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第151回:実写になった“キャシャーン”
「CASSHERN Ultimate Edition」

怒涛のように発売されつづけるDVDタイトル。本当に購入価値のあるDVDはどれなのか? 「週刊 買っとけDVD!!」では、編集スタッフ各自が実際に購入したDVDタイトルを、思い入れたっぷりに紹介します。ご購入の参考にされるも良し、無駄遣いの反面教師とするも良し。「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。


■ 話題の“キャシャーン”。DVDで登場
CASSHERN Ultimate Edition

価格:4,935円
発売日:2004年10月23日
品番:DA-0452
仕様:片面2層(本編)/片面2層(特典DISC2)
片面1層(特典DISC3)
収録時間:本編約141分
画面:シネマスコープサイズ(スクイーズ)
音声:ドルビーデジタルEX 6.1ch(日本語)
   DTS-ES(日本語)
発/販売元:松竹株式会社

 「CASSHERN」は、'73年からテレビ放送された竜の子プロの名作アニメ「新造人間キャシャーン」を原作とした、この春のヒット作だ。宇多田ヒカルのミュージッククリップなどで注目された写真家・紀里谷和明氏の初監督作品であり、紀里谷監督の妻でもある宇多田ヒカルが、テーマソング「誰かの願いが叶うころ」を歌い、ヒットさせたことも記憶に新しい。

 そんな事情もあって、公開時にはかなりのパブリシティが行なわれ、ヒット作となった。しかし、そのCGの圧倒的なイメージの賞賛の声も聞かれたもののの、この手のアニメ原作の映画化による旧来のファンからの反発、さらに、「セリフで説明しすぎ」、「説教くさい」というようなネガティブな評価も聞かれた。

 個人的には、「どれほど説教くさいのか」と、別の意味での興味はもっていたが、もともと原作にさほど思い入れが無いこともあって劇場には足を運ばなかった。しかし、公開からさほど間を空けずにDVD化されたことや、4,935円と平均的な邦画DVDの価格ながら、派手なBOXや特典ディスクが2枚付属する豪華仕様の「Ultimate Edition」。結構お買い得かも…… ということで購入した。

 BOXは、シルバーを基調に、伊勢谷友介扮するキャシャーンをあしらったという雰囲気のあるもの。背面にプリントされた“この地に生まれた、愛する人々に捧ぐ。”との文言に、事前に仕入れたネガティブな評価が思い出されたりもするが、パッケージとしての高級感は、この価格の製品としては非常に高いといえる。

 本編ディスクと2枚の特典ディスクは、それぞれデジパックに収納されており、Disc1/2/3と並べることで“CASSHERN”の文字が現れる。パッケージのデザインは細部まで行き届いており、満足感が高い。

 なお、本編のあらすじやDVDの仕様を記載した“取り扱い説明書”も封入されているが、25日にこの取扱説明書に誤記があった旨が告知されている。よくみるとテーマソングの記載が“宇多田ヒカル「誰かの願い叶うころ」”となっているが、「誰かの願い叶うころ」の間違いかと思われる。気になる人は交換するといいだろう。

 紀里谷氏は監督・脚本・撮影・編集を担当。CGアーティストの庄野晴彦氏に加え、ガメラシリーズでもお馴染みの樋口真嗣氏も戦闘シーンのコンテなどで参加。出演は伊勢谷友介、麻生久美子、唐沢寿明ほか。



■ CGを多用した独特の映像美が魅力

 物語の舞台は50年に及ぶ大戦の末、大亜細亜連邦共和国が大陸の大半を支配した世界。生き残った人々は細菌兵器による薬害と、放射能で汚された大地に怯えながら暮らしていた。

 そうした状況下で、細胞学の権威・東博士(寺尾聡)は人体のあらゆる部位を自在に造り出す「新造細胞」理論を提唱。難病に苦しむ妻、東ミドリ(樋口可南子)のためにも、実用化に向けた研究に明け暮れる。強い反対を受けながらも、軍部の援助により、本格的な研究が開始される。それは軍部を統括する上条将軍(大滝秀治)の強い意志によるものだった。

 研究は困難を極めたが、偶然にも実験場から新造人間が生成される。しかし、その新造人間は人類への憎しみを強く抱き、その首領であるブライキング・ボス(唐沢寿明)は人類に宣戦布告する。

 そんな折、博士の元に志願兵として戦地に赴いていた息子・鉄也(伊勢谷友介)の訃報が届く。博士は鉄也を新造人間として蘇らせる。変わり果てた肉体と、人間としての心との葛藤に苦しみながら、鉄也は伝説の守り神「キャシャーン」になり、ブライキング・ボスらとの対決に挑む。

 冒頭のシーンから、大亜細亜連邦共和国の荘厳な建物や、飛行船などがCGで表現。霞がかかったような独特の汚れた色調や、建築や車両などの古めかしさは、第二次世界大戦前の記録フィルムを現代風の意匠で蘇らせたような不思議な感覚を与える。アニメとも実写ともつかない独特のイメージの鮮烈さは、本作の見所のひとつだろう。

 ストーリーは鉄也の父との反発や、母への愛情、妻の上月ルナ(麻生久美子)との離別、再会などの家族の関係の変化などを交えつつも、戦争で追い詰められることで変わっていく人間性、戦争を動かそうとする人々など、戦争により変わっていく関係性を中心に描かれる。

 ストーリー展開はかなり複雑で、今ひとつ説明し切れていない部分もあるように感じるが、「勢いを重視した(紀里谷監督)」とのこと。もっともテーマ自体は、くどいといわれるぐらい説明されるので、そうした意味では揺らぎの無い作品だといえそうだ。また、特典ディスクや、コメンタリの解説などで、ストーリーの詳細などもしっかりと解説されるので、それらでストーリーのつながりはしっかりとわかるようになる。このあたりはDVDならではの楽しみといえるかもしれない。

 当初危惧していた説教くささは、時折感じさせるものの、個人的には思ったほどではなく、作品の魅力を損なうようなものではないと感じた。正直、構えていた分だけ拍子抜けといったところ。それより、シリアスにテーマを語っていたヒーローが、とつぜんアニメ的な動きで戦いだしたり、戦闘中に語らいながら戦うなど、実写とアニメ、漫画との境界線を行き来するような振幅の広さは、本作の大きな魅力となっているように感じた。



■ 独自の色調に戸惑いも。充実の特典

 DVD BitRate Viewer 1.4でみた平均ビットレートは6.84Mbps。HD24Pのデジタル撮影ということもあり、基本的には高画質なディスクだ。しかし、階調をつぶしたような独特の色調や、エフェクトやCG合成の多用など、シーンによって色の傾向が大幅に異なるので、ディスプレイで細かな設定を行ないたい人などには非常に難しいソフトだ。

 デジタル撮影らしい解像感の高いシーンや、CG合成による独特の質感、それに8mmで撮影したと思われる回想シーンなどを、うまく交えて時間軸の変化を丹念に表現している。映像の傾向を見ながらストーリーを追うと、作品への理解が深まるかもしれない。

 音声はドルビーデジタルEX 6.1chとDTS-ESの2種類。ビットレートは、ドルビーデジタルEXが448kbps、DTS-ESが1,536kbps。最近の大作のようなあざといほどのサラウンド感は感じさせず、程よく効果的にリアチャンネルを利用している。しかし、大きな見せ場のひとつである新造人間同士の決闘シーンでは、BGMが派手に鳴り響くなど、意表をつかれるサウンドデザインとなっている。。

DVD Bit Ratge ViewerでみたCASSHERN Ultimate Editionの平均ビットレート

 特典は本編ディスクにオーディオコメンタリを収録するほか、特典ディスクが2枚付属する。コメンタリは紀里谷監督と脚本の佐藤大氏、内藤役の及川光博、サグレー役の佐田真由美の4人が出演している。

 コメンタリへの出演を拒む監督なども多いと聞くが、紀里谷監督は余すことなく製作意図を語っており、「この建物は、ロシアアバンギャルド的にやりたい」とか、「ここでは演劇的な表現」、「アニメ的なアクションを実写でやりたかった」、「(ブライキング・ボスの衣装は)ガンダムのシャアの赤をイメージした」など、非常に細かく解説している。また、ストーリーのつながりやテーマとの関連も非常に細かく語られるので、本編でストーリーを追いきれなかった人は、見ておくといいだろう。

 DISC2には、約133分に及ぶメイキング「Making of CASSHERN」や、スタッフインタビュー、トレーラなどを収録。2002年2月にタツノコプロに企画を持ち込んだところから完成までが時系列で収録されている。監督によれば、「“女性は美しく、男は格好良く”というのを強く出したかった」とのことで、キャシャーン役の伊勢谷友介も「監督にはヒーローなんだから格好つけろ」と強く言われたという。

 撮影監督も紀里谷監督が兼ねており、メイキングには実際にカメラを持って撮影するシーンが数多く収録されている。キャストの中には「監督がきちんと見てくれているのでうれしい」と語る人もいるが、紀里谷監督は「スチルのカメラマンなので、自分でライトを決めて、構図を考えてコミュニケーションするのは当たり前。でも、撮っているうちに“セリフ変えて”とか、“違う感じで”とか、その場で変えてしまうので、戸惑う人もいる」と、スチルと映画との違いについて語っているのが興味深い。

 また、唐沢寿明や及川光博、宮迫博之などのキャシャーンを見ていた世代以外のキャストのほとんどが「キャシャーンを見ていない」とのことで、その3人と他のスタッフとの思い入れの違いが、メイキング中でも感じられた。

 Disc3は、キャシャーンの企画書や未公開シーンを収録。未公開シーンは紀里谷監督による解説付きでカットの理由が語られる。面白いのはキャシャーンの企画書。2002年にタツノコプロに持ち込んだと思われる企画書で、普通にパワーポイントで作成されているようだが、企画当初の主要スタッフや、コンセプト、あらすじなどが書かれており、実際に映像を見た後だと、当初想定していた作品と最終形の違いがわかって面白い。

 また、企画書らしくセールスポイントも記載されており、ターゲットユーザーについては、「30代を中心に人気のある新造人間キャシャーン。親子向けの作品に最適です」とか、「メカ好きの小学生~10代へも確実にリーチします」など書かれており、にやりとさせられる。



■ ストレートな娯楽作

 戦争、戦闘を多方面から描きつつも、テーマ的には争いを否定しながら、共生の道を探るというストレートなものといっていいだろう。そのストレートさにやや引いてしまう向きもあるかもしれないが、本作ならびに特典を見ていくと、そのストレートさこそが本作の最大の魅力にも感じる。もちろん、独特の映像美やCG技術も本作ならではのもの。原作を知らない人でも楽しむことができるだろう。

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□松竹ホームビデオのホームページ
http://www.shochiku.co.jp/video/
□製品情報
http://www.shochiku.co.jp/video/dvd/da0452.html
□映画「CASSHERN」の公式サイト
http://www.casshern.com/
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(2004年10月26日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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