■ 「マトリックス」シリーズ最終章
「マトリックス レボリューションズ」は、斬新なビジュアルとストーリーで話題となったSF映画「マトリックス」3部作の最終作。シリーズ第1作の「マトリックス」は、2000年3月にDVDが発売され、DVD史上初の売上100万枚を突破。2003年10月に発売された続編「リローデッド 特別版」は、2003年末までに155万枚、「アニマトリックス 特別版」は25万枚の売上を記録。シリーズの実売総計は330万枚を突破している。 映画「マトリックス レボシューションズ」は、2003年6月7日公開の前作「マトリックス リローデッド」に続いて、11月5日に公開されたマトリックスシリーズの最終章。「リローデッド」公開からDVD発売の頃のブームの加熱に比べると若干盛り上がりに欠けたような気もするが、レボリューション公開時もテレビニュースで放送されるなど、かなりの盛り上がりを見せたのは記憶に新しい。 4月2日に発売されたDVDは、本編ディスクのほか特典ディスクも付属、2枚組みで3,129円(税込)と価格は良心的だ。なお、「レボリューションズ」の発売を前に、「マトリックス」、「マトリックス リローデッド」、「アニマトリックス」を各1,575円(税込)で再販する期間限定キャンペーンも実施する。期間は3月19日からで、4月23日の出荷終了後は店頭在庫のみとなる。 特に第1、2作については、見ておかないと「レボリューションズ」の冒頭から話についていけないと思われるので、こうした低価格キャンペーンが行なわれるのは好ましいことではある。しかし、リローデッドのDVD発売から半年も経っていないのに、廉価版になってしまうのは、やや寂しいところ。もっとも、もともとの価格が2,980円(税抜)と比較的低価格なので、許せなくもない。
■ 圧巻の戦闘シーンに注目
マトリックス3部作の最終作となるだけに、ストーリは前作を引き継いでおり、いきなり現実とマトリックスの間に取り残されたネオ(キアヌ・リーブス)の目覚めからスタート。前作の内容をしっかり覚えていないと、いきなり取り残されそうな展開。 前作の謎解きもそこそこに、マシンと人間の大戦争が始まる。マシンはザイオンに迫り、人間の敗北は直前に迫る。救世主たるネオはマシン・シティーの心臓部に入り込み、CMでもおなじみのエージェント・スミス(ヒューゴ・ウィービング)とネオの決闘シーンへといたる。 ストーリはさておいて、本作のハイライトは、無数の攻撃マシン「センティネル」や、ザイオンの壁を突き破る掘削機などと、人間の運転する操縦ロボット「APU」が戦う「包囲攻撃シーン」と、ネオとスミスの決闘シーンだろう。 技術的には、前作で話題になった、バーチャルな背景にバーチャルな人間を違和感なく配置できる「バーチャル・シネマトグラフィー」をさらに洗練させている。特に包囲攻撃シーンでは、実写とセット、ミニチュア、CGなどを合成しているのだが、特に人間の動きにあわせて駆動する装甲ロボット「APU」の動きの複雑な動きや俳優の動きとの同期は非常に滑らかで、実写と見まごうほど。 APUと複雑な関節を持ったマシン「センティネル」が、戦いながら薄暗いドックの中で戦闘する様子は、前作で話題となった「100人スミス」シーンと比較しても、複雑さとディティールの表現力は大幅に向上している。 また、トレーラなどでもおなじみのネオとスミスの決闘シーンも圧巻。150体の人形と80人のエキストラからなるエージェント・スミスが見守る中、両者が戦うのだが、基本的にカンフーベースのアクション。空を自由に飛べる二人が空中で殴りあい、衝突点で小爆発が起こるという演出は、日本のマンガ、アニメを見てきた人たちには、「ドラゴンボール?」的な既視感があるかもしれないが、実際にCGで実現されるとそのスケール感は圧倒的だ。 アクションやCGのクオリティは凄まじく高く、見所は相変わらず多い。ただし、第1作のトリニティー(キャリー=アン・モス)の回転銃撃やネオののけぞりシーン、第2作の100人スミスやカーチェイスに比べると、アクションやCG利用の斬新さ、インパクトという点ではやや及ばないようにも感じる。 また、ストーリー的にも一応の決着を見るものの、情報が多すぎて若干説明不足という印象も残る。マシンが蠢く戦闘シーンも、仮想現実のマトリックスの世界を中心にしていた第1作のイメージからかなり離れており、娯楽大作として考えてみると少々難解すぎるきらいもある。前作からの期間が開いておらず、渇望感が薄かったというのもあるが、このあたりがシリーズ最終作にしては、やや盛り上がりに欠けた原因なのかもしれない。
■ 全体的に高画質。全編に渡ってサラウンドを楽しめる
最近の作品、それも超大作だけあって、全体的にノイズも少なく、高画質といえる。全体的に解像感も高く、暗部ノイズもほとんど感じられない。画質について大きな不満はない。DVD Bitrate viewer 1.4でみた平均ビットレートは6.3Mbps。 音声は、オリジナル(英語)、日本語ともに448kbpsのドルビーデジタル5.1ch。アクションシーン以外でも、そこかしこでサラウンドチャンネルを活用しており、全編に渡ってサラウンドを楽しむことができる。 特に「包囲攻撃シーン」の音作りは圧巻。強烈な銃撃音や衝突音の連続で、頭上や背後を行きかうセンティネルや爆発音など、もはやどこで何が起きているのかわからないような混沌とした音場と迫力が味わえる。また、LFE成分も強力で、サブウーファを豪快に鳴らすことになるので、深夜の試聴には注意が必要だ。
■ 充実のメイキング。監督は今回も登場せず
本編ディスクにトレーラを収録するほか、特典ディスクも付属。特典ディスクには約27分のメイキングと、CG関連の技術解説「CGレボリューション」、ストーリーボード/メイキング/完成映像をマルチアングルで収録した「スーパー・バーリー・ブロウル」、レボリューション以前のマトリックスの世界を解説した「レボリューション前史」などを収録している。 メイキングは、「リローデッド」などと同様に、監督のウォシャウスキー兄弟が登場せず、製作のジョエル・シルバーが大振りなアクションとともに概要を語る。CG技術についても言及され、17分の「包囲攻撃シーン」で、“10万GB以上”のHDD容量を必要としたという。また、モーションキャプチャのほか、無重力状態での人間の動作を参考に、その感覚の再現を目指したと話す。 さらに、前作で預言者を演じたグロリア・フォスターが死去したために、新たにメアリー・アリスを起用、脚本を書き直して、自然に話がつながるよう苦労したなどの話が明かされる。預言者の変更が気になっていた筆者にとっては、興味深かった。 「CGレボリューション」は、CGや大量のセット、ミニチュア、アクションなどを駆使した本作の制作環境などを約16分にわたり解説する。「ネオ・リアリズム」では、「バーチャル・シネマトグラフィー」の具体的な手法解説が行なわれ、第1作からのCG技術の進歩が確認できる。第1作で導入された、精神がマトリックスを超えた瞬間の表現として、カメラから時間と空間を切り離して撮影した、という「ブレット・タイム撮影(マシンガン撮影)」からの進化の歴史が解説されており、「マトリックス」シリーズの映像の「新しさ」を理解するには格好のコンテンツとなっている。 さらに、巨大なミニチュアを利用した撮影の解説「スーパー・ビッグ・ミニチュア」や、100人を超えるエージェント・スミスの撮影方法を解説する「ダブル・エージェント・スミス」、俳優のアクションや、スタントやトレーニングの模様や、開発した描く「トレーニング・オブ・マトリックス」などを収録。CGなどの最新技術のショーケースともいえる本作だけに、どれを見ても感心する。充実の特典といえるだろう。
■ アクションファンならずとも買い。充実の高クオリティ
画質や音質のクオリティは申し分なく、価格も安くマトリックスシリーズのファンならずとも、押さえておいて損は無いだろう。 ストーリー的には衝撃的だった第1作、第2作からすると、やや無理やりまとめに入ったような印象を受けた。特にザイオンやマシンの描写が増えたものの、仮想空間「マトリックス」についての描写が大幅に減ってしまったのは、個人的にはやや残念なところだ。 もっとも最新技術のショーケースとしては、やはり圧倒的なクオリティを有している。おそらく近い将来に3部作や「アニマトリックス」などを収録した廉価なDVD-BOXセットが出るのと思うが、これだけの超大作となると「リアルタイムで楽しむ」ということも重要だろう。
□ワーナー・ホーム・ビデオのホームページ (2004年4月6日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
|
|