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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第67回:「DivX」 VS 「RMP4」
~オレ的に最強な保存フォーマットを考える~


■ DivXがいいらしい

 TVキャプチャカードでさまざまな番組がパソコン上にファイルという形で集まってくると、そんなに真剣じゃないんだけどコレは軽く保存しとこっかなーというものが出てくる。ところがそういう用途にDVD-Rってのは、まだまだ値段的に大がかりなシロモノである。

 これがCD-Rならば、スピンドル単位で買うと1枚の値段も知れてるので、ばんばん使うことができる。しかしだ、筆者はVideoCDってのは規格としてどーも今ひとつだと思うのだなぁ。TMPGEncなどいいエンコーダもあるにはあるのだが、どんなにがんばっても1枚74分とかCBRだとか解像度が縦横半分だとかといった、規格の古さが気になるのである。かといってSuper VideoCDってのもビットレート節約するとなかなか画質的に厳しいことになったりして、それはそれでまたどうよ、と思うのである。

 そんなことを今から一ヶ月ぐらい前にぼーっと考えてたわけだが、なんでも漏れ聞くところによるとDivXというのがなかなかいいという話。映画1本をCD-R 1枚に書き込むことができるというのでさっそく試してみたところ、これがまたなかなか効率がいい。ほどほどのクオリティで1枚のCD-Rに90分ほどのコンテンツが収録できる。ただ難点を上げるとするならば、圧縮率がいいぶん再生時にかなり負荷がかかるようで、十分なマシンパワーがないと動きが引っかかったりする。

 惜しい、んー惜しいなーと考えていたところ、その解決策としてスパッと発売されたのが、SIGMA DESIGNSの「REALMagic XCARD」である。AV Watchではすでにこのへんとかにレビューが載っているので、参考にしてほしい。このXCARD、HDTVまで出力できるハードウェアデコーダというところがポイントなのかも知れないが、そんな1080iのソースがいったいどこにあんだヨとか考えると筆者的なポイントはそこではなく、やはりDivXがハードウェアでデコードでき、しかもビデオ出力できるというところになる。そんなわけでさっそくこのカードを購入し、まるで流れるような録画→圧縮→再生までのルートができあがったのである。

 ウムよしよしと一人悦に入っていたところ、その均衡を打ち破るかのようにSIGMA DESIGNSから自社のハードウェアデコーダでデコード可能なコーデック「REALmagic MPEG-4 Video Codec」(RMP4)が無償公開されたというニュースが飛び込んできた。なにをぉう。これはテストせねばなるまいオレの幸せのためにもな。

 というわけで今回のElectricZooma!は、「DivX」と「RMP4」を使っていろいろ実験してみた結果をご報告してみたい。なお筆者はMPEG-4に関してはまだまだ修行中であり、むずかしいことはよくわからんがとりあえず使えてるからいっか、というレベルである。そのあたりをあらかじめお含み置き願いたい。


■ どこにでもあり、どこにもないMPEG-4

 MPEG-4の規格ってのもなかなかスパッと全貌がわかる資料が少なく、いったいどんなことになってるのかつかみにくい状況だ。パソコン上では低ビットレート用コーデックは早くからいろいろなものがリリースされてきたため、あれもこれもMPEG-4のような気がしてくる。映像のコーデックであるDivXにしても、MPEG-4の技術をベースにしているというだけで、MPEG-4そのものではないという。じゃあWMV8やRealVideoがMPEG-4なのかというと、これまた違うという。

 一方でSIGMA DESIGNSのRMP4は、リリースに「ISO MPEG-4(advance simple profile level 5)に準拠」とある。ところが準拠という言葉もまたえらく曖昧なもので、「それにしたがってます」というぐらいのニュアンスか? なーんかきっぱり「これがMPEG-4です」と言っちゃったとたん黒い服の男達が玄関先にやってきて、あーもしもし俺たちはMPEG LAだがMPEGならお金払いなさいネ、とでもいわれるかのごとくMPEG-4でありそうでなさそうなものが沢山出回っている不思議な世の中である。

 このあたり白黒はっきりさせようとするといろいろなところから激しいツッコミが来てノブりん泣いちゃうかもしんないので、その辺はあんまり気にしないってことで。なおここでは、便宜上DivXやRMP4のことを、MPEG-4系コーデックと総称することにする。

 まずコーデックの入手だが、DivXは公式サイトのダウンロードページからダウンロードできる。執筆段階での最新は、v5.0.2である。RMP4はSigma Designsのダウンロードページだ。

 両コーデックともXCARDでハードウェアデコードできるわけだが、XCARDがなくてもソフトウェアでデコードして映像を再生することはできる。記事内のサンプルを見たい場合は、各自コーデックをインストールして欲しい。



■ DivXはどうだろうか

 まずDivXのほうから見てみよう。DivXには、通常のDivXと、パラメータの増えたDivX Proの2タイプがある。Pro版にはインターレース映像をデインターレースする機能などがあり、パソコン上で視聴するファイルを作るには有利な点が多い。ここでは特にそのあたりの機能は使っていないが、DivX Proの例でご覧いただくことにする。

 ビットレートに関する設定では、DivXには4つの選択肢があるように見える。ちょっと整理して考えよう。まず大きく分けて「1-pass」と「2-pass」がある。passに関してはすでにMPEG-2のエンコーダでおなじみだと思うが、エンコードする際にいきなり本番圧縮をするか、事前にデータを調べてログを取り、それから圧縮するかの選択である。

DivX Proインターフェース画面
 1-pass系のモードとしては、[1-pass]と[1-pass quality-based]の2モードがある。2-pass系としても2モードあるように見えるが、これは2-passする際の最初のpassと、2回目のpassという2つの段取りが分かれているだけである。

 [1-pass quality-based]以外では、ユーザーが自分でビットレートを設定することで圧縮率を決めることになる。これはMPEGの圧縮率決定方法としては正統だが、CD-Rのような容量の固定されたメディアに合わせて圧縮することを考えると、コンテンツの長さを考慮に入れて適切な数値を割り出すことはなかなか面倒な話。

 一応「ストリームのファイルサイズ(bit)÷コンテンツの秒数=ビットレート(bps)」なので、数値を当てはめればいいことにはなる。なんだよこのぐらい簡単じゃねえかと思われるかもしれないが、例えば90分の映画を700MBのCD-Rに収めようとしたら、んー適当にオーディオの分を100MBとして残り600MBをビデオストリームに使うことにしてだな、

(600×1024×1024×8)÷(90×60)=932067.555555556

 となる。まあおおざっぱに900kbpsぐらいってことにしとこうか。なにせ相手はVBRであることだし、オーディオのほうも何でどのぐらいの圧縮にするかで変わってくるので、多少余裕を持っておいたほうがいい。実際に90分のテレビ映画をエンコードしてみたところ、681,370KBという結果となったので、まあ妥当な値と言えよう。このときのオーディオは、MP3-96kbps 48kHzである。

[1-pass quality-based]では、スライダがQuantizerの調整に変わる
 比較的わかりやすい方法は、[1-pass quality-based]である。目標とする映像クオリティをスライダーで選ぶだけで、DivXが適当にビットレートを決めてくれる。どのぐらいのクオリティでどうなるという例はサンプルを見て頂くとしよう。ほかの部分の設定は、デフォルトのままである。なお「MPEG4 Tools」内の[Use Quater Pixel][Use GMC]をチェックしていないのは、これを使用するとXCARDでのハードウェアデコードができなくなるからである。

【24秒のAVI(DV形式)ファイルのエンコード結果】
ビットレートモードエンコード時間(秒)ファイルサイズ平均ビットレート
1-pass 900kbps454,929KB1,664kbps
1-pass 2,000kbps447,724KB2,616kbps
1-pass 3,000kbps4510,397KB3,528kbps
1-pass quality-based 31(0%)421,195KB399kbps
1-pass quality-based 15(55%)422,312KB873kbps
1-pass quality-based 4(93%)451,3505KB4,588kbps
2-pass 900kbps43+272,660KB897kbps
2-pass 2,000kbps45+285,884KB1,996kbps
2-pass 3,000kbps45+298,811KB2,993kbps
※平均ビットレートはDivx、RMP4ともにXCARD付属のユーティリティ「AVIチェック」を使用した

 表の結果を見てお気づきと思うが、1-passの場合は設定したビットレートよりも常に平均値でオーバーしている。したがって、せっかく計算して割り出したビットレート値も、うまくメディアに収まるかはエンコードしてみないとわからないということになる。一方2-passでは、かなり設定したビットレートに対して追従しているという結果が得られた。



■ RMP4はどうだろうか

 続いてRMP4を試してみよう。RMP4はシングルパスが基本であるため、2-passモードはない。そのかわりCBRとVBRを選択できるようになっている。CBRにはモードが1つしかないが、VBRには[Size][Quality][Quantizer]という3種類のモードがある。デインターレースなどのツールを持っているところは、DivX Proと同様だ。

DivXに似ているが、モードは全部で4つ CBRのときだけ、バッファ値のスライダが有効になる

 CBRに関してのみ、ビットレート設定のほかに、一定のビットレート値を維持するバッファ時間を決めることができる。これにより、CBRといえどもトータルのファイルサイズが変化する。

 一方VBRのほうは、全体的に1モード1パラメータというシンプルさ。[Size]はCBRと同様ビットレートを直接指定する。[Quality]はマニュアルPDFを当たってもあまりにも記述が簡単すぎてナニをどう変更しているのか判然としないのだが、各フレームの映像品質が均一になるよう、圧縮レートを変動させる、ということらしい。10から100までの間でスライダで決められる。

 [Quantizer]は、DivXの[1-pass quality-based]と同様、各フレームの圧縮レートを1から31の間で固定するモードだ。各モードで代表的な値のサンプルを掲載する。なお筆者の環境ではMPEGヘッダに「RMP4」を使用するとなぜかXCARDで再生できなかったため、ヘッダはDivXに変更している。

【24秒のAVI(DV形式)ファイルのエンコード結果】
ビットレートモードビットレート(設定値)エンコード時間(秒)ファイルサイズ平均ビットレート
CBR900kbps(4s buffer)382,883KB983kbps
900kbps(10s buffer)383,251KB1,108kbps
2,000kbps(4s buffer)385,879KB2,004kbps
2,000kbps(10s buffer)385,955KB2,030kbps
VBR900kbps393,449KB1,175bps
2,000kbps417,347KB2,505kbps
3,000kbps4110,658KB3,634kbps
Quality10406,845KB2,334kbps
Quality30408,731KB2,977kbps
Quality504112,385KB4,223kbps
Quantizer31392,245KB765kbps
Quantizer15393,771KB1,285kbps
Quantizer44424,342KB8,300kbps

 映像ファイル自体は短いものだが、シングルパスで最速のエンコーダを名乗るだけあって、DivXよりも若干高速な結果となった。長時間のソースではそこそこ差が出ることだろう。また平均ビットレートを見ると、1-passでもDivXより設定値に近い数値になるようだ。

※サンプル動画はファイル数が多いため別ページに掲載した。


■ 総論

 MPEG-4系コーデック2種を使ってみたわけだが、基本的には両方とも、ファイルサイズの割にはまずまずの画質が得られていることはわかった。MPEG-4の場合は、まだ特定のメディアがあるわけではないので、画質をはじめ、画面サイズやフレームレート、インターレースの有無など自由が利くところはメリットの1つであろう。今回は画面サイズを640×480ピクセルでテストしたが、VideoCDに比較すれば約4倍の面積の動画を、画質を大幅に落とすことなく、より多く収録することができる。MPEG-4の将来性を感じさせるには、機能的には十分なクオリティである。

 DivXでは圧縮レートの変動値がデフォルトで2から12となっており、原理的にはファイルサイズの変動幅は小さいはずだが、今回のテスト映像に対して2から12という設定値がかなり現実的な値なのか、VBRではRMP4(デフォルトでは1から31)と変わりない結果となっている。1-passではビットレート設定値から大きく外れがちなのはちょっと使いづらいが、DivXには2-passモードがあるので、圧縮効率という点では有利になる。時間をかけても高圧縮を求めるような用途、例えば見たかった映画の保存といった用途に使えるだろう。

 RMP4に関しては、エンコードは若干高速とはいえ、まだDivXをぶっちぎるほどの速度ではない。しかしCBRが使えたり、1-passでも設定値と平均ビットレートの偏差が少ないという意味では、狙ったファイルサイズにしやすい。連ドラやアニメなど毎回テイストが同じで時間も同じというソースではファイルサイズも予想しやすいので、便利に使えそうだ。また、出たばかりのRMP4がこれからバリバリチューンナップするなり、あるいはハードウェアを使うことで激速のエンコーダになるのであれば、筆者は圧縮効率よりも速度を取るかもしれない。

 MPEG-4系コーデックを使った映像を長期的に保存するのであれば、ビジネス面での将来性も気になるところだ。というのも現存する各種コーデックはMPEG-4準拠とはいえ、それぞれの互換性に関してはまだ不安をぬぐいきれない。両コーデックに話を限定すると、無料で配布している以上、継続的な開発やサポートを行なうには、なんらかの安定した収支モデルが必要になるだろう。じゃあどちらが運営的にしっかりしているか、あるいはどちらが政治的に上手いかという話になると、そのあたりの判断材料が乏しく、これまたよくわからない。本気でバリバリ使うには、もう少し様子を見たほうが良さそうだ。

 さて、今回のレポートはとりあえずいろいろなパターンで圧縮してみました、というだけであり、AV Watchの読者諸氏にはいささか物足りないことだろう。こちらとしてももう少し突っ込んで設定などをいじってみたいのだが、いかんせんまだMPEG-4に関しては勉強不足で、その効果をはっきり確認することができないでいる。これらMPEG-4系エンコーダに関しては、いずれまた環境や、準備が整ったところで再度取り組んでみたいと思っている。


□Divxのホームページ(英文)
http://www.divx.com/
□Sigma Designsのホームページ(英文)
http://www.sigmadesigns.com/
□関連記事
【6月28日】米Sigma Designs、Windows用MPEG-4コーデックを無償公開
 ―同社製コーデックや、XCARDとの互換性を保証
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020628/sigma.htm
【5月15日】バーテックス、DVDビデオ/MPEG-4/DivX対応デコーダPCIカード
―リモコン付属、ハイビジョン出力にも対応
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020515/vertex.htm

(2002年7月10日)


= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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