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「海外勢に負けない」。ペア4万円、ヤマハ渾身のハイレゾ対応スピーカー「NS-B330」の裏側
(2015/10/30 10:00)
何十万円もする大きなフロア型スピーカーをオーディオルームに設置し、ソファーでゆったりと音楽を……オーディオファンなら誰もが想像する1つの“夢”だが、実際そんなに高価なモデルは気軽に買えないし、ましてや置き場所は無く、専用ルームなんてもってのほか……なんて人が大半だろう。ネットの“スピーカー売れ筋ランキング”などを見ても、DALI「ZENSOR1」(ペア43,800円※ライトウォールナット/ブラックアッシュ※11月4日より)など、小型・低価格ブックシェルフスピーカーが上位に並んでいる。
だが、低価格な小型ブックシェルフスピーカーが大型スピーカーと比べてダメなのかというと、決してそんな事はない。点音源に近い音場再生能力の高さ、定位の良さ、ユニット数が少ない事からくる自然で繋がりの良いサウンド……長年オーディオ機器を手がけてきたメーカーの人達にも「大型スピーカーもいいけど、ブックシェルフに戻っちゃうよね」という人は意外に多い。
売れ筋製品として見た場合、低価格なブックシェルフは、限られたコストとサイズの制約の中で各社が音を競う“激戦区”でもある。多くの人が耳にする価格帯でもあるため、メーカーの顔にもなる、言わば“腕の見せ所”だ。
だが、昔と比べるとスピーカー市場における日本メーカーの数が少なくなっており、一抹の寂しさを感じる。そんな中、ヤマハがこの激戦区に渾身のモデルと投入するという。モデル名は「NS-B330」、価格はペアで43,000円とリーズナブルだが、音も中身も、かなりこだわったモデルになっているようだ。
ヤマハのスピーカーを手がけて33年目
手がけたのは、楽器・音響開発本部 音響開発統括部 AV開発部 HiFiグループの飛世真博技師補と、楽器・音響開発本部 音響開発統括部 AV開発部 HiFiグループの牧野陽平主任。「いつのまにか(スピーカー開発で)最古参になってしまいました」と笑う飛世氏は、ヤマハのスピーカーを手がけて33年目、長い歴史を持つ同社スピーカーのキーマンだ。
そんな飛世氏は、ヤマハに入社する前から同社の伝説的モニタースピーカー「NS-1000M」('74年発売)を使っており、入社動機も「NS-1000M以上のものが作りたかったから」という筋金入りのヤマハファンでもある。
ヤマハはNS-1000M以降、小型モニター“テンモニ”こと「NS-10M」('78年)などを投入していくが、'80年台後半にはCDの普及と共にいわゆる598(ゴ・キュッ・パ)戦争が勃発。NS-1000Mのコストダウンモデルのような、大型3ウェイブックシェルフを約5万9,800円という価格で各社がこぞって開発。加熱のあまり、他社より少しでも重く、大きく、豪華に見えるようしのぎを削るという「わけのわからない戦い(笑)」(飛世氏)に発展したという。
飛世氏(以下敬称略):当時はCDが出始めの頃ですので、各社“デジタル対応”と銘打って、音の傾向は輪郭をギラギラに強調して、大きな音を出すというのが主流でした。当時、私の先輩がその“598ライン”を手がけていて、ヒットも3モデルほど出したのですが、そういう音に疲れたと言って、NS-1 classics('88年)を作りました。家に帰って聴いてホッとするスピーカーをコンセプトに作ったもので、今でも印象に残っていますね。
その後、ヤマハは御存知の通りAVアンプでヒットモデルを連発。ホームシアターに強いメーカーとして人気を集め、スピーカーもおのずとシアター向けのものが多くなっていく。
飛世:ホームシアターナンバーワン戦略を進める一方で、自分がやりたかったピュアーディオスピーカーも作りたいという想いがありました。構想から4年ほどの時間をかけて完成したのが、2006年の「Soavo」シリーズです。
日本でも評価していただけましたが、特にヨーロッパで人気になり、Soavo-1がEISAのオーディオ部門で“ヨーロピアン フロア-スタンディングスピーカー2007-2008”も受賞しました。
EISAは、欧州のカメラやオーディオ機器などの専門誌約50誌が加入している業界団体で、各紙がジャンル毎に優れた製品を選ぶというもので、世界的に権威がある。ちなみに、日本製のHi-FiスピーカーでEISAアワードの受賞はSoavo-1が初めてだ。
そんな飛世氏が中心となって手がけたのが、今回の小型・低価格ブックシェルフの「NS-B330」というわけだ。
黒いツイータの正体は?
飛世:SoavoはSoavoとしてそれとは別に、設計部隊の中で“13cm径の2ウェイで、良いエントリーモデルを作りたい”という想いはずっとありました。ちょうど10年ほど、エントリーのブックシェルフ新製品を出していませんでしたので。
エントリーと言うと、オーディオの初心者向けという印象があるかもしれませんが、長くオーディオをやってきた人でも、大型システムは別として、最終的に13cmウーファのスピーカーに行き着くというマニアは多いのです。私自身もこれまで100モデル以上作ってきましたが、このユニット構成が一番手頃でいいと感じています。
近年はオーディオの聴き方がパーソナル化していて、リビングにドンと大きなスピーカーを設置するのではなく、自分の部屋で、パソコンを使いながら聴くという形に変わってきています。そういった事も考えると、13cm径ウーファのブックシェルフは、プライベートなシステムとしても使いやすいと思います。
開発にあたっては、ハイレゾ対応はマストでした。ユニットについては、これまでのノウハウや素材はもちろん活用していますが、既存のユニットを使おうとは考えず、まっさらの状態から考えました。
新たに開発されたツイータは、3cm径のアルミ振動板で、周囲にホーンが取り付けられている。ただ、アルミと言うと銀色を想像するが、実物を目にすると振動板は“黒い”。
飛世:ヤマハは昔から、軽くて剛性の高いアルミやジュラルミン、アルミマグネシウム合金などを30μmほどの厚さで使ってきました。今回はその材質を、99.9%の純度を持つ純アルミにしています。
純度が高いと柔らかいのですが、剛性を高めるために厚さは50μmほどに厚くしました。しかし、剛性がアップする反面、厚くなると素材固有の音が出やすくなります。アルミの場合はシャラシャラした音になってしまいます。
そこで、表面にブラックアノダイズド処理を施しています。“陽極酸化処理”の意味で、アルミの表面に陽極酸化皮膜を作るという事です。皮膜にはカーボンなどが含まれているので、そこがロスになり、素材の固有音・キャラクターが抑えられるのです。
また、振動板が厚くなると動きにくくなり、高域が伸びなくなってしまうので、ボイスコイルを軽くしたり、銅線をアルミ線にするなどして重量を削減しました。高域は45kHz(-10dB)まで再生できます。
飛世氏によれば、3cm径というツイータのサイズもポイントだという。
飛世:ハイレゾ対応で高域を出したいだけであれば、実は口径を小さくすれば簡単に出ます。しかし、可聴帯域を出す事も維持し、良い音を維持しながら高域を伸ばすためには強度が大切です。つまり、高い音を伸ばしながら、人間の耳に聴こえやすい帯域も充実させる設計が必要になるのです。
クロスオーバー周波数としては1KHz、3kHz、5kHzあたりですね。実は、人間の耳が特に敏感な帯域は3kHz、4kHzあたりなのです。その近くにクロスオーバーを持ってくるのは、音の調整がしやすいからです。
ツイータを囲むように取り付けられたウエーブガイドホーンはどういう役割をしているのだろう?
飛世:ホーンはPAなどの劇場やホールで使うスピーカーでよく用いられます。指向性を狭めて、音を遠くに飛ばすためのものですね。
実は、ヤマハがドーム型のツイータやミッドレンジを使う理由は、指向性が広いからです。指向性が広いと、聴く位置が多少センターからズレても、音の変化が少なくなります。しかし、広がった音が部屋に反響すると、その一次反射音が大きく影響してしまいます。
ニアフィールドリスニングも視野に入れた「NS-B330」では、部屋の影響を受けにくくするため、ホーンを取り付けています。指向性を少し狭め、リスナーの前方横にある壁などに当たる、音の量の減らしています。あまりやり過ぎると音場感が無くなってしまうので、そのあたりはちょうどいいホーンの深さを試行錯誤しています。ニアフィールド使用に限定しているわけではなく、リビングなどに距離をおいて設置しても大丈夫です。
指向性だけでなく、ツイータから出る低い音にもホーンはかなり効いています。口の周りに手を当てていただければわかりますが、ホーンを通すと低い音が出やすくなります。すると、ツイータとウーファの音の繋がりが良くなるのです。
ウーファは伝統のPMDを活用
飛世:ウーファにはPMD(Polymer Injected Mica Diaphragm)を使っています。NS-1の時、当時は厳密に言うとPMDではありませんが、その当時から30年は使っています。ただ、改良は随時行なってきました。
PMDは簡単に言うと、PPにマイカを入れて強化したものです。NS-1の時は、真空成形といって平たい板に熱をかけて引っ張るようにして作っていました。その後、樹脂を溶かして金型に入れるインジェクション成形に変え、混ぜるマイカの種類も変更するなど、いろいろやっています。
大きく改良されたのは真空成形からインジェクション成形に変えた時ですね。平たい板を伸ばすと、均一に伸びてくれず、下から引っ張るようにしますから“ネック”と呼ばれるユニットで一番強くなくてはならない部分が薄く伸びてしまい弱くなってしまう。インジェクション成形では均一にも、厚くもできるので、設計の自由度が広がりました。
今回のウーファでまっさきに考えたのが、「ツイータがハイレゾ対応した時にウーファは昔のままで良いのか?」という事です。レスポンス良く、情報量を多く出すツイータに、ウーファも合わせて動いてもらわなければ困ります。
基本としては軽くする事です。ボイスコイルの材質を軽くするなどですね。ホームシアター用ですと、サスペンションをガチガチにして大音量で映画を鳴らしても大丈夫なようにしますが、このスピーカーの場合は、家庭で出せる音量はあまり大きくないですし、近くで聴く事も多いと想定し、サスを柔らかくして小音量でも低い音をいかに出せるかというところに注力しています。
牧野:低価格なモデルですので、ユニットのコストも抑えねばなりませんが、悪いものを使うと良い音は出ません。既存のパーツを流用したりして、コストを抑えながら、13cm径ウーファには通常使われないような大型マグネットで駆動力をアップさせています。他のメーカーですと、キャンセルマグネットを使って駆動力を上げたりしますが、それをすると音が濁ってしまうので我々は使いません。
低い音の追従性を上げるために、サスペンションを柔らかくするほか、ボイスコイルを軽量化して、小音量でもレスポンスが良くなるように工夫しました。
しかし、軽くすると強度がとれなくなるというジレンマもあります。そこで、Soavoに使っているようなアルミと紙のハイブリッドである、ハイブリッドボビンを補強紙として使うことで、軽くしながらも強度はアップさせています。
ツイータとウーファの音はどうやって合わせる?
牧野:ヤマハのスピーカーは伝統的に、DCダイヤフラムを使って軽くするなどしてツイータの音圧が高いのが特徴です。マルチウェイのスピーカーでは、ツイータとウーファのバランスを合わせる事が重要なのですが、調整する際も、例えば最初からツイータの音圧がウーファに負けていると、全体としてうまくまとまらないという事があります。
ツイータが強ければ、ネットワークに抵抗を入れてあえて落とす事で、うまくなじませる事ができます。ただ、今回の「NS-B330」では、抵抗を入れなくても綺麗にツイータとウーファの音が繋がってくれました。ツイータの素直な音が出せるスピーカーになっています。
飛世:実は、NS-B330に搭載しているツイータは、このモデルだけで使うのではなく、シリーズとして他のモデルにも展開し、より上位モデルでも搭載しようと考えて開発しています。
シリーズ展開すると当然、ウーファが16cm径×2基になったりと、組み合わせるミッドレンジやウーファが変わってきます。その際、ウーファに抵抗を入れるわけにはいかないので、一番音圧が高いスピーカーに合わせてツイータを設計し、そのツイータを他のスピーカーにも使う……というのが普通なのです。
しかし、NS-B330の場合はこのモデルに合わせてツイータを作ったので、ウーファとのマッチングがジャストで、ネットワークに抵抗を使わないで済みました。普通は沢山ユニットを搭載した高価なモデルに合わせてツイータを作り、小さなモデルでは、音をうまく繋ぐためにマグネットサイズを変えたり、抵抗を加えたりと苦労するのですが、NS-B330はまったく逆。そういう意味では、低価格ですが一番贅沢なモデルと言えます。
2人の話を聞いていると、これがペアで43,000円のスピーカーに搭載されるユニットの話とは思えないほどお金がかかっていると感じる。
飛世:ツイータ単体のコストは、ホーンも含めると通常の3倍とか、4倍とかかかっていますね(笑)。しかし、音質を追求する際に、そこは譲れない点ですので、なんとかやりくりしました。ラインナップ展開があり、他のモデルでも使えるのでなんとかなっているという部分もあります。
DALI「ZENSOR1」と「NS-B330」の違いとは……
エンクロージャはリアバスレフタイプ。一見すると四角い箱に見えるが、両サイドはカーブを描いている。
飛世:音響的な意味でそうしているのと共に、こだわった新シリーズですので、その意気込みを示すためにも真四角なエンクロージャではデザイン的にダメだろうとも考えていました。
側面を曲げると、強度がとれ、エンクロージャ内部の定在波も出にくくなります。真四角と比べると吸音材は少なくて済みます。上下は並行なので上下の定在波用には最低限吸音材は必要となります。
吸音材は少ない方が良いですね。音源にいくら細かい音が入っていても、エンクロージャ内に吸音材をドッサリ入れると、そこで吸われてしまいますので。
バッフル面は、二層構造になっていて、前面の板にはピアノ塗装を施して強度を上げています。木の響きが抑えられてしまうという点はありますが、塗膜によって硬くなるのでツータとウーファの干渉を防ぐといったメリットがあります。
バスレフは、低音を増強するというよりも、ユニットの動きを助けるエア抜きのような思想で採用しています。低域がたっぷり出たとしても、質がどうかが重要です。締まった、これならば十分だという低音が出せるギリギリのラインが13cm径ウーファです。これがより小さくなると物足りなくなる。このサイズのスピーカーが、オーディオで一番“美味しい”理由でもあります。
音決めは2人で試聴し、相談しながら決めています。基本的に意見が合う事が多いですが、やはり経験の差はあります。例えば試作の段階で出た音が、量産になると精度などの問題で若干低下します。それを見越して、試作機でどのレベルまで音を上げておくかを決める……といった判断は、ある程度のモデル数をこなさないと難しいですので。
ソースとしてはハイレゾももちろん聞きますが、聞き慣れたCDが多いですね。PCオーディオなど、ハイレゾでは再生方法で音が変わりやすいので、CDとアンプを固定して、音をよく知っている安定したシステムと繋いでチェックしていきます。
市場のライバルとしては、DALIの「ZENSOR1」は意識しました。ヨーロッパのメーカーは、音楽を良く理解していて、聴かせどころというんですかね……バッサリと凄く割りきっている部分もあるのですが、本当に美味しいエッセンスはキッチリと再生するのが上手いと感じます。
それと同じ事をやっても仕方ないですし、我々はハイレゾも含め、ソースの情報量を出し切る方向でチューニングしています。オーディオですので人それぞれ好みがあり、あらゆる面でライバルに勝つというのは難しいですが、せめて「この部分はこっちの方が良いよね」というところまで行かねばなりません。例えば、ヤマハが伝統的にこだわるボーカルの描写では徹底的にこだわる、などしないと、ライバル勢に勝つというところまではいかないと、そういう思いで開発しました。
開放的でハイレベルなサウンド
では、実際に音を聴いてみよう。同価格帯のDALI「ZENSOR1」(ペア43,800円※11月4日より)と、NS-B330より少し大きなJBL「STUDIO 230」(ペア約45,000円)との違いもチェックした。
まずNS-B330のサウンドだが、小型ブックシェルフらしい音場の広さと、そこに定位する音像の明瞭さが良い。同時に、鳴りっぷりの良さというか、エンクロージャの小ささを感じさせない開放的なサウンドだ。特に高域の抜けはバツグンで、こもったような感覚は一切なく、ロスの少ない、伸び伸びと再生している気持ちの良さがある。
低域は量感が十分にある上、締りがあり、ピアノの左手や、バスドラムのキレの良さが凄い。いわゆるバスレフ型のボーボー、ボンボンと制御されていない低音とはまったく異なり、余計な膨らみは感じられない。芯のある、分解能が高い低音だ。密閉型スピーカーを聴いているような精密さが小気味良い。
いわゆるエンクロージャの響きの良さを聴かせる、雰囲気重視タイプではなく、精密にハイレゾ楽曲を含め、情報量豊かに再生する現代的なサウンド。しかし、決して輪郭をカリカリに強調したり、キツイ音を出すようなわざとらしさというか、無理をした感じはない。あくまでナチュラルなサウンド。この開放感は、ニアフィールドで聴いても、間違いなく気持ちいいだろう。
「ZENSOR1」に交換すると、サイズが一回り小さい事もあり、スケール感がやや小さくなる。高域と低域の伸びも少し抑えられ、音圧も弱めだ。高域には若干輪郭の強調感があり、細かな音のエッジはよく見えるので、気持ち良さはある。また、NS-B330よりもエンクロージャの響きの美しさを前面に出している印象だ。
NS-B330とサイズを比べると、横幅は同程度だが、高さはZENSOR1の方が明らかに低い。逆にこの小ささで、この音を実現しているのは流石人気スピーカーと言える。ただ、接地面積だけを考えると、あまり2機種に違いはないだろう。低域の迫力や量感もNS-B330の方が上手だ。
JBL「STUDIO 230」は、逆にNS-B330より一回りサイズが大きい。その風貌からの期待そのまま、中低域の量感はNS-B330よりも分厚く、迫力のあるサウンドだ。映画などのコンテンツを再生する際はこちらの方が楽しそうだ。ただ、ピュアオーディオ的に聴くと、低域の分解能がもう一声欲しい。“ザ・バスレフの低音”という感じで、量は多いがボワッと膨らんでおり、もう少し締りが欲しい。それに負けじと突き抜ける高域は鋭い。全体的にアメリカンなサウンドだ。
誰もが楽しめる価格のハイレゾ対応スピーカーを
“低価格なハイレゾ対応のスピーカー”と聞くと、言葉は悪いが「最近のハイレゾブームに乗っかって作りました」という感じがちょっと漂う。だが、そんな私に飛世氏は、今から約10年前に「自分が目指している音」を出会う人達に知ってもらおうと作ったという、1つのカードを見せてくれた。
そこには「ハイレゾリューションサウンド」、「繊細な音の再現力」と書かれている。ハイレゾという言葉が広く使われるはるか前に、既にハイレゾを目指していたというわけだ。そんな飛世氏は、最近のハイレゾサウンドをどう見ているのだろうか?
飛世:私は写真も好きで、フィルムで40年撮影しています。そこでもデジタルには何か物足りないものを感じていました。CDの音は輪郭はハッキリしていますが、スカスカで、中身が詰まっていないという感じをずっと持っていたのです。
しかし、最近のハイレゾ、特にDSDの11.2MHzのコンテンツを聴いていると、凄くアナログに近づいてきたなと感じます。アナログの最盛期にコンテンツ側が到達しようとしているのだから、それを再生する機器側もそれについていかないといけないと感じています。
同時に、アナログを超えている部分も無くてはなりません。デジタルが優れているのはリアリティと透明感ですね。透明感があり、音場が広く、ほんとうにその場にいるようなリアリティ。ライブ会場で音に包まれながら、細かな音までクリアに解像できる……アナログでは難しかった音も、ハイレゾであれば可能になると感じています。
ハイレゾブームが到来しているが、話題になるのはヘッドフォンやポータブルプレーヤーなど、モバイル用機器が中心で、スピーカーはやや蚊帳の外に置かれている感もある。だが、スピーカー再生ならではの良さと、ハイレゾソースが掛け合わさった時に、据え置き型オーディオの新しい魅力が開花するのは間違いない。そんな魅力を、超高級システムを使う一部のマニアだけでなく、多くの人が体感してこそブームに終わらない真のハイレゾ時代は到来するだろう。そうした意味でも、ペア43,000円と買いやすいハイレゾブックシェルフスピーカーの登場を歓迎したい。
(協力:ヤマハ)