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第119回:ポータブルHDDオーディオの音質をチェックする
~ その2:Nomad Jukebox Zen NXの再生性能を検証 ~


 前回に引き続き、ポータブルHDDオーディオの音質をチェックする企画の2回目。前回はその方法について考えたが、その方法に基づき、CreativeのNOMAD Jukebox Zen NXと、参考値ということで、ノートパソコンで、音質チェックを行なった。


■ 測定方法を若干変更

 前回の検証では、測定には-6dBの1kHzのサイン波、スウィープ信号、CDからリッピングした音楽素材の3つを用意し、それをWAVのまま扱うのとともに、128kbpsのMP3および192kbpsのWMAに変換して同じ実験を行なうこととした。

 また、測定にあたっては、ポータブルHDDオーディオのヘッドフォン出力をEDIROLの「UA-1000」へ入力した。その際、-6dBのサイン波を利用し、入力が-6dBになるように入力ゲインを調整することで、どの機材でも同じように扱えるだろうと想定し、前回の最後にWAVファイルの場合どうなるか実験した。この際、音を再生しないとき、どの程度のノイズがあるのかも確認できたわけだが、その後、手元で実験を繰り返していく中、2点ほど不具合が発見された。

NOMAD Jukebox Zen NX 30GB

 1点目は、Nomad Jukebox Zen NXでの再生レベルの設定の仕方について。当初、基本的にどの機材でも再生レベルは中くらいにしようと思っていたので、0~25というボリュームレベルが設定できるので、13に設定していたのだが、改めてヘッドフォンでその音を聞いてみるとちょっと小さ目であった。そして、そのレベルだと「UA-1000」のマイクプリアンプの増幅レベルをちょっと高めに設定しなくてはならず、プリアンプ側のノイズが無視できない形になってしまっていた。そこで、再生レベルは実際に聞いてちょうど良さそうなところに設定することに変更し、ここでは20を選び、「UA-1000」側の設定も直した。

 2点目は、-6dBのサイン波がピッタリ-6dBとして入力するようにしていたのだが、こうした場合、曲によっては再生時にピークを超えて音割れを起こしてしまうことがあった。そこでレベルを下げ、-7dBとなるように設定することにした。

 その2点を変更した上で、前回の最後に行なった実験を再度行なった結果が以下のグラフだ。これを前回と比較してみるとわかるように、ノイズレベルがかなり減っているのとともに、サイン波のスペクトラムでよりキレイな波形となっているのが確認できる。ということで、改めてこの手法をベースに実験を続けていくことにした。

【新測定方法でのNomad Jukebox Zen NX測定結果】
無音状態のノイズ サイン波のスペクトラム
スウィープ信号 楽曲の録音・再生


■ Nomad Jukebox Zen NXの再生性能を検証

MediaSourceオーガナイザー

 今回は、これと同じ実験を圧縮ファイルの代表として、128kbpsのMP3および192kbpsのWMAで行なった。

 前回の実証実験においてMP3はSoundForge内蔵のFraunhofer IISエンコーダを用いたが、Nomad Jukebox Zen NXの場合、「MediaSourceオーガナイザー」というソフトがバンドルされていて、これでMP3に変換するため、今回はこのソフトを用いた。WMAについては、MediaSourceオーガナイザーも、エンコーダはMicrosoftのライブラリを用いているので、従来どおりの素材を使った。なお、非再生時の実験は、とくにWAVもWMAもMP3も関係ないの割愛した。

 この実験に先立ち、確認しておきたいのは、エンコードによる波形自体の変化について。MP3の場合、WMAの場合、それぞれ特徴を持ってかなりの変化を起こしており、同じようにスペクトラム分析をしてみると、その違いがよくわかるだろう。

MP3/128kbpsの測定結果
サイン波のスペクトラム スウィープ信号 楽曲の録音・再生
WMA/192kbpsの測定結果
サイン波のスペクトラム スウィープ信号 楽曲の録音・再生

 では、これらのファイルをNomad Jukebox Zen NXへ転送し、それを再生したものをUA-1000を通じて録音し、スペクトラム分析してみよう。

 まずMP3の結果だ。サイン波の結果を見ると、明らかな違いが見え、全体的にノイズが混ざっているのがわかる。ただし、スウィープ信号のピークや音楽のデータは、あまりハッキリとした違いはわからない。とはいえ、音楽のデータを見ると、やや波形のクッキリさが薄れて、柔らかなカーブになってしまっている。やはり、これは一旦アナログ回路を通しているためなのだろう。

【Nomad Jukebox Zen NXの出力を録音した測定結果/MP3】
サイン波のスペクトラム スウィープ信号 楽曲の録音・再生

 次がWMAの結果。これもMP3の場合と基本的には同じ傾向であるが、サイン波の場合、WMAへ変換した時点で、かなり低調波・高調波が混ざっていたので、パッと見た目ではあまり良くわからない。ただし、S/Nを見るとそれなりの違いが表示されている。スウィープ信号の場合は高域でちょっと違いが見えるが、これは高い音の再生ができたためではなく、高調波などのノイズが発生した結果だ。

【Nomad Jukebox Zen NXの出力を録音した測定結果/WMA】
サイン波のスペクトラム スウィープ信号 楽曲の録音・再生

 以上が、Nomad Jukebox Zen NXの結果であるが単独で眺めていても、その意味を把握するのは難しいかもしれないが、他と比較することで、いろいろな面が見えてくるかもしれない。

 他のポータブルHDDオーディオ、さらにはシリコンオーディオ、CD-R対応MP3プレイヤーなどで同じ実験を行なうことにより、性能比較はできそうだ。今後、すべての製品を取り上げることはできないが、今一番注目されているポータブルHDDオーディオ製品、AppleのiPodや東芝のgigabeat G20などで同様の実験を予定している。


■ ノートパソコンでも検証

MURAMASA PC-MM1-H1W

 また、ポータブルHDDオーディオでの実験をするのに先立ち、もう1つの比較材料としてノートPCでも同様の実感を行なった。

 今回は、筆者が毎日持ち歩いているB5ノートPCのSHARPの「MURAMASA(Mebius PC-MM1-H1W)」を使ってみた。本体にあるヘッドフォン端子をNomad Jukebox Zen NXのときと同じように接続し、Windows Media Player 9で再生。この際のボリュームレベル設定は、聞いた感じで音割れしない範囲でなるべく大きめということで、90%程度のレベルにした。

無音状態でのノイズレベルはかなり高い

 実際に聞いてみるとパソコン標準装備の出力としては、ノイズも小さく、そこそこ悪くなさそう。しかし、実際にノイズレベルを見てみると、-68dB程度と結構なもの。Nomad Jukebox Zen NXとの違いはハッキリとわかる。

 これに続き、WAVの場合、MP3、WMAの場合それぞれで実験したのだが、以下のグラフだ。やはりオーディオインターフェイスが悪いせいで、いずれの結果もあまりいいデータにはなっていない。とくにMP3のスウィープでは、妙な結果になっている。


【ノートパソコン(PC-MM1-H1W)のオーディオ出力を録音した測定結果】
WAV
サイン波のスペクトラム スウィープ信号 楽曲の録音・再生
MP3
サイン波のスペクトラム スウィープ信号 楽曲の録音・再生
WMA
サイン波のスペクトラム スウィープ信号 楽曲の録音・再生

 機種により違いはあるだろが、ノートPCのオーディオ機能がどの程度のものなのかの参考にはなるだろう。少なくとも、Nomad Jukebox Zen NXとはかなりの性能差があることがハッキリと見えた。

【10月6日】【DAL】ポータブルHDDオーディオの音質をチェックする
~ その1:測定方法を検討する ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20031006/dal118.htm
【7月14日】ついに登場したUSB 2.0オーディオインターフェイス ローランド「UA-1000」をテスト
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030714/dal108.htm

(2003年10月20日)


= 藤本健 = ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL」(リットーミュージック)、「MASTER OF REASON」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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AV Watch編集部 av-watch@impress.co.jp

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