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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第27回:分離・合体は男のロマン?
~ 「松下 ネットワーク2WAYデジカム」を検証~


■ 分離・合体は日本のお家芸?

 今週末から、運動会シーズンの到来である。それへ向けてビデオカメラを購入しなければならない世のお父さんがたは、いよいよ決断の時、というわけだ。Electric Zooma!でもこの時期、集中的にビデオカメラレビューをお送りしている。

 さて今回のターゲットは、9月1日に発売になったPanasonicのDVカメラ「NV-EX21」(205,000円)だ。一見ナンの変哲もないビデオカメラだがお立ち会い。ボディが2つに分離して、上の部分がデジタルカメラにもなるという前代未聞の製品なのだ。プロ用ビデオカメラはロケとスタジオ両方で使うため、カメラユニットとデッキ部が分かれるのが普通だが、コンシューマ用DV機でデッキ部が分かれるカメラは記憶にない。

 この分離・合体して違う機能に化けるという部分に至福の喜びを感じるのは、ゲッターロボの時代から面々と受け継がれた男のロマンのなせる技なのか? それとも単なるキワモノ好きなのか?

 機能としてはDV録画は当然として、SDカードには最大1,200×900ピクセルの静止画撮影、176×144ピクセルのMPEG-4動画撮影、ボイスレコーディングが可能になっている。Panasonicでは開発理由として、「ビデオカメラとデジタルカメラでは使用するシーンが違う」ことをあげている。ビジネスではデジタルカメラを使い、休日にはビデオカメラで家族を撮るといった使い方だ。さっそくその使い心地を確かめてみよう。


■ ビデオカメラとしてはノーマル

 NV-EX21(以下EX21)を構成する主要パーツは、カメラと液晶モニタの「カメラユニット」、DVテープデッキとバッテリ部分の「ビデオユニット」、それからデジタルカメラの際にストロボやバッテリを装着するための「バッテリアダプタユニット」の3つから成っている。

 これを便宜上イーグル号ジャガー号ベアー号とよ(呼びません)。このうちバッテリアダプタユニットはアクセサリーキットに同梱されているのでいわばオプション扱いだが、カメラユニット単体では動かないのでデジタルカメラとして使うときには必ず必要になる。

カメラ部とファインダ、液晶モニタを持つ「カメラユニット」 バッテリとVTR部分を持つ「ビデオユニット」 ストロボ搭載バッテリ装着ユニット「バッテリーアダプターユニット」

縦型DVカメラのサイズとしては普通
 まず、ビデオカメラ状態を見てみよう。サイズとしては、50×106×115mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約555gと、DVカメラとしてはまずまず普通の大きさである。

 レンズはカメラの名門ライカがビデオ用に開発した、「ライカディコマー(LEICA DICOMAR)」を搭載している。いわゆる電器メーカーというのはビデオカメラやデジタルカメラを製造する際に、自社でレンズなどの光学系を製造せず、他の光学機器メーカーからのOEMを受けているのが普通である。

 従来はそのことを、まあ隠しているわけではなかったろうが、特に公表していなかった。ところがそれを逆手にとって大当たりしたのが言うまでもなくSONYの「カールツァイス」。

 宿敵SONYがカールツァイスならPanasonicはライカで勝負、というわけである。ちなみに両レンズともライセンスを受けた国内生産であるので、ブランド名にこだわらず、あくまでも自身の目で確かめていただきたい。

 さてボディの作りだが、実際に手に持ってみると、全体が樹脂製でちょっと安っぽい印象。もっとも金属にしてしまってはコストも高く重量も重くなるので、今どきのカメラは樹脂製ボディもやむを得ない。だが、もう少しカラーリングなどで工夫して欲しかった。またデザインを細部までよく見てみると、各所にあまり機能的に必然性のない曲線が多い。

 しかしそうやって一生懸命柔らかさを出そうとしている割には、妙に角張って見える。新しいような古くさいような、奇妙な二面性が同居したような、ちょっと不思議なデザインだ。ユニットと組み合わせて2つの形状に変化しても無理のない形ということで、かなり難しいデザインであったのかもしれない。

 ボディ側面には、電源および各種モード変更スイッチがある。スイッチ類は全体的に小ぶり。カメラユニット内に全機能を持たせるために、小さくて済むスイッチはみんなここにまとめたようだ。この位置に電源スイッチがくることで、右手だけで電源投入ができなくなったのは、頻繁に電源をON/OFFする人には不利になった。

 反対に大きなスイッチが必要なズームレバーとスタート・ストップボタンはビデオユニットの背面にまとめられ、撮影中の操作に不満がないようになっている。

 構えてみると、近頃のカメラにしてはやや持ちにくい。中指がちょうどリモコン受光部の突起に当たるのである。メーカー側の想定としては、この突起の下に指がくるということのようだが、すこしだけ出っ張っている角が当たって、指に不快感が残る。また、伸ばした右手の人差し指の使い道がなく、なんだか勿体ない感じがする。

 カメラユニットとビデオユニットの繋ぎ目は、がたつきなどは全くなく、かなりしっかりジョイントできる。カメラ右側の「カメラ取外し」レバーで分離するわけだが、電源が入っている状態ではロックされて外れないようになるなど、分離に関するトラブルがないよう注意深く作られている。

ビデオとデジタルカメラ共有で使うスイッチ類は、カメラユニットに集中している 大型のボタンは、各ユニットごとに装備されている リモコン受信部のでっぱりがジャマな感じだ


■ デジタルカメラとしては異形だが持ちやすい

 「カメラ取外し」レバーをスライドさせながらカメラユニットを前面に引っ張ると、ビデオユニットを取り外す事ができる。取り外しはやや固めだが、このぐらいしっかりはまっていないと困るだろう。

 カメラユニットは、このままでは全く動かない。バッテリがないからだ。そこでバッテリーアダプターユニットとドッキングさせる。さらにビデオユニットからバッテリを取り外し、バッテリーアダプターユニットに取り付ける。むろんバッテリが2つあれば、それぞれのユニットに取り付けておけるわけだから、スタイル変更はもっと簡易化する。

 バッテリーアダプターユニットの前面にはストロボとボイスレコーダ用小型マイクがあり、背面にはズームレバーと、MPEG-4でムービー記録するときに使用するスタート/ストップボタンがある。これらのボタンはビデオユニットとダブるが、やはり大きさが重要なパーツはダブってもちゃんとあったほうがいいという配慮が感じられる。右側には、ビデオユニットとよりもやや細身のグリップベルトが付けられている。

 持ってみると、結構持ちやすい。デジタルカメラとしてはちょっと異形だが、小型の縦型DVカメラを持っているような感じだ。ショットボタンも良い位置にあるし、各種調整用のマルチプッシュダイアルが中指で操作できる。マニュアルフォーカスを使用する際には、ちょうど良い感じ。

 撮影できるピクセル数は最大で1,200×900と、今どきのデジタルカメラと比べれば小さいが、印刷ではなくパソコン上で見るサイズとしては適当なサイズだろう。またビデオカメラ並みのズームに加え、2.5インチ液晶モニタが使えるのは、同サイズのデジタルカメラではちょっと見あたらないスペックなので、なかなか重宝しそうだ。

 ちなみにビデオカメラ状態でも静止画の撮影は可能だが、ストロボがないので暗い場所や夜間では若干不便になる。

バッテリーアダプターユニットを装着した、SDカメラスタイル 大きさが必要なパーツは、ユニットごとに付けられている 横型ビデオスタイルで、ホールド感は良い


■ 画質評価としては……

 ではさっそく撮影してみよう。近頃はあいにくの曇天続きで、屋外撮影でもあまり光量が得られない。今回のサンプルは、そのあたりを考慮して見ていただきたい。

ネジ穴の位置は設計上ここしかないのはわかるが、三脚は装着しづらい
 まず実際に撮影に出かけてみて気がついたのは、三脚取り付け用のネジ穴が変なところにあり、非常に付けづらい点だ。すぐ横にグリップベルトの取り付け穴があり、ここからベルトが出っ張っているので、ジャマなのである。またその構造上、三脚を使う際はわざわざグリップベルトと反対側に回してやらなければならず、煩雑だ。

 さらにレンズキャップを固定する機構がベルトの外側についているので、レンズキャップのひもがカメラ前を横切る形となり、もうぐちゃぐちゃ。さらにそうやって取り付けても、カメラの中心が三脚の中心とかなり外れており、操作感も見た目もちょっと変だ。あまり三脚を使用しての撮影は考慮されていないということだろうか。

上部にあるダイアルは、ビデオモードでは使いづらい
 カメラ調整に使用するマルチプッシュダイアルは、回転する際に引っかかりがなく自由にくるくる回るのだが、それも使いづらい。このダイアルは押し込むことで設定を変えるわけだが、回転に引っかかりがないので、押し込んだつもりがつるっと回転してしまって次の項目へすすんでしまったりと、結構苦戦を強いられた。

 特にビデオモードでは右手でカメラを持っているわけだから、必然的に左手でダイアルを操作することになる。ところがダイアルがカメラ上部にあるため、操作する左手が液晶モニタを遮ってしまって、メニューが見辛い。そうなってくると、液晶モニタを見るためには左手を持ち上げるようにしなければならないが、それもまた不自然な体勢であり、ますます操作しづらくなる。

 いつもオートで撮るならあまり操作の必要はないが、こまめにプログラムAEやホワイトバランスを変えて撮るにはあまり向いていないようだ。もっともオートモードには、その企業の映像に対する姿勢を垣間見ることができるので、比較するには格好の材料となる。

 オートモードで撮影したビデオ映像は具体的にはサンプルムービーを見ていただきたいが、色彩の鮮やかなものは若干渋めの色味になるようだ。光量のせいもあるだろうが、どうも全体的に均一な輝度を持つシーン、つまりクロマ成分によって映像のポイントが成立しているようなシーンでは、目視よりもやや枯れた印象になる。ところが敢えてコントラストを強く捉えたシーンでは、非常に張りのある映像が得られることがわかる。特に水面のカットでのシズル感には驚いた。目視では全然このようなコントラストではなかったのだ。レンズの特性とCCDのカスタマイズとが相まって、濃淡の表現力はなかなか奥深いものがある。

 また面白いことに光の反射を捉えた映像では、特にフィルタを使ってないのに、まるでクロスフィルタをかけたような映像になった。これはレンズの特性なのか、または意図的な仕様なのかわからないが、もしかしたらスミアを軽減するための措置かもしれない。色々なところにレンズを向けてみたが、確かにスミアは出にくいようだ。

 ライカディコマーの説明を見ると、マルチコート故にフレアやゴーストを低減とあるが、フレアは全く出ないわけではない。当然光源を入れ込めばフレアは出てしまうが、その出方は穏やかで、一般家庭で使う分にはほとんど問題視されないレベルに押さえ込んでいる。

 光学的な部分にもう少し目を向けると、絞りにはどうやら4枚羽根の菱形絞りを採用しているようで、その形が光のぼけ足に出てしまっている。確かに小型カメラでは菱形絞りを採用している例が多いのだが、ライカの名を誇るのであれば、もうちょっとレンズ機構部分も上品に仕上げて欲しかった。

 また室内や日陰など暗い場所でのオートモード撮影は注意だ。再生時に撮影時のカメラデータを見てみてると、フルオートの撮影ではシャッタースピードが1/100に固定され、その状態で適切な明るさになるよう増感されている。したがって光量の足りない場所では、かなり色味の浅い映像になってしまう。シャッタースピードを落とさないのがポリシーと言われれば返す言葉がないが、ビデオの場合シャッタースピードは1/60で十分なので、もう少し増感しないで粘ってくれても良かったと思う。

【MPEG-2形式】
ex21_13.mpg(19.0MB)
EX21によるテスト撮影。ハイコントラストの表現力は優れている
これはこれで面白い表現ではあるが…… 背景の光のぼけ足が、三角になってしまっている

 一方静止画はどうだろうか。デジタルカメラとして使用した場合CCDの面積を広く使うため、光学ズームは約8倍程度になる。

 カメラモードにして同様のシーンを撮影してみると、ビデオよりは若干強めの発色が得られているが、傾向としてはビデオっぽい映像がそのまま写真になる、といった感じだ。フル画像で見てみると、圧縮はもっとも高画質のファインモードであるが、輪郭部分にJPEG特有のジャギーが見られる。

 また背景のぼけた部分には、粒子ノイズが見られる。縮小してWEBに掲載といった用途では問題にならないと思うが、そのまま使用するにはちょっとキツいと言わざるを得ない。

デジタルカメラ撮影のサンプル。かなり絵柄を選ぶカメラのようだ

MPEG-2の再生環境はビデオカードや、ドライバ、OS、再生ソフトによって異なるため、掲載したMPEG-2画像の再生の保証はいたしかねます。また、編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。


■ 総評

 一生懸命開発されたPanasonicの方には申し訳ないが、正直言って他社の同クラスと比較しても、また個人的な水準で考えても、残念ながら現行のEX21は万人にお勧めできるとは言い難い。ムービーを見て気づいた方もいらっしゃると思うが、筆者のような技術系(一応これでもな)の立場から言うと、、画面左端にかなり大きなスキューのようなノイズが見られるのも、ちょっとイヤな感じだ。この手のノイズはどのカメラでも多少は出るものだが、いくら安全フレーム外だからとはいえ、ここまで目立つノイズを放置しておくというのもちょっと考えられない。

 たまたまこの個体だけの問題なのかもしれないが、例えばあなたが店頭で何かを買うとして「たまたまこれは壊れてますが、お届けするモノは故障しませんから」と言われて、それを買うだろうか。普通は技術力や耐久性、生産管理能力の面で不信感を持たれても仕方がないだろう。

 同じPanasonicのDVカメラでも上位機種ではもっとバランスの取れた設計がなされていると思うが、EX21のような普及帯モデルでは、基本設計が変わらないままに良いレンズを乗せてきたため、今まで問題にならなかったところがかえって表面化してきてしまったような印象を持った。レンズに注力し、映像品質でSONY、Canonと同じ土俵で勝負するというであれば、もう少し他の部分もそれに応じたレベルアップが望まれる。Panasonicは放送機器も作っており、それだけのノウハウは十分に持っているのに、なんとも勿体ない話だ。あるいは普及モデルをそんなシビアに見るな、と言われるのかしれないが……。

 ただ、ユーザー層を分析した結果、このような分離・合体というコンセプトを作り上げたという謙虚な企業姿勢は評価されていいと思うし、純粋にギミックとしても面白い。さらに下のユニットをオプションとしてもっとバリエーションを付けても面白いだろう。例えばHDD搭載ユニットや、8cmDVD-RAMカートリッジ搭載ユニット、スーパードライブ搭載ユニットなど、色々なアイデアが考えられる。

 分離・合体のメリットは、限りない組み合わせの妙である。単なるキワモノで終わらせず、ぜひこのコンセプトを発展させ、しっかりしたモノに仕上げて欲しい。

□パナソニックのホームページ
http://www.panasonic.co.jp
□2Way液晶デジタルビデオカメラEX21のサイト
http://www.panasonic.co.jp/avc/video/frame/ex21.html
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http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010806/pana.htm

(2001年9月19日)


= 小寺信良 =  無類のハードウエア好きにしてスイッチ・ボタン・キーボードの類を見たら必ず押してみないと気が済まない男。こいつを軍の自動報復システムの前に座らせると世界中がかなりマズいことに。普段はAVソースを制作する側のビデオクリエーター。今日もまた究極のタッチレスポンスを求めて西へ東へ。

[Reported by 小寺信良]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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