■ 新生アイワの第一弾 2002年12月のソニーによる吸収合併の前後には、目立った動きが無かった「アイワ」製品。しかし、1月に新ロゴマークと、運営体制が発表され、ソニーの世界戦略の中での位置づけが明確化。かなり積極的に製品を投入してきた。
今回取り上げるNet MD対応ポータブルMDレコーダ「AM-NX1」は、その発表第1弾となる製品だ。この「AM-NX1」は、MDレコーダとしてはちょっと変わっている。というのも本体にレコーダ機能を持たず、Net MDのみ、つまり、パソコンからのダウンロードに限られる。つまり、マイク入力を介したボイスレコーディングなどの機能は有していないが、PCを持っていれば、Net MD機能により別途MDコンポなどを持っていなくてもこれ1台で、MDを作成、再生できる。 同種の製品では、ケンウッドの据え置き型Net MDレコーダ「DM-1NET」があるが、ポータブル型としては初めて。ボイスレコーダや、会議の録音といった単体で録音することの頻度が高い人は、通常の録音機能が必須だろう。しかし、CDなどの音源をMD化し、持ち歩くためのオーディオ製品と考えると、本機とPCさえあれば別途MDデッキやMDコンポを揃える必要が無い。 ■ 本体は操作ボタンを省いたシンプルなもの ボディカラーは、シルバー、オレンジ、ブラックの3モデルが用意されている。今回は、オレンジをソニーからお借りした。 本体を最初に見た時の印象は「ちょっと大きい」というもの。本体サイズは、80.3×17.9×74.2mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約85g(本体のみ)で、ソニーの「世界最小」の再生専用MDプレーヤー「MZ-E10」はさておき、Net MD対応MDレコーダの第1世代機「MZ-N1」と比較しても大きく感じる。サイズ的には「MZ-N1」とほぼ同等(MZ-N1は約79.1×19.9×73.8mm)な筈だが、スクエアなデザインのためか、印象としてちょっと大きく感じるのだ。
ディスクの出し入れ用に開閉ボタンを備えているほかは、特に操作ボタンはなく、基本操作は全てリモコンで行なうことになる。付属のリモコンはスティック型だが、ソニーのポータブルオーディオでよく見られる円筒形ではなく、角ばったデザインとなっている。しかし、操作性に関しては、上部のボリュームスイッチをはじめ、ソニーのものとほぼ共通。ソニー製のポータブル機のユーザーであれば、戸惑うことは無いだろう。 個人的には、本体で停止/再生、曲送り/戻し、ホールドぐらいはできた方がいいとは思うが、USB端子と開閉ボタン、ヘッドフォン(コントロール)端子しかない本体は、本機の特性をよく表現しているようにも感じる。
■ SonicStageを使ってPCと連携
PCとの連携は、PC側でオーディオ統合ソフトウェア「SonicStage Ver.1.5」を利用し、USB経由でオーディオデータの転送などが行なえる。 SonicStageは、ソニーのPC/ポータブルオーディオ製品ではおなじみのユーティリティ。CDを入れるだけで、曲名を取得、ATRAC3に変換してライブラリ管理できる。ウィザードに沿って操作するだけで、簡単に「AM-NX1」に転送できる。転送速度はアルバム1枚(LP2モード/62.1MB)で3分40秒程度と、なかなか高速だ。特にストレス無く利用できるだろう。 なお、SonicStage Ver.1.5では、Net MDの標準オーディオフォーマットであるATRAC3のほか、ATRAC3plusでのファイル作成も可能だ。ただし、AM-NX1側はATRAC3plusに対応していない。試しにATRAC3plusファイルを転送してみたところ、SonicStage上でATRAC3に変換され、その後ATRAC3ファイルがAM-NX1に転送された。
気になったのは、クレードルが単に充電用となっており、Net MD転送時には、別途USBで接続する必要があるということ。ポータブルNet MD機器では大抵クレードルに充電機能とUSB接続機能を備えていると思い込んでいただけに、ちょっと驚いた。 ■ 使用感・音質は良好
付属のインナーイヤフォンはちょっと安っぽい印象だが、聞いてみると悪くない。低価格ポータブル機には、「一応音楽が聴けるだけ」といったクオリティのイヤフォンが付属する場合が多いが、「AM-NX1」のものは、それらよりは2ランクぐらい上の印象だ。といっても、そんなに高品質なものではないので、自分にあったヘッドフォンを持っているユーザーであれば、変更したほうがいいだろう。 ATRAC用のDSPには、フルサイズMDレコーダ「MDS-JE780」などにも搭載する「TYPE-S」を採用しているとのことで再生品質にも期待がかかる。実際に聞いた音質は、中域に厚みがあり、バランスよく再生できた。高域の伸びや解像力はデジタルアンプを採用している「MZ-E10」に及ばないものの、落ち着きのある音でなかなか好印象だった。
リモコンは、液晶下に停止ボタン、再生/一時停止ボタンや、曲送り/戻しボタン、グループ送り/戻りボタンを装備し、基本操作が可能。曲送りボタンと、グループボタンが同サイズのため、慣れるまでは時々曲送りをしようとして別グループにスキップしてしまうこともあったが、それ以外で特に気になるところはない。 また、本体上部にホールドスイッチと[SOUND]、[DISPLAY]、[P MODE]ボタンを装備し、詳細な音質設定やバーチャルサラウンド設定などが行なえる。リモコンはカナ漢字表示に対応し、2行表示が可能。ただし、漢字を含む曲タイトルの2行表示はできなかった。
「スタジオ」、「ライブ」、「ホール」、「チャーチ」の4つの音場が選択できる「バーチャルサラウンド」や、「メタル」、「ソウル」、「ジャズ」、「テクノ」の4つのプリセットとユーザー設定が可能なデジタルサウンドイコライザ機能を搭載。ソースに合わせて効果を確認してみるのもなかなか面白い。 バッテリ駆動時間は、公称値で標準モード31時間、LP2で38時間、LP3で45時間。LP2ソースで、10時間程度連続使用してもメモリが一段減っただけだったため、ほぼカタログ値に近い駆動時間が期待できる。また、単3乾電池ケースも付属しており、単3アルカリ電池の利用も可能だ。 ■ 「Net MDレコーダ」としての思い切りのよさに好感 音質、操作感ともに良好で、リモコン操作を前提として、本体を鞄に入れたまま、電車内で音楽を聴くといった人にとってはよい選択肢だと感じた。当初大きめと感じたボディも鞄などにいれれば気にならないし、スクエアなデザインにより収まりもいい。 「みせびらかしアイテム」的な機能やデザイン性はなく、所有欲をくすぐる様な魅力には乏しいが、「Net MDレコーダ」として必要な機能を厳選し、うまく纏め上げたという点で非常に好感が持てた。本体の操作ボタンの少なさや、スクエアなデザインもそうしたことを鑑みると納得できる。 購入に当たって重要視されるのはやはり価格となるだろう。Net MDに対応したMDレコーダの相場は、2万円台後半から3万円半ばといったところ。一方、25日に新宿の大手カメラ量販店で数店舗で「AM-NX1」の価格を調べたところ、29,800円で販売されており、録音機能が省かれていることを考えるとやや高いと言わざるを得ない。もちろん、3月上旬発売製品だけに「初物価格」でやや高めとなっているのかもしれないが、パッケージングの思い切りのよさと、ソニーブランドとアイワブランドの差別化という意味で、もう少し低価格となると思っていたので、ちょっと残念だ。 □ソニーのホームページ (2003年3月28日)
[Reported by usuda@impress.co.jp]
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