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第27回:新チップ搭載「Sound Blaster Audigy」
~ 実際のところ、買う価値はあるのか? ~




 すでに店頭にも並んでいるのでご存じの方多いだろうが、Sound Blasterの新ラインナップ「Sound Blaster Audigyシリーズ」が登場した。

 これまでの「Sound Blaster Live!シリーズ」の次世代サウンドカードとして登場したAudigyは、24bit/96kHzに対応するとともに、SN比100dBを実現。さらにASIOドライバを装備し、IEEE 1394準拠のインターフェイスを標準装備するなど大きく進化している。

 PCにおいて、オンボードのサウンド機能が標準である現在、Live!をはじめとする既存のサウンドカードと比較して、どれだけの能力があるのか? 実際のところ、Audigyを買う価値はあるのか? 今回と次回の2回に渡って検証していく。


■PCを高性能なオーディオ機器にするオーディオカード

 AV Watchの読者においてもPCのオーディオ環境などというものは、はなから馬鹿にしている人も多いだろう。確かに、何百万円もかける超高級オーディオ機器とは比較すべきものではないだろうが、一般のオーディオ機器としての性能は持つようになってきている。一方、レコーディング機器という面では、十分な性能を持っている機器が数多く揃ってきていることをご存じだろうか?

 しかし、一般のPCでは、内蔵のサウンド機能にチャチなスピーカーを接続して利用しているケースがほとんど。これはとても鑑賞するようなサウンドではないことは確かだ。その一方で、「オーディオカード」と呼ばれるインターフェイスがいくつも発売されている。価格的には3~15万円程度と、機能や性能によってだいぶ幅があるが、これらはPC内蔵のサウンド機能とは明らかに次元の異なるものである。前回紹介したEDIROLのオーディオインターフェイスなども、まさにこの範疇に入るもの。どちらかといえば、オーディオマニアのためのインターフェイスというよりも、レコーディングのためのインターフェイスという意味合いのほうが強い。

 もちろん、レコーディング用であるだけに、再生における性能も十分なものを備えており、これをそれなりのアンプ、スピーカーに接続すれば、オーディオマニアでもそれなりに納得いくサウンドが得られるはずだ。

 こうしたオーディオカードの最近のトレンドとしては24bit/96kHzの環境に対応すること。最近では192kHz対応といったものも登場してきたようだが、主流はレコーディング/再生ともに24bit/96kHz。もちろん、このスペックだけでは無意味なので、それに対応したアナログ性能も必要不可欠とういことになってくる。

 ただ、こうしたオーディオカードは、ごく限られたユーザーをターゲットとした製品であるだけに、あまり一般には知られていない存在で、PC誌などに広告が載ることも少ない。またPCが5万円程度で購入できる現在、サウンド機能にそれ以上の金額をつぎ込むユーザーというのも少ないだろう。

 そして、こうした市場に殴り込みをかけるような形で、CreativeからSound Blaster Audigyなるものが登場してきたのだ。


■コアに新開発のAudigyチップを搭載、AC97の呪縛から解放

 Sound Blaster Audigyは、Sound Blaster Live!の次世代として位置付けられたオーディオインターフェイスで、設計も従来のLive!とは大きく変わっている。

 まず最大のポイントは、サウンドチップに新開発のAudigyプロセッサと名づけられたオーディオ処理専用のDSPが搭載されていることだ。従来のLive!には「EMU10K1」というDSPが搭載されていたが、AudigyプロセッサはこのEMU10K1の4倍の処理能力を持っている。

 では、Audigyプロセッサの搭載によって、具体的にはどんなことを実現しているのだろうか?

 まずあげられるのは24bit/96kHzというフォーマットへの対応だ。前述したオーディオカードと同スペックを実現しており、入出力ともにデジタル・アナログ双方をサポートしている(ただし、24ビット/96kHzでのレコーディングは非サポート)。もちろん、それにともない24bit/96kHz対応のDAC(デジタル・アナログ・コンバータ)も装備。一般にアナログ性能はまずこのDACに左右されるといわれているが、実際Audigyの出音を聴く限り、従来のサウンドカードとは明らかに次元の違う音であり、既存の24bit/96kHzのオーディオカードと比較しても、いい線をいっている。

 これは、DACに高級なものを用いているというよりも、24bit/96kHzのサウンドを用いているという要因が大きいのかもしれないが、このサウンドはぜひ聴いてみる価値はある。また、アナログで5.1chの出力に対応したカードなので、DACも6ch分装備されている。

 ところで、24bit/96kHz対応というところから気付いた方もいると思うが、Sound Blaster AudigyはLive!も含め多くのサウンドカードが対応しているAC97-CODECには対応していない。AC97-CODECとはインテルが定めるPC用のサウンド標準規格であり、これがPCのサウンドクォリティーを落とす最大の要因ともいわれている。この規格内容についてここでは詳しく書かないが、AudigyではあえてAC97-CODECに準拠させなかったというのがポイントだろう。

 またAC97-CODECの規格を無視したことで、各端子もプラスティックのピンク、緑、青などのチャチなものでなく、ステレオミニジャックではあるものの金メッキ端子となった。こうしたことの積み重ねによってSN比100dBを実現しているわけだ。もちろん24bit/96kHzのフォーマットだけでなく、16bitまた44.1kHz、48kHzもサポートしている。

 ただし、1点惜しく感じるのは、完全な形でのデジタルレコーディングに対応していないことだ。前述のオーディオカードなどでは、S/PDIFでデータを取り込む際、ソース信号をそのままの形でレコーディングできる。しかし、Audigyでは一旦ミキサーをとおして取り込むため、ノイズは混入しないものの、デッドコピーということはできない。


■3つのラインナップで登場

 さて、そんなAudigyであるが、製品的には、以下の3つのラインナップがある。

 いずれもPCIバスのサウンドカード自体は同じものであるが、それに接続するインターフェイスユニットや添付ソフトに違いがある。

外付けAudigy Drive
フロントパネル
 それぞれを順に説明すると、Platinum eXは従来のLive!にはなかった新しい形状のもので、PCの外側にブレイクアウトボックス(外付けAudigy Driveフロントパネルという名称)を接続する。DACをサウンドカード上のほかに、このブレイクアウトボックス内にも置くことによって、PCのノイズの影響を極力受けないようになっている。既存のオーディオカードでも、高級品のほとんどがこの手法をとっているが、CreativeもPlatinum eXでそれに追随したわけだ。

 このブレイクアウトボックス内部には、アナログ部品、DACなどのチップがいろいろと並んでおり、これらをPC外部へ置いた点が大きなポイントだろう。また、さまざまな端子が装備されている。具体的にあげると以下のとおり。


Audigy Drive
 次にPlatinumは、仕様的にはPlatinum eXとまったく同じであるものの、入出力部を外付けのブレイクアウトボックスではなく、5インチドライブベイに埋めこむ「Audigy Drive」というものを使っている。

 従来のLive! Platinumシリーズでも「Live!Drive」というものを5インチベイにセットして使っていたが、その方法を継承した。ただし、Audigy DriveはLive!Driveなどと比較すると、シールドもしっかとした設計になっており、こうした点も音質に大きな影響を与えていそうだ。

 そして、もう1つのDigital AudioはAudigyシリーズの中ではもっとも下位モデルであるが、アナログ出力とデジタル入出力を中心に使うユーザーならこれで十分ともいえる。というのも、これはAudigy Driveがないものの、オプティカル/コアキシャルのインターフェイスは外付けの形で用意されており、一通りのことはできるからだ。

 ただし、Digital Audioは添付のアプリケーションが上記2製品と比較すると少なくなっている。具体的には、以下の7本が入っていない。これらのソフトについては、次回紹介したい。


■Audigyのシステムソフトウェア「Creative Ware」

 以上、Audigyシリーズのハードウェア的概要について紹介したが、今度はAudigyのシステムソフトウェアについて簡単に紹介しよう。

 まずAudigyのシステムソフトウェアである「CreativeWare」をインストールすると、画面上部にタスクバーというものが表示されていることに気付く(画面1)。Live!でも似たものがあったが、Audigyではよりシンプルになり、ここでは簡単に音楽を再生したり、DVDを再生するといった操作ができるほか、EAXというエフェクト関連をコントロールすることができるようになっている。

 各種音楽データを再生させるプレーヤーには「PlayCenter3」(画面2)というソフトが用意されており、ポータブルプレーヤーであるNOMADとの連携も可能になっている。さらに、従来あったLAVA!というソフトを進化させ、音楽をビジュアル化させる「Oozic Player」(画面3)とも連携されていて、音楽を聞きながら映像を楽しむこともできる。

画面1 画面2 画面3

 より細かい設定は、スタートメニューから起動させる「AudioHQ」=オーディオヘッドクォーター(画面4)を開いて行なう。ここには、Audigyを設定するためのツールのアイコンが並ぶ。

 いくつかを見ていくと、まずデバイスコントロール(画面5)では、デジタル端子の設定などを行なう。前述のとおり44.1/48/96kHzの3つのモードを選択可能であることがわかるだろう。「SoundFontコントロール」(画面6)はSoundFontを読み込んだり、SoundFontに割り当てるためのメモリを確保するためのもので、デザイン以外はLive!のものとほとんど変わらない。

 また、「ミキサーコントロール」および、「スピーカーコントロール」(画面7)は、スピーカーのセッティングやミキサーのレベル調整を行なうもの、EAXコントロール(画面8)ではエフェクトを設定する。

画面4 画面5 画面6
画面7 画面8

 いずれもLive!のものと大きくは変わらないが、Audigyプロセッサになったことで、EAXコントロールの追加ボタンを押すと表示されるエフェクト(画面9)に、Live!にはなかった「パラメトリックイコライザ」、「ノーマライザ」の2つが追加されている。それぞれの設定画面は画面10画面11の通りである。

画面9 画面10 画面11


 以上、Sound Blaster Audigyについて駆け足で紹介してきたがいかがだろうか? Sound Blasterという名前だけで馬鹿にしてしまう人もいそうではあるが、Audigyは明らかにプロ用機材にもターゲットに入れた高性能なサウンドカードであるといえる。

 次回はASIOドライバをはじめ、ノイズリダクション機能、また添付の音楽アプリケーションなどについて紹介していく。

□クリエイティブのホームページ
http://japan.creative.com/
□「Audigy」の製品情報
http://japan.creative.com/soundblaster/audigy/welcome.html
□関連記事
【9月6日】クリエイティブ、「Sound Blaster Audigy」を9月8日に発売
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010906/creative.htm
【8月24日】クリエイティブ、新チップ「Audigy」搭載のサウンドカード
―24bit/96kHzの入出力、ドルビーデジタルに対応
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010824/creative.htm
【8月20日】クリエイティブ、マルチエフェクトエンジン搭載のサウンドチップ
―「EAX ADVANCED HD」も提唱
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010820/creative.htm

(2001年9月17日)

[Text by 藤本健]


= 藤本健 = ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase VST for Windows」、「サウンドブラスターLive!音楽的活用マニュアル」(いずれもリットーミュージック)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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