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第55回:EDIROLブランドのDTM製品群を一挙に発表

~ 後編:MIDI&オーディオシーケンスソフトなど6製品 ~


 5月16日に発表されたRolandのEDIROLブランド新製品。11種類中の6種類を5月20日に紹介したが、今回は残り5製品について紹介していこう。今回紹介するのはDTMパッケージであるミュージ郎ネットスタジオ、MIDI&オーディオシーケンスソフトであるSONARシリーズ2製品、ソフトウェア・シンセサイザの「Orchestral」とデジタル・ステレオ・マイクロ・モニタの「MA-5D」。

 ソフトについてはβ版をお借りして軽く使わせてもらったが、まだβ版ということもあり、今回は概要的な紹介にとどめる。正式版を入手できたところで、詳細をレポートする予定だ。

製品 型番 価格 発売時期
USBオーディオ・インターフェイス UA-700 50,000円前後 6月
USBオーディオ/MIDIインターフェイス UA-20 20,000円前後 7月
USB MIDIインターフェイス&パッチャー UM-550 20,000円台半ば 4月末
MIDIサウンドモジュール SD-80 70,000円台前半 5月末
DTMパッケージ 「SD-80 Home Studio Edition」
(SD-80HS)
80,000円前後 6月
「SD-90 Home Studio Edition」
(SD-90HS)
90,000円前後
ミュージ郎ネットスタジオ
(MR-NS20W)
30,000円台半ば
MIDI&オーディオシーケンスソフト SONAR 2.0 日本語版
(CW-SN2)
58,000円※
SONAR 2.0 XL 日本語版
(CW-SN2XL)
78,000円※
ソフトウェア・シンセサイザ Orchestral(HQ-OR) 40,000円※
デジタル・ステレオ・マイクロ・モニタ MA-5D 10,000円前後 5月末
※印はメーカー希望小売価格。そのほかは店頭予想価格


■ ミュージ郎ネットスタジオ

ミュージック・クリエーター(ネットスタジオ対応版) ミュージ郎ネットスタジオに同梱されるMIDI音源モジュールSD-20
 続々と新製品を投入し、話題が集まるEDIROL製品だが、最近の傾向はハイエンドユーザーよりであるとの指摘もある。そんな中、久々に完全なローエンドユーザー向けのエントリー製品として投入したのが、このミュージ郎ネットスタジオだ。

 最初このネーミングを聞いたとき、Steinbergの「CubaseVST」や、Emagicの「LogicAudio」をネットワーク化し、バーチャルセッションを実現させるASTRO SESSIONの対抗版をEDIROLが投入したのかと思ったが、それは大きな勘違いで、初めてのDTMユーザーのための製品であった。

 パッケージ内容は、「SD-20」という新音源に、ソフトウェアとしてはSONARのもっともローエンド版であるCakewalk Music Creatorのネットスタジオ版というものを組み合わせたもの。店頭価格が3万円台半ばとのこと。このSD-20は、現在のところ単品売りはされていないのだが、スペック的には32パート64ボイスでGM2/GS/XGliteに対応し、660音色、22ドラムキットを搭載する。

 SC-8820の後継音源と考えてもよさそうなものだが、音のクォリティーはかなり上がっているようだ。PCとのインターフェイスは、MIDIのほかにUSBとシリアルを備え、音声出力にはアナログのRCAとともに、S/PDIFオプティカルも装備している。USB接続時にはバスパワード方式として動作する。

 では、どこがネットスタジオなのかというと、専用のサイトが用意されていて、ここに曲データやレッスン・カリキュラム、Q&A、質問コーナー、用語説明などのコンテンツが置かれているところ。つまり、ネットを通じてエントリーユーザーをフォローしていく。

 例えば、「キットでらくらく曲づくり」というコンテンツは、組み立てキット感覚で曲作りが進められるレッスンキット。ここに楽譜や伴奏用フレーズデータ、手順書などがセットとして置かれている。これらのうちのいくつかのコンテンツは有料で、専用サイトは本サービススタートに向けてカウントダウンに入っている。

□製品情報
http://www.roland.co.jp/products/dtm/NetStudio.html


■ SONAR 2.0 日本語版

見た目はあまり変わらないが、機能的に大きく向上したSONAR 2.0 日本語版
 昨年登場したCakewalkのMIDI&オーディオシーケンスソフトSONARが、1.xから2.0へとメジャーバージョンアップした。

 CubaseVSTやLogicAudioが大きなシェアを持つ中、SONARはミドルエンドユーザーからハイエンドユーザーを狙いシェアを伸ばしてきており、いわゆるDTMユーザーだけでなく、音楽業界の中でも少しずつ知名度を上げてきてる。単なるシーケンスソフトであることに留まらず、ACIDのようなループシーケンサとして手軽に使える点も、大いに受けている理由である。

 SONARの面白いところは、Cakewalkシリーズで培ってきた完全なWindowsベースの技術に立脚している点。ASIO & VSTというテクノロジーで責めてくるSteinbergに対し、WDM & DirectXという技術で対抗している格好だ。

 SONARで登場したDirectXを拡張して作ったプラグインのソフトシンセ規格、DXiも着実にライブラリを増やしてきており、ソフトシンセメーカーとして著名なNativeInstruments製品も、その多くがDXiに対応している。

ラックタイプのギターアンプシステムReValver SE。DXiにも対応している
 そんな中登場した今回のSONAR 2.0は、パッと見た目はSONAR 1.xとまったくといっていいほど変わらない。が1.xという初期バージョンであったために、不満を感じていた部分が修正され、グッと使いやすくなったのが2.0という感じである。

 その最大のポイントはやはりソフトシンセ関連。DXiの規格そのものがDXi2となったのだが、VSTで実現していたマルチアウトやオートメーションに対応している。これにより、1つのシンセでパートごとに別々のエフェクトをかけたり、複数デバイスへのオーディオ出力も可能になった。

 また、ReWire2.0に対応したのも大きなポイント。ReWireというのはSteinbergとPropellerheadが作ったソフト同士を内部的に接続し、オーディオ信号やMIDI信号、トランスポート情報などをやり取り可能にした規格である。たとえばPropellerheadのREASONというソフトとSONAR2.0を連携させることによって、SONARからREASONを完全同期させたりコントロールすることが可能になる。

 なお、同梱のソフトシンセがDXi2に対応しただけでなく、その一部が入れ替わっている。具体的にはApplied Acoustics SystemsのTassman SEが消え、Cakewalk Cyclone、Alien Connections ReValver SEが加わった。この辺のついてはまだチェックしきれていないので、改めて紹介していきたい。

□製品情報
http://www.roland.co.jp/products/dtm/Sonar2.html


■ SONAR 2.0 XL 日本語版

Sonix TimeworksのEQ FxpansionのDR-008 DXi
 SONAR 2.0 XL日本語版は、上記SONAR 2.0に、2つのプラグインエフェクトと1つのソフトシンセを追加した製品。

 具体的には、エフェクトのSonix TimeworksのEQとCompressor X、ソフトシンセのFxpansionのDR-008 DXiだ。

 EQおよびCompressor Xはその名前の通り、イコライザとコンプレッサ。EQは64bit対応のもので、30バンドのスペクトラムアナライザを装備。コンプレッサも64bit処理をするもので、プロユーザーにも定評があるもの。各チャンネルで利用するというよりも、マスタリング用として使うものと考えてもいいだろう。

 一方のDR-008はRolandのビンテージドラムマシンであるTR-808やTR-909をイメージしたもので、アナログモデリング技術を採用したパワフルなDXi2対応ドラムシンセ。32bitでサンプリングされた音は、差し替えも可能なようだ。これらについては、発表会場でデモを見せてもらったが、手元ではまだ試していない。ぜひ改めてチェックしてみたい。

□製品情報
http://www.roland.co.jp/products/dtm/Sonar2.html


■ Orchestral

16パート最大同時発音数128音のOrchestral
 昨年登場したEDIROLのハイクオリティ・ソフトウェア・シンセサイザ・シリーズ、通称HQソフトシンセの第3弾に当たる製品がこれ。

 名前からも想像できるとおり、オーケストラ用のサウンドを集めたソフトシンセとなっている。プラットフォーム的にはWindowsのDXi2対応(マルチアウト対応)と、VST2.0、MacintoshのVST2.0に対応したハイブリッド製品であるが、音質的にもかなりのもの。手元にあるβ版をインストールしたところ、ウェーブテーブルデータと思われるデータファイルだけで132MBもあるという贅沢なもの。

 スペック的にいえば16パート、最大同時発音数128音というもので、弦楽器、管楽器、打楽器、鍵盤楽器が収録されている。もちろん、ハイクオリティ・ソフトウェア・シンセサイザというだけに内部32bit浮動小数点演算精度を持ち、24bit/96kHzの高サンプリング・レートでの出力にも対応。また処理速度を高速化するため、SSE命令、エンハンスト3DNow!テクノロジ、Motorola AltiVecテクノロジに対応している。

各楽器の定位を視覚的に決められるオーケストラ・スタイル
 各種音色のエディット用パラメータがあるのはもちろん、オーケストラ・スタイルという名称の、視覚的に各音源の定位を決められるエディタが用意されているのもユニークなところ。クラシック曲ように使うのもいいが、コンテンポラリ系の曲で利用するのも良さそうな音源である。

□製品情報
http://www.roland.co.jp/products/dtm/HQ-OR.html


■ MA-5D

MA-5D
 最後に紹介するのは青色の小型モニタースピーカー「MA-5D」。これはすでに発売されているアナログのモニタースピーカーである「MA-5A」のデジタル端子装備版。去年発売されてヒット製品となっている「MA-10D」の小型版ともいえる製品である。

 出力は5W+5Wで、7cmのフルレンジ・スピーカーを採用。再生周波数帯域は70Hz~20kHzと、スピーカーが小さいだけに低音は出ないが、非常にクリアなサウンドではある。最大の特徴はフロントパネルにS/PDIFオプティカルの入力端子を装備していること。PCのサウンドカードなどとデジタルで接続すると、従来のこの価格帯のスピーカーとはまったく違う次元のクリアなサウンドを出力することが可能だ。

□製品情報
http://www.roland.co.jp/products/dtm/MA-5D.html


 以上で、前回と合わせて11の新製品の概要をお伝えした。まだ、詳細までは調べ切れていない部分もあるので、とくにSONARなどについては、追ってレポートする予定である。


□ROLANDのホームページ
http://www.roland.co.jp/
□関連記事
【5月20日】【DAL】第54回:EDIROLブランドの製品群が一挙に発表
~ 前編:USBオーディオインターフェイスなど6製品 ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020520/dal54.htm
【2001年9月10日】【DAL】第26回:Rolandが発表したDTM新製品群の実力
~ EDIROLブランドで本格展開を開始 ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010910/dal26.htm

(2002年5月22日)

[Text by 藤本健]


= 藤本健 = ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase VST for Windows」、「サウンドブラスターLive!音楽的活用マニュアル」(いずれもリットーミュージック)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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