■ 社運をかけたか? D-snap 11日に行なわれた新「D-snap」の発表会はやけに豪華だった。CMキャラクタの浜崎あゆみが登場し、目算で500人を上回る報道陣が駆けつけるなど、従来のD-snapとは比較にならないぐらい熱の入ったものだった。 発表されたのは、MPEG-2録画に対応した「SV-AV100」や、MPEG-4対応の「SV-AV50」、従来モデル同様のデザインを採用した「SV-AV35」、9.9mm厚の「SV-AS10」の4モデル。 従来SDメモリーカード対応のMPEG-4ムービーカメラの総称とのイメージがあった「D-snap」だが、今モデルからはMPEG-4に限らずMPEG-2やMotion JPEGの撮影に対応したモデルも登場した。新たに、「撮る(静止画)/録る(動画)/見る/聴くを手軽に楽しめるコンパクトなSDマルチカメラ」という定義がなされ、ワールドワイド展開されるという。 今回は4機種の中から、その薄さで注目を集める「SV-AS10」をレビューする。SV-AS10は、回転式の単焦点レンズを搭載し、静止画/動画の撮影が可能。さらに、ボイスレコーディングや、SDメモリーカードを使ったポータブルオーディオプレーヤーとしての機能も搭載しながら実売価格で約3万円と低価格。なお、従来のD-snapの代名詞でもあったMPEG-4録画/再生はできない。 ■ 9.9mmの薄さは驚異的。新コントローラ「ジョグボール」搭載
同梱品は、本体のほか、バッテリ(VW-VBA05)、USBクレードル、ACアダプタ、USBケーブル、ステレオイヤフォン、リモコン、キャリングケース、クリーニングクロスなど。動画/静止画/オーディオデータ用にSDメモリーカードを利用するが、メディアは別売となっている。 本体を見て驚くのはその薄さ。外形寸法は51.5×13.5×103.7mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約57g(本体のみ)と携帯電話などと比較しても薄くて小型。胸ポケットに収まるサイズで、カバンなどへの収まりもいい。 本体上部には、回転式のレンズを搭載。レンズは35mm判換算で35mm相当の単焦点で、270度回転するため、自分撮りも可能となっている。CCDは211万画素(有効200万画素)。本体正面にフラッシュを装備し、背面には1.5インチの液晶モニターを備える。背面にはシャッターボタンや、反転切り替え/HOLDボタン、MENUボタンと、新開発のジョグボール、スピーカーを搭載する。 右側面にもシャッターボタンと、電源ボタン、撮影/再生切り替えスイッチを装備、左側面にはヘッドフォン/リモコン端子を装備する。下部のロックをスライドさせながら解除して開くと、SDメモリーカードスロットと、バッテリが現われる。
充電はUSBクレードルで行なえ、パソコンとの連携もクレードル経由で行なえる。充電時間は120分で、静止画撮影は約110枚、音楽は最大10時間の連続再生が可能。
■ 静止画/動画/音声記録機能を9.9mm厚のボディに統合 本機で利用できる機能は静止画の撮影(JPEG)、動画の撮影(Motion JPEG)、ボイスレコーダなど。別売のSDアクセサリーセット「SD-Jukebox Version 4 Light Edition(VW-SJK10)」、もしくは「SD-Jukebox Version 4 Standard Edition(SH-SS20)」を購入することで、パソコンからのオーディオ転送に対応、オーディオプレーヤーとして利用できる。店頭予想価格はLight Editionが8,000円、Standard Editionが4,000円。
電源投入後は、かなり高速に起動し、1秒程度で撮影/再生画面が表示される。本体の操作は、向かって右脇の撮影/再生切り替えスイッチで、撮影モードと再生モードを切り替えて行なう。撮影モードでメニュー画面を開くと、[RECモード]という項目があり、ここで、静止画や動画、ボイスレコーダ、連写、音声付スライドの切り替えが行なえる。同様に再生モードの場合は、再生する動画/静止画/音楽の切り替えが可能だ。 選択、決定などの操作は、主にジョグボールで行なうのだが、このジョグボールに慣れるまで結構苦労した。クリック感がまったくなく、当初は、なかなか思い通りの選択が行なえなかった。上下左右に倒したり押し込むのでなく、動かしたい方向に転がすような感じで触れると移動できるのだが、その感覚をつかむまではかなり戸惑う。また、慣れてからも高速に操作するのはやや難しい感じだ。
パソコンとの連携は、USBクレードル経由で行なう。USBストレージとして認識可能で、付属ソフトのSD-Viwer Version 2.1により、画像/動画などの管理も行なえる。対応OSはWindows 98 SE/Me/2000/XP。 ・静止画撮影機能 デジタルスチルカメラとしての機能はとてもシンプル。MENUモードで静止画モードを選択し、後はシャッターボタンを押すだけ。解像度は、1,600×1,200/1,280×960/640×480ドットで、それぞれにファイン/ノーマルモードが用意されている。 1,600×1,200ドットのファインモードの画質はなかなか良好で、明るい場所で撮影すれば200万画素級のデジタルカメラと比べても遜色ない印象だ。レンズ背面にはマクロボタンも装備し、マクロモード時には最短で10cm迄寄れる。縦型の撮影スタイルにはやや慣れが必要かもしれないが、トイデジカメなどとは一線を画すクオリティだと思う。
また、レンズ部は回転式で、いわゆる「自分撮り」もできる。自分撮りの際に液晶のプレビュー画面が上下反転してしまうが、MENUボタン下のREVボタンを押すことで、上下を再度反転させて、撮りたい画像の方向でプレビュー/記録できる。
設定はフルオートでも大抵の状況でうまく撮影できる。室内撮影などでホワイトバランスやISO感度を変えたい時や、フラッシュの発光調整などは、MENU画面から行なう。設定には2階層下がってから選択動作を行なうため、あまり高速に設定変更を行なうことはできないが、ISO感度はISO100/200/400、ホワイトバランスは晴天、白熱灯など4モードが用意され、露出補正機能や、赤目軽減機能、ナイトモードなども用意されている。 また、面白いのが、付属のリモコンの再生/撮影ボタンで、シャッターを切れること。例えば胸ポケットに入れながら、リモコンでシャッターを切るといった撮影が行なえるなど、なかなか面白い。 RECモードで音声+静止画を選べば、撮影後最大10秒までの録音を行なう音声付静止画撮影も可能。また、連写モードでは3コマ/秒の連写撮影も行なえる。 再生画面では、サムネイル表示や、スライドショー表示も可能。また、記録した画像のリサイズ機能や、セピア/白黒などの加工を加える「カラークリエイト」も備えている。 ・動画撮影機能 動画モードでは、320×240ドット/15fpsで、Motion JPEG形式で最大60秒間撮影できる。従来モデルまでのD-snapの代名詞といえるMPEG-4の撮影機能は搭載していない。 動画のクオリティは、なかなか良好だ。解像度、記録形式とも、デジタルカメラの動画撮影機能とさほど変わらないが、レンズが回転するため、一風変わった撮影ができるのも面白い。静止画と同様に、リモコンで録画の開始/終了が行なえる。なお、動画撮影時には、プレビュー画面の上下反転機能は利用できない。
・音楽再生/ボイスレコード機能
ボイスメモモードでは、本体内蔵のモノラルマイクにより、SDカード記憶容量の最大値まで録音可能。また、別売のオーディオソフト「SD-Jukebox Version 4 Light Edition」、「SD-Jukebox Version 4 Standard Edition」を利用することで、オーディオプレーヤーとしても利用できる。 今回は、SD-Jukebox Version 4 Light Edition(実売4,000円)を利用してテストしてみた。SD-Jukeboxからの転送にはやや時間がかかり、計50MBのMP3ファイルで2分程度。対応音声フォーマットはMP3/WMA/AAC。 音質的には、情報量が高く全体的なバランスもいい。また、ヘッドフォンもプレーヤーに付属するものとしては、かなり音質がよいので、再生能力的には十分といったところ。リスト表示やSD-Jukeboxで作成したプレイリストの再生、リピート再生なども行なえる。
ただし、本体で操作を行なうと、バックライトの点灯に伴い、ノイズが乗ることがある。曲飛ばし/戻りや、再生/停止操作などはリモコンで行なえるので、基本設定ができたら、リモコン操作をメインにしたほうがいいだろう。 Pentium M 1.4GHz/メモリ 512MB搭載のノートPCでSD-Jukebox使ったところ、起動も遅く全体的な動作感もややもっさりしている。また、ライブラリへの登録にも時間がかかり、約5GB/約1,200曲のライブラリを読み込んだら登録に2時間以上かかった。加えて、1,200曲中の2つのファイルが読み込めずにアプリケーションが終了してしまうことがあった。元々SDへの転送を前提としたアプリケーションで、GBクラスのライブラリを想定していないのかもしれないが、やや気になるところだ。 面白いのは、曲の印象やイメージを元に選曲するという「ミュージックソムリエ」機能。楽曲を解析し、「ウキウキ系」、「切ない感じ」、「癒し系」といったキーワードに適した曲を選曲してくれるというもの。曲単位で印象の似た曲の検索も行なえる。思いがけない選曲や、なかには「なんでこれが……」という選曲もあるが、使ってみるとなかなか面白い。こうした解析を行なっているため、ライブラリ登録が遅いのかもしれない。
一通りの機能を使ってみて気になったのは、操作性について。記録/再生モードの選択を除き、全ての操作をMENU画面からジョグボールを動かして機能を選択する必要がある。ジョグホイールの操作に慣れれば、それ自体は困難ではないが、モードを変更するためにMENUを立ち上げるのはやや煩わしい。できれば、専用ボタンなどで[静止画]、[動画]、[音楽再生]などのモード切替ができるとよりわかりやすかったと思う。 ■ 実売3万円で充実の機能。パナソニックは市場を作れるか? 最新シリーズから「撮る(静止画)/録る(動画)/見る/聴くを手軽に楽しめるコンパクトなSDマルチカメラ」と定義された「D-snap」。SV-AS10も、1台でなんでもできるポータブルデバイスとして、とにかくさまざまな機能が詰め込まれている。3万円程度で、これだけの製品が購入できるというのは、かなりお買い得感が高い。 日刊Webメディアの担当者としては、ボイスレコーダや予備のデジタルカメラ、Web公開用の動画用など、あらゆるシチュエーションで、重宝しそうな機能が満載。しかも薄型/軽量で取り回しもいいとくれば、SV-AS10を持ち歩かない手はない。非常に魅力的な製品だ。デジタルAV機器などの興味を持っているユーザーであれば、さまざまな機能を統合した便利なデバイスとして、興味をそそられる製品だろう。 しかし、D-snapへのパナソニックの力の入れ具合は、そうした一部のマニア層より、広く一般層にまでこうした動画カメラを訴求していこうというものだ。個人的にはAS-SV10が便利で、重宝するデバイスなのは疑いないところだが、そうした普通のユーザーにとってはどのようなシチュエーションで活用されるのか、やや見えてこない部分がある。 たとえば、上位モデルの「SV-AV100」、「SV-AV50」、「SV-AV35」では、DIGAで録画したMPEG-4の再生という利用法を提示しているが、SV-AS10についてはそうしたわかりやすい機能上のウリもない。こうしたポータブルデバイスが本当に大きな市場として立ち上がるのか? 現段階では今ひとつピンとこないところもあるが、こうしたデバイスが、普通のユーザーに受け入れられるような新たな利用方法を開拓していってほしいと思う。その点では今後のパナソニックのマーケティング戦略にも期待がかかるところだ。 □松下電器のホームページ (2003年9月19日)
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