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挿すだけでiPhoneが地デジテレビに。ピクセラ「PIX-DT350N」進化のワケ
提供:株式会社ピクセラ
2017年4月27日 08:00
3月に発売されたピクセラの「PIX-DT350N」は、iPhoneやiPadで使える、Lightning端子接続のフルセグテレビチューナだ。ピクセラにとっては、2014年発売の「PIX-DT350-PL1」、「PIX-DT355-PL1」に続く第3世代モデルで、より小さくさらに録画にも対応した意欲的な製品だ。
日本のテレビチューナなので当然、日本独自の製品となるわけだが、iPhoneのシェアが格段に高い日本においても、同様のLightning接続のテレビチューナ製品は珍しく、フルセグ対応製品となると、筆者の知る限りピクセラ以外は展開していない。
そのためかPIX-DT350Nへの注目度は高く、発売以降品薄状態が続いているのだという。今回はこのPIX-DT350Nについて、同製品の企画開発を担当しているピクセラの営業本部 第二営業部 部長の岡本恭孝氏、製品開発本部 副本部長の上田賢嗣氏、同本部 ハードウェア開発部 部長の西上和章氏に話を伺いながら、製品の特徴や使い勝手をレポートしたい。
フルセグ対応ながら充電不要のバッテリレス&コンパクト
「iPhoneを持ち運びながら、テレビが見られる」という基本機能は'14年モデルとほぼ同じだが、PIX-DT350Nならではの進化ポイントは主に3つだ。
・小型/軽量化(従来の約半分)
・バッテリレス化
・録画対応
いずれも従来モデルのユーザーからの要望が多かったそうだが、使い勝手の向上に直接響く機能ばかり。モバイルチューナの正常進化ともいえるモデルチェンジだ。
旧モデルのPIX-DT350-PL1はバッテリを内蔵していて、チューナユニットを充電しておかないと使うことができなかった。それに対して新モデルPIX-DT350Nは、iOSデバイスからの給電だけで動作するようになった。バッテリが不要になったことについて、ハードウェア開発担当の西上氏はこう説明する。
西上氏:前モデルは2014年に製品化しましたが、その当時、iPhoneから供給できる電力で動作できるチューナチップなどが存在せず、バッテリレスは実現できませんでした。しかしそれから2年くらいかけて部品の省電力化が進み、バッテリレスが実現できるようになりました。電子部品はほぼ100%見直しています。
内蔵バッテリがなくなった分、本体は大幅にコンパクトになった。旧モデルは電子基板の上にバッテリが配置されていたが、新モデルではそのバッテリがなくなった分、大幅に薄くなり、同時に軽量化した。PIX-DT350Nの外形寸法/重量は47.8×31.0×9.1mm/約15g。従来モデルのPIX-DT350-PL1(36.5×53×15.4mm/約30g)と比較して、大きさも重量もほぼ半分。基板自体の面積も減っているので、厚み以外の大きさも小さくなった。
電源はiPhone側から供給することになるが、iPhoneのバッテリ持ちが悪くなる実感はない。ただし、数時間視聴し続ければ普段よりはバッテリ消費している。1日中外出などの視聴後に充電できない環境での長時間視聴には注意は必要だ。
当然、アップルによる周辺機器認証プログラム「Made for iPhone/iPad/iPod(MFi)」を取得している。USBチップなどの電子部分はもちろん、Lightning端子などのハードウェア部分も細かくアップルがチェックしているので、ユーザーとしては安心して使える。
なお、Lightning端子はPIX-DT350N本体に直接付いている形状のため、iPhone用のジャケットケースと同時に利用できないこともあるが、iPhone6/6s/6plus/6s plusと、iPhone 7/7 PlusのApple純正ケースであれば問題ないとのこと。ただ、脱着が面倒なケースを使っている人は、購入前に注意が必要なポイントではある。
Lightning端子に挿すだけで簡単にテレビ視聴
PIX-DT350NをiPhoneに接続すると、ダイアログが表示され、専用アプリ「モバイルTV」が立ち上がる。初回はアプリのインストールとチャンネル設定があるが、それ以外に必須となる設定などはなく、簡単に使えるはずだ。
テレビ視聴時、横画面(ランドスケープ)表示だとほぼ全画面で表示できるが、縦画面(ポートレート)表示だと画面下半分を使ってWebブラウジングをする「ながら見」機能を利用できる。SNSや掲示板での実況を見ながらテレビ視聴、というスタイルも可能だ。
PIX-DT350Nはフルセグチューナのため、屋内でも窓に近い場所でアンテナを全展開すれば、結構安定してフルセグを受信してくれる。出先で見ることの多いスポーツ中継やニュース番組は、ワンセグだと細かい文字が読めずに困ることも少なくないので、フルセグ感度が高いのはありがたい。
今回視聴した環境は、都内だが(地デジアンテナのある)スカイツリー方向には窓がないマンション室内。窓の大きな部屋では、窓から離れてもフルセグ視聴できた。ただし、遮蔽物が多く、2m位の高さに小さな窓があるだけの部屋のデスク上ではワンセグに切り替わってしまった。少し持ち上げたり、場所を変えるとフルセグに切り替ったが、外出先の飲食店などで視聴する場合は、窓に近い席を選ぶとよいかもしれない。
アプリ周りの新機能が「すぐ録」。視聴中の番組をリアルタイム録画する機能だ。録画は「現在の番組の終了まで」、「次の番組の終了まで」が選べる。番組表からの録画予約やタイマー録画などは備えていない。録画した番組を視聴する場合はiPhoneにPIX-DT350Nを装着した状態にする必要がある。
録画は前モデルからニーズの高かった機能だが、番組を最初から最後まで録画するというよりは、スマホの前から少し離れる時や番組内容をメモするような利用イメージだという。
録画番組はMPEG-4 AVC/H.264でエンコードされるとのことだが、画質面ではiPhoneやiPadで見る分にはテレビで見る地デジと見分けがつかないくらい。25分の録画番組の容量が817MBだったので、ビットレートでは約4.5Mbpsといったところか。録画の再生時はシークバーのドラッグや、15秒の前後スキップなどがあり、使いやすい。
iPadでの視聴時、画面右側に別アプリを一時表示する「Slide Over」を使うと一時的に音声が途切れ、画面分割で2つのアプリを同時起動する「Split View」には対応していない。バックグラウンド動作にも対応しないので、スリープ中やほかのアプリ使用中に音声だけを聴くといった使い方もできない。上田氏によると、今後このあたりのマルチタスク系の機能に対応するかどうかは、「ニーズ次第」とのことだ。
ちなみにアンテナは全展開するとけっこう長いが、一番根元の段だけ柔らかい素材で作られていて、展開時に何かに引っかけたりしても折れにくくなっている。ここはチューナ製品を多数手がけるメーカーならではのこだわりの親切仕様だ。ただし根元の段が展開されていないとダメなので、利用時はしっかり全展開した方が安全である。
Lightning端子に接続するので、Lightning接続のイヤホンで音声を聴くことはできない。とくにイヤホン端子のないiPhone 7では注意が必要だ。BluetoothイヤホンはSCMS-Tに対応していなくても使えるので、外出先で気兼ねなくテレビを楽しみたいならば、Bluetoothイヤホンを用意しよう。
一方、本体のデザインが工夫されているおかげで、Lightning端子とイヤホン端子の間隔の狭いiPhone SEでも、イヤホンと同時に利用可能となっている。iPhone 7以外で手に持ったまま楽しむのであれば、有線イヤホンでも十分だ。しかしたとえばiPadをスタンドで卓上に立ててテレビを視聴するとかならば、画面からやや離れて視聴することもあるので、Bluetoothイヤホンがオススメだ。
初心者も迷わず使えてパケ死を防げる
外出先でテレビを見たくなる機会は、予期せずやってくることも多い。たとえば「大きなニュースがあったので速報ニュースを見たい」、「移動中だけどSNSでバズってる番組を見たい」、「帰りが遅くなって見たいスポーツ中継に間に合いそうにない」といった場面だ。
ワンセグを内蔵しないiPhoneにおいて、そうした外出中にいきなり訪れる「いますぐテレビを見たい」という欲求に答えられるのが、このPIX-DT350Nの最大のメリットだ。充電が不要なので使用頻度が少なくてもバッテリ切れで使えないということもないし、非常にコンパクトなのでペンケースの隅にでも入れておける。
外出先でテレビを視聴せず、自宅で使うだけならば、同じくピクセラの「PIX-BR310W」など、ワイヤレステレビチューナ製品という選択肢もある。ワイヤレステレビチューナならば家のアンテナ線で安定したフルセグ視聴が可能で、録画予約にも対応し、iOSデバイスだけでなくAndroidやパソコンからも利用できる。また、アンテナが引き込まれていればBS/CSも視聴可能だ。
しかしワイヤレステレビチューナ製品だと、家に固定ネット回線がないとやや使いづらかったり、Wi-Fiなどの設定が必要だったりと、ある程度のITリテラシが必要となる。それに比べるとPIX-DT350Nは「挿すだけ」で使えるので、初心者でも迷わずに導入できる。
実際、前モデルのユーザー層は当初、ITリテラシの高いユーザーが多かったが、徐々に20代を中心に若い世代にも売れるようになったという。
最近は若い層を中心に、スマホで動画を視聴するスタイルが広まっている。しかしモバイルネットワーク経由で動画配信サイトを利用すると、多大なデータ通信が発生し、月々のデータ通信量を使い切ってしまうことも少なくない。動画配信サイトの流行は、iPhone用テレビチューナ製品にとってマイナスにはならず、むしろスマホで動画を視聴するスタイルの普及がプラスに影響している面もあるという。
岡本氏:前モデルは2014年発売ですが、その当時はYouTuberなどもあまり流行っていませんでした。しかし時代の変遷があり、いまではスマホで動画を楽しむのが当たり前となり、その一方で『パケ死』も増えました。
お客さまからの問い合わせや販売店での質問で多かったのは、通信費についてです。「動画を見るのに通信費がかからないのは良いよね」という声は、前モデル発売時にはほとんどなかったのですが、今回のモデルでは多くありました。
ここ数年の携帯電話インフラやキャリアサービスの変化により、若い世代を中心にパケット通信量が強く意識される状況が起きている。そうした中で、「パケット代がかからずに、動画(テレビ)が見られる」テレビチューナが、新たな世代に発見された、と言えそうだ。
ピクセラでも「パケット代がかからない」ことを店頭などで強くアピールしていくとのこと。最近は一人暮らしをしていて、家にテレビや固定ネット回線がないという人も少なくない。そうした環境で動画配信を視聴しすぎてデータ通信量を使い切ってしまう人にとって、PIX-DT350Nは最適な製品だ。
アップデートでクラウド連携機能も追加
機能はシンプルで、誰にでも使いやすいiPhone用テレビチューナに仕上がっている「PIX-DT350N」。店頭でも盛り上がりを見せているようだし、他社から類似製品が出てきても良さそうだ。
その点を尋ねてみると、前モデルの「PIX-DT350-PL1」から開発は苦労しているという。特に「チューナは高周波を扱う部品ですので、このサイズで扱うのは、技術的にはかなり難しい(西上氏)」、「シンプルに見えますが、地デジの著作権保護のためのローカル暗号の扱いなど、注意しなければならないことは相当あります。そのあたりのノウハウが必要です」(上田氏)とのこと。長年、地デジ関連の技術を蓄積してきたピクセラだからこそ、できた製品といえる。
今後はアプリを強化し、クラウドサービスとの連携に力を入れていくという。それも将来の製品で対応するのではなく、PIX-DT350Nのアプリ「モバイルTV」を4月27日にアップデートし、新機能を追加していくとのことだ。
上田氏:いかにユーザーにテレビを楽しんでもらうかというところで、クラウドや人工知能との連携を予定しています。テレビ放送にはメタデータも載っているので、それを活用したり、あるいはアプリとクラウドでユーザーの視聴履歴を分析し、視聴ランキングを出したり、といったことを考えています。
将来的には、個々のユーザーの思考属性を分析しておすすめ番組を通知するといったことができれば、新しいテレビとして訴求できるのではと考えています。
こうしたクラウド連携機能は、まずPIX-DT350Nなどのモバイルチューナから実装され、その後、据え置きのワイヤレスチューナにも展開予定だという。また、SNSで話題のキーワードを表示し、視聴や録画の参考にするなど、SNS連携も検討しているという。
ネットでの動画配信に慣れていると、ただ「映像が見られる」だけでは物足りなさを感じることも多々ある。たとえばYouTubeなら視聴履歴から未視聴の動画がレコメンドされたり、ニコニコ動画ならば他ユーザーのコメントが大量に表示される。ピクセラは、そういったイマドキの映像視聴スタイルを積極的に取り入れていくようだ。
PIX-DT350Nは「出先でもテレビを見逃したくない」というようなテレビ好きユーザーにもオススメな製品だが、それだけでなく、YouTubeやニコニコ動画などに親しんでいるネット配信動画好きにとっても、面白い製品になってくれそうである。