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MPEG-4変換機能を備えたハイブリッドレコーダ
松下電器 「DMR-E100H」
発売日:8月1日 標準価格:オープンプライス


■ 新DIGAは録画ファン向けの機能が売り

 どちらかといえば初心者層の開拓に力を入れていた松下電器のレコーダ戦略だが、今夏投入の「DMR-E100H」と「DMR-E200H」では、録画ファン向けのマニアックな機能を売りとしている。

 具体的には、DVD-Rの4倍速記録対応DVD-RAM/Rドライブ、アナログBSチューナ、地上波EPG(E200Hのみ)などの採用で、中でも注目されるのが、民生用レコーダ初の「MPEG4同時録画」だろう。MPEG-2とともに作成されたMPEG-4は、一旦HDDに保存される。その後、SDメモリーカード(MMCも可)やDVD-RAMにコピーできるという仕組みだ。

 SDメモリーカードにコピーした映像は、「D-Snap(SV-AV30)」や、SDカードスロットを備えた携帯電話などで視聴が可能。録画番組を外へ持ち出せることに、大きなメリットを感じる人も多いだろう。正式対応を謳う機種はまだ少ないが(対応機種一覧)、同社では「連携可能な機器を順次増やしていく」とコメントしており、今後の展開にも期待がかかる。

 「夏DIGA」のうち、先行発売されるDMR-E100Hを借用できたので、今回はMPEG-4同時録画を中心に紹介する。


■ MPEG-2レコーダとしては従来通りの機能

 E100Hは「DMR-E90H」の後継に位置付けられており、E90Hからは120GB HDD、BSアナログチューナ、PCカードスロット、DV入力端子、リモコンの形状などを継承。「DMR-E80H」からは、DVDオーディオ再生機能(ただし2chのみ)、DVD-Rへの無劣化ダビング、音声付き早見再生を受け継いでいる。

 ハイブリッドレコーダとしてのトピックは、DVD-Rの4倍速記録に対応したこと。DVD-Rへは無劣化ダビング(高速ダビング)も可能なので、番組を外部メディアに残しておきたいライブラリ派にはうれしい機能アップだ。ただし、DVD-RAMは従来通り2倍速となっている。

 SPで録画した約1時間の番組をダビングしたところ、DVD-RAMは約13分、4倍速記録対応のDVD-Rは約7分43秒で完了。DVD-Rの場合、ダビング後にファイナライズ作業を行なうが、約1分35秒で終了した。

前面 右側面 背面
前面左のスロット類と扉内 トレイはDMR-HS1などと同じ角型タイプ 操作スイッチ類

 MPEG-2での録画機能は、E80HやE90Hをほぼ踏襲している。インターフェイスは比較的とっつきやすく、初めてディスクレコーダを購入する層でも、すぐに基本機能を使いこなせるだろう。

【再生互換テスト】
ディスク種別 結果
DVD-R
DVD-RW(VRモード) ×
DVD-RW(ビデオモード)
DVD-RAM(VRモード)
DVD+R
DVD+RW
コピーコントロールCD
(BoA/Every Heart-ミンナノキモチ-)
レーベルゲートCD
(SOUL'd OUT/ウェカピポ)
※この動作結果はあくまでチェックした個体での動作状況です。また、編集部では個別の動作状況についてお答えできません。ご了承ください。

 録画モードはXP、SP、LP、EPの4種類。他機種のような細かいビットレートの指定は不可能だが、ディスクの残り容量からビットレートを自動設定するFRモード、音声のPCM記録(XPのみ)といった、最近のDIGAシリーズの特徴は継承している。また、DVD-RAM/Rへの直接記録にも対応し、HDDとDVD-RAMにまたがって録画する「リリーフ録画」も利用できる。

 予約方法はGコードと日時・曜日指定の2種類。予約録画は1カ月32番組まで対応。別売になるものの、携帯電話などから予約ができるブロードバンドレシーバー(DYNET2)も利用できる。

 編集機能は「部分消去」と「番組分割」を搭載。操作性は従来機通りで、リモコンにはこの種の作業で良く使うコマ送りボタンも実装している。ライバル機よりもプレビュー画面が大きく、作業も比較的快適だ。

 タイトル入力は相変わらずリモコンからとなるが、テンキーを使った携帯電話風の入力にも対応。なお、ブロードバンドレシーバーがあれば、番組名の自動取得も可能になる。

【MPEG-2の録画サンプル】
モード 記録時間
(HDD)
解像度 平均ビットレート 音声 サンプル画像
XP 約26時間 704×480ドット 8.73Mbps リニアPCM
(1,536kbps)

xp.mpg
(22.3MB)
SP 約52時間 5.69Mbps ドルビーデジタル2ch(256kbps)
sp.mpg
(14.5MB)
LP 約104時間 352×480ドット 3.47Mbps
lp.mpg
(8.73MB)
EP 約160時間 352×240ドット 2.25Mbps
ep.mpg
(5.57MB)
編集部注:DVデッキ「WV-DR5」で再生したCREATVECAST Professionalの映像をRF経由でDMR-E100Hに入力し、HDD上に録画。その後、太陽誘電製のDVD-R「DVDR-D47TY」に高速ダビングした。掲載した静止画は、すべて800×600ドットで表示したものをキャプチャしている。(c)CREATIVECAST Professional

MPEG-2の再生環境はビデオカードや、ドライバ、OS、再生ソフトによって異なるため、掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。


■ 意外とシンプルな操作性の「MPEG4同時記録」

 MPEG-4は通常のMPEG-2と同時に作成され、HDDに自動保存される。MPEG-2を中心に使っていて、HDD以外へMPEG-4ダビングを行なわない限りは、利用者がMPEG-4の存在を意識することはない。

 MPEG-4の録画モードは「スーパーファイン」、「ファイン」、「ノーマル」、「エコノミー」の4種類で、切り替えは「初期設定」→「ディスク」→「MPEG4録画」→「MPEG4録画モード」で行なう。設定したモードが、すべての番組録画に反映される仕組みだ。ここで「切」を選べば、MPEG4同時録画をキャンセルできる。

 通常の録画・再生においてMPEG-4が前面に出てこないのは、操作の煩雑化を避けた結果だろう。しかし、予約番組ことに同時録画のON/OFFやモードの選択ができれば、使い勝手もより向上すると感じた。また、古くなったMPEG-4ファイルを自動削除する機能や、MPEG-2の削除に連動して消去される仕組みも欲しい。サイズが小さいとはいえ、MPEG-4データがどんどんたまっていくのは精神衛生上よろしくない。

 MPEG-4の視聴は、リモコンの「機能選択」→「SD動画(MPEG4)」で可能。ただし、画面いっぱいに引き伸ばせないので、実用性はそれほどない。もっとも、E100Hでの視聴はMPEG-2で行なえばいいので、あくまでもダビング前の確認用として設けられた機能なのだろう。

 同時録画されたMPEG-4は約10分単位で分割され、タイトル名は「MOL001」、「MOL002」といった具合にE100Hが勝手に付けてしまう。MPEG-2のタイトル名は一切反映されない。プレビューで内容の確認はできるものの、ファイルが軽い割にはプレビュー表示が遅く、イライラしてしまった。

 なお、MPEG-4の部分削除、分割は不可能。タイトルのリネームと、プログラムの削除のみ可能だ。

MPEG-4の内容をテレビで確認できる ダビング先としてSDメモリーカードとDVD-RAMを選択可能 ダビング前に「ダビングリスト」を作成する

 MPEG-4は、SDメモリーカードに加え、DVD-RAMへもダビングできる。MPEG-2と同時録画された約10分のMPEG-4(スーパーファイン、54.5MB)の場合、SDメモリーカードへは約50秒でコピーを完了した。ただし、PCカードにはMPEG-4ダビングできず、従来通りPCカードスロットは静止画専用のインターフェイスとなっている。

 また、後からMPEG-2をMPEG-4へ変換することも可能だが、HDD→SDメモリーカードへのダビングに限られる。MPEG-4の画質指定は、ダビング設定の前に「初期設定」→「ディスク」→「MPEG4録画」→「MPEG4録画モード」で任意のモードを設定する必要があり、少し面倒だ。なお、変換ダビングには必ず実時間かかる。

 ダビング先がDVD-RAMの場合、MPEG-2→MPEG-4変換ダビングには対応していない。また、SDメモリーカードおよびDVD-RAM→HDDへのMPEG-4ダビングは、高速ダビングのみ可能となっている。

 作成されるMPEG-4は、解像度320×240/176×144ドット、フレームレート最大15fpsのASF形式で、音声はG.726。いくつかのコーデックを自動ダウンロードすれば、Windows Media Player 9で再生が可能だった。

 MPEG-4記録に関しては、既存のインターフェイスに無理やりねじ込まれた印象。洗練の余地がまだ残されていると感じた。しかし「録画後に変換」や「追いかけながら変換」するのではなく、同時に記録するのがポイント。そのため、実用性はこれまでになく高い。ネットワーク配信などには対応していないが、MPEG-4対応機器の所有者なら利用して損はないだろう。

 そのほかダビング関連では、DVD-R作成時に、サムネイル付きのメニュー画面を作れるようになった。Dreamや従来のDIGAではリスト表示だけだったので、ライブラリ作成派にはうれしい変更だ。

【MPEG-4の録画サンプル】
モード 記録時間
(128MBカード)
解像度 フレーム 平均ビットレート 音声 サンプル
スーパーファイン 約16分 320×240ドット 15fps 985kbps G.726
(32kbps)
sf.asf(1.77MB)
ファイン 約40分 12fps 419kbps fine.asf(911KB)
ノーマル 約57分 176×144ドット 247kbps normal.asf(527KB)
エコノミー 約2時間50分 6fps 97kbps eco.asf(236KB)
編集部注:HDD上のMPEG-2ファイル(xp.mpgと同じもの)を、SDメモリーカードに変換コピーした。(c)CREATIVECAST Professional

MPEG-4の再生環境はビデオカードや、ドライバ、OS、再生ソフトによって異なるため、掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。


■ XP、SPの画質に不満はなし

リモコンはDMR-E90Hと共通。なお、E200Hのリモコンのジョグシャトルは、E100Hではシャトルは使えず、ジョグの反応も鈍かった
 DVDプレーヤーとしては、54MHz/10bitの映像DAコンバータを搭載し、プログレッシブ出力にも対応。プログレッシブモードは、ビデオ素材用の「Video」、フィルム素材用の「Auto1」、Auto1に加えて30コマ/秒記録にも対応する「Auto2」を選択できる。

 画質モードは「ノーマル」、「ソフト」、「ファイン」、「シネマ」を用意。さらに、コントラスト、ブライトネス、シャープネス、カラー(色の濃さ)、ガンマを個別に調整可能な「ユーザー」も選択できる。ノイズリダクションも充実しており、「3次元NR」、「ブロックNR」、「モスキートNR」を自動で適用する「MPEG-DNR」を設定可能。ユーザーモードのみ、それぞれのノイズリダクションを個別に適用できる。

 録画画質は、従来シリーズとほぼ変わらない印象。XPはオンエア時と変化が感じられず、SPは動きの激しいシーンで若干ノイズが気になるものの、実用度は高い。ただし、GRTを搭載していないので、受信環境によっては物足りなさを感じるかもしれない。

【メニュー画面例】
機能選択 初期設定(ディスク) 初期設定(映像) 初期設定(音声)
プレイリスト 画面表示(1) 画面表示(2) 部分削除
タイマー予約 Gコード予約 予約リスト タイトル入力
画質設定 ユーザー画質設定 DV入力自動録画
MP3ディスク再生画面
(c)CREATIVECAST Professional


■ GRTと地上波EPGが不必要なら強力な選択肢に


 バックグラウンドでMPEG-4を生成するシステムは良くできており、今後の可能性を感じさせる。ただし、試用しているうちに、もっとMPEG-2との連携を望みたくなったのも確か。例えば、MPEG-2を削除するとMPEG-4も削除されるように設定できたり、MPEG-4のファイル名にMPEG-2のタイトルを反映できたりすると、より便利に使えるだろう。

 夏DIGAの購入予定者にとって、最も気になるのが上位機種のE200Hとの差だろう。発売日はE100Hが8月1日、E200Hが9月1日を予定。7月31日現在、大手量販店での予約価格はE100Hが128,000円、E200Hが168,000円。価格差は4万円となっている。

 E200Hのみの機能は、地上波EPG、GRT、ジョグシャトルリモコンなど。さらに、E200HはHDDが160GBとなり、ブロードバンドレシーバーも内蔵。DVDオーディオもマルチチャンネル出力に対応する。これらが不要だという方ならE100Hでも不満はないはずだ。


【DMR-E100Hの主な仕様】
HDD容量 120GB
録画可能ディスク DVD-RAM、DVD-R
再生可能ディスク DVDビデオ、DVDオーディオ、DVD-RAM、ビデオCD、音楽CD、CD-R/RW(MP3可)
チューナ VHF 1~12ch、UHF 13~62ch、CATV C13~C63ch、BS1/3/5/7/9/11/13/1ch
入出力 映像入力 S映像×3、コンポジット×3
映像出力 D2×1、S映像×2、コンポジット×2
音声入力 アナログ2ch×3
音声出力 光デジタル×1、アナログ入力×2
その他 DV×1、SDメモリーカードスロット×1、PCカードスロット×1
消費電力 約40W(待機時3.5W)
外形寸法 430×296×79mm(幅×奥行き×高さ)
重量 5.6kg

□松下電器のホームページ
http://matsushita.co.jp/
□製品情報
http://panasonic.jp/dvd/recorder/e100h/spec/01.html
□関連記事
【リンク集】ディスクビデオレコーダ関連記事リンク集
http://av.watch.impress.co.jp/docs/link/recorder.htm
【7月14日】松下、Ethernet/EPG搭載DIGA最上位モデル「E200H」
-120GB HDDの「E100H」も。MPEG4同時録画に対応
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030714/pana1.htm

(2003年7月31日)

[AV Watch編集部/orimoto@impress.co.jp]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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