機能もあり、インターバルの間隔が動画と若干違っている。動画では、0.2/1/5/10/30/60秒間隔、静止画撮影時には2/5/10/30/60秒間隔となっている。

 逆にハイスピード撮影機能もある。これは1秒間に120コマで撮影したものを30フレームで再生することで、4倍のスローモーション映像を得る機能だ。このモードでは解像度が自動的に1,280×720ドットに固定される。

ハイスピード撮影での4倍速スロー
slow.mp4
(25.9MB)
※編集部注:動画は編集しています。編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 いつもの自宅の階段で撮影してみたが、室内撮影ではS/Nはあまり良くない。階段の電球を100W相当のLEDに変えているので、以前よりは相当明るいと思ったが、それでは足りなかった。晴天の屋外なら良好だろうが、室内ではやはり照明が必要のようだ。

 最後にHDMI出力の映像だが、XA1ではライブカメラ出力にバッテリー残量表示などがオーバーレイされてしまっていた。だが新モデルではクリーンな映像出力が出るように変更されている。ネット放送などにも、手元ライブカメラとしてそのまま使えるようになった点は評価したい。

総論

 元々前作のXA1も素養が良かったカメラだったが、前作の弱点であった画角の狭さや音質の問題をクリアし、かなり完成の領域に近づいたのがXA2と言えそうだ。またモニターも解像度が上がったことで、視認性がかなり向上し、使いやすくなった。

 ボディが同じなので、従来からのアクセサリもそのまま使える点もメリットだ。またハウジングが不要で、本体に直接三脚穴が二箇所あるので、汎用の固定器具が使える点でもコストパフォーマンスが高い。さらに暖かいところから水中に入れてもハウジング内部で結露するようなこともなく、レンズ前が曇らないというメリットもある。

 無線LANを使ってアプリからコントロールできるのも魅力だが、無線LAN接続中は本体メニューにアクセスできないのは惜しい。モニターしながら設定を変えたいという時に、いちいちアプリを終了させなければならないのは面倒だった。

 個人的には、本体の4つの押しボタンが押しづらい点が今回改良されなかったのが残念ではあるが、音質が大幅に改善されたのが嬉しい。スポーツに限らず、ちょっとした取材にも使えるようになった。あともう少しバッテリーが持つようになるとさらに嬉しいのだが、そのあたりが今後の課題だろう。

 アクションカムはみんながGoProを使っているので、ついそれでいいかと考えがちだが、各社とも対抗するために色々な特徴を出そうとしている。XA2はその中でも、技術的にかなりユニークなところを攻めてきており、ぜひ注目して欲しい1台だ。

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小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「金曜ランチボックス」(http://yakan-hiko.com/kodera.html)も好評配信中。