【バックナンバーインデックス】

新発売のAV機器をいち早く紹介


ドルビープロロジックII、AACに対応するD端子搭載AVアンプ
デンオン
AVC-1850
7月中旬発売
価格/66,000円



■ 外観

入出力パネル ボリューム周りと前面端子


■ 主な特徴

付属のリモコン
 ドルビーデジタル、dtsに加え、MPEG-AAC、ドルビープロロジックIIのデコードが可能なAVアンプ。AM/FMチューナは搭載されていない。DSPなどの基本仕様は「AVC-1550」(44,000円)とほぼ同等と見られるが、最大出力を130Wとし、D端子など入出力端子を増加させている。

 パワーアンプは、5ch全てが同一パワー、同一レスポンスの完全ディスクリート。定格出力は80W×5で、周波数特性は10Hz~100kHz、S/N比は100dBとなっている。

 スピーカーターミナルには、バナナプラグ対応した大型端子を採用。フロントはA、B2系統を接続できる。インピーダンスはフロント、センター、サラウンドとも各6~16Ω。ただし、フロントAとフロントBを同時に鳴らした場合は12~16Ωになる。

 背面右側には、入力2系統、出力1系統のD端子を装備している。その代わり、RCAコンポーネント端子は入出力とも搭載していない。その他の映像入力は、Sが4系統、コンポジットが5系統(うち前面1系統)。映像出力はSが3系統、コンポジットが3系統となっている。オンスクリーンディスプレイには対応していない。

 音声は、入力系に光デジタル×3系統、同軸デジタル×1系統、アナログ×8系統(うち前面1系統)を搭載している。アナログ入力はそれぞれ、「DVD/VDP」、「TV/DBS」、「VCR-1」、「VCR-2」、「CD」、「V.AUX」、「CDR/TAPE」、「TUNER」、「PHONO」にアサインされている。また、背面右隅には、アナログ5.1ch入力端子も備える。プリアウトはフロント(L/R)、センター、サブウーファの3系統が使用できる。

入出力切り替えと電源ボタン
 サラウンドモードは、2ch時の「STEREO」とマルチチャンネル時の「DOLBY DIGITAL」、「DTS SURROUND」、「DOLBY PRO LOGIC II」の4モードが基本になる。さらに、2ch入力時には「5CH STEREO」、「MONO MOVIE」、「ROCK ARENA」、「JAZZ CLUB」、「VIDEO GAME」、「MATRIX」、「VIRTUAL」の7種類が選択可能。

 「VIRTUAL」は、フロントLRスピーカーだけでサラウンド再生をシミュレートするモード。なお、96kHzのPCM信号は「STEREO」にしか対応しない。また、dts信号には「VIRTUAL」を適用できない。

 なお、サラウンド各モードのパラメータは「ROOM SIZE」(5段階)、「EFFECT LEVEL」(15段階)、「DELAY TIME」(0~110ms)の3種類となっている。


【主な仕様】

◆ドルビープロロジックII
 従来のドルビープロロジックを進化させたマルチチャンネル再生方式。ドルビーサラウンド録音されたソースを5.1化する。具体的にはモノラルのサラウンドチャンネルをステレオ化し、従来7kHまでに制限されていたサラウンドchの再生周波数が、他チャンネル同様に20kHzまでに引き上げられている。

□解説ページ(ドルビーラボラトリーズ)
http://www.dolby.com/jp/tech/dd_pro_logic2.html

◆MPEG-2 AAC
 ポータブルメモリオーディオプレーヤーや、日本のBSデジタル放送の5.1ch放送で採用されている方式。AACは"Advanced Audio Coding"の略称。低ビットレート時での高音質を特徴とし、96kbpsでCD並の音声品質を伝送できるとしている。サンプリング周波数は8kHz~96kHzに対応。最大48chのマルチチャンネル伝送が行なえる。また、最大16chのLEF(Low Frequency Effect)やマルチリンガルもサポートする。

□関連記事
【2000年3月10日】鈴木直美のキーワード(PC Watch)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000310/key111.htm


SC-33シリーズ。フロント用「SC-T33-BH」、センター用「SC-C33-BH」、サブウーファの「DSW-33-BH」、サラウンド用「SC-A33-BH」

 今回の試聴は、6月発売のデンオンのマルチチャンネル向けスピーカー「SC-33」シリーズを使用して行なった。

 「SC-33シリーズ」は、スーパーツィータ搭載のマルチチャンネル用スピーカー。フロントL/R用のトールボーイタイプ「SC-T33-BH」が18,000円(1台)、サラウンド用の「SC-A33-BH」が1本10,000円(1台)、センター用の「SC-C33-BH」が15,000円。これにサブウーファの「DSW-33-BH」(25,000円)が加わる。

 「AVC-1850」と「SC33シリーズ」を合わせると、標準価格ベースで162,000円になる。実勢価格では10万円台前半といったところで、今回の検証ではAVアンプ、スピーカーを合わせたトータルでのコストパフォーマンスを重視した。「3~5万円台の5.1chパッケージからの買い換え」や、「リビングシアターの音周りの手頃なシステムアップ」といったニーズを想定している。


◆SC-T33-BH(フロントチャンネル)

 新開発の「ダイレクトドライブ方式」のスーパーツィータを搭載する、バスレフ型の3Wayスピーカ。12cmウーファ×2、2.5cmツィータ×1、スーパーツィータ×1という構成で、スピーカー・ユニットには非磁性体フレームを採用している。

 ウーファにはP.P.D.D方式のグラスファイバーコーン・ウーファを使用。クロスオーバーネットワークも新設計としている。スピーカーターミナルは金メッキ真鍮削り出しで、バイワイヤリング接続が可能。コルク製のフットが付属する。


◆SC-A33-BH(サラウンドチャンネル)

 同T33-BHと同じくダイレクトドライブ方式のスーパーツィータを採用したモデル。スピーカー構成は8cmウーファ×2(1基は背面に設置)、スーパーツィータ×1となっている。

 非磁性体フレーム、P.P.D.D方式の採用、金メッキ削り出しのスピーカーターミナルなど、SC-T33-BHと同等の機能を有する。また、壁掛けにも対応し、天然コルク製スペーサが付属している。


◆SC-C33-BH(センターチャンネル)

 スーパーツィータ1基に、5.7cmウーファ×4基を組み合わせた仮想同軸方式のセンタースピーカー。シリーズ共通となるP.P.D.D方式のウーファを採用するほか、床置きなどに対応するため、傾斜式のバッフルを採用している。


【SC-T33-BH、SC-A33-BH、SC-C33-BHの主な仕様】
SC-T33-BHSC-A33-BHSC-C33-BH
形式バスレフ型3Way4スピーカー(防磁)バスレフ型2Way3スピーカー(防磁)バスレフ型2Way5スピーカー(防磁)
ユニット12cmコーン型ウーファ×2、2.5cmソフトドーム型ツィータ×1、ダイレクトドライブ式スーパーツィータ×18cmコーン型ウーファ×2、ダイレクトドライブ式スーパーツィータ×15.7cmコーン型ウーファ×4、ダイレクトドライブ式スーパーツィータ×1
入力インピーダンス
最大入力100W(EIAJ)、200W(PEAK)
80W(EIAJ)、160W(PEAK)
周波数特性40Hz~90Hz80Hz~90kHz60Hz~90kHz
平均音圧(1m・1W)90dB88dB
外形寸法(幅×奥行き×高さ)175×295×800mm120×148×206mm360×163×71mm
重量(1台)約14.6kg1.8kg2.0kg


◆DSW-33-BH(サブウーファ)

 15cmのコーン型スピーカーを2つ搭載したバスレフ型のサブウーファ。他のSC-33シリーズと同時に発売された。

 最大出力60Wのアンプを内蔵するアクティブ型で、クロスオーバーは50~200Hzの連続可変タイプ。周波数帯域は20Hz~200Hz。入力インピーダンスはLINE INで47kΩ、HIGH INで4.7kΩ。オートスタンバイ機能も搭載している。


■ 編集スタッフのファーストインプレッション

 視聴ソースとして、ドルビーデジタル、dts用にDVD-Videoを、AAC用にD-VHSデッキで録画した、WOWOWの5.1ch放送を用意。また、ドルビープロロジックIIを試すため、ドルビーサラウンド収録のVHSソフトも再生してみた。

 DVDプレーヤーにはビクターの「XV-D721」、D-VHSデッキは松下電器の「NV-DH1」、BSデジタルチューナは東芝「TT-D2000」を使用。AVC-1850には光デジタルで入力した。

●視聴ソース

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物 欲
ゲージ
■物欲の考証
 上位機種のAVC-3550や4万円台のAVC-1550に挟まれて存在感の薄いAVC-1850。ただ、私の場合、AVC-1550より出力系統の数でこちらを選びそうだ。AVC-3550は分不相応。AAC対応も、本機搭載のD端子で生きてくると思うし。ただ、他社製品に比べると、オンスクリーンディスプレイ非搭載、小さなボタンのリモコン、少ないDSPプログラムが引っかかる。

 それよりもスピーカーが良かった。もう少し繊細な方が好みだが、映画を鳴らすならこの力強い音が合いそう。値段を考えると「今までオレ何をしていたのか……」と、少し落ち込んでしまった。

 DVDをドルビーデジタルとdtsで、レンタルビデオと音楽CDソースをドルビープロロジックIIで、BSデジタル放送をAACでと、あらゆる方位をカバーする使いでのあるAVアンプ。デコーダの機能は下位機種のAVC-1550と同じで、その価格差は約2万円。個人的には130Wの余裕の出力と、豊富な入出力に惹かれる。とりわけ最近の流行、前面の光入力は便利そうだ。

 全体的な音質は、厚みがあり、それでいてカッチリしている感じ。注目のドルビープロロジックIIだが、「本当にこれがドルビーサラウンドソース?」と首を傾げたくなるほどディスクリートっぽい分離感が得られる。特にリアサラウンドの音が細かく、音楽ものでは単なる包囲を超えた新しいサラウンドを体験できた。

 D端子入力を2つも搭載しているわりに、RCAのコンポーネントが1つもない。とはいえ、私個人としては、特にD端子が嫌いというわけではない。実際、今回のセッティングでは楽をさせてもらった。しかし、問題は映像端子の種類ではなく、オンスクリーンディスプレイに対応していないことだろう。ヤマハの「DSP-AX620」は、標準価格60,000円でオンスクリーンが使える。

 また、ヤマハAVアンプユーザーの私にとっては、音場プログラムの種類の少なさに寂しさを感じる。特に、ドルビーデジタルとdtsに音場補正が掛けられないため、DVDで映画ソフトを見るときは、何もいじってない「素」の音を聞かなければならない。まあ、これが正しい姿なのだろうが、包囲感希薄なソースを本機で聞くと、やっぱりヤマハの定番「サイファイ」を使いたくなる私は、純粋なAVファンとしてダメなのだろうか。

 逆に、2chでは素晴らしいエフェクトが聞けた。特にリバーブ成分がきれいで、濁りが薄くてクリア。たっぷり効かせたとしても、それほどこもりそうにないので、アーリーリフレクションとディレイも含めて色々いじってみたい。

 なお、一緒にお借りしたSC-33シリーズだが、非常にコストパフォーマンスが高い。フロントは18,000円でトールボーイ、しかも90kHz再生に対応したスーパーツィータ付き。ある程度の音量で鳴らすことで、芯の太さと高域の切れがはっきりと感じられた。一昔前の市場を考えると、まさに隔世の感がある。今回は試さなかったが、これでDVD-AudioやSACDも楽しめるとあれば、価格対比での魅力はかなり大きい。

 センタースピーカーから聞こえるセリフも中域が太くて聞きやすい。確かに、上位のスピーカーに比べると多少の解像力不足を感じるケースも見られたが、個人的には十分だと感じた。何よりも全部揃えても10万円程度という、手ごろな価格が魅力的だ。

orimoto@impress.co.jp

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物 欲
ゲージ
■物欲の考証
 個人的には、今のAVアンプを気に入って使っていて、買い換える気があまりなく物欲ゲージは低めになった。それに、この機種の目玉である、MPEG-AAC、ドルビープロロジック II、D端子とも、とりあえず必要としていない。

 しかし、最初に購入するシステムや、安価な5.1chからのグレードアップには適したシステムだと思う。また、ドルビーサラウンドのLDなどを大量にストックしている人にもおススメ。

 ある程度、本格的に映画を楽しみたいと思ったときに、AVアンプと5.1chスピーカーで10万円程度の組み合わせは、ちょどほしくなる価格帯だろう。それに、dts-ESや、ドルビーデジタルEXといった5.1chを超えるチャンネル数はサポートしていないものの、MPGE-AACに対応しているので、現存のほとんどの規格の音声を聴くことができる。また、現在注目の集まっているドルビープロロジック IIデコーダも搭載し、昔買ったLDや、レンタルVHSなどドルビーサラウンド収録のソフトもより楽しめる。

 サポートフォーマット以外のAVC-1850の特徴として、この価格帯でD端子を搭載したことが挙げられる。しかし、D端子入力は2系統しか備えておらず、結局ディスプレイのD端子が1つ増えるだけなのは残念。また、OSDがついておらず、視聴位置から調整するのに結構苦労した。調整のしづらさは、リモコンの操作性が悪いことも少なからず影響している。というのも、ミニコンポなどでおなじみの、大きさの同じ小さなボタンがたくさん並び、シルク印刷も英語な上に文字が小さいものだからだ。家電系のリモコンは、ボタンの形もなるべく変えて、操作しやすくしている。オーディオメーカーもそろそろカッコをつけるだけでなく、操作のしやすさも考えてもいいころだと思う。

 音の方は、スピーカーも今回デンオンが推奨する組み合わせ使用したので、独特の力強さを感じるデンオンの音。純粋に音楽を聞く場合には、好みが分かれるだろうが、迫力いっぱいに映画を観たいというのであれば、これぐらいが楽しい。ただ、オーディオメーカーのこだわりか、DSPモードの種類は少ない。「そのフォーマットの持つ素の音を聞いてくれ!」というデンオンのメッセージだろうか。

 今回、ちょうどアイアン・ジャイアントをAACと、ドルビーデジタルで聞き比べることができた。特に冒頭の嵐のシーンでは、ドルビーデジタルの優位が目立った。が、MPEG-AACでも十分に、映画を楽しめるレベルに達していることが確認できた。また、注目のドルビープロロジックIIは、確かに5.1chに分離し、かなり効果が高い。ただ、ドルビープロロジックを素のままデコードすることはできず、かならずドルビープロロジックIIになってしまうのは気になった。

furukawa@impress.co.jp



□デンオンのホームページ
http://www.denon.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.denon.co.jp/news/130622_2.html
□関連記事
【6月20日】デンオン、AVアンプを内蔵したDVDプレーヤー―スーパーツィータ搭載のスピーカーも同時発売
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010620/denon.htm
【6月22日】デンオン、AAC/ドルビープロロジック II対応 D端子装備のAVアンプ
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010622/denon.htm

(2001年7月27日)


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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