~ 期待の低価格IEEE 1394オーディオインターフェイス ~ |
FireWire410 |
FireWire対応のオーディオインターフェイスとしては、Mark of the Unicorn(MOTU)の「MOTU828」、「MOTU896」、そして最新の「MOTU828mkII」や、以前にも紹介した「Presonus Audio Electronics」の「FireStation」、TASCAMの「FW-1884」、さらには間もなく登場するといわれるYAMAHAの「01X」など、選択肢が広がりつつある。
大別するとYAMAHAが提唱するmLANに対応したものと、そうでないものがあるが、今回紹介するM-AUDIOのFireWire410もmLAN非対応の製品。mLAN対応の必要性についてはここでは述べないが、FireWire410では独自のドライバにより使いやすくしていることは確かだ。
■ 豊富な入出力を装備
実際の性能を見る前に、まずはスペックをチェックしていこう。FireWire410は1Uのモジュールで、サイズは235×174×44mm(幅×奥行き×高さ)と横幅が普通のハーフラックサイズよりもやや長め。
FireWire410の背面 |
オーディオの入出力はアナログが2IN8OUTで、それとは別系統にS/PDIF(オプティカルとコアキシャル各1系統)のデジタルが2IN2OUTという構成。アナログの2つの入力はフロントにXLRキャノンと1/4TRSフォン(バランス)両用の入力があるほか、リアには1/4TRSフォン(アンバランス)のライン入力が2つ用意されており、フロントのスイッチで切り替えて使う。このフロント端子は、XLRがマイク用、TRSフォンがギターやベースと直接接続可能なハイインピーダンス対応となっている。マイク入力はもちろん+48Vのファンタム電源対応だ。
また、アナログ出力のほうはリアに1~8という番号が振られた1/4TRSフォン(アンバランス)のライン出力があるほか、各出力をモニタリングするためのヘッドフォン端子があり、2系統別々に音量コントロールできる。いずれも最高24bit/96kHzまで扱えるようになっているのだが、アナログの1番と2番の出力のみは最高24bit/192kHzまで利用可能。
さらに、これらオーディオ出力とは別にMIDIの入出力が1系統用意されているので、FireWire経由でオーディオとMIDIが一度に扱える。このモジュールをPC/AT互換機やMacintoshと、FireWireケーブル1本で接続できで、OSはWindows 2000/XP、Mac OS 9/Mac OS Xに対応する。
Windowsの場合はWDM、ASIOおよびGSIFの各ドライバが利用可能。また、Mac OS 9の場合はASIO、Mac OS Xの場合はCoreAudioの利用が可能で、SoundManagerには対応していない。いずれの場合も、付属の12VのACアダプタを使って利用する形にはなっているが、FireWire側からバス電源供給できる場合はACアダプタは不要となる。
■ ドライバをインストールしてテスト
コントロールパネルのデバイス情報 |
実際にWindows XPにドライバをインストールしてみたところ、いたって簡単。FireWireで接続するとフロントの青色LEDが点灯し、利用可能な状態になる。たとえば、Windowsのコントロールパネルの「サウンドとオーディオデバイス」を起動すると、M-AUDIO FW-410ドライバが6つ見える。
このうちMultiというのはマルチポート出力対応のアプリケーションで利用するためのドライバ。今回は利用しないが、1/2、3/4、5/6、7/8、S/PDIFのそれぞれのポートから出力できるというものだ。
また、ドライバをインストールすると、タスクトレイ上にM-AUDIOのロゴのアイコンが表示されるが、これをダブルクリックすると、FireWire410のドライバ設定画面が現れる。
タスクトレイ上にM-AUDIOのロゴのアイコンが表示される | アイコンをクリックするとドライバ設定画面が表示される |
使ってみるとわかるが、このFireWire410は一般のオーディオインターフェイスとはちょっと違った構成になっている。これ自体がミキサーであるという概念なのだ。最初に出てくる画面は、「Mixerセクション」というものだが、ここでアプリケーションソフト側からの入力レベルを設定している。つまり、先ほどM-AUDIO FW-410 1/2のようなドライバがアプリケーション側で見えるという話をしたが、その出力がこのミキサーに入ってくる。
デフォルトでは1/2用に1/2、3/4用に3/4の各ポートへ出力するように設定されているが、1/2にS/PDIFのポートへルーティングするように設定すると、アプリケーション側で1/2に出力したはずのものがS/PDIFへ出力されることになる。ここでは複数を選択することも可能だから、ドライバ側で1/2へ出力したものを全部のポートへ出力するといったことも可能になる。またこの画面を見てもわかるとおり、Aux Sendが可能になっており、ここで設定したものをヘッドフォンで聞いたり、各ポートから出力することもできる。
画面の右側にはアナログの入力レベル設定があり、ここでは入力レベルを設定するとともに、モニタリングする際の出力ポートを設定できるようになっている。
次にoutputタブをクリックすると、各ポートの出力レベルを設定する画面が出てくる。これは先程のミキサー側で設定したものをどれだけのレベルにするかを設定するもので、ミキサー側を理解してしまえば簡単だ。面白いのは各ポートのmainというボタンをクリックすると、緑のauxという表示に変わること。こうすると、本来出力される信号ではなく、ミキサー側でAux Sendで設定した信号が出力されるようになる。こうした面を見ても、まさにミキサーという感じのオーディオインターフェイスであることがわかるだろう。
outputタブから、各ポートの出力レベルを設定する画面 | 各ポートのmainというボタンをクリックすると緑のauxという表示に変わる |
さらにもう1つのhardwareタブをクリックすると、サンプリングレート、ASIO、WDMのバッファサイズ、Syncに関する設定画面が出てくる。このバッファサイズはデフォルトで256サンプル、一番小さくて64サンプルに設定できる。ここでのレイテンシーをSONAR2.2を使って確認したところ、96kHzのサンプリングレートでWDMが0.7msec、ASIOが0.7msecという結果になった。
サンプリングレート、ASIO、WDMのバッファサイズ、Syncに関する設定画面 | SONAR 2.2で見るWDMドライバのレイテンシ | ASIOドライバのレイテンシ |
右端のコントローラノブに自由に機能を割り当てられる |
もう1つ面白いのは、これまでの各画面の一番右側に登場していた、グローバルメニューというもの。ここでは、まずFireWire410のフロントパネルにあるレベルコントローラノブの機能の割り当てが行なえる。
具体的には、ミキサーにおけるアプリケーション側からの「全チャンネルの入力レベルをコントロール」、「全ポートの出力音量をコントロール」、「入力ポートのレベルをコントロール」、「ヘッドフォンのレベルをコントロール」、「Aux Sendのレベルをコントロール」のいずれかを選択できる。
また、その下のスイッチでは、メイン出力をミュートするか、DIM(20dB下げる)することを実現するもので、さらに下にはunit1と書かれたものがある。実は、FireWire410は将来的にドライバのバージョンアップにより複数台のFireWire410を同時に利用可能になる予定で、そのための表示とのこと。ただし、現時点においては1台のみしか利用することはできない。
■ 入出力品質をチェック
さて、これまで使い勝手という面で見てきたが、実際の音質的な性能はどんなものなのだろうか? カタログを見ると、AD用のチップにはAKMの24bit/96kHzエンハンスト・デュアルビットADC(AK5380)が、DA用にも同じくAKMの24bit/192kHz DAC(AK4381/4355)が搭載されており、非常に高音質である旨が書かれている。
無音時のノイズレベル測定結果 |
ちょっと気になったのは、フロントの入力はバランスに対応しているがリアは入出力ともすべてアンバランスであるということ。このことは、ノイズ対策上問題になったりしないのだろうか? いつもと同じようにテストした。
具体的には、192kHzに対応しているという1番と2番の出力をリアの1番と2番のアナログ入力に直結。また発振が起こらないように、ダイレクトモニタリングのルーティングを切断。その上で、まず何も音を出さずにレコーディングした際のノイズレベルがどのくらいになるかを測定してみた。
これを見るとだいたい-90dB程度。アンバランスでの接続の割にかなりいい結果である。これまで見てきたアンバランスのオーディオインターフェイスの中ではトップクラスだ。
次に-6dBの1kHzのサイン波を出力した結果のスペクトラムを見てみた。これを見ても、非常にきれいな波形を再現している。若干の高調波と50Hz程度での若干のノイズが見られる程度であり、参考指標となるこの測定におけるS/Nも83.27dBという値を示している。また、スウィープ信号の結果も完全に水平線となっていて、まったく問題はない。試しにヘッドフォンでモニタしてみたが、これも非常にハッキリとしたキレイな音質であった。
-6dBの1kHzのサイン波を出力した結果 | スウィープ信号の結果 |
■ 総論
以上、FireWire410を検証した。小さなモジュールではあるが、アナログ・デジタルあわせて4IN10OUTというスペックを持ち、ACアダプタなしのバス電源供給で動作する便利なオーディオインターフェイスだ。
Delta Live |
DAWソフトが高性能なミキサーを持っているので、オーディオインターフェイス自体のミキサー機能の必要性がどこまであるかはわからない。しかし、デフォルトの状態で使えばミキサーの存在を無視して利用することもできるので、障害になるわけでもないし、使ってみるとかなり便利に利用できるのも確かだ。どうせならバランスの入出力が欲しかったというユーザーもいるかもしれないが、これだけのスペックおよび性能を持って実売60,000円程度なら、納得のいくところではないだろうか?
なお、FireWire410には標準でDelta Liveというアプリケーションソフトがバンドルされている。これはabletonのLiveJamをベースとしたM-AUDIOの特別バージョンであり、日本語対応となっている。LiveJamの標準価格が23,000円なので、Liveを使ってみたいという人にとっては嬉しいオマケだろう。
□M-AUDIOのホームページ
http://www.m-audio.co.jp/
□製品情報
http://www.m-audio.co.jp/products/FireWire410/FireWire410.html
□関連記事
【9月8日】【DAL】IEEE 1394対応オーディオインターフェイス
~ フィジカルコントローラも搭載した「TASCAM FW-1884
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030908/dal115.htm
【3月24日】【DAL】mLAN対応オーディオインターフェイス「FireStation」を試す
~ その1:特徴とmLANの設定~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030324/dal93.htm
(2003年9月29日)
= 藤本健 = | ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL」(リットーミュージック)、「MASTER OF REASON」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。 |
[Text by 藤本健]
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