第56回 魁!藤原流アイテム道
 

気になるグッズを衝動買い


【バックナンバーインデックス】


第56回:ノイズキャンセリングイヤフォンの新製品
前モデルからナニが変わったの?「ソニー MDR-NC11」


 AV製品はピンからキリまでいろいろありますが、いわゆるメインストリーム以外にはいろんなおもしろいアイテムがたくさんあります。ここでは思わず衝動買いしたくなるけど、冷静に考えるとどうかな~? と、気になる「モノ」に積極的なアタックを繰り広げていきます。

騒音が気になる方にはこの製品

 ノイズキャンセリングヘッドフォン、いいですね。この連載でもソニー「MDR-NC10」と、松下「RP-HC100」の2製品を扱いましたが、実際に使用してみてその効果に驚きました。製品のコピーは「騒音を1/3に低減」となってましたが、雑踏の放射雑音や、電車の走行音などの低音域はまさにその通り。これまでのヘッドフォンとは違ったリスニング環境が得られて喜んだものです。

 が、両製品とも高周波が気になったり、骨振動が耐えられなかったり、おまけに携帯電話の電波干渉があったりで結局プレゼントにご提供。その後はプラグ型(というか耳に押し込むカナル型)ボディで遮音レベルが比較的高い「KOSS ThePlug」を電車などの騒音が大きい場所で使用しておりました。

 しかし、あまりに遮音度が高いため、話し掛けられても気づかず相手にヘソ曲げられたり、歩いてるときに自転車にぶつけられそうになったりと不便な面もございます。つーか、止まった状態でないと危なくて使えやしねぇ。

 ノイズキャンセリングヘッドフォンであれば、低減するのは主に低音域。話し声などの高音域はそのまま聞こえますし、自動車のエンジン音なども低減されるものの近くまで接近すればちゃんと聞き取れます。う~ん、歩行中の使用を考えるとやっぱノイズキャンセリングヘッドフォンが手元に欲しいよなぁ。

 実はボーズ・エクスポートの扱う「クワイアットコンフォート」なるヘッドフォンが気になってます。製品情報の「HISTORY」を見てみると、「空軍パイロット」や「戦車搭乗員」、「F1ピットクルー」などの騒音環境に向けて開発されたプロ用製品を民生化したモデルらしく、性能にも期待できそう。が、いかんせん直販価格が39,800円とちょっとお高めで、よく利用している大型量販店などでも見かけない。故に手を出しづらい状況が続いております。

 が、最近になって、ソニーから新製品が出た模様。それが「MDR-NC11」であります。


ひさびさのノイズキャンセリング新製品

 この「MDR-NC11」という製品、型番から見てわかるとおり、「MDR-NC10」の後継となるステレオイヤフォン型の製品。最初に確認したのはソニーの直販サイト「ソニースタイル」でした。

 ソニーマーケティングの製品情報を確認してみると、「MDR-NC10」の製品情報には「生産終了」の文字が。ふむふむ、全面的に切り替えられたようですね。

 お値段は標準価格で11,000円。店頭ならば2割引きで8,800円ってトコでしょう。「クワイアットコンフォート」と比較するとかなりお手ごろ価格。まあ、ステレオイヤフォンとしては高額な部類に入りますが、前モデルの「MDR-NC10」を使用していた感想は、この価格でも十分に納得できるレベル。新モデルだから、骨振動の問題や、携帯電話からの電波干渉が直っていればと期待してしまいます。うむ、とりあえずゲットでしょう。

 ということで、ブツの捜索に出撃したのですが、池袋、秋葉原をめぐっても見当たらず。う~ん、やっぱノイズキャンセリングヘッドフォンってマイナーだからなぁ。前回「MDR-NC10」をゲットした秋葉原の大型店にも扱いはナシ。ううむ、もしかしてまだ店頭販売はされてないの?

 これで最後、なければ「ソニースタイル」で注文するかな~、と訪れた新宿の量販店。一番目立つヘッドフォン/イヤフォンコーナーでは製品を確認できず、ここもダメかな、とあきらめかけて別のヘッドフォンコーナーに足を踏み入れたその時。あった! 発見! ブリスターパッケージで山のように陳列されてます。

 実物を見てみると、レシーバ部が前モデルに比べて大幅に小型化されている様子。ボディーカラーもシルバーを基調としたもので、よりスタイリッシュになった感じ。ふむふむ、いいんでないですか? さて、お値段はというと、標準価格からジャスト2割引きの8,800円。当初の想像どおりですな。それでは、いざレジへ参らん。


小型化されたレシーバほか、細かいところでマイナーチェンジ

 マイナー製品ゆえに入手には多少手間取りましたが、ブツは無事ゲット。さて、同梱物を改めるとしますかね。パッケージの内容は本体、単4型電池、キャリングポーチ、ホルダー、S/M/Lサイズのイヤピース×各2個1組という構成。ホルダーはレシーバ部をホールドするもの。イヤピースは耳に押し込む部分で、製品にMサイズがあらかじめ装着されてます。

 ちなみに、ソニーマーケティングの製品情報にある「航空機用プラグアダプタ」は見当たらず。こちらはワールドモデルの情報なので、国内モデルには付いてないってことでしょう。ま、飛行機の騒音はエンジンより前の席ならばそれほど気にならないし(国際線エコノミーだと大抵席選べませんが)、そもそもほとんど旅行しないので自分としては無くてもOK。必須の方はワールドモデルを探してみてください。ただ、マニュアルは英語/フランス語/スペイン語となってますのでご注意を。

 ノイズキャンセリングの動作原理を簡単に説明すると「ノイズと逆位相の音を出して打ち消す」という仕組み。あ、わかりませんか? 一応「MDR-NC10」の記事で説明してますので、ぜひご参照ください。

 逆位相の音で騒音を打ち消す、という原理上、ノイズキャンセリングヘッドフォンにはどうしてもマイクが必要。前モデルの「MDR-NC10」にも巨大なマイクが装備されておりました。対して「MDR-NC11」では、マイク部が大幅に小型化。マイク部はボディと一体化しており、体積は大きいものの、かなり小型になった印象を受けます。

 また、大きな変更点といえばイヤピースが選択可能になったことでしょう。「MDR-NC10」ではイヤピースが比較的大型で、密閉度が高く、それだけで遮音性が得られるメリットもあるものの、骨振動を拾ってしまう、という欠点もございました。

 対して、イヤピースのサイズが選べることで、耳のサイズに合わせた選択ができるほかにも、好みの密閉度を選択できそう。ふむふむ、ユーザーの好みに合わせた選択ができるようにさらに進化したという感じですな。

 逆位相を発生させるには電源が必要なため、コードの途中に電池ボックスを装備しております。コード長は全長約1.5mで、プラグ←→電池ボックス間が約50cm、電池ボックス←→レシーバ間が約1mといったところでしょうか。ちなみに、プラグ形状はステレオミニのL型でした。

 前モデルではプラグ←→電池ボックス間はステレオミニ←→マイクロミニ(ソニー独自規格)形状のコードで接続する仕様になってましたが、今回は直付け。

 コードのみのステレオイヤフォンと比べると取りまわしが面倒なことは確かですが、前モデルをしばらく使用しているうちに慣れました。それよりもノイズキャンセルのメリットの方が大きいので自分的には特に問題ナシ。

 その他の変更点といえば、再生中の音をミュートしてマイクで拾った音を再生する「MONITOR」スイッチが無くなったところ。あれは突然話し掛けられた時に音楽をミュートできてそこそこ便利だったので、ちょっと残念です。

パッケージ。「1/3に低減」のコピーはなくなってました 同梱品一覧。ステレオイヤフォンにしては結構多い 電池ボックス部。「mute」ボタンの位置に電源スイッチが付いた

電池ボックス上部にはボリュームコントローラも装備 レシーバ部とライターとの比較。かなり小型化された印象 参考までに、前モデルのレシーバのライターとの比較


ホワイトノイズは大幅低減! S/M/Lのイヤピースは?

 え~、それでは実際に聞いてみることにしますか。まずは無音状態でのノイズキャンセルの効果をば。ドライバをぐりぐりと耳にねじ込んで、電源ONと。

 最初は会社で試しましたが、電源を入れた瞬間に空調の音が低減。ふむふむ、大雑把に1/3って感じでしょうか? この感覚は前モデルとほぼ同じ。低減される周波数帯は50~1,500Hzと低音域で、話し声などは問題なく聞き取れます。しかし、大きく変わったところが1点だけ。

 それはホワイトノイズか大幅に減ってること。全くなくなったわけではありませんが、よほど静かな環境でないと気にならないですね。前モデルと比較すると、感覚では1/5程度。これだけでも素晴らしい進化です。

 で、もうひとつの大きな変化であるところの、S/M/Lの3サイズから選択可能なイヤピースの効果はといいますと、う~ん、どうなんだろ?

 確かにサイズに合わせて選択できるのは大変便利です。耳への挿入も、合ったサイズを選択すればかなりラク。装着に際しての苦労は大幅に減っていますし、シリコン製のイヤピースはフィット感もなかなか良くて、3時間程度の装着でも疲れません。

 が、ドライバは金属製の長いパイプ状のものから、プラスチック製の比較的短めなものに変更。そのために、前モデルに比べて密閉度が劣り、イヤピースによる遮音効果も結構マイナスされている印象なのです。

 それでいて、シリコン製のイヤピースの素材特性なのか、耳孔への密着度はかなり高く、骨振動もかなり拾います。Sサイズに変更するとかなり骨振動は低減しますが、それでもモノを食べたりすると結構気になるレベル。しかもSサイズだと小さすぎて、歩行中に脱落したこともしばしば。

 ううむ、自分の場合はMサイズが最適ですね。3時間程度連続で装着しても疲れを感じず、フィット感も良好。でもって密閉度もそこそこで遮音効果アリ。ただし、骨振動は結構拾う、と。「ThePlug」のイヤピース素材はおそらくウレタンだと思いますが、伸縮性が高く、耳へのフィット感も良好。イヤピースの素材が良いのか、骨振動もあまり気になりません。ただし、全音域でバッチリ遮音。話しかけられても気づきやしねぇ。一長一短ですなぁ。

 しかし、ノイズキャンセリング効果に関しては問題ありません。感覚としては「MDR-NC10」と全く同じ。雑踏での自動車のエンジン音や、自宅PCのうるさいファンノイズが大幅に低減されて、そのメリットを十分に堪能できます。特に電車での使用が一番メリットを感じますね。

 密閉度が多少低いので、「MDR-NC10」よりは騒音が気になりますが、電源をOFFにした瞬間に騒音が復活する様を体感して実感。それでいて電源をONにしていても話し声は聞き取れる。やはりノイズキャンセルは便利です。

左からS/M/Lのイヤピース。シリコン製で耳への密着度は高い イヤピースを取り除いたドライバ部。金属パイプからプラスチック製に変更


ステレオイヤフォンとしての実力は?

 後は、ステレオイヤフォンとしての実力が気になるところ。ドライバが変更されたので、「MDR-NC10」とはまた違った感覚かと想像します。そういえば、この形状は「MDR-EX70SL」と似ているような。ドライバ直径も9mmと同サイズ。S/M/Lのイヤピースも同梱するなど共通点も多いので、きっと同じドライバをチューニングして使用しているものと想像します。

 さて、肝心の音質はというと、低音の迫力を感じつつも、各音域をフラットに、という感じ。感覚としては丸みのある音で、テクノ系のシャープな音よりも、バラードなどのボーカルの丸みを感じさせるソースが合いそう。だからといって輪郭が削られている訳ではなく、各楽器の音もバッチリ聞き取れます。インナーイヤフォンとしては結構レベルが高いかと。購入価格は8,800円。ノイズキャンセリング機能を加味してのコストパフォーマンスは十分満足できます。

 ただ、低音は迫力があるものの、ちょっと切れが悪い感じ。バリバリ低音を鳴らすようなソースを聞いているとブーミーな響きをたまに感じます。ん~、まあ、迫力重視の方ならば……。

 電源ON/OFF時の違いは、電源ON時に多少音量が上がる程度。インピーダンスは電源ON時が20Ω、電源OFF時が8Ω。抵抗値が上がってるのに音量が上なのは謎ですが、聴感上はそう感じました。で、音質の違いはそれほど感じませんね。強いて違いを挙げるとすれば、電源ON時の方が音がまろやかです。自分の好みで選ぶとしたら電源ONの方ですね。

クリップ部。ワニ型形状でグリップ力も問題ナシ

 電池ボックスがついているため、取り回しは多少厄介ではありますが、電池ボックス←→レシーバ間のコード長が約1mと長いため、上着のポケットに電池ボックスを収納して、プラグはカバンの中のCDプレーヤーに、という使い方で問題ナシ。Tシャツで活動する夏場でも、パンツの前ポケットにクリップしておけばなんとかなりそう。クリップはワニ型で、グリップ力もそこそこ。パンツの前ポケットでも行けると思います。

 それよりも評価したいのは、ホワイトノイズが低減されていることですな。小編成オーケストラや一部のテクノ系で気になっていたホワイトノイズの帯域と重なる音も、ここまで低減されていれば演奏に紛れてしまって全く問題ありません。つーか、ある程度以上の音量にすればホワイトノイズは全く聞き取れないっすわ。以上、総合しますと、これまで試したノイズキャンセリング製品の中で最高の音が楽しめたと結論いたします。


ノイズキャンセルイヤフォンに興味のある方に

 さて、前モデルで気になっていた残る問題といえば、携帯電話との電波干渉問題。が、しかし。問題は解消されておりませんでした。というか、マニュアルには「携帯電話の影響により、ノイズが入ることがあります」との記述があります。ま、マニュアルに記述されただけ一歩前進、ということでしょうか。

 自分の場合は地下鉄通勤での使用がメインで、歩行中にも携帯電話による干渉を受けたことはめったにありませんが、突然「ブツ」という干渉音を聴かされるとかなり不快。こればかりは仕方ないんですかねぇ。

 しかし、ノイズキャンセルの効果は確か。音質も満足できるレベルで、骨振動の問題も軽減されている。所々で満足できないところも残りますが、ノイズキャンセリングのメリットと使い勝手、そして音質を加味してみますと、これまで扱った3製品の中では、この「MDR-NC11」が一番ですね。

 前モデルの「MDR-NC10」は販売終了になっているため、イヤフォンタイプのノイズキャンセリング製品の選択肢はコイツしかありませんが、このタイプの製品を求める方のほとんどが満足できる製品になってると思います。

 あ~、ノイズキャンセリングヘッドフォン、やっぱいいわ。あとはボーズの「クワイアットコンフォート」が気になりますなぁ。ついでに「空軍パイロット」仕様がどれだけ騒音をカットできるかも試してみたいところ。ま、無理だけど。

□ソニーのホームページ
http://www.sony.jp/
□製品情報
http://www.sony.jp/products/Models/Library/MDR-NC11_JE.html
□関連記事
【魁】【2001年6月5日】第16回:街にあふれるノイズをカットする科学の耳栓!?
ノイズキャンセリングイヤホン「ソニー MDR-NC10」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010605/saki16.htm

(2002年4月2日)

[fujiwa-y@impress.co.jp]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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