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第2回:低価格プロジェクタ4機種を試す
~ その2 SONY「VPL-HS1」(Cineza)編 ~

今週は連載開始スペシャルウィークとして、30万円以下の低価格プロジェクタ4機種のレビューを1機種ずつ掲載します。

2機種目はソニー株式会社のVPL-HS1(Cineza:シネザ)です。

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VPL-HS1(Cineza)

 ホームシアタープロジェクタファンにはVPL-VW11HTシリーズでおなじみのソニーが発売した低価格モデル。斜め投射という他機種にない特徴を備え、価格も実売で28万円前後と低価格に設定。専用スタンドや入出力ユニット「IFU-HS1」をセットにした「VPL-HS1 FP」も発売中。


■ 設置性チェック~斜め横からの投影に対応

斜め投射と本体下のチルトスタンドで設置の自由度は高い

 紺と紫がかったシルバーとのツートンカラーはVAIOを連想させる。重さは3.9kg。決して軽くはないが、持って移動できないほどではない。

 本体は、パソコンのディスプレイのようなチルトスタンドに備え付けられているのが特徴的。チルトスタンドは上下10度、左右20度までの方向転換が可能。ほんのわずかだが投影映像に対し約2度の範囲で回転調整も行なえる。チルトスタンドは希望の角度になったところで、固定レバーを押してロックすることが可能。また、このチルトスタンドは脱着が可能だ。

 対応投影方式は、フロントからの台置きのみ。天吊り設置やリア投影には対応していない。

 投影映像はレンズのある位置から上方向に広がって投影される。つまり、スクリーンの最下部の高さにVPL-HS1を設置するのが理想形ということになる。後述の台形補正機能を用いないで、最良のコンディションで投影するためにはある程度の高さに設置する必要があるということだ。

 VPL-HS1には、TH-AE100のような三脚設置用の穴はあいていないが、その代わり専用オプションのスタンドが用意されている。ちなみにVPL-HS1は、この専用スタンドと、後述するシグナルインターフェイスユニットを1パッケージにした「VPL-HS1 FP」というセットもラインナップされている。VPL-HS1本体のみとの実売価格差は2万円程度なので、常設を前提としているならば「FP」の方がお買い得だ。

ズームとフォーカスの調整は映像を見ながらレンズ外枠のリングを回転させて行なう 一部を除き、本体に備え付けられたボタンだけで、リモコンとほぼ等々の操作ができる コンポーネントビデオ端子、PC入力端子くらいは本体側に標準装備してもよかったのではないかと思う

 台形補正機能は垂直方向、水平方向のどちらか一方を排他的に利用できる仕組みになっている。VPL-HS1を低い位置に置いて上向き投影した場合には垂直方向の台形補正を利用することになり、スクリーンに対して斜め横から投影する場合は水平方向の台形補正機能を利用することになる。台形補正機能は1方向限定なので「斜め方向から上向きへ投影」といったケースには対応できない。

 また、VPL-HS1の台形補正機能はデジタル画像処理として行なわれるため、その表示映像は、入力映像に対して一部情報欠落が起こることになる。この点はあらかじめ理解しておいたほうがいい。

 光学ズームレンズの搭載により、最大1.3倍までの拡大投影が可能となっている。最大ズーム時の、100インチ(4:3)の最短投射距離は約4.2m。プロジェクタとしては標準的だが、今回取りあげた4機種の中ではもっとも長い距離を必要とする。

 ファンの音の大きさはプレイステーション 2よりも小さいくらい。実用上、気になることは殆ど無いはず。


■ 操作性、接続性チェック~コンポーネントビデオ端子、PC入力端子はオプション扱い

リモコンの各ボタンは自発光式。同社のVW-11HTと同じデザインだ

 電源オンから映像が表示されるまでの待ち時間は約15秒と、なかなかの速さ。

 リモコンのボタンは自発光式。本体左側側面に取り付けられたボタンを押すことで、全てのボタンが点灯する。暗闇の中での操作も迷うことなく行なえる。

 映像ソースの入力切り替えは、ボタンを押すたびの順送り方式。

 SIDE SHOTの[+][-]ボタンは台形補正用の調整ボタン。補正方向が「垂直」になっているときに押すと、台形補正方向が「水平」に強制的に切り替わり、水平方向の台形補正モードになる。それほど頻繁に行なうとは思えない水平方向限定の台形補正用のボタンを独立ボタンとして設けているのがちょっとナゾだ。それならば入力切り換えボタンをソース別に独立ボタンで設けて欲しかった。

 本体側の接続入力端子は、コンポジットビデオ端子、S端子、ステレオ音声端子、そしてマルチ入力端子となっている。

 ステレオ音声端子に入力された音声は本体内蔵ステレオスピーカーで再生されるが、これはいわゆる簡易スピーカーなので実際に常用することはないだろう。

備え付けの付属ケーブルはなんと10mの長さがある。テレビとプロジェクタが離れていても大丈夫ということらしいが

 マルチ入力端子は専用オプションのシグナル・インターフェイス・ユニット「IFU-HS1」や、専用接続ケーブルを接続するための端子。

 VPL-HS1本体だけでは、コンポジットビデオ端子とSビデオ端子しか利用できないので、それ以外に、パソコンを接続したり、DVDプレーヤーやBSデジタルチューナなどとコンポーネントビデオ端子で接続したい……といった場合には、マルチ入力端子を利用することになる。

 IFU-HS1は、VPL-HS1にコンポーネントビデオ入力端子を増設し、さらに単体としてビデオセレクター的な機能を果たす。各系統に入力端子と出力端子を備え、出力端子をテレビに接続しておけば、IFU-HS1側のフロントパネル操作で入力映像をVPL-HS1へ出力するか、テレビへ出力するかが選択できるようになる。各種映像ソースをテレビで見るか、VPL-HS1で見るかを臨機応変に切り換えられるのだ。

 IFU-HS1に不満点を上げるとすればPC入力(アナログRGB)端子が備わっていない点だ。PCの映像を出すためには別売りのPC接続ケーブル「SIC-HS30」が必要になる。

 SIC-HS30の接続にはマルチ入力端子を利用しなければならないので、結果的にVPL-HS1はコンポーネントビデオ端子とPC入力端子をマルチ入力端子の抜き差し無しには切り替えできない。

 VPL-HS1本体にはコンポジットビデオ端子、S端子が備わっているので、IFU-HS1はビデオ入力端子の系統数を多く実装するよりも、むしろPC入力端子を実装したほうがよかったと思う。

 また、VPL-HS1にコンポーネントビデオ端子経由で接続したいだけであれば、IFU-HS1ではなくコンポーネント/コンポジット/S端子マルチケーブル「SIC-HS40」を利用するという手もある。VPL-HS1の関連製品についてはこちらを参照して欲しい。


■ 画質チェック~特徴的な画素形状が独特な画作りの映像を出してくる

写真ではわかりにくいかも知れないがホームベース型に近い画素形状

 光出力性能値は未公開だが、今回評価した競合機のうち、TH-AE100と同程度の明るさだったので700ANSIルーメン程度だと思われる。

 液晶パネル解像度は800×600ドット。このクラスとしては標準的なスペックだ。特徴的なのは各画素の形状で、正方形ではなくホームベースのような5角形にちかいものになっている。そのためか100インチ近い大きさで拡大表示した場合には一種独特の粒状感が漂う。

 色調モードは、プリセットとして用意されているダイナミック、スタンダード、リビングの3つの色調セットの他、ユーザーが調整した色調パラメータセットをUSER1、2、3に記録させることができる。こだわりユーザーには嬉しい機能だ。

 VPL-HS1のリモコンには、VIDEO MEMORYボタンという、色調モードをワンタッチで切り換えられるボタンがある。このボタンには上記3つのプリセット色調セットと、USER1、2、3の3つのユーザー色調セットが割り当てられており、それぞれを直接呼び出せる。

 3つのプリセット色調モードを用いて、いくつかの映像ソースを見てみた感想を簡単に述べておこう。

 「リビング」モードは、暗部の階調を正しく表示させるためにコントラストを維持したまま全体時にトーンが落ちる。いわゆるシネマモード的なもので、映画ソースを視聴する際に適したモードだ。

 「ダイナミック」モードはブライトネスが上がり、輝度が全体的にブースト気味になる。よって、やや暗部の階調が死に気味になる。色温度もリビングよりは高くなるが青みがかるほどではない。

 そして「スタンダード」は上記2つの中間的なモードとなる。普段はスタンダードにしておけば問題ないだろう。

画質設定。プリセットの色調セットを呼び出すと、画質調整パラメータが書き変わる 台形補正は一度に行なえるのは垂直方向、水平方向、いずれかのうち一方向。右は信号設定。レンズシフトの設定はここで行なう

 実際にVPL-HS1の映像を見て気になったのは、リビングモードにしても暗部の階調が十分出切っていない点だった。また、微妙な色のグラデーション表現のところでマッハバンドがうっすらと見えることもあり、スポーツ中継やバラエティ番組ならばともかく、映像鑑賞にはちょっと辛いかもしれない。

 また、今回、プログレッシブ出力対応のDVDプレーヤーを用い、プログレッシブ化した映像と、インタレースそのままの映像のそれぞれをVPL-HS1に入れて見比べてみたところ、その表示品質にかなりの違いが現れた。

 プログレッシブ化された映像はそれなりに美しく出力されるのだが、インタレースのままの映像はコム(櫛状)ノイズが見え隠れする。VPL-HS1のプログレッシブ化ロジックはあまり性能の高いものではなさそうだ。よってVPL-HS1とDVDプレーヤーを組み合わせるときはプログレッシブ出力対応プレーヤーと組み合わせた方がいい。

 これと同様の理由からだろう、ハイビジョン映像の720p、1080i等の映像を入れたときも同様のコムノイズが見え隠れする。ハイビジョン映像の表示は簡易表示というくらいに捉えておいた方がいいもしれない。

 今回はPCとの接続ケーブル「SIC-HS30」の調達が間に合わなかったのでPCの映像の画質チェックは行えなかった。なお、解像度的には1,024×768ドットの圧縮表示にまでは対応しているとのことだ。

 最後に、プレイステーション 2と接続してゲームをプレイしてみたが、残像等は一切無し。動きの速いゲームでも違和感なくプレイすることができた。

【DVDビデオ『ダイナソー』での投影画像】
 コンポーネント接続の投影画像をデジタルカメラ「COOLPIX995」で撮影した。ソースはDVDビデオの「ダイナソー」(国内版)。
 COOLPIX995の設定はオートで、撮影後に1,024×539ドットにリサイズし、下に掲載している部分画像を切り出した。部分画像をクリックすると全体(640×337ドット)を表示する。

(c)Disney Enterprises,Inc.

コンポーネント接続
視聴機材
 ・スクリーン:オーロラ「VCE-100」
 ・DVDプレーヤー:パイオニア「DV-S747A
 ・コンポーネントケーブル:カナレ「3VS05-5C-RCAP-SB」(5m)


■ その他の特徴

投射距離と画面サイズ(16:9)
※上下、および斜め補正機能を使わず、ズーム最短の状態
 VPL-HS1にはソニー製らしいユニークな特殊機能が備わっている。

 VPL-HS1の前面にはメモリースティックスロットが実装されており、JPG画像ファイルが記録されたメモリースティックを挿入することで、その画像を直接投影することができる。

 PCとの接続は不要で、VPL-HS1単体でデジカメ等の写真をみんなで大画面で楽しむことが出来るわけだ。90度回転処理させての表示も行なえるので、カメラを縦にして撮った写真も正しく表示される。

 VPL-HS1はホームシアター向けのプロジェクタではあるが、この機能はプレゼン用途にも使えるだろう。

【VPL-HS1の主な仕様】
液晶パネル0.7型800×600ドット
レンズ光学1.3倍ズーム
光源120W UHPランプ
投影サイズ40~150インチ
対応走査周波数水平19~72kHz、垂直48~92Hz
対応ビデオ信号480i/480p/1080i/720p
映像入力コンポジット、S映像(各1)
コンポーネント(RCA)、S映像、コンポジット、アナログRGB(各1、IFU-HS1接続時)
消費電力190W
外形寸法340×300×154mm(幅×奥行き×高さ、レンズ、セット脚含む)
重量約3.9kg

□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□製品情報
http://www.sony.jp/products/Consumer/Peripheral/Projector/VPL-HS1/
□関連記事
【2001年8月1日】ソニー、斜め投射が可能なホームシアター用液晶プロジェクタ
―ハイビジョン対応、メモリースティックスロットも装備
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010801/sony.htm

(トライゼット西川善司)

(2002年5月14日)


= 西川善司 =  ビクターの反射型液晶プロジェクタDLA-G10(1,000ANSIルーメン、1,365×1,024リアル)を中核にした10スピーカー、100インチシステムを4年前に構築。迫力の映像とサウンドに本人はご満悦のようだが、残された借金もサラウンド級(!?)らしい。
 本誌では1月の2002 International CESをレポート。山のような米国盤DVDとともに帰国した。僚誌「GAME Watch」でもPCゲームや海外イベントを中心にレポートしている。

[Reported by トライゼット西川善司]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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