■ パソコンをサーバーとしたネットワークオーディオシステム MP3やWMAを利用するHDDポータブルプレーヤー市場が盛り上がりを見せている2003年。それらを利用するためには、パソコンでMP3/MWAなどにエンコードするわけで、折角パソコンにファイルをためるのであれば、そちらを活用したいもの。 そうしたパソコン上のオーディオファイルを活用する製品が、今回取り上げるオンキヨーの「NC-500X」だ。同社が開発したネットワーク音声プロトコル「Net-Tune」に対応。EthernetケーブルでLAN接続できるので、DHCP対応のブロードバンドルータなどに接続して、ホームサーバーやパソコンに貯蔵した音楽データの再生が行なえる。
従来モデルの「NC-500」は、オーディオレシーバと位置づけられていたが、NC-500Xでは20W×2ch(6Ω)のアンプを搭載。単体でサーバー上の音楽再生やFM/AMラジオのスピーカー出力が、行なえるようになったのが最大の変更点だろう。 また、PC用ソフトウェアもアップデートされ、「Net-Tune Central Ver.1.2」では、パソコン側から「NC-500X」をコントロールできるようになった。なお同社では、NC-500のユーザー向けにも、ファームウェアのアップデートとNet-Tune Centralソフトウェアの提供によるPCからのコントロールの対応を検討しているが、今のところ対応時期は未定。 標準価格は5万円、従来モデルから機能が強化されながら、価格据え置きとなっている。今回は、NC-500Xとあわせて発表されたスピーカー「D-057MP2」(1万円)とともに試用し た。 ■ ミニコンポサイズの本体
外形寸法は205×279×91mm(幅×奥行き×高さ)で、同社のミニコンポシリーズ「INTEC205」にあわせた横幅となっている。重量は4kgと見た目から想像するより、ずっしりと重い。 前面には大型の液晶ディスプレイを搭載。左側に電源ボタン、右側にINPUT切り替えボタンや、DISPLAYボタン、ボリュームボタン、カーソルボタン、SELECTボタン、再生ボタン、停止ボタンなどを装備し、一通りの操作が本体でも行なえる。 背面には、Ethernet端子を装備。また、FM、AMアンテナ入力と、AUX入力などを備える。アナログ出力は、FIXED OUTとVARIABLE OUTを用意する。さらに、OSD出力(コンポジット)も装備し、テレビ上にディレクトリ表示画面などを映しながら、操作することもできる。 付属の10キー付きのリモコンは、形こそオーソドックスだが、[ALBUM]、[ARTIST]、[GENRE]、[PLAYLIST]などのボタンを装備しており、このボタンを押すことでパソコン/サーバー上のオーディオファイルのタグ情報から、アルバムやアーティストごとの曲選択が行なえる。
■ ネットワーク設定は簡単
早速、パソコンにコントロールソフト「Net-Tune Central」をインストール。対応OSはWindows 2000/XP。アプリケーションを起動すると、タスクトレイ上に[Net-Tune Central]のアイコンが表示される。 対応するオーディオフォーマットは、MP3/WMA(32~192kbsp)とWAVE。まずは、曲データベースを作る必要があるので、アイコンの左クリックから[データベースの作成]を選択し、対象となるフォルダを指定するとデータベースが作成される。約5GB/1,479曲のDB作成にかかった時間は約1分50秒。 本体のディスプレイは日本語表示はカナ表示のみとなっているのだが、このDBを作ることで日本語(漢字/かななど)のファイルでもカナのタグ情報が付与されるようで、DBをきちんと作れば日本語ファイルでも曲名の確認などが行なえる。
自動でカナ変換されるのは便利だが、時折間違えた読みで入力されることがある。そうした場合は、エディターでこのタグ情報の詳細な編集も行なえる。また、CDDBなどで曲情報を取得できないWAVEファイルなどでも、ここで曲情報を書き加えれば、アーティスト名などの表示が可能となる。ここでの編集内容はNet-Tune Centralで管理されるもので、音楽ファイル自体のタグ書き換えなどは行なわない。 ネットワーク設定は、DHCPサーバーが動いているルータ下で同一サブネットマスク内であれば、有線/無線を問わず、接続するだけで認識された。 ■ レスポンスは良好。コントロールソフトはもう一歩の洗練を期待 電源投入から、ネットワークのサーバーを探しにいくまでは3~5秒ほどかかかるが、その後のレスポンスは良好。ネットワークオーディオ製品にありがちなバッファ待ち時間などはほとんどなく、曲のスキップは、専用CDプレーヤーなどとほとんど変わらない感覚で行なえる。この辺りは、同社が開発し、オーディオ機器として最適化された「NTSP」(Net-Tune system protocol)によるところが多いようだ。 レスポンスもよく、操作性も良く練られており特に不満を感じる点はない。むしろこのレスポンスの速さはちょっとした驚きですらある。 本体ディスプレイでは、4行表示が可能。サーバーを介した音楽再生時にはサーバーの状態と、トラック名、アーティスト名、再生時間などを表示できる。リモコンではアルバム/アーティスト/ジャンル/プレイリストごとの表示が行なえるので、DB情報をしっかり作ってあれば、戸惑うことはないだろう。ただし、ディスプレイ自体は4行表示だが、曲やアルバム情報の表示行は基本的に1行なので、例えばアルバム検索でも、200枚以上のアルバムなどがある場合ではかなりのスクロールが必要となる。
また、NC-500XはOSD出力を装備しているので、テレビ画面で操作することもできる。本体液晶はアルバム名は1行表示までしか行なえないが、OSD表示だと5行表示となるため、アーティスト別の表示や、アルバムを一覧するときなどの視認性は大幅に向上する。
また、大きな特徴としては、Net-Tune Centralにより、パソコンからのコントロールが可能となったことが挙げられる。タスクトレイ上のアイコンから左クリックで「コントローラ」を選択するとコントロール画面が起動して、各種本体操作が行なえる。電源投入から、ボリュームコントロール、ジャンル/アルバム/アーティスト別の表示など一通りの操作が行なえ、レスポンスも良好だ。パソコン画面では一覧表示できるために、リモコン操作などと比較して視認性は高い。 アルバム変更なども瞬時に行なえるので、Windows Media Playerなどで音楽を再生しているのとほとんど変わらない感覚で利用できる。ただし、やや熟成不足な点もいくつか感じられた。 たとえば、本体では行なえる曲の残り時間表示などが行なえなかったり、ウィンドウサイズを上下には拡大できるが、左右に拡大できない点などだ。また、Windows Media PlayerやWINAMPのようにスライダーで、曲の任意の位置に移動できる機能があると良かったと思う。
また、プレイリストの作成がこのコントローラ画面で行なえないのも残念だ。プレイリストを作るときはタスクトレイのアイコンから「エディター」画面を立ち上げ、そこで任意のプレイリスト名(英語/カナのみ)を作成し、リストからドラッグアンドドロップでコピーしなければならない。いちいち別画面を立ち上げないとできないというのは不便なので、コントローラ画面上で再生中に、プレイリストを作成できれば便利だろう。 ■ 音質は良好
同時に発売されるスピーカー「D-057MP2」と組合わせて試聴した。ペア1万円のスピーカーで、101×136×169mm(幅×奥行き×高さ)/1kg(1台)と小型。早速鳴らしてみると、思いのほか再生レンジが広く、驚かされた。小音量時の再生でもしっかりと、広い音場感が得られる。 独自のスリット型バスレフポートを採用しているためか、低域はサイズから考えるとかなり量感が豊かな印象。ただ、ソースによっては、ヌケの悪さを感じる部分もあり、リズム主体のソースだと違和感を感じることもあった。どちらかというと、ストリングス系、クラシック系の音の再生に適しているのかもしれない。 MDFを採用したキャビネットの仕上げは上質で、ペア1万円のスピーカーとしては品質感は非常に高い。音質についても、価格からみればかなり良いスピーカーといえる。
スピーカーを変えてPMCの「TB2SM」で試聴してみたが、NC-500Xはアンプとしての性能もかなり高く、ボリュームをかなり上げても破綻は感じられない。音質的にもかなりよく、音量を上げてもMP3やWMAらしい圧縮感や、高域の荒れなどなども感じられず、滑らかな印象だ。このあたりは独自の高音質化回路「VLSC」によるものかもしれない。なお、VLSCのON/OFF設定は行なえない。 アンプの出力は20W×2ch(6Ω)。ヤマハの「NS-10M PRO」や、ソーテックのVH-7PCの付属スピーカーなどと繋ぎ変えてみたが、スピーカーの個性もきちんと鳴らし分け面白い。 また、AM/FMチューナを内蔵しているほか、インターネットラジオ機能も備えており、リモコンやソフト上からワンボタンで、呼び出すことができる。再生関連では、ランダム再生や、リピート再生に対応。また、90分から10分刻みのスリープ機能も搭載している。 ■ まとめ 前モデルでは、外部のアンプが必要だったり、パソコンからのコントロールが行なえなかったことを考えれば、大幅な機能強化が図られたといっていい。オーディオジュークボックスに興味を持っているユーザーにはかなり魅力的な製品となるだろう。 ただ、パソコン上でコントロールできるようになったことで、パソコンの外付けサウンド機器と競合するようなイメージが出てきてしまたかもしれない。例えば、「USBのサウンドユニットで音楽再生すればいいのに」とか……。 NC-500Xはあくまで音楽再生用として設計されているのでオーディオジュークボックスに実売で5万円近く出せるかどうかというのが購入時の最大のポイントだろう。ネットワーク化により、別室のサーバーの音楽をリビングルームで再生するといった具体的なイメージが浮かぶユーザーであれば、価格に見合う価値のある製品だと思う。 □オンキヨーのホームページ (2003年10月3日)
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