■ 12年を経て、アイツが戻ってきた!
ターミネーター2の公開当時、そのラストシーンを巡って「これでターミネーターシリーズは終わりなのか? 続編は可能なのか?」と、議論を呼んだことを記憶している。 それから12年が過ぎた、2003年7月。色々な噂が飛び交っていた「ターミネーター3」が、ついに劇場公開された。監督がジェームス・キャメロンではないことに若干の不安を覚えながら、劇場に足を運ぼうと思っていたのだが、予想より早く劇場公開が終了してしまい、結局見逃してしまった。 そんなこんなで、DVDの発売を待っていたら、プレミアム・エディションとして12月19日に発売された。本編ディスクと特典ディスクの2枚組みで、標準価格は3,980円。初回限定でパッケージがアウターケース仕様となっている。最近のハリウッド映画の大作のDVDでは、標準的な仕様、価格だろう。 ということで早速購入したら、特に予約はしていなかったのだが、購入時に「T-X」の頭部をデザインした着信すると光る携帯ストラップを貰った。得した気分だったが、H"ユーザーなので着信しても光らないのだが……。
■ 結局、こんなオチなんですか? 前2作の監督であるジェームス・キャメロンは、'82年に「殺人魚フライング・キラー」で監督デビューし、監督2作目であるターミネーターで一躍有名になった。その後、「エイリアン2」や「アビス」、「ターミネーター2」を監督し、ハリウッドSF映画の巨匠の1人といえるだろう。また、「タイタニック」で大ヒットを飛ばしたことも記憶に新しい。 しかしターミネーター3では、キャメロンが「ターミネーターでやれることは、やり尽くした」と不参加を決めてしまったことで、新たな監督探しが始まり、結局「U-571」のジョナサン・モストウ監督に落ち着いたという。 キャメロンが監督を降りたことで、ターミネーターファンには不安が広がったが、55歳という年齢的に出演が危ぶまれたアーノルド・シュワルツネッガーが、体を鍛え直して出演したことで、「ターミネーター」であることが保証されたといっていいかもしれない。最終的には、1億7,000万ドルという巨額な製作費を使ったハリウッド大作となった。 ――サラとその息子ジョン・コナーが人類を救ってから10年後。「T-800」との別れを経験し、自身の使命を果たし終えたと思ったジョン。予告された「審判の日」はすでに過ぎさり、マシーンと人間の戦争などは永遠にないかのように思えた。しかし、ジョンは漠然とした審判の日への不安を抱え、人生の目的を見つけられず、放浪生活を送っていた。 ジョンの不安は的中し、スカイネットは存在し、ジョンの命を狙いつづけていた。今回、未来から送り込まれたのは「T-1000」を遥かに上回る性能を持つ「T-X」。プラズマ砲をはじめとする武器を備え、ナノマシンにより、ほかに機械をコントロールすることもできる。さらに、変幻自在な液体金属のボディを女性に変化させ、リストアップされた未来世界で抵抗勢力となる人間たちを次々と抹殺していった。 ジョンは新たに設定された「審判の日」が迫る中、戦いを繰り広げる。そんな彼の前に再びターミネ―ターが姿を現す。今度のターミネーターは果たして、誰が、どんな目的で送り込んだのか?なぜ、スカイネットは滅亡しなかったのか――。 今回、新ターミネーター「T-X」を演じるのはクリスタナ・ローケン。アーノルド・シュワルツネッガーより、さらにサイボーグらしい演技で、まさにハマリ役。クライマックスに近いところで、シュワルツネッガーとの壮絶な戦闘シーンが展開される。人間同士では絶対ありえないド迫力のシーンなのだが、基本的にどっちらもマシーンなので、「イタッ」とか痛みの表現がない。そのため無人の戦車同士が戦っているのと同じで感情移入ができず、人間同士が戦う深みを感じなかった。 ネタばれになるので詳細は書かないが、この映画のラストのオチには「へぇ?」と虚を突かれた。今までのターミネーターシリーズのストーリーの流れからすると、「なぜそうなるの?」という思いは消えない。 ターミネータシリーズと思わなければ、派手な金のかかった迫力のあるアクションシーンも多いし、ハリウッドの大作映画として十分に面白い。だからこそ、「こんなのターミネータじゃない」という思いもあって、鑑賞後感は複雑だった……。
■ 監督自ら「5.1chシステムのテスト用に最適」 DVD BitRate Viewer 1.4で見た本編ディスクの平均ビットレートは7.58Mbps。本編が約110分とそれほど長くはないので、実写としては高めなビットレートだ。グラフを見ても全体的に高いところで安定して推移している。 実際の画質も、発色は鮮やかで解像感も高い。ブロックノイズや質感にも不安を感じるところはなく、現在のDVDの画質として標準以上に仕上がっている。 音声は、英語がドルビーデジタル5.1chとDTS、日本語がドルビーデジタル5.1ch。ビットレートは、英語のドルビーデジタル5.1chが384kbps、DTSが768kbps、日本語のドルビーデジタル5.1chは384kbps。 ハリウッド映画らしいアクション大作なので、カーチェイスも含めアクションシーンが占める割合は高い。そのため、サブウーファがたたきだす低音が凄まじい。ボリュームに気を付けないと近所迷惑になってしまいそうだ。監督自身も、コメンタリの中で、「クレーン車のシーンでは100トラックを使って音作りをしている。このDVDは5.1chシステムのテスト用に最適だ」とまで語っている。 英語のドルビーデジタル5.1chとDTSを聞き比べたところ、サラウンド感に大きな差は感じられなかったが、低音に関しては圧倒的にDTSの方が迫力があった。 なお、劇場公開時の日本語吹き替え版ではジョン・コナーの声をDA PUMPのISSAがあてたことで話題になったが、DVD版は石母田史郎が務めている。
本編ディスクには、映像特典として4種類の予告編集(US版劇場予告編、日本版劇場予告編、PS2版ゲーム予告編、PC版ゲーム予告編)が収録される。また、オーディオコメンタリも2種類が用意されている。 1つは、ジョナサン・モンストウ監督、アーノルド・シュワルツェネッガー、ニック・スタール、クレア・デーンズ、クリスタナ・ローケンが映画の宣伝で世界中を回る合間に、1人1人が違う都市で個別に録音して1つに編集したもの。 そのため掛け合いはほとんどないが、一応シーンにあわせた解説にはなっている。個人的には、アーノルド・シュワルツェネッガーが、セクハラぎりぎりのエロ親父トークを展開しているのが面白かった。また、ターミネータの象徴的なシーンである、ヌードでの登場シーンでは「世間は体格を前作、前々作と見比べるだろうから、とにかくすごいプレッシャーがかかった。3カ月かけて徹底的に鍛えた」と語り、トレーニング方法について、かなり詳細に説明。よっぽどこだわりがあったのだろう、筋肉オタクぶりが披露される。撮影に入ったときには、体重が前作とほとんど同じ101kgになったという。 もう1つのコメンタリは、ジョナサン・モンストウ監督が1人でしゃべっている。コメンタリの出演者が1人だけというのはかなり珍しいと思うが、よほど思い入れのある作品なのだろう、あまり間を空けず、最後まで1人でしゃべりきっている。 やはり、監督のコメンタリで最も興味深いのが、どこでCGを使ったかの解説で、初見では気づかなかったがCGアクターを使っているシーンが複数あることに驚いた。 一方、特典ディスクには、「シュワルツェネッガー イントロダクション」(約1分)、「メイキング映像 インサイドT3」(約13分)、「未公開シーン」(約1分50秒)、「NG集」(約4分)、VFXに関するメイキング「T3ビジュアル・エフェクト・ラボ」(約60分)、「スカイネット・データベース」(約13分)、「ターミネータシリーズ年表」、「ストーリーボード」(約4分)、「衣装デザイン」(約2分)、「ターミネータフィギュアの世界」(約7分)、「ゲーム版T3メイキング」(約9分)の計約116分の映像を収録する。 中でもメインコンテンツは、VFXに関するメイキング「T3ビジュアル・エフェクト・ラボ」。このメイキングは、さらに「イントロダクション」(約3分)、「クレーン車の暴走」(約8分)、「T-Xの変身」(約8分)、「未来戦争」(約9分)、「クリスタル・ピーク」(約9分)、「CRS研究所」(約10分)、「オリジナルVFXクリエイト」に分かれている。 今回のVFXは基本的にILMが担当しており、どのVFXメイキングも見応えがあるが、最も興味深かったの巨大クレーン車を駆るT-Xとターミネーターとのチェイス「クレーン車の暴走」。クレーンでなぎ倒すためにビルを含めて街を作ったという。その一方で、クレーン車が転覆するシーンがCGであることが明かされる。この映像特典を見るまで、まったくCGだとは気づかなかった。解説を聞いて、見直してみて、初めて「CGかも」と思うほどのできだ。ちなみに、破壊された飛び散るタイヤの数は迫力を増すため、実際にクレーン車についているタイヤの数より多いという。 「T-Xの変身」では、T-Xが別の人間が変身する男性と女性に変わるシーンのCG製作が紹介されている。T-Xの液体金属の表現のためにスタンフォード大から人を招き、完成までに10ヵ月かかったという。担当者の「映画作りにもうルールはない。想像できるものは実現できる。スーツケースいっぱいの金があれば」というコメントが印象的だった。 また、面白い試みが「オリジナルVFXクリエイト」だ。未来戦争の2つのシーンで、視覚効果3種類を2パターンから選んでかけることができるというもので、VFXの効果を実際に確認できる。そのほかには、データベースにアクセスしている雰囲気で、各ターミネータの情報や、各キャラクタの状況を読める「スカイネット・データベース」は、映画のストーリーにあわせた好企画だろう。 必見なのが「未公開シーン」。ブリュースター将軍たちが、CRSが手がけた、T-1やハンターキラーを含む軍事コンピューター・システム「スカイネット」のプロモーション・ビデオを観るシーン。PV内にシュワルツェネッガーが登場し、ターミネータ誕生の秘密がわかる重要なシーンだ。ただ、実際に見てみると、かなりお笑いの要素が強い。そのために全体のイメージとあわずカットされたのだろう。 DVDの映像特典として珍しいのが、キャラクタビジネスのメイキング「ターミネータフィギュアの世界」/「ゲーム版T3メイキング」。「職場のパソコンの上にフィギュアを置いていてもオタクだなんて思われない。大衆文化だ」と担当者が力説していたり、ゲーム版について、シュワルツェネッガーが、「似てないと思ってたが、別物なので放っておいた」と話しているのが楽しい。
■ T4は製作されるのだろうか…… ターミネーター3は監督が変わったこともあって、前作、前々作でイメージが強烈だった、裸で未来から登場するシーンや、サングラスへのこだわり、日本語ではニュアンスが伝わりづらい「Talk to the hand.」(今回の字幕は「この手に言いな」と直訳調)といったセリフなどを引用。さらに、前2作にも出演しているシルベルマン博士役のアール・ボーエンが出演していたりと、ターミネーターシリーズであることをこれでもかと強調する。 監督しては、「ターミネーターシリーズ」であうことを印象づけたいのだろうが、個人的には逆効果に感じた。それに笑いを絡めるものだから、パロディ映画のように思えてしまう。ターミネーターシリーズと思わずに観れたら、SFアクション大作として楽しめたのに考えてしまう。 今回のDVDは、ジェームス・キャメロン監督版ターミネーターの熱烈なファンでなければ、ラストにも納得できるだろうし、特典満載で3,980円とお手ごろ価格なので購入しても損はないだろう。一般的に、3作揃うと「トリロージBOX」がリリースされることが多い。しかし、ターミネーターシリーズの場合、ターミネーター2が数種類のバージョンが発売されている上、ターミネータは20世紀FOXが発売しているという複雑な状況にあるので難しそうだ。 さて、気になる「ターミネーター4」だが、もし作るとしたら今回のラストからどうつなげるのか見当がつかない。最近は知事業で忙しいシュワルツネッガーが出演しなくても、話を展開できそうだが、その映画は果たしてターミネーターといえるのだろうか……。
□ジェネオン エンタテインメントのホームページ (2003年12月26日) [AV Watch編集部/orimoto@impress.co.jp]
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