■ 息もつかせぬ新製品ラッシュ こないだの土曜日、ちょっとした買い物のついでに市場調査を兼ねて、いくつかのカメラ系量販店をうろうろしてみた。景気が低迷しているとはいえ、年末商戦の賑やかさはほぼ例年通りで、各メーカーとも応援販売員やキャンペーンガールを投入し、まずまずの混雑ぶりであった。 AVコーナーでは、やはり記録型DVDを搭載したハイブリッドレコーダは「DVDに録れるんですよ」から話が切り出しやすいのか、目立つ位置に山積みされ、注目度も高いようだ。一方HDDのみのレコーダは、お店のほうでもどこに置いたもんか悩んだ末、あまり人気のないVHSコーナーの一角にひっそり置かれたりして、機能は同じようなもんでも売り方の難しさってのもあるよなぁと考えさせられたりもした。もういっそのこと、HDDレコーダはパソコン売り場に置いちゃったほうが話が早いような気もするのだが、どうだろうか。 さて、そういうハイブリッドレコーダだが、ついこないだ東芝「RD-XS30」のレビューをお送りしたばかりだと思っていたら、今度はもう「RD-XS40」である。この上位モデルは単に容量がデカくなりました、というだけではない。待望のネットワーク機能が搭載され、家電タイプのハイブリッドレコーダもようやく外部機器とリンクが可能になったという、記念すべきモデルとなる。 東芝の発表によれば、HDDとDVDのハイブリッドレコーダでネットワーク搭載は世界初とのこと。今までHDDレコーダでは映像を引っ張り出す必要性から、ネットワークを搭載するものは多いが、ハイブリッドレコーダでもネットワーク機能を搭載することで、HDDレコーダの使い勝手に迫ろうということなのである。 この冬、ボーナス商戦の目玉と言われるRD-XS40、その実力を早速チェックしてみよう。
■ 本体外観、機能は継承 RD-XS40の外観は、下位モデルにあたるRD-XS30とほぼ同じである。デザインとして、主な違いは2点。まずフロントパネルのミラー部にヘアラインが施されている。これだけでも、素っ気なさがずいぶん緩和されているのがわかる。 また前面中央部の3つのモードボタンは、つや消しのシルバーから、メタリックなものへ変更されている。個人的な感想では、メタリックなほうが若干いいかなとは思うが、まあどっちもどっちといった感じだ。背面端子類も、基本的にはRD-XS30と同じ。違いは、100Base-TX/10Base-Tのネットワーク端子が付いているところぐらい。
レコーダ単体としての機能はRD-XS30と同じだが、HDDが倍の120GBになっている。さすがに「SONY CoCoon」の160GBにはかなわないが、今期のビデオレコーダの平均は80GBぐらいなので、十分大容量だと言えるだろう。 単体機能については以前のZooma!の記事を参考にしてもらうとして、今回はネットワーク系の機能を中心に試してみることにする。
■ 格段に拡張された機能
RD-XS40のネットワーク機能でできることをまとめてみると、以下のようになる。
細かい話ではもっとたくさんあるのだが、大きなところだけでもこれだけの機能が追加されるのはかなりのインパクトだ。では主なところを試してみよう。 まず本体の設定だが、設定メニューにネット関係の部分がある。といってもここでは非常にベーシックな設定だけ。ネットワーク機能を十分に活用するには、常時接続環境が必要になるわけだが、そういう環境ではほとんどHubとルータを使用していることだろうから、DHCPを使う設定にすればOKだ。
あとの設定は、PCのWebブラウザから行なう。URLの部分に「http://RD-XS40/」と入力すれば、「ネットdeナビ」のメインメニューが表示される。ここで一通りどんなことができるか把握したらば、おもむろに「本体設定」をクリックして、細かい設定を行なうことになる。iEPGを参照するページの設定や、メールで予約する際のメールアドレスやらメールサーバーの設定である。
個人的に最も歓迎するのが、iEPGへの対応である。本体側ではリモコンによるGコード予約しかできなかったのだが、これでようやく「いまどきのレコーダ」らしくなった。設定欄を見てお気づきのように、iEPGのサイトとして2箇所登録することができる。1つは東芝が独自運営するサービスサイトだが、現在(12月14日)はまだ運用が開始されていなかった。12月中旬とあるので、もうすぐだろう。 もう1つの欄には、好きなサイトを登録できる。「インターネットTVガイド」や「テレビ王国」、「ON TV JAPAN」など、iEPGサイトはいくつかあるが、試しに「インターネットTVガイド」を登録してみたところ、問題なく予約できた。現在筆者のPCには「カノープスMTV2000」が入っており、これのiEPG予約も同じくインターネットTVガイドで行なっているわけだが、「ネットdeナビ」内にあるiEPGボタンからサイトを立ち上げれば、予約情報が混乱することなくRD-XS40に送られるようだ。またブラウザの「録るナビ」をクリックすると、予約状況を確認したり変更することもできる。
「ネットdeナビ」もう1つの機能の目玉が、メール予約機能だ。筆者のように常時自宅で仕事をしている人間にはいまいちありがたみがよくわからんのだが、ネット対応レコーダでは大抵この機能をサポートしているところを見ると、かなり需要はあるようだ。 予約の方法は簡単で、RD-XS40に設定したメールアドレス当てに、以下のような本文を書いて送るだけである。
openは予約メールのヘッダに相当するもの、yoyakuはRD-XS40に筆者が登録したパスワードである。以下日付、開始及び終了時刻、チャンネル、画質モード、音質モードと続く。 一方RD-XS40は、設定した時間間隔でメールを読みに行き、予約メールがあればその通りに予約を行なう。メールを読む時間は最短で5分に設定できるのだが、予約されてから開始までは15分以上空いてないといけないので、少なくとも20分前までにメールが送れれば、予約ができることになる。ただしこれはRD-XS40の電源が入っている状態だけで、電源が切れているときは1日3回朝昼夕方という風邪薬かお前はみたいな間隔でのみ、メールの受信が行なわれる。 メールでの予約が成功すると、RD-XS40に完了通知送信先として設定したアドレス宛に、以下のような返信を返してくれる。
■ そのほかの本体補助機能 本体の補助機能として、PC側でタイトルの変更ができるところを評価する人もいることだろう。今までRDシリーズでは、3,000件のライブラリ管理機能があるということもウリの1つだったわけだが、番組名などすべてリモコンからチクチクと入力していく必要があった。いや前にも使ったネタだが、リモコンで「西村京太郎サスペンス十津川警部シリーズ(26)特急おおぞら殺人事件・8時40分釧路発札幌行き列車の卑劣な罠」とか入力するのフツーに無理だから。 これがPCからキーボードを使って入力できる。こまめにライブラリ管理を行ないたい人には便利だ。最初からiEPGで予約すれば、番組名なども自動入力してくれるので、さらに便利である。
もう1つの補助機能として、DVD-Rのオーサリング時に、好きな背景画像を付けられるようになったのは面白い。パソコンでオーサリングする場合は、このあたりは任意に変更できるわけだが、DVDレコーダを使ってオーサリングする場合はそうはいかなかった。いつも同じパターンのもので飽きてしまった人もいることだろう。
背景だけでなく、選択色、決定色などを組み合わせて、ユーザーメニューとして9から16までの8パターンを設定できるので、だいぶ自由度が高まった。ちょっとした機能拡張だが、オリジナリティを発揮できる要素が加わっただけでも、ユーザーにとってはメリットがあるだろう。
■ 総論 RD-XS40は、基本機能はXS-30を継承しながらも、ネットワークに対応したということで、使い勝手ではもはや別物と言っていいほど良くなった。100Base-TX搭載ということで、PCからも映像が見られることを期待する向きもあるようだが、そこまでやるとちょっと方向性がぼやけてしまうことになる。家電タイプの安定性をベースに置いて、PCはあくまでも本体のサポート、と位置付けたところがRD-XS40のミソといえるだろう。 それにしても、RDシリーズの人気には正直言って驚いている。やはり細かい設定が可能な設計が受けているのか、あるいはどうせ買うんならいろいろできるほうがいいということなのか、大手量販店ではRD-XS40、30ともかなり品薄で、一部の店舗では「お取り寄せ」扱いになっているところもある。 一方旧モデルの「RD-X2」もXS30と同じぐらいの値段で売られているようだが、それでもやはりXSシリーズのほうが売れているということからすれば、現状はそれだけしっかり予習して買いにくる人が多いということだろう。
この冬は同じDVD-RAM系のPanasonicが新モデルを投入してこなかったこともあるのか、東芝の一人勝ちになっているようだが、まだTVレコーダ市場は、一部の先進的ユーザーが支えている感じがする。ここから来年、VHSのような一般家電としての普及に向けてどういう仕掛けで行くのか、各メーカーの動向から目が離せない。
(2002年12月18日)
[Reported by 小寺信良]
|
|