第3作目「ターミネーター3」の劇場公開が、いよいよ目前に迫った「ターミネーター」シリーズ。しかし、AV Watch的に注目したいのは、米国・カナダで6月3日にリリースされた「T2: Extreme DVD」だ。 「T2」は、複数のバージョンのDVDがすでに発売されており、非常に複雑。そんな混沌とした中で登場した「T2: Extreme DVD」の最大の特徴は、ハイビジョン解像度のWindows Media 9(WM9)で収録したDVD-ROM「T2:High-Definition」が付属すること。やはり、この目で「ハイビジョンDVD」を見ておかなければならない。その使命感から早速、amazon.comで購入。購入価格は22.49ドル、送料が5.98ドルで合計28.47ドルだった。 届いたT2: Extreme DVDは、トールケースにスチールのケースが被せてある特殊仕様。スチールケースはエンボス加工されていて価格の割には質感が高いのだが、工作精度は低く歪んでいて、目の部分の赤い塗装も少しずれているという、アメリカンなアバウトさ。最初、輸送時に歪んでしまったのかと思ったのだが、合わせ目からずれていたので、簡単には直せそうもない。 ディスクは2枚組みで、Disc1にDVDビデオ、Disc2にWM9バージョンが収録されている。DVDビデオは特別版(SPECIAL EDITION)、WM9は劇場公開版(THEATRICAL VERSION)と内容まで違っているのが面白い。ちなみに、DVDビデオの音声はドルビーデジタル EXと、ドルビーヘッドフォンという珍しい仕様となっている。 中に入っている説明書を読むと、T2:High-Definitionの再生の推奨環境は、3GHz以上のCPU、512MB以上のメモリ、Windows XPと、かなりのマシンスペックを要求している。また、インターネットに接続していることも必須になっている。最初は、これが何を意味しているのかわからなかったが、後から非常に重要であることがわかった。 再生に使用したのは、Pentium 4 2.4GHz/メモリ 512MB/RADEON VEを搭載したPC。ビデオカードが旧々世代なのは、HTPC(Home Theater PC)としてDVI-D出力でプロジェクタ「Piano(HE-3100)」を接続しているから。このマシンでゲームをすることもないので、ビデオカードの性能に関しては不満はない。音声の出力には、「Sonica Theater」を使用。この5.1ch出力をAVアンプに入力して、マルチチャンネル再生環境を作った。CPUが、推奨スペックに達していないが、とりあえずこの環境で試してみた。 早速、Disc2をPCのDVDドライブにセット。すると、普通のDVDビデオでも馴染みのある再生ソフト「InterActual Player」が、インストールされて起動する。しかし、ここで再生しようとすると、「リージョンが違う」という内容のメッセージが表示された。
パソコン上では通常のDVDビデオは、DVD-ROMドライブ、DVD再生ソフト、OSのそれぞれでリージョンが管理されている。しかし、T2:High-Definitionは、それらとは関係なく、再生しているマシンのIPアドレスをチェックして、米国内かどうか判別しているようだ。 ここでは詳細は書かないが、そこを回避すれば、DVD-ROMドライブのリージョンが2であっても問題なかった。もちろん、しっかりとDRM(Digital Right Management)がかかっており、次にライセンスの取得画面が現れる。このライセンスを取得すると再生が可能になる。
多少面倒ではあるが、この作業は初回再生時のみで、それ以降は必要ない。ライセンスを取得していれば、DVD-ROMにあるファイルをMedia Playerにドロップして再生することもできた。もちろん、ライセンスを取得していないマシンで再生することはできない。その辺はしっかりしている。 プロパティを見てみると、ビットレートは6,790kbps、解像度は1,440×816ドット、オーディオはWMA 9 Professional 440kbps 48kHz 5.1ch 16bit 1-pass CBR。ちなみに、日本のハイビジョンは、D3が1080i、1,920×1,080ドットで、D4が720p、1,280×720ドット。D3より解像度は落ちるが、24p収録されているので、画質ではD3より優位だろう。
DVDビデオ同様チャプタも設定されており、操作感覚はほどんどDVDビデオと変わらない。ただ、オーディオの選択や、字幕の表示はできなかった。しかし、今後リリースされるタイトルでは、サポートされていくと思われる。 実際に再生してみると、Pentium 4 2.4GHzでは少しコマ落ちが発生するが、なんとか鑑賞に堪える。画質をDVDビデオと見比べてみると、やはり収録解像度が高いだけのことはあり結構差がある。Piano搭載パネルは848×600ドットで、1,440×816ドットより低いが、それでも違いはわかる。 しかし、オーディオは、DVDビデオの方に収録されているドルビーデジタル EXより、軽い印象。理想を言えば、映像はWM9で音声はDTSで鑑賞したい。今のところ、PCからAVアンプには、ドルビーデジタル/DTS/PCMは光デジタルで、WMA9はSonica Theaterから、ステレオミニ-RCAケーブルでアナログで入力している。 USB接続の5.1chセットなどを除けば、WMA9のデコードに対応した単体AVアンプがない状況では、充実したドルビーデジタルやDTSと同じレベルの環境で、WMA9を聞くことは不可能に近い。そのため、現在ある音質差がコーデックの差であると言い切れないのが、難しいところだ。 現状ではT2:High-Definitionを、AV機器で視聴しようと思うと映像、音声ともに敷居が高いといわざるを得ない。映像面ではアナログRGBや、DVI端子のあるビデオディスプレイならば問題ないが、D4やD3で接続しようと思うと、「TVC-D3/AGP2」(すでに生産終了)など数少ない選択肢があるだけだ。 その一方で、PC用の液晶ディスプレイは解像度がどんどん上がっている。そのため、DVDビデオの解像度720×480ドットでは、かなり引き伸ばして表示することになり、どうしても画像が荒くみえてしまう。しかし、T2:High-Definitionのように1,440×816ドットあれば、かなり有利であることは間違いない。 つまり、今の環境では、AV機器よりパソコンで見る方が、T2:High-Definitionのメリットが感じられることになる。もちろん、「じゃあ、PC環境で見ればいい」という結論もあるだろうが、高画質であればあるほど、大画面で見たいというのが正直なところ。 「WM9でハイビジョン」の画質を知ってしまったからには、この後に他のタイトルも出てほしいと思うと同時に、できるだけ早くAV機器側がWM9に対応するか、PCからAV機器への接続性を高めてほしいと切に願うのだ。
□Microsoftのホームページ(英文) (2003年6月30日)
[furukawa@impress.co.jp]
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