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第78回:マルチチャンネル対応DVDオーディオ作成ソフト
「discWelder」を試す


 当連載の第76回で「DigiOnAudio」という、低価格なDVDオーディオソフトを紹介した。12,800円という低価格でありながら、24bit/192kHzに対応したDVDオーディオが作成できてしまうというのは驚きでもあった。

 一方、海外ではハイエンドなコンシューマ向けにDVDオーディオ作成ソフトがいくつか発売されている。今回はその中から一般ユーザーでも手が届くソフトとして、Minnetonka Audio Softwareの「discWelder STEEL」というソフトを紹介しよう。


■ 基本機能はシンプルだがAIFFの入力をサポート

 discWelderには、上位バージョンの「discWelder CHROME」と、下位バージョンの「discWelder STEEL」という2つのソフトがあり、国内ではフックアップが扱っている。ただ、それほど数の出る製品ではないため、個別注文に応じて販売している程度で、現在のところ同社のホームページ上に案内はない。価格はオープンだが、米国での販売価格がdiscWelder CHROMEが2,495ドル、discWelder STEELが495ドルとなっているので、その価格から大きくはずれることはないだろう。

 CHROMEがSTEELの5倍という価格になっているが、機能を比較するとそれほど大きな差はないようだ。カタログによれば、両者の違いはメニューを自由に作れるかや、グラフィックによるスライドショー機能、DVDビデオをインポートし、DVDオーディオとDVDビデオのハイブリッド版の作成機能など。とりあえずDVDオーディオを作成するという面では、ほぼ同等の機能のようだ。そこで、今回は低価格版のSTEELを使ってみることにした。

 とりあえずインストールして、起動させてみたところ、いたって単純なユーザーインターフェイスが現れた。基本的には、すべての操作をこの画面で行なう。とはいえ、ユーザーの行なうことは、左上のブラウズ・ウィンドウで素材のあるフォルダを選択し、その中にあるファイルを右上のサウンドファイル・ウィンドウで表示させ、素材として使いたいファイルを下のアルバム・ウィンドウにドラッグ&ドロップするだけだ。

discWelder STEELのインターフェイス。DVDオーディオにしたい素材を下のアルバムウィンドウにドロップする(右)

 アルバムを順番どおりに並べたら、あとはDVD-Rドライブに書き込む。簡単に言ってしまえば、以上である。たったこれだけの作業でDVDオーディオが焼けてしまう。オーディオCDを作る際の手順を考えれば当たり前ともいえるが、拍子抜けするほど簡単なソフトである。

 基本的な機能でいえば、DigiOnAudioと同様にDVDオーディオのスペックである最高24bit/192kHzのステレオサウンドまでサポートしている。しかし、それ以上の機能はほとんどなく、本当にライティングに限定されたソフトとなっている。DigiOnAudioにあった、レコーディング、メニュー作成、イコライザ、ノイズリダクションといった機能はない。

 では、DigiOnAudioと比較して不利なのかというと、実際に使ってみると、そうではないことがわかる。まずサポートしているのはWAVとAIFF。対するDigiOnSoundは、WAV、MP3、mp3PRO。圧縮フォーマットよりも、24bit/96kHzや24bit/192kHzのフォーマットデータとしてよく使われるAIFFをサポートしているdiscWelder STEELの方が有利だ。

 また、DigiOnAudioの場合、24bit/96kHzや24bit/192kHzなどの設定を行なうと、どんなデータもすべて自動的にサンプリングレートコンバートされて、そのフォーマットでDVDオーディオになってしまった。しかし、discWelder STEELでは、単純に元のデータフォーマットのままライティングに移行する。異なるサンプリングレートや量子化ビット数が混在したままDVDオーディオにすることができるのだ。

 ただ、気になったのはサウンドデータのモニタリング機能がないこと。このソフト上では、WAVファイルやAIFFファイルの再生すらできないのだ。作成する前に正しいファイルか確認する意味でも、せめて簡易再生機能ぐらいは用意してほしかった。


■ マルチチャンネルディスクの作成も可能

 一方、DigiOnAudioにはない機能も搭載している。5.1chなどのサラウンド対応だ。DVDオーディオは非圧縮のサラウンドサウンドが扱えるが、discWelder STEELはそれに対応している。

 使い方は非常に単純。モノラルのWAVファイルかAIFFファイルを用意し、それをアルバム・ウィンドウへドラッグ&ドロップすると、5.1chの設定が現れる。ここで、L、R、センター、リアL、リアR、サブウーファの計6チャンネルに1つずつモノラルのファイルを割り当てていけばいい。時間が異なるファイルでも、1つの曲として設定することができるが、その場合は頭が揃う形になる。

各ソースをチャンネルに割り当てているところ。計6チャンネルを指定できる

 作成できるメニューはいたってシンプルなもの。discWelder STEELのマークが入った背景画面に、曲名が並んでいるだけで、デザインの変更はできない。ユーザーが指定できるのは、曲名のフォントを2種類の英文フォントから選択できることと、フォントサイズや色を多少変えられる程度。曲名は、作成時のメイン画面においてデフォルトで付いているTRACK #1、TRACK #2……という名前をリネームすることで、設定する。ただし、英文フォントしか扱えず、日本語は文字化けしてしまう。

 また、階層化したメニュー構造をとることもできない。というよりも、そもそもアルバムを作っていく上で、グループを1つしか作成できないため、階層化が不可能。こうした面では、DigiOnAudioのほうが、明らかに機能は上のようだ。

メニューの設定。日本語を表示させようとすると文字化けする(右)


■ ライティングは書き込み済みDVD-RWにも対応

 さて、ここまで準備が整ったので、DVD-Rドライブで書き出してみた。使ったのはソニーのDVD±R/RWに対応した「DRU-500A」。ドライブとして普通に選択することができたので一見問題なさそうだが、いざ試してみるとエラーになる。

 そこで、たまたまDOS/Vパワーレポート編集部から借りていたパイオニアの「DVR-104」で試したところ、問題なく動作した。ドライブのサポート状況はMinnetonka Audio Softwareのサイトには見当たらなかったが、パイオニアのDVD-Rに関する情報が掲載されていたので、おそらくパイオニアのドライブであれば大丈夫なのだろう。

書き込み時の設定
 なお、ライティング時に設定できるのは、テスト書き込み、本番、ベリファイのON/OFFだけ。特に変わった機能があるわけではない。また、DVD-RだけでなくDVD-RWにも焼くことができた。

 DVD-RWを利用する際、Erace Discというメニューを選択すれば、データを消去することができるし、WinCDRやB's Recoder GOLDなどほかのライティングソフトで、消去したものでも使うことができる。ちなみにDigiOnAudioでは、そうしたメニューがなかったほか、一度消去したメディアには書き込めなかった。

 以上、discWelder STEELの機能を紹介した。DigiOnAudioと比較して、余計な機能がない分、利用法を割り切ればシンプルで使いやすいソフトといえるだろう。



□フックアップのホームページ
http://www.hookup.co.jp/
□Minnetonka Audio Softwareのホームページ(英文)
http://www.minnetonkaaudio.com/
□製品情報(英文)
http://www.minnetonkaaudio.com/Products_3.htm#discWelder
□関連記事
【10月28日】【DAL】DVDオーディオの作成が可能な「DigiOnAudio」
~ 24bit/192kHzに対応したオーディオ編集ソフトの実力を試す ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20021028/dal76.htm

(2002年11月18日)


= 藤本健 = ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase VST for Windows」、「サウンドブラスターLive!音楽的活用マニュアル」(いずれもリットーミュージック)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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