同じくコクーンの新製品としては、書き出し用のDVD-R/RWドライブを備えたハイブリッドレコーダ「NDR-XR1」も話題だが、本機は5.1chホームシアターシステムに、HDDとインターネット接続機能を加えたもの。録画番組の書き出しは行なえないものの、CDDB対応のHDDジュークボックス、HDDビデオ録画、フォトアルバム、Net MDとの連携など、その機能は多岐にわたる。
機能パックの購入は、ハガキ、またはオンラインで行なう。オンライン購入は、NAV-E900で閲覧できる専用サイト「<コクーン>ホームシアターシステムhome」で可能。自由に組み合わせられるが、結局は買い得感あるフルパックを選んだ方が後悔しなくて済みそうだ。 なお、製品購入時には各パックを30日間限定で使用できる。パック購入前に、自分の使用パターンを見極めるため設けられたもので、ファンクションを移動するたびに試用期間である旨が表示される。また、試用期間に同じ機能を1日で30回使用すると、試用期間が1日分短縮される。
5.1chシステムとしては、2002年10月発売の「DAV-S880」を思わせる仕様となっている。スロットイン式ではなくなったものの、プログレッシブDVDプレーヤー、100W×6ch(3Ω)のS-masterフルデジタルアンプ、ペンシル型の2ウェイ5スピーカー、パッシブ型サブウーファなど、共通点は多い。 本体部はフルサイズ機器より少し小さい横幅355mmで、前面と天板はヘアライン仕上げの金属製。重量も小柄な割には7.2kgもあり、最近のカジュアル系AV機器としては非常に高級感がある。それでいて、前面に配置された緑色のアクリル部分がアクセントとなっており、無骨な印象はない。 入出力端子は、D2出力、S映像/コンポジット入出力、光デジタル音声入力、アナログ2ch入出力を装備。さらに、USB 1.1端子を備え、Net MDとの接続や、USB HDDへのバックアップが可能となっている。 また、スピーカー端子には、同社の5.1chシステムで採用されている専用ソケット式を採用。わかりやすく、手間もかからないのだが、スピーカーケーブルの変更はできない(改造という手もあるが)。ソケット自体も固く、抜き差しにくいので、通常のスピーカーターミナルでも良かったのではと思う。スピーカー側の端子は一般的なバネ式だ。
■ DVDビデオ300枚分の再生位置を記憶可能
加えて、オリジナル音場プログラムの「CINEMA STUDIO EX A」、「同EX B」、「同EX C」、「HALL」、「JAZZ CLUB」、「LIVE CONCERT」、「GAME」を選択できる。同社のAVアンプや5.1chシステムでおなじみの機能で、EX Aが標準、EX BがSF・アクション作品、EX Cが音楽ソフトに適しているという。同時に、ヘッドフォン視聴時にサラウンドを楽しめる「HEADPHONE THEATER」も使用できる。 DVDビデオのプログレッシブ出力は、ノイズが良く抑えられたすっきりした画像。フィルムソース、ビデオソースともに動きは滑らかで、特に問題はなかった。ただし、プリセットの色調モードもなく、コントラストや彩度などを細かく変更する機能もない。 早送り/早戻しは2/10/16倍速。一時停止からのスロー送りは可能だが、スロー戻しは不可能。早送り/早戻しや、スロー送り時の字幕表示には対応していない。コマ送り/コマ戻しも不可能で、その代わり、フラッシュボタンという約10秒前に戻るボタンと、約10秒後に進むボタンを装備している。 面白いのは、字幕・音声・アングルの設定や、リジューム位置、ブックマークを本体に300枚分記憶できる「ディスクメモリー機能」だろう。ディスクの取り出後にも設定記憶する機能はこれまでにもあったが、300枚は多い。なお、ブックマークとは、ディスク中の任意の再生位置を記憶する機能で、ディスク1枚につき最大で9カ所設定できる。 フルデジタルアンプによる音質は、帯域は狭いものの、まとまりは悪くない。ただし、無音時のホワイトノイズが気になったのと、エージングが済んでいないためか、サブウーファが200Hz程度までしか再生していないように思えたのが残念。変な強調も無く、J-POPにはちょうど良いまとまり感を得られるが、映画だと少し力不足かも知れない。
■ 再生と録画を両立できないHDDビデオ機能 ビデオパックを購入すると、ファンクション「HDDビデオ」と「テレビ」が利用できるようになる。予約録画の作業は、専用ページから行なう「ネット番組ガイド」と、日時・チャンネルを指定する「タイマーメニュー」で行なう。 ネット番組ガイドについては、「週刊Electric Zooma!」の第106回で紹介した「NDR-XR1」と同じなので、そちらを参照してほしい。XR1同様、E900でも動作が遅く、家電としての基準、「日々のちょっとした隙間時間に作業できる」という点でつらいものがある。ただし、アーティスト検索やジャンル検索は便利なので、タイマーメニューと使い分けるのも良い方法だろう。 録画モードは、SP/EP/SLPの3種類。録画画質の印象は、XR1の同名各モードと同じ雰囲気で、SPでも輪郭の甘さが目に付くが、録り捨てが前提だとすれば納得できる範囲だ。録画中には、追いかけ再生などのいわゆるタイムシフト再生も行なえる。なお、音声付き早見再生や、カット編集機能などには対応していない。 最大録画時間は、SPが約26時間、EPが約46時間、SLPが約92時間。なお、80GBのHDD中、HDDビデオで使用できるのは60GBまでで、残り20GBはHDDジュークボックスとフォトアルバム、そのほかのシステムファイルの格納で兼用する。
この機能で一番奇妙なのが、録画と再生を同時に行なえない点だ。録画済の番組を視聴中、予約録画の時刻が近づくと、編集作業を中止するようにと警告のダイアログが現れる。「再生しているだけなので大丈夫だろう」とそのまま視聴を続けると、再生が強制終了し、録画中の番組が表示される。録画と再生が同時にできるというのは、同社のClip-Onをはじめ、HDDビデオレコーダでは良くある機能。運用方法に大きく影響するので、ぜひとも改善してほしい点だ。 録画番組のタイトル名は、ネット番組ナビを使うと自動的に入力される。自分で編集することも可能で、文字入力は携帯電話風のテンキー入力で行なう。また、漢字の変換には予測変換「POBox」が採用されており、比較的容易に文字入力が行なえた。 なお、POBoxはHDDビデオジュークボックスなどのほかのファンクションでも使用できる。リモコンのテンキーも使いやすく、文字入力に関しては同種の製品の中で使いやすい方だ。もっとも、ファンクションの1つとしてメールの送受信ができるほどなので、当然の配慮かもしれない。
■ HDDジュークボックスはCDDBに対応 オーディオパック購入で使用できるようになるファンクションは、HDDジュークボックス、チューナ、Net MD、MGメモリースティックなど。HDDジュークボックスは、リニアPCM、またはATRAC3でHDDに録音する機能で、音楽CDに加え、チューナ、外部入力からの録音にも対応する。加えて、MGメモリースティックやNet MDのチェックイン/アウトも行なえる。Net MD機器を接続するUSB端子は背面と前面に搭載している。 ATRAC3のビットレートは66/105/132kbps。使用できるHDD容量は20GBで、最大約500枚分のCDアルバムを録音できる(66kbps時)。ATRAC3を記録したCD-R/RWからのHDD録音には対応していない。また、メモリースティックPROには非対応だが、アップデートで対応する予定があるという。
音楽CDからのコピー時には、CDDBによる曲情報の検索と取得が可能。家電系のHDDオーディオ製品はいくつか存在するが、ここまで簡単に曲情報を入力できる製品は珍しい。ネット接続型家電のメリットだろう。20GBという容量に不足を覚えるが、PCレスのHDDオーディオに興味ある人は注目すべき製品だ。Net MDやメモリースティックへの連携、タイマーを使ったチューナからの録音など、オーディオ機器としての使い道も多い。 もちろん再生音には、ドルビープロロジック IIやCINEMA STUDIO EXなどを適用できる。サブウーファの鳴りが今1つなので迫力不足だが、リビングでのカジュアルな音楽再生環境としては強力だ。 なお、コピーコントロールCD(BoA/Every Heart-ミンナノキモチ-)とレーベルゲートCD(SOUL'd OUT/ウェカピポ)のATRAC3での録音を試したところ、普通の操作でHDDへ格納された。ただし、レーベルゲートCDについてはCDDB上に曲情報が存在していないようだった。
■ 高速で実用的なフォトアルバム機能 フォトアルバム機能では、CD-R/RWやメモリースティック内のJPEG/TIFF/PNG/GIF/BMPを表示できる。HDDへのコピーも可能で、20GB分(HDDジュークボックスと共用)を使用可能。テレビへの出力はどんな解像度のファイルでも720×480ドットに変換して表示し、静止画表示対応の家電としては非常に高速な表示を行なう。もちろん、スライドショーも設定可能で、Exif情報の表示にも対応している。
各画像には日付やタイトルを設定可能で、それらをキーにした検索やソートもできる。もちろん日本語タイトルの入力と表示に対応する。この種の機能を搭載したDVDプレーヤーは多いが、表示スピードの遅さがネックとなり、今1つ利用価値が薄かった。それらに比べると、E900の静止画表示機能はきわめて実用的だ。20GBという大容量を扱えるので、電子アルバムとして十分活用できるだろう。
■ HDD搭載で5.1chシステムの新しい魅力を発掘 すべての機能パックを導入したE900は、家電としては驚くほどのの多機能なシステムになる。各ファンクションともHDDを5.1chシステムに加えたメリットを良く引き出しており、実用的なものが多い。煩雑になりがちな操作も、上手くまとめられており、動作も速い。DVDプレーヤーとしても十分な機能と画質を提供してくれる上、E900Vで完結しているためか、操作を覚えるのも比較的簡単だ。 また、CDDBに対応したHDDジュークボックスが秀逸。かつて、いくつかの家電系HDDオーディオ機器が発売されたが、常時接続が普及した今こそ、製品化するのに良いタイミングなのかもしれない(コピーコントロールCDなどとの兼ね合いもあるが)。個人的には、スピーカーなしの単体モデルの登場や、音質の向上に期待したい。 問題は中途半端なHDDビデオだろう。録画番組の再生と予約録画が同時にできないとなると、HDDビデオレコーダとしての使い勝手は大きく損なわれる。わざわざ追加機能にしたくらいなので、それなりの完成度の機能にしてほしい。また、ネット番組ナビの動作の遅さも改善してほしい点だ。 もっとも、E900の機能以前に、オープンキースタイルというビジネスモデルに釈然としないものを感じる。確かに、ますます多機能化する家電に対し、ユーザーが必要な機能だけに費用を払うというコンセプトはうなずける。しかし、実装している機能の制限解除に、料金が発生するのはなんとなく納得がいかないという気持ちもある。常時接続が一般化すれば、こうした販売形態も普通になるのだろうか。
□ソニーのホームページ (2003年5月1日) [AV Watch編集部/orimoto@impress.co.jp]
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