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第120回:各社の新製品が登場した「2003楽器フェア」
~ YAMAHAの「O1X」や、Rolandの「SONAR3」などに注目~


 10月23日~26日の4日間、横浜みなとみらいの展示会場、パシフィコ横浜で2003楽器フェアが開催された。楽器フェアは2年に1度の開催で、前回の2001年10月に池袋サンシャインシティで行なわれた

 併催された「A&Vフェスタ2003」については、すでにAV Watchで取り上げられているので、ここでは楽器フェアのデジタル関連機材・DTM関連機材にのみ絞ってレポートする。



■ YAMAHA/Roland/KORGの各ブースを紹介

 今回、2003楽器フェアに出展していたのは計159社。かなり広い会場だったが、デジタル関連・DTM関連に絞ると比較的限定されたエリアに集約されていた。

 もちろん、YAMAHA、Roland、KORGといった大手メーカーはそれぞれ大きなブースを構えていたが、DTM関連のソフトハウス、周辺機器メーカーに関しては、その多くが音楽電子事業協会(AMEI)のブース内にあった。また、YAMAHA、Roland、KORGの各社もAMEIブース内に小さなブースを設けていたので、新製品はここに集約されていた。


・YAMAHAブース

 YAMAHA、Rolandの各社はこの楽器フェアに先駆け、今月中旬に新製品発表会や内覧会を開いていたが、YAMAHAの目玉製品だったのがIEEE 1394を用いたオーディオ&MIDIのシステムmLANに対応した、デジタルミキシングスタジオ「01X」。この01Xについては、参考出品という形で以前にも概要を紹介したことがあったが、それがいよいよ11月25日に179,000円で発売されることになった。

YAMAHAブース デジタルミキシングスタジオ01X

 01Xは、24bit/96kHz対応の28chデジタルミキサー機能、オーディオ&MIDIインターフェイス機能、9本のムービングフェーダーを装備するフォジカルコントローラ機能の3つを統合した製品。YAMAHAのSOL2をはじめ、Cubase、Logic、DigitalPerformerなどですぐに活用できる。この製品については、このコーナーで詳細なレポートを予定している。

 また、シーケンスソフト、XGworksST for Windowsも登場した。これも発売は11月25日で、価格は19,800円と安価。XGworksは'99年に4.0というバージョンが出て以来4年ぶりの登場となるが、見た目はSOL2とそっくりなユーザーインターフェイスとなっている。またSTというのはSOL Technologyの略とのことで、まさにSOL2の機能削減版という位置付けだ。実際、オーディオ機能が多少減っているほか、プラグインソフトが一部削除されている形で、それ以外はSOL2そのものといってもいいだろう。

 一方、その削除されたプラグインが、WindowsのVST版とともにMac OS 9のVST版と、OS XのAudioUnits版がセットになりパッケージソフト化された。具体的には、ボーカルのピッチを補正/変更する「Pitch Fix」(24,800円)、ボーカル専用のさまざまなエフェクトを統合した「Vocal Rack」(14,800円)、そしてマスタリング用の「Final Master」(14,800円)の3種類となっている。

XGworksST for Windows Pitch Fix/Vocal Rack/Final Master


・Rolandブース

Rolandブース

 Roland/EDIROL/BOSSのグループ3社で、一番大きく目立っていたのがCakewalkの「SONAR3」。現行のSONAR2.2からのメジャーバージョンアップとなるが、SONAR3では、上位バージョンの「Producer Edition」(94,000円)と「Studio Edition」(58,000円)の2つのラインナップとなる。

 今回のバージョンアップの最大のポイントはユーザーインターフェイスの一新。これまでやや冴えない印象だったSONARが、今回かなりカッコよく仕上がった。デザインはもちろん、使い勝手という面でもよくなっている。

 とくにミキサーコンソール周りがしっかりし、Producer Editionでは各チャンネルに6バンドのパラメトリックEQが内蔵されたり、ルーティングがよりし易くなり、バスの数もいくらでも設定できるようになった。またProducer Editionはプラグインのほうもかなり充実し、Lexiconのリバーブが搭載されたり、VSampler3.0という非常に強力なソフトサンプラーもバンドルされている。


SONAR3 Producer Edition Lexiconのリバーブを搭載 ソフトサンプラー「VSampler3.0」

BR-1600CD

 さらにCakewalk製品としてCD作成ソフトPyroの新バージョン「Cakewalk Pyro 2004」および、これに、DVD作成機能やビデオCD/フォトビデオ・アルバム作成機能を搭載した「Cakewalk MediaWorks」も発表されている。

 その他にも、BOSSブランドからはCD-Rドライブ搭載のDAW機材「BR-1600CD」を発表。16トラック搭載で、8ch同時レコーディング可能、またCD-R/RWドライブも内蔵しているほか、USBでWindows/Macintoshとも接続可能という製品だ。



・KORGブース

microKONTROL

 KORGで、非常に面白かったのが「microKONTROL」(38,000円)というミニキーボードの鍵盤をベースに、35系統のコントローラを用意した機材。

 こうした製品はこれまでもいろいろ出ていたが、microKONTROLの面白さは4×4のリズムマシンのパッドのようなトリガーを搭載したほか、各フェーダーにLCDを装備し、細かな表示がされること。当然Live、Logic、Cubase、Reason……といったDAWソフト用のプリセットが用意されるほか、それぞれの状態がすべてLCDに表示されるのでなかなか使いやすい。

 また、各プリセットや自分で設定したコントローラの配置をシーンとして記憶することが可能で、それを簡単に呼び出し切り替えられるのはポイント。もちろん、こうしたコントローラの割り当てはPC側の画面でできるようになっている。外側はアルミで構成されていて、見た目にもカッコいい。スライダーやノブを触っても、しっかりした質感でなかなか使いやすそうだ。電源はUSBから供給できるほか、ACアダプタや、単3電池6本でも駆動できる。

KAOSS PAD entrancer

 DTM関連製品とは異なるが、KAOSS PAD entrancer(10万円)も目をひいた。これは従来からあるKAOSS PADのシリーズもので、パッドを指でこするだけで、音と映像の空間をコントロールできるというもの。VJ機材としていろいろと使えそうだ。

 なお、このKORGブースでは、「まもなくかなり強力なソフトシンセをリリースする」という情報が得られた。まだ、発表時期は明らかではないが、おそらく1月に米国で開催されるWinterNAMMのころになる模様。具体的な内容までは明らかにしてくれなかったが「コンピュータで音楽をしている人なら10人中、8人か9人は欲しがる音源だ」との自信を示した。



■ AMEIブースでは、M-AUDIO、MOTUなど各社の新製品を展示

AMEIブース

 AMEIブースのハードウェア関連製品では、M-AUDIOが「FireWire410」をメインに展示する一方、「OmniStudio USB」を新製品として展示していた。

 OmniStudio USBはUSB 1.1対応のオーディオインターフェイスで、4in4outを装備するとともに、14チャンネルのラインミキサーを持ち、インサーション端子や、エフェクトのセンド/リターンも用意されるなど、一般のオーディオインターフェイスとミキサーを合体させたような位置づけの製品となっている。


M-AUDIO FireWire410 M-AUDIO OmniStudio USB

 気になるのはFireWire410の上位機種や下位機種が出るのか? ということや、USB 2.0対応をどうするのか? ということ。質問してみたところ「当面USB 2.0には取り組まず、IEEE 1394でいく」とのこと。現在米M-AUDIOでは「モバイル」が製品コンセプトの1つとなっており、そのためにもIEEE 1394がいいという。最大のポイントはバス電源供給にUSBのような500mAといった制限がなく、大きな電力が得られるので、ケーブル1本で使えることにあるそうだ。

 そして、やはり上位モデル、下位モデルの開発は進んでおり、来年早々には下位モデルのお披露目がありそう。ちなみに、最上位のフラグシップモデルとなるものは、10In10Out程度のスペックで夏ごろの登場、その下のADAT搭載モデルもそのころに登場しそうである。


 MOTU製品を展示していたミューズテクスは会場にはとくに新製品を置いていなかったが、パンフレットとして、IEEE 1394対応のオーディオインターフェイス「896HD」の資料を配布していた。2Uのラックサイズのボディに18in22outを装備し、最高192kHzにまで対応している。もちろん、Mac OS 9、OS X、Windowsそれぞれのドライバが用意されている。


 一方ソフトでは、アイデックス総研がArturiaの新製品を4タイトル出していた。その1つは、先日発表されているソフトシンセで、YAMAHAのレトロシンセであるCS-80をエミュレーションした「CS-80V」。

 CS-80は、発売された'77年当時、まだ珍しかったポリフォニックに対応したアナログシンセとして世界中から注目を集め、価格も128万円した。前作のMoog Modular Vほどのインパクトはないが、レトロシンセが復活しているのは嬉しいところだ。


 あと3タイトルはすべてSTORM 2.0ベースのソフトを機能特化させた低価格版で、「ストーム・テクノ・スタジオ」、「ストーム・ハウス・スタジオ」、「ストーム・ヒップホップ・スタジオ」。いずれも11月中旬発売の予定で価格は5,980円となっている。


CS-80V ストーム・テクノ・スタジオ/ストーム・ヒップホップ・スタジオ


Space Designer

 AMEIブースにはAppleもソフトハウスの1つとして参加していた。Emagicとしての参加であり、実際にはそこにアップルジャパンの担当者とミディアのLogic担当者がいるという形だったが、当然、Logicを前面に出した展示となっていた。

 今回、新製品として出品していたのはLogic6.2以上に対応したリバーブである「Space Designer」(オープンプライス、店頭価格79,800円程度)。これはサンプリングされたインパルス・レスポンスをモデルにしたLogic用のプラグインエフェクト。LexiconやYAMAHAのリバーブなどのインパルス・レスポンス・データが計1,000種類以上収録しているので、さまざまな空間をシミュレーションすることが可能だ。

 また、必要あれば、ユーザー自身がインパルス・レスポンスを作成することもできる。ただし、この場合はLogic本体の波形エディット機能を用いるなど別のツールを用いることが必要だ。考え方としてはリバーブをかけた音から元の音を減算することで、作り出すことになる。


SampleTank2

 もう1社、メディア・インテグレーションもAMEI内にブースを出しており、ここでは「Samle Tank」の新バージョン「SampleTank2」を発表していた。

 最上位のSampleTank2 XLが年末発売の予定で69,800円。従来のバージョンに比較して、エンベロープフィルターをはじめ、音色のパラメータが圧倒的に増えたのが特徴。そのほかにも、サンプラーのエンジンとは別にピッチシフトの機能を持ち、これがすぐに利用できるようになったほか、SampleCellのインポート機能などが加わっている。



TASCAM FE-8

 そのほか、気になった新製品として数点。以前紹介したTASCAMの「FW-1884」に拡張機能として、FE-8という製品が展示されていた。これはFW-1884の横に設置してコンソールを拡張するもので、1つにつき8つのフェーダーと各種ボタン、ノブなどが用意されている。価格は105,000円と、本体価格から考えると高価だが、IEEE 1394ケーブルで拡張が可能で、かつ最大15個設置できるため、計128本まで拡張が可能だ。

 また、今回展示はなかったが、GIGA PULSEという製品も発表されていた。これも先ほどのSpace Designerと同コンセプトのリバーブソフトで、インパルスデータをもとに空間をシミュレーションするというものとなっていた。



ズーム「PS-04」

 最後に注目したいのは、ズームのコンパクトな4トラックレコーダー「PS-04」。従来からあったPS-02の後継モデルだが、さらに小さくなり、機能も強化され、価格は23,800円と安くなっている。

 4つのオーディオトラックとは別に本体のみでリズムデータの打ち込みやベースラインの打ち込みも可能で、さまざまなエフェクトも内蔵されている。なおデータはスマートメディアに保存できる。

 今回紹介したほとんどの製品は、これから発売ということなので、いくつかは後日詳しくレポートしたい。

□2003楽器フェアのホームページ
http://www.musicfair.jp/
□関連記事
【9月29日】M-AUDIO 「FireWire410」を検証する
~ 期待の低価格IEEE 1394オーディオインターフェイス ~
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【2001年10月18日】音楽、DTM機材などのイベント「2001楽器フェア」が開幕
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【2001年10月18日】【DAL】2001楽器フェアに見るDTM最新動向 Part1
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【2001年10月25日】【DAL】2001楽器フェアに見るDTM最新動向 Part2
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http://av.watch.impress.co.jp/docs/20011025/dal31.htm

(2003年10月27日)


= 藤本健 = ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL」(リットーミュージック)、「MASTER OF REASON」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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