「PCディスプレイでテレビを見たい」という要望は、それなりに多いようで、昨年来TVチューナ付きのスキャンコンバータのリリースが各社から続いている。古くからスキャンコンバータを出しているコンパルは昨年早々に「SmartTV」という製品をリリースし、ノバックや、アルファデータといったパソコン周辺機器メーカーからもリリースが相次いでいる。このコーナーでもノバックの「EntaVision」を取り上げた。 液晶ディスプレイの普及により、「CRTディスプレイがあまってしまった」という人が多いのか良くわからないが、各社とも結構な熱の入れよう。そんな中、アイ・オー・データ機器からも「TVBOX2」というチューナ付スキャンコンバータが発表になった。 TVBOX2は、PC用ディスプレイなどで、DVDなどを視聴可能にするTVチューナ内蔵アップスキャンコンバータ。特徴的なのは、ゴーストリデューサや、3次元Y/C分離などの高画質化回路を搭載するほか、コンポーネント入力端子を装備していること。また、同社では、「液晶ディスプレイにテレビ放送を美しく表示するために開発した」としており、液晶表示時のパフォーマンスにも期待がかかる。今回、アイ・オー・データからTVBOX2をお借りできたので早速、操作感と画質をチェックした。 ■ 画質は高クオリティ。操作性にはやや難有り 外形寸法は220×177×100mm(幅×奥行き×高さ)、重量約1.1kgと、それほど大きくない。スタンドが付属し、縦置きを前提としたデザインとなっている。各社からTVチューナ付きスキャンコンバータが発売されているが、縦置きデザインのものは珍しい。個人的には、ディスプレイ脇に置いてもスペースをとらないという意味で、設置性は縦置きの方がよいと思うので、歓迎できる。デザインも気に入った。
外部映像入力端子は、アナログRGB(D-Sub 15ピン)、コンポジット×2、S映像×1、コンポーネント入力を搭載。コンポーネント入力は、D1(480i)までの対応となる。
入力は480iまでだが、「TVBOX2」ではI/P変換回路を内蔵しているため、プログレッシブ出力が可能だ。ただし、プログレッシブ対応のDVDプレーヤーなどで480p信号を出力すると、TVBOX2で信号を検知せず、ディスプレイに何も表示されないため、あらかじめプレーヤー側をインタレース出力に設定しておく必要がある。できれば、プログレッシブ入力に対し、エラーメッセージを表示するといった対策を施して欲しかった。 音声入力は、ステレオRCA×2、ステレオミニ×1を装備する。映像出力はD-Sub 15ピン。本体には、モノラルスピーカーを内蔵している。 出力解像度は640×480ドット(VGA)、720×480ドット、1,024×768ドット(XGA)の3種類を用意。720×480ドット出力はCRTディスプレイ専用で、液晶ディスプレイなどではアスペクト比を正しく保持できない。 PCとディスプレイを共用する場合は、PCの映像をパススルー表示することになるが、三菱製の17型CRTディスプレイ「RDF17IF」で1,024×768/1,280×1,024/1,600×1,200ドットと解像度を上げても、目立った画質劣化は感じられなかった。 ■ 画質は高クオリティ。OSDの表示速度がやや不満 まず、TVチューナ入力を利用したテレビの表示品質をチェックした。ディスプレイには、三菱製のCRT「RDF17IF」を利用。CRTディスプレイ利用時には720×480ドットでの仕様が推奨されているため、この解像度でテストを行なった。 まず、チャンネル設定は地域コード入力と、自動選局の2方式から選択可能。局名表示(アルファベット表示)もできる。局名を任意に入力することはできないが、あらかじめ登録されている局名から選ぶことができる。登録されている局名は100局以上で、現在の日本の放送局は網羅しているという。地域コード入力では、3桁の地域番号を入れるだけで設定可能となっており、東京の場合030と入力するだけで、きちんとチャンネル設定された。
TVBOX2では、リモコンのメニューボタンを押して画質設定やモード設定が行なえる。画質設定では、3次元Y/C分離や、ノイズリダクション、ゴーストリダクションのON/OFFの設定が可能だ。あまり受信状況のよくない編集部では、いずれの高画質機能も効果的だった。 ただし、ノイズリダクションでは、若干の色味の変化が感じられた。良好な受信状態やDVD視聴時には[OFF]で利用したほうがいいかもしれない。ゴーストリダクションも同様に若干の変化が見られるが、特に受信状態の悪いチャンネルでは、大幅な画質向上が望める。
なお、これらの基本操作はリモコンで行なう。リモコンは12chキーのわかりやすいものだが、OSDの操作に1秒弱のタイムラグがあるのはちょっと厳しい。特に設定をいろいろ変更している際には、ストレスを感じる。 また、内蔵スピーカーはモノラルなので、テレビ視聴時の音響が若干寂しくなるのは否めない。しかし、ヘッドフォン端子や外部スピーカー出力端子も備えているので、ヘッドフォンやスピーカーを利用すればステレオ再生も可能。 ただし、ステレオに設定している時に、2カ国語放送が始まった場合は、音声が自動で切り替わらず、主音声/副音声が同時に出力されてしまう。その場合はリモコンの「主/副音声切替」ボタンで、任意の音声に切り替える必要がある。 ・3つのモードを比較
また、TVBOX2では、現在のフレームから過去4フレームを参照する動き検出に対応したI/P変換回路を搭載。「スタンダード」、「ゲーム」、「ピクチャー」の3つの画質モードが用意されている。I/P変換ロジックや色設定が異なっているようで、同社によれば、「スタンダード」は、テレビ表示に適したモードで、動き検出を抑え動画表示を重視。「ゲーム」は文字通りゲーム用のモードで、動き検出をしない。「ピクチャー」は、動き検出を行ない静止画表示のチラツキを抑えているという。 3モードを比較してみると、「スタンダード」が赤色が強めに出るのに対し、「ゲーム」は色温度が低めな傾向がある。ピクチャーとスタンダードの差はあまり大きくないが、ピクチャーでは動画再生時のノイズ成分がやや多くなっているように感じられた。 また、ゲームだけやや画像がネムくなっている印象で、例えば、ニュースの天気予報を見た場合では、「スタンダード」と「ピクチャー」では、日本地図の高低差を表す緑色の稜線がくっきり見えるが、「ゲーム」では、平面的でグラデーションがかかって見えてしまう。 DVDで動きの激しいシーンなどを見ても「スタンダード」で特に大きな破綻は無いので、テレビやDVDの視聴であれば、スタンダードモードが最適と感じた。
PC用ディスプレイの場合、ディスプレイ側で色温度の設定なども柔軟に変更できる場合が多いので、より最適なセッティングが行なえるのも魅力だ。 例えば今回試用した、「RDF17IF」では、9,300K/6,500K/5,000KとsRGBの指定が可能となっている。CRTディスプレイの場合、デフォルトでは色温度が高く、冷たい色合いになりがちのため、6,500K/5,000Kと色温度を下げることで、テレビで見慣れた発色に近づけることができる。また、TVBOX2側でも、明るさ、コントラスト、色合い、色の濃さを30段階、ガンマ補正を10段階で設定できるので、柔軟な画質設定が可能だ。 ・「液晶用に開発」の実際 「液晶ディスプレイにテレビ放送を美しく表示するために開発した」と同社リリース中でも記載されているため、液晶ディスプレイ利用時の品質にも期待がかかる。早速、1,024×768ドット表示の15型液晶ディスプレイ、NEC「1525M」に接続してみたが、特に違和感なくXGA表示が行なえる。 もっとも「1525M」は古い製品で、パネルとしての性能が今ひとつなので、明るさや応答速度にやや不満が残る。テレビとしては、CRTで見たほうが好印象だ。試しに、TVBOX2をXGA出力に設定して、SXGAパネルを採用しているSamsungの「SyncMaster 172T」と接続したところ、明るさなどパネル性能が大幅に上ということもあり、こちらの方が印象はよかった。今のPC用液晶ディスプレイの主流、特に高輝度/高コントラストな液晶は、SXGA(1,280×1,024ドット)に移行しているため、XGAという上限は必ずしも最適では無いように感じる。SXGA用のスケーラーなども搭載しているとよかったのだが。 ・その他の機能 特殊機能として、リモコンの「静止」ボタンを押すと、その場面を停止できる一時停止機能も備えている。特にキャプチャができるわけではないので、個人的には取り立て必要な機能とも思えないが、アイ・オー・データでは、利用例として、「料理番組のレシピが表示されているときに、ちょっと停止して、メモをする」といった用途を挙げている。 また、30/60/90/120分の4段階のオフタイマー機能も搭載しているが、PC画面にテレビ画面を子画面表示する「ピクチャインピクチャ」機能がないのは残念なところだ。 ■ まとめ 画質的には、この手のスキャンコンバータでは、かなり高クオリティと感じる。特にTV視聴時の3次元Y/CやGRTの搭載による画質の向上は、他製品と比べてかなりのアドバンテージとなるだろう。例えば、以前レビューをお送りしたノバックの「EntaVision」と比べて、大幅に表示クオリティは上で、やや癖はあるがテレビと遜色なく扱える。操作性にしてもわかりやすく、OSDの速度を除けば、不満も無い。 また、コンポーネント入力も備えており、DVD視聴時の高画質も魅力的。ただし、価格も標準で27,800円と競合製品と比べてやや高め。機能を考えれば、この価格も納得できるが、できれば、SXGAまでの液晶への対応などより大きな差別化も行なって欲しかった。とはいえ、高画質と使いやすさのバランスを、うまく纏め上げていることは確かだ。 □アイ・オー・データ機器のホームページ (2003年3月14日)
[Reported by usuda@impress.co.jp]
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