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ハイビジョン出力が可能なハードウェアデコーダカード
バーテックスリンク
「REALmagic XCARD」
発売時期/5月24日 価格/オープンプライス(実売価格19,000円前後)

■ 主な機能

 バーテックスリンクの「REALmagic XCARD」は、DVDビデオなどのMPEG-2ソースのほか、MPEG-4やDivXの再生にも対応する用途範囲の広いハードウェアデコーダPCIカード。米国では4月に発売され、日本でも5月24日から出荷を開始している。

 デコードできる形式は幅広く、DVDビデオ、MPEG-2、MPEG-1、ビデオCDに加え、SVCD、ISO準拠のMPEG-4、Version 4.02以上のDivXに対応している(ただし、WindowsMediaには非対応)。さらに、この手の製品としては珍しく、RCAプラグによるコンポーネント出力も行なえる。

 しかもコンポーネント出力時にはインターレース(480i)だけでなく、480p、1080i、720pでも出力でき、480iや480pソースを1080i/720p化して出力する機能もある。ただし、DVDビデオなどマクロビジョンのかかっているソースは、1080i/720pへの変換表示は行なえない。

 テレビへの接続は専用ビデオ出力端子を経由して行なう。端子の形状はDINタイプなので、S映像以外のすべてのビデオ出力は、同梱の変換ケーブルを介して出力することになる。

カードのサイズは比較的小さいが、ロープロファイルには対応していない。中央の1番大きなチップがXCARDの心臓部となる「EM8475」 入出力端子。左から、アナログ音声出力、デジタル音声出力、専用ビデオ出力、アナログRGB出力、アナログRGB入力
リモコンも付属する。PCとはRS-232C経由で接続。リモコンの入った別箱が本体パッケージに同梱されていた 専用ビデオ出力につなぐための変換用のコンポーネントケーブルが付属する

 パッケージには、「Xmedaプレーヤー」というXCARD専用の再生ソフトが付属している。このソフトで再生した映像が、XCARDのビデオ出力を通ってテレビに表示される仕組みだ。再生、一時停止、チャプタ―スキップ、プレイリストの作成といった一通りの機能を持っている。

 ごく一般的なプレーヤーソフトなので、早送りや一時停止などの操作にとまどうことはないだろう。ただし、再生開始までの手順が少し分かりづらい。というのも、通常この手のソフトは「ファイルモード」あるいは「ドライブモード」という具合に、メディアにあわせた再生モードを設定しなければならない。しかし、Xmediaプレーヤーにはそういったボタンがなく、ファイルモードやドライブモードへの設定は、再生ボタンを右クリックするとでてくるコンテキストメニューで行なう。

 ハイビジョン出力などの設定もXmediaプレーヤーから行なう。HDTVという項目があり、このプルダウンメニューから「480i」、「720p」、「1080i」が選択できる。また、画質調整として「明るさ」、「コントラスト」、「彩度」の3項目を調整できる。テレビ側でも設定できるとはいえ、ある程度細かい調整が出力側で可能なのはうれしい。

DVDビデオなどの操作を行なう「Xmediaプレーヤー」。ここで再生したものがXCARDを経由してテレビなどに表示される。
映像関連メニューの設定画面。左から、DVD設定、ビデオ設定、ビデオ調整。ビデオ設定の「HDTV」にはプルダウンがあり、出力を「480p」、「720p」、「1080i」の3種類から選択できる


■ 操作性と画質

 Xmediaプレーヤーがあるとはいえ、テレビに映した場合の操作は付属のリモコンを使用することになるだろう。リモコンとPCはシリアルで接続する。テンキーを備えたタイプで、赤色の「電源Onボタン」を押すと、Xmediaプレーヤーが起動する。

 リモコンの反応は悪くない。Celeron 667MHz、メモリ256MB、Windows 2000のマシンで試したが、特に問題になるところはなく、家電感覚で使用できた。ただし、カーソルキーは大きいものの、再生、停止、早送り、チャプタ―スキップなどの良く使うボタンが小さい上、大きさもすべて同じ。さらに、コマ送りボタンもないため「再生画面を少しだけ戻してすぐ止めたい」といった場合に限って、操作性がいまひとつという印象を受けた。

 画質については、DVDビデオを中心に視聴してみた。ディスプレイには三菱電機の28W-HR1を使用し、XCARDとディスプレイはコンポーネントケーブル→D端子でつないだ。PCは上記のCeleron 667MHzのマシンを使っている。

 DVDビデオの場合、出力モードとして「NTSC」(480i)と「HDTV(480p)」が選べる。DVDビデオにマクロビジョンがかかっていない場合は「HDTV(1080i)」や「HDTV(720p)」で出力できる場合もある。

 「NTSC」での画質は予想以上に階調が豊かで、不自然さも少ない。また、さすがにコンポーネント接続だけあって、輪郭もすっきりしていフィルムソース、ビデオソースとも、フレームの動きに目だったおかしさはなかった。

 ただし、移動の早いシーンの場合は、多少のギクシャク感を覚えた。また、暗部ノイズが目立ったり、斜め方向の輪郭線にきついジャギーがでる。専用DVDプレーヤーに比べると、まだまだその辺りの押さえ込みが足らないようだ。

 特に、暗部階調はいまひとつで、どのモードでも専用DVDプレーヤーのレベルには達していない。ビクターの「XV-D721」と比較してみたが、XCARDもそれなりに描写してはいるものの、D721に切り換えると、場面の情報量は格段にアップした。さらに、霧中や積雪のシーンだと、擬似輪郭、ノイズの点でかなり見劣りする結果となった。色表現についても、彩度が高いと若干濁り気味になるケースも見られた。

 なお、「NTSC」と「HDTV(480p)」とでは、はっきり違う表現になった。「HDTV(480p)」時にはちらつきが少なくなり、輪郭が締まった表示になる。一方、「HDTV(1080i)」では輪郭が滑らかになるなど、確かにハイビジョン化の効果が感じられ、クローズアップなどではかなりの高精細感が得られた。ただし、動きの早いシーンでは、ちらつきがひどくなるため、多少見づらい。また、階調もつぶれがちだ。

【DVDプレーヤーとの比較】

 XCARD、DVDビデオプレーヤーそれぞれで、DVDビデオ「トイストーリー」の一場面をデジタルカメラで撮影した。使用したDVDプレーヤーは、ビクターのXV-D721。ディスプレイには三菱電機の28W-HR1を用いた。

 XCARDの画質設定は、明るさ525、コントラスト521、彩度521。XV-D721の画質は、プリセットの1つ、「シネマ」にした。なお、デジタルカメラにはCOOLPIX995を使用している。

(c)Disney Enterprises,Inc.

【REALmagic XCARD】
NTSC(480i)
HDTV(480p)
【XV-D721】
480i
480p

【各モードの画質】

 1080i出力を含めたXCARDの各モードを比較するため、MPEG-2データの一時停止画面をデジタルカメラで撮影した。

 素材には、カノープスの動画素材集「CREATIVECAST Professional」をDVテープに書き出したものを使用。DVデッキで再生し、テレビキャプチャカード「MTV-2000」のRF入力からキャプチャ。それをXCARDで再生した。ディスプレイは三菱電機の28W-HR1を使用している。

 なお、元ソースのアスペクト比は4:3だが、28W-HR1はD1以上(480p、1080i)を16:9でしか表示できないため、NTSC(480i)を含むすべてのモードを16:9に引き伸ばして表示した。

NTSC(480i)
HDTV(480p)
HDTV(1080i)
(c)CREATIVECAST Professional

 DVDビデオ以外のソースとして、720×480ドット、185.2kbpsのDivXを視聴したが、29型のテレビ画面だとさすがにブロックノイズが目だった。とはいえ、DivXを常用している人にとっては利用価値の高いカードとなるだろう。

 また、上記のDivXを1080i化して表示してみると、ブロックノイズそのものはなくならないものの、精細感が若干増した印象を受けた。ソース自体に良いものを用意すれば、かなりの高画質が得られそうだ。

 なお、今回試したDivXファイルは、AVIファイルをTMPGEnc Ver.2.54から、コーデックにはDivX Codec 5.0.2 Build 481を使用してエンコードした。


■ まとめ

 コンポーネントを出力できるPCIカードとしては、カノープスの「VideoGate 1000」やアイ・オー・データの「TVC-D3/AGP2」が出回っている。しかし、これらは純粋なビデオ出力カードで、MPEG-2デコード機能が別途必要になる。また、VideoGate 1000は480i出力までしか対応せず、480p、1080i、720pといったD2以上の出力は行なえない。そういう意味では、デコードチップを搭載したXCARDは貴重な存在といえる。

 DVDのプログレッシブ再生をPCで考えている人や、撮り貯めた映像をMPEG-4やDivXで管理している人にとって、XCARDはかなり魅力的な製品に映るだろう。また、コンポーネント接続の効果もあってか、この種の製品としては画質も良い。惜しいのはWindowsMediaに対応していないことぐらいだろう。

 ただしコンポーネント接続とはいえ、HTPCの出力用としては少々力不足だ。XCARDの再生能力は、1世代前のプログレッシブDVDプレーヤーに及ばない。とはいえ、気軽に「テレビに表示して楽しむ」といった目的で選ぶなら、完成度の高いパッケージといえる。

□バーテックスのホームページ
http://www.vertexlink.co.jp/
□イチオシドットコムのホームページ
http://vl104.com/ver2/
□ニュースリリース
http://www.vertexlink.co.jp/press2002051501.html
□関連記事
【5月15日】バーテックス、DVDビデオ/MPEG-4/DivX対応デコーダPCIカード
―リモコン付属、ハイビジョン出力にも対応
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020515/vertex.htm
【2月7日】米Sigma Designs、世界初のPC用MPEG-4ハードウェアデコーダカード
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020207/sigma.htm

(2002年5月30日)

[orimoto@impress.co.jp]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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