iPhone/iPadでもDTCP-IP対応が可能に?

DTLAがライセンス条項を改定


 著作権保護技術「DTCP-IP」のルールが緩和され、iOS機器や海外メーカーのAndroidスマートフォン/タブレットなどで、日本のデジタル放送の録画番組などをホームネットワーク内で視聴できるようになる可能性が高まった。

 DTCP/DTCP-IPを管理するDTLAは、10月15日に「Revised Adopter Agreement」を公開。この中で一部のルール緩和が盛り込まれている。Adopter Agreementは、DTCP-IP関連機器を開発/販売する会社向けの文書で、これを締結することで、DTCP-IPの仕様に沿った実装を行なう契約上の義務を負うこととなる。

 これまでのDTCP-IPでは、「受信TTL(Time to Live)値をチェックし、その値が3を超えるものを破棄する」と定められていた。TTLとは、ネットワーク上でIPパケットが通過できるルータの残り数を示すもの。つまり、この規程では「3つ以上のルータを超えた配信を行なわない = 家庭内での受信に限定する」という制御を行なっていた。

 10月15日発表の改定では、このTTLについての規定を緩和。TTL値3までという規定は残っているものの、「技術的に脆弱でなく、商用として合理的である場合」は、実装しなくても良いと修正された。これにより、アプリでのDTCP-IP対応も可能になると予想される。

 コピー制御された日本のデジタル放送を、ネットワーク経由で再生する場合、DTCP-IPに、サーバーと視聴機器の双方が対応している必要がある。サーバー機器については、日本メーカーのレコーダや録画テレビ、NAS(LAN HDD)などの多くがDTCP-IP対応だ。

 一方、スマートフォンやタブレットにおいては、国内メーカー製端末はDTCP-IP対応のものが多いが、海外メーカーのグローバル端末の対応例は少ない。

 iPhone/iPadはその代表例だろう。また、サムスンのGALAXYシリーズなどもDTCP-IPに対応していない。では、「アプリを追加すれば? 」と思うかもしれないが、iOS、Androidともに、標準状態ではOSからTTL値を取得する手段が用意されておらず、アプリ追加ではDTCP-IPの仕様を満たすことができなかった。また、Windows 8の「Windowsストアアプリ」においても、同様の問題を抱えていた。

 そのため従来は、iOSでのDTCP-IP対応は(AppleがOS側で対応しない限り)ほぼ不可能と見込まれていた。また、DTCP-IP対応のAndroid端末は、TTLを取得できるよう、端末出荷段階でモジュールをプリインストールする必要があった(なお、「Twonky Beam」については、TTL値をチェックしないことが問題視されていた)。

 今回の緩和においてTTL値を取得しない実装が認められることで、アプリ追加などでのDTCP-IP実現の可能性が高まった。DTCP-IPの仕様に準拠するためには、TTL以外の課題があるものの、複数のメーカーが取り組みを進めている。今後のDTCP-IP対応機器や活用の幅の拡大が期待できそうだ。


(2012年 11月 16日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]