■ 年末商戦の幕開け 先日買い物があって新宿に出かけたのだが、西口に集中しているカメラ系量販店ではそろそろ年末商戦がスタートしたようである。販売員の熱気もさることながら、お客のほうも平日の昼間にも関わらずまずまずの入りで、これから年末までの熱い戦いの幕開けにはふさわしい売り手と買い手の激しい攻防が見られた。 HDD・DVD-RAM/Rレコーダとしてブランドを確立したとも言える東芝「RDシリーズ」だが、その火付け役として鳴り物入りで登場したハイエンドモデル「RD-X1」の登場は去年の年末、それもかなり押し迫った12月20日であったのを思い出す。ちょっと商売としては、あまりにも押し迫りすぎていたという反省もあったのだろうか、RDシリーズ期待の新モデル「RD-XS30」は、11月上旬に発売される模様だ。またその上位モデルである「RD-XS40」も発売を12月に控えている。 さてそのRD-XS30(以下XS30)、特徴といえばやはり思い切った低価格戦略を打ち出してきたところだろう。発売前の時点ですでに店頭予想価格は10万円前後というから、スタートからいきなり9万円台、場合によっては8万円台で店頭に並ぶ可能性も大だ。家庭用AV製品というゾーンでは、10万円の壁を切ることはいまだに大きな意味を持つ。比較的財布の紐がゆるむ年末にこの価格は、我々消費者にとっては嬉しいやら困ったやらである。 編集部注:11月7日現在、カメラ系量販店などでRD-XS30の販売を確認している。店頭価格は10万円前後。 低価格化で気になるのは、コストダウンの影響だ。ここまで待ったのなら、今さら安かろう悪かろうの製品は欲しくない。そんな期待と不安の視線が集まるXS30、さっそくチェックしてみよう。
■ 外観はとことん無駄を排除 まずはいつものように、外観チェックだ。従来機と比較して感じるのは、その薄さである。本体サイズは430×350×78mm(幅×奥行き×高さ)、前モデルのX2も結構薄くなったと思ったものだが、それからさらに32mm薄くなっており、見た目はDVDプレーヤー並み。AVラックに入れるのに悩まなくていいサイズになった。 フロントパネルのデザインは、前モデルのRD-X2の洗練されたスタイルからなんだかフツーの方向に激しく後退しており、コストダウンの影響はこの辺か? と勘ぐらせるに十分である。右側にあるディスプレイ部では、ほとんどチャンネル表示と再生時間、オーディオレベルを表示する程度のシンプルさ。従来のRDシリーズの持つ高級感はかなり減退したと言えよう。
操作ボタンの類もずいぶん減っている。基本的な再生コントロール系と、HDD、タイムスリップ、DVDの切り換えボタン、あとは再生・録画のステータスLED程度しかない。早送りや巻き戻しボタンすらないのは、思い切った割り切りだ。だが実際に使ってみると、このぐらいシンプルでも不自由な感じはない。もともとこの手のレコーダは、リモコンと画面に現われるメニュー操作が充実していれば、ほとんど本体操作はおろか、本体を見ている瞬間なんかないのだ。 では背面に回ってみよう。X2に比べて高さが減った分、端子類も大幅に減ったような気がするが、実際はそうでもない。アンテナ入力は地上波とBSの2系統。デコーダ入力もある。外部入力は背面に2、前面に1と十分。ただX2にあったD1入力が今回は省略されている。一方出力は2系統だ。このうち映像に関してはD1とコンポーネント出力がある。またデジタルオーディオはオプチカルのみ。従来機にあった同軸端子がなくなった。 リモコンは、X2とほぼ同じものが付属する。厳密には型番がちょっと違うが、ボタンを見る限りではまったく同じものに見える。機能的に差がないということが、このあたりからも垣間見える。
■ ソフトウェアは大進歩 次に録画機能を見てみよう。録画モードはSP、LPモード、Just、マニュアルの4種類。オーディオはドルビーデジタルとリニアPCMが選択できる点は変わりない。しかしHDDは60GBと、前モデルの80GBから少なくなった。このあたりもコストダウンの一環だろう。これをフォローする機能として、マニュアルで最高ビットレートに設定したときに、VBRの可変幅を広く取ることで容量を節約する「最高画質レート容量節約」モードが搭載されている。 また、音楽番組などで無音部分を検出し、自動的にチャプターを分けてくれる「無音部分・自動チャプター分割」機能は目新しいところだ。音楽番組以外ではうまく動作しないとあるが、普通の番組に適用して試してみたところ、ちゃんとCM部分でチャプター分割されていた。もっとも、各CMごとにいちいち綺麗にチャプターがわかれちゃったりもしているが……。CMカットのガイドとしても結構使えるのではないだろうか。
一応いつものお約束で、各モードでの録画サンプルを掲載しておく。
次にダビング系の機能を見てみよう。RDシリーズは録画したあとの編集機能が強力なのが特徴だが、そこもかなり強化されている。まとめていうならば、今回から同じメディア内でのコピー機能が追加された。例えばHDD内だけで、またDVD-RAM内だけで、CMをカットしたプレイリストどおりに別ファイルを作ることもできる。再圧縮しない「高速ライブラリダビング」を使えば、高速にコピー作業が終わる。こうして整理した方だけ残して、録画したオリジナルは消していけば、容量はかなり節約できる。
また、目立たないところだが、チャプター分割などの作業レスポンスがずいぶん良くなっている。コマ送りの反応などもかなりいいので、シーンの変わり目を探すのも楽になった。ただプレイリスト作成は、最初にチャプター分割があり、そのあとでプレイリスト作成という2段階になっている。このあたりの段取りくさいところは、普段パソコンで録画している人にはまどろっこしく感じるだろう。 また基本的にXS30には、作業をアンドゥするという考え方がない。自由度の高い編集が可能で作業が複雑化するが故に、ミスが許されないというのはユーザーにとって辛いところだ。このあたりが「ユーザーが手を加えて別なものを作る」ということをいままで許してこなかった家電業界の、今後の課題といえるかもしれない。
■ 総論 録画機として捉えれば、機能としてはもう十分にこなれているRDシリーズなだけに、このXS30も安心して使える機器だ。その一方で編集から保存へ至る機能は、同メディア内の高速ダビング機能が搭載されたことで、今まで以上にいろいろなバリエーションが発生し、使う方も結構頭を使う。まあ少なくなったメディア容量をうまくやりくりできるというメリットがあるので、このあたりの機能搭載は歓迎したい。 使ってみての印象だが、録画した番組に対する動作レスポンスが向上しているのが体感としてわかる。編集機能を多用するであろう機種なだけに、この改良はなかなか重要だ。ただしメディアの認識には相変わらす30秒ぐらいかかる点は変わっていない。これは搭載ドライブが変わらない限り無理だろう。 XS30を使いこなすには、リビングのテレビだけに繋いでいたのでは不便だ。というのも細かい編集をやればやるほど、それだけテレビ画面の占有時間が長くなってしまい、「おとうさんテレビ見たいよう」、「待ってなさいマサオ! おとうさんは今大事な大事なギャラクシーエンジェルからCMをカットしているところなのだ!」といった修羅場が展開されそうなのである。出力が2系統あるので、編集用のちょっとしたサブモニタがあると便利だろう。 また録画した沢山の番組を管理するために、ライブラリ機能をうまく使えばいいのかもしれないが、問題はリモコンでの番組名入力が面倒ということだ。iEPGやEPGの予約ならば、番組名まで自動入力してくれるのであとあと管理が楽だが、あいにくRD-X30ではGコード予約しかない。このあたりも今後の改良に期待したいところだ。 いずれにしても、前モデルのX2から5万円近いコストダウンにも関わらず、前モデルでの不満点をクリアしたばかりか、逆に機能が増えてちゃってるところに東芝の本気度を感じる。このまま低価格戦略が続けば、RDシリーズはハイブリッドレコーダの王座にもっとも近い存在と言えるのかもしれない。
□東芝のホームページ (2002年11月6日)
[Reported by 小寺信良]
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