気になるグッズを衝動買い


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第36回:新方式のスピーカー試して見ました
リフレクタ式スピーカー「ソニー SRS-D313」


 AV製品はピンからキリまでいろいろありますが、いわゆるメインストリーム以外にはいろんなおもしろいアイテムがたくさんあります。ここでは思わず衝動買いしたくなるけど、冷静に考えるとどうかな~? と、気になる「モノ」に積極的なアタックを繰り広げていきます。

未来を感じさせる「新方式」

 スピーカーは数あれど、そのほとんどは同じような形式を取っている。ウーファ、ツイータ、スコーカなどの振動版で音を出して、キャビネットで音を整える、といった感じ。基本的にはどれもこれもが同じ形式。安心はできるけれども、発展が感じられないのデスよ。発展が。

 今年は2001年。子供ころに期待をふくらませていた「科学の21世紀」時代なのに、現状を見てみるとなんとも保守的。こんな時代だからこそ「新方式」というだけで、それがどんなものなのか試してみたくなるのです。

 そんな「新方式」のスピーカーが、「リフレクタ式」という方式を採用したソニー「SRS-D313」なのであります。


「リフレクタ式」ってなんぞや?

 この「SRS-D313」、ありていに申し上げるとPC用のアクティブスピーカー。何が新しいかといえば、「リフレクタ」という反射板を付け、音を反射させることで実際のスピーカーの位置よりも後方に仮想音源を作り出すんだとか。おそらく「近くでも広がった音場を得たい」というニーズに応えることが目的の製品化と思います。確かに、デスクトップユースだとリスニングポイントの近くに置くことになりますからなぁ。

 ついでにドライバのコーン紙が岐阜県美濃製なんだとか。製品情報には、「岐阜県美濃製の無着色コーン紙を採用。着色工程を省くことで、よりピュアな音を再生。長良川上流の伏流水による抄紙プロセスが、より良いサウンドを生み出します」とあります。美濃といっても岐阜県美濃地方は県を2分する大きな地域区分になるけれども、多分美濃市のことでしょう。自分の出身は岐阜市。毎日自転車で長良川を越えて学校に通っていたからちょっと興味あるかも。けれども、美濃市って中流域だったと思うのだけれど?

 それはそれとして。価格は15,000円程度と、まあ、そこそこお買い得な価格。「多少のコストは出してでも高音質で音楽を楽しみたい」というニーズには対応するかと。出力はサテライトが5W×2、サブウーファが20Wと、PC脇やデスク上といったパーソナルな空間での使用であれば出力的にも問題なし。っつうか、コンセプトがそういう製品だから。全く新しいタイプのスピーカーであるから、デザインについてはなんとも言明しづらいけれども、断言できるのは「独創的」ということ。ネットで隠していないのに、コーンが見えないスピーカーというのは見たことがありません。

 う~ん、店頭で実物を見て考えてみようかな。つうことで池袋、新宿の量販店に行ってみる。が、どうも見当たらず。あれ? まだ出てなかったっけ? いやいや、発売日は10月13日、確かに発売日は過ぎてるはず。とはいってもないものはない。その場はあきらめたけれども、仕事のついでに寄った新橋の量販店にありました。

 ポータブルMDコーナーに併せて展示されており、MDを使ったと思われるデモも実演。ふむふむ、こちらのお店ではポータブルMDに組み合わせるシステム、という扱いなのでありますね。しかし、この音は……サブウーファしか鳴っていないような……。

 しかし、近くに寄って聴いてみると高/中域の音もサテライトから聞こえてきます。が、どうも回りの雑音に紛れ気味。環境を考えればしゃあないな。お値段も14,800円と遊びで出しても納得できる価格。ここは「新方式」を試すべく、ゲットすることにいたしました。


設置はキーボード脇でも大丈夫?

 それでは、同梱品をあらためるとしましょう。箱の中身は、サテライトスピーカー×2、リフレクタ×2、サブウーファ×1、2mのステレオミニプラグケーブル×1のみ。なんともシンプルな構成。

 梱包時はリフレクタは外されており、自分でサテライトスピーカーに取り付けるアタッチメント式。2点の取り付け部に押し込むだけで、簡単に取り付けることが出来ます。

 インターフェイス、入力端子はL側スピーカーに集中して配置されてます。スピーカーはそこそこコンパクトで、デスクトップに置いても違和感は感じません。インターフェイスは、メインボリューム、サブウーファボリューム、インプットセレクトの3つ。その下にはヘッドフォン端子までついてます。で、入力はL側スピーカーの背面に2系統を装備。ふむ、アクティブスピーカーシステムにしては結構豪華なインターフェイス群ですな。

 サブウーファは外形寸法約214×290×254mm(幅×奥行き×高さ)と大きめで、デスクトップに置くのは少々難しいけれども、アンプを内蔵し、電源も一体化。入力端子がスピーカーにあるので取り回しが良いように思いました。

 サブウーファはデスク下に置くとして、サテライトをどこに設置するか当初迷いましたが、「リフレクタ後方に仮想音源ができる」という「売り」を信じて、キーボード脇に設置。で、ソースを接続っと。入力はPCからは分配器で分配したフロント2chと、もう1つにはポータブルCD「ソニー D-E700」を繋いでみました。

同梱品一覧。なんともシンプル L側スピーカーのインターフェイス L側スピーカー背面の入力端子。ステレオミニを2系統装備

リフレクタ。半透明のプラスティック製 リフレクタを取り付けたR側スピーカー正面。なんか間抜け リフレクタを取り付けて側面から見たところ

サブウーファとサテライト。ウーファのサイズは少々大きめ ウーファは底面に配置。バスレフポート付き サブウーファ背面。L側はDIN端子で操作に対応


リスニングポイントが近くても大丈夫

 ちゅうことで、リスニングすることにしましょうか。最初はポータブルCDプレーヤーから、っと。

 まずは最近お気に入りの「クラシックの殿堂」から「レクイエムより怒りの日」を聴いてみる。ほうほう、冒頭のティンパニーの音がサブウーファから元気よく響いてきます。そのほかホルンなどの低音系の音はほとんどサブウーファから。う~ん、この曲は低音メインだから各楽器の分離感はちょっとよろしくなくサブウーファの迫力に紛れがち。そのうちにコーラスパートが始まると、ソプラノを中心にサテライトからの音もアピールを始めます。ドライバが39mm径と小口径なだけに、高域はよく鳴ってます。ソプラノコーラスが最も盛り上がるパートが特に冴えて聴こえました。

 ただし、低域はサブウーファに頼り切っているのか、低音の楽器の音場は心もとない印象。聴感上で感じたクロスオーバー周波数は、そうさねぇ350~400Hzって感じでしょうか? もちろん測定したわけではないので正確な数字ではありませんが、低音系の楽器の残響音が多少気になるので、クロスオーバー周波数はちょっと高めではないかと想像します。サブウーファの音を絞ると、迫力はなくなるけれども、その代わりに中高音と低音のバランスが良くなってきました。大体1/3程度に絞っておけば適度なバランスかと。

 スタンド、リフレクタに角度調節機能はなく、位置は全くの固定。けれども、高さ約70cmのテーブル上に置いたスピーカーを、椅子に座って聴く限りではいい感じに音が耳まで届いている様子。なるほど。デスク上、という設置に特化して完璧な調整がされているようです。

 驚いたのは、近くで聞いていても音の広がりを感じること。これまでのコンパクトスピーカーをキーボード脇なんて位置に置けば、ともすればヘッドフォンのような聴感になりがちなのだけれども、リフレクタで反射された反射音なのに、エコーを感じさせることなく、音を拡散して丸みを出し、それでいて音のエネルギーが減衰した様子もなし。その上高域の音が印象に残るドライブなのです。

 音に広がりを持たせながらも、高域の音中域は滑らかに、高域は鋭く、低音は元気よく、それでいてバランスは崩れてはいない、とでもしましょうか。ただ、難点を言えば、サテライトの出力が5W×2とそれなりなのに比して、サブウーファが20Wと元気がよすぎるので、あまりサブウーファ出力を上げると、音が紛れてしまうのがなんとも。絞ればバランス的には問題ないんですが、低音/高音の入り混じるソースの再生には向いてないかも。

 問題点といえばもうひとつ。デスクトップユースを想定しているから仕方ないのでしょうが、1.5mも離れるとサブウーファの音に紛れて、サテライトの音がほとんど聞こえなくなってしまうのです。原因はおそらくリフレクタの角度。放射音が上向き30°程度で音を設計されているから、音が上に行ってしまうのです。なので、ちょっと距離を置くだけでサテライトの音が紛れてしまう。う~ん、ホントにデスクトップに特化したシステムなんですなぁ。


「売り文句」の効果のほどは?

 製品情報にある「売り文句」は、「リフレクタ方式」、「フローティングスピーカーキャビネット」、そしてサテライト+サブウーファの「3ピース」構成、といったところでしょうか。で、効果のほどはというと、う~ん、正直、よくわかりません。……と、投げてしまうのもアレなので、想像を交えながらそれぞれの「売り」の効果を検証してみたいと思います。まずはリフレクタから。

 リフレクタの目的は、「近距離でも音に広がり」を持たせることが第1の目的ではないかと。うん、確かに音源の位置がスピーカーの後ろにあるように感じます。ドライバユニットからは比較的高域の音をメインにして、リフレクタで反射させるときに共振させて、音を拡散。この過程でリフレクタの振動も加味して中域が補強されるのではないかと存じます。リフレクタなしで聴いたところの印象は「硬い音」だったので、高域の音はシャープに、中域の音がまろやかになる秘密は、やはりリフレクタにあるのでは。

 リフレクタの取り付け部はゴム製で、振動の影響にも配慮されていると想像します。音への影響は……ちょっと実感できませんでしたけど。

 で、次に「フローティングスピーカーキャビネット」。これは製品要するにキャビネットの共振を抑えるために、ドライバユニットを浮かせているのだと思われます。確かにキャビネットでの「ビビり」はあまり感じません。バッフルではなくて、リフレクタの拡散で音を調節していると思われるので、キャビネット共振はマイナスにしか働かなかったのかと想像します。細かいところまで作りこんでると言ってよろしいのでは。

 で、最後に「3ピース」構成。これは、単純にサテライトだけでは低音が足りなかったのかと。実際、サブウーファの音は迫力があり、サテライトの音はちょっと離れるだけで聴こえなくなるほど。でもまあ、サテライトのサイズやリフレクタの特性を考えると仕方ないのでは、と思います。

リフレクタの取り付け部。ゴム製とすることで振動へ配慮していると思われる ドライバ部のアップ。浮かせることでキャビネット共振を低減させている


操作性も良好でミキシングもOK

 音はまあ、こんな感じで。このクラスにしてはよく鳴ってるかと存じます。で、こういうシステムで気になる点のもうひとつが操作性。操作パネルは、L側のスピーカーに集中配置。上から電源、ボリューム、サブウーファボリューム、インプットセレクタという構成で、ヘッドフォン端子も付いております。

 まず、なによりヘッドフォン端子もついているのがよろしい。近くに置けばかなり小さな音量でも快適にリスニングできるのだけれども、それでもヘッドフォンを使いたい場合だってあるからね。例えば、音が漏れると大変気まずい映像を再生する時とか(内容についてはご想像にお任せします)。

 え~、話しを元に戻しまして、っと。繰り返しになりますが、入力は2系統を装備。このクラスで入力2系統を備えているのは結構少ないはず。うん、PC周辺機器向けの製品だとは思うけれども、ポータブルCD/MDなどのパーソナル機器に繋いで使用するのにも良さそう。しかもコレ、ミキシングが可能なんですよ、ミキシングが。インプットセレクタはボリューム式。つまり、つまみを調節することで、双方の入力の適用量を調節できるわけ。当初は単なる切り替え使用だと思っていただけに、かなり意外でございました。

 とりあえず、PCとポータブルCDプレーヤーに接続してミキシングを試す。確かに2機器の音が混じってますな。CDプレーヤーの音はかなりクリアに聴こえるのに対して、PCからの音は少々ノイズを感じてしまいます。ぐ……、やはりサウンドカードがヘボだからか……。う~ん、こうなるとPCのサウンドカードもマトモなのを入れたくなりますなぁ。

 が、ミキシングされた音を聞いても正直落ち着きません。約320度回転するボリュームつまみなので、インプットの完全な切り替えにはワンタッチではなく、2回ほどひねり直す必要あり。DJプレイの真似事するにしても心もとないッス。やんないけど。まあ、PCメインに使うことになると思いますので、多分ミキシング機能は使うことはないでしょう。せめて回転する度数を狭めればまだ使いやすいだろうな、と思います。

 で、そのほかの操作性はというと。やはり、手を伸ばせばすぐに届く位置に置けるだけに快適。サテライトスピーカー本体は軽いため、つまみを握るだけでぐらぐらくるけれども、操作にはさほど影響はなし。

 何よりも、サブウーファ出力も調節できるのが便利。低音をサブウーファって、お隣りのご迷惑になる最大の原因ですからなぁ。お隣りさんのいびきに悩むような我が家は、迫力を感じたいときでも遠慮が必要な場合があり、手元で微調整を加えられるのは大変ありがたいのです。「Inspire」のサブウーファボリュームは本体に直付けだったことを思うと大変に便利。デスク上に置く機器だと考えれば、操作性はとても良好だと感じました。


音は満足。売れる製品になることを祈ります

 「リフレクタ式」という言葉に引かれて買ったけれども、音自体はかなり満足。不満点は、低音の切れがよろしくないことと、デスクトップ以外では使いにくいことくらい。

 リフレクタ式の特徴は、なんといっても近くで聞いても音に広がりを感じること。リスニングポイントが近ければ、音量を上げるのがためらわれる場所でも音を低く抑えたままで「結構いい音」が得られます。パーソナルスペースのPC脇やデスク上に最適、これからの季節ならコタツでもいいかも。まあ、サブウーファとの接続が必須なため、ケーブルが目立ってあまりオススメはできない設置ではありすが。

 小さな音量ですむメリットがもうひとつ。ロフトベッド下、などという狭苦しいスペースにPCを置いている自分の環境は、ちょっと音量を上げるだけでベッドの天板だの壁からだのの反射音が気になって仕方ないのです。吸音対策するようなカネもないし、そもそも部屋は賃貸だから改造もできないし、あきらめるしかないな~、と感じていた問題なのですが、この製品ならばこれも解決。

 音圧を抑えることで反射音を(ほぼ)無くすことが出来たことも評価アップのポイント。これなら押し入れで聴いても大丈夫だぜ! いや、そんな奴ぁいねぇと思いますが、それくらいの感覚なんですよ。あ、サブウーファについてはフツーなので、押し入れに入れたらおそらくビビりが入りますね。でも、サテライトだけならばよさげですよ。

 それにしても、もったいない。店頭で聞く限りではちょっと距離を置いただけでサブウーファの音のみが鳴り響き、肝心のリフレクタ式スピーカーの音は紛れまくりなのです。っていうか聴こえねぇ。店頭だとアナウンスだのの雑音が多いッスからねぇ。リフレクタ式のメリットが伝わるかどうか……。

 店頭でのアピール度は当然低くならざるを得ないと想像しますが、ユースさえ間違えなければとてもナイスなスピーカーシステムだと感じました。製品メリットを店頭でアピールできれば売れる製品になると思うのだけれども、う~ん、いい方法が浮かばない……。まさか試聴室に置くような製品でもないしなぁ……。

□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/sd/
□製品情報
http://www.sony.co.jp/sd/products/Consumer/Peripheral/SRS-D313PC/index.html
□関連記事
【9月19日】ソニー、リフレクタ方式のPC用2.1chスピーカー
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010919/sony2.htm

(2001年10月30日)

[fujiwa-y@impress.co.jp]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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