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MPEG/DivX出力に対応したネットワークAVアンプ
ケンウッド 「VRS-N8100」
発売日:11月発売
価格:105,000円


■ ネットワークAV機能搭載のAVアンプ

 昨今のAVアンプのトレンドといえば、付属マイクを使った自動音場セットアップや薄型化などが挙げられるが、今回取り上げるケンウッドの「VRS-N8100」は薄型化のトレンドに乗りつつも一風変わった製品になっている。

 最大のポイントは、PC上のMPEG-2やDivXなどのビデオファイルや、MP3/WMAなどのオーディオファイルの再生が可能な、“ネットワークメディアプレーヤー”の機能を備えていること。こうした機能はアイ・オー・データの「AVeL LinkPlayer」やバッファローの「LinkTheater」などのPC周辺機器メーカーが、DVDプレーヤーに内蔵し、人気を集めているが、AVアンプに搭載した製品は非常に珍しい。

 過去には、ソニーが2003年11月に発売した「TA-LV700R」があるが、これはVAIOの周辺機器としてVAIO用のサーバーソフト「VAIO Media」と連携して利用することを想定した製品。いずれの製品もPCサイドからのアプローチだったが、ケンウッドのようなオーディオメーカーがこうしたネットワークメディアプレーヤーに取り組んでいるのが新しい。

 近年ケンウッドは、ホームネットワークのコンテンツ相互接続/配信規格である「DLNA」に積極的に取り組み、CEATECでも対応製品を参考展示。ホームAVネットワーク関連では非常に積極的な動きを見せている。VRS-N8100はDLNAには非対応なものの、同社ではこうした流れの一環として今後もホームAVネットワークに力を入れていくという。VRS-N8100のオーディオメーカーならではのアプローチを検証した。


■ 本体の高級感に満足

 外形寸法440×363.5×79mm(幅×奥行き×高さ)と薄型で、本体の外装も金属の質感を生かした高級感あるもの。本体右側のMULTI CONTROLボタンなどで各種操作が行なえ、ボリュームボタンの重量感も印象的だ。本体重量は4.6kg。

 TI製のデジタルアンプ「PurePath Digital」を採用し、アンプ部の定格出力は100W×6ch。2,048fs/100MHzの内部クロックを使用し、最小10nsのパルス幅でオーディオ信号を表現、歪みの少ない高精度な信号伝達が可能という。

 入力端子は、D4×2、S映像×2、コンポジット×5、光デジタル音声×3、同軸デジタル音声×2、アナログ音声入力×6。本体前面に「GAME端子」も装備している。出力端子は、D4×1、S映像×1、コンポジット×2、アナログ音声×1。

 ネットワーク接続用にEthernet端子も搭載。スピーカーターミナルはフロント2chのみバナナプラグ対応。センター/リア/リアセンタースピーカーは専用コネクタを介して接続する。背面には冷却ファンも備えている。

本体前面 DivXロゴも取得。前面パネルを開けると2系統のAV入力を装備。右側はゲーム専用入力となっている。ヘッドフォン出力はミニ端子
リモコンのほか本体のMULTI CONTROLボタンでもほぼ全ての操作が行なえる 背面。EthernetやD端子入力/出力を装備する。冷却ファンも内蔵する スピーカーターミナルはフロント2chのみバナナプラグ対応。センター/リア/リアセンタースピーカーは専用コネクタを介して接続する


■ デジタルアンプの特徴を生かした音質強化

 アナログデバイス製の「32bit Floting Point DSP」を搭載し、ドルビーデジタルEXやDTS-ES、DTS 96/24、ドルビープロロジック IIx、ドルビーバーチャルスピーカー、AACなどのデコードに対応する。また、音声信号の入力からDSP部、パワー段まで、すべてデジタルで信号伝送を行なうフルデジタル構成により、信号劣化を抑え、高音質化を図っているという。

OSDによるセットアップ画面

 まずは、普通のAVアンプとして見ると。流行の自動音場補正機能などはないが、手動でスピーカーサイズや距離などが設定可能できる。

 スピーカーにPMC「TB2SM」を利用し、マランツのDVDプレーヤー「DV8400」とVRS-N8100を同軸デジタル接続してCDを聞いてみたところ、ボーカルの明瞭さやきっちりとした定位感が印象的。低域のスピードやパワー感も申し分なく、スピーカーの駆動力も高い。

 クラシック系のソースでも、倍音成分の響きがしっかりと出て、中高域にかけての解像度も高い。DVDビデオ視聴でも印象はCDと変わらず、低域のキレのよさと中低域にかけてのパワー感が魅力的。また、小音量でも音場感やセリフの明瞭度をさほど損なわずに再生できた。

 普段利用しているデノンのAVアンプ「AVC-3890(標準価格:15万円)」と比較してみたところ、かなり傾向が違うので驚いた。VRS-N8100のほうがハイ寄りで、広い音場表現などはAVC-3890がしっかりしているようにも感じるが、定位感や低域のスピードなど、VRS-N8100のほうが迫力あるサウンドが得られる。いわゆる“デジタルアンプ的”な音の傾向と感じる。個人的にはかなり好みに近いし、スピーカー(TB2SM)との相性でいえば、VRS-N8100のほうが楽しめそうだ。

 音質的にはかなり満足なのだが、不満点が無いわけでもない。まず、背面の冷却ファンの回転音がかなりうるさく、音楽再生時は気にならないが、曲間で回転音が耳障り。PSXと比較しても、かなり耳に付く音で、初代プレイステーション2に近いレベル。

リモコン。本体価格からするとだいぶ安っぽい

 また、アナログマルチチャンネル入力は備えていないので、SACDやDVDオーディオのマルチチャンネル再生は行なえない。ユニバーサルプレーヤーのユーザーなどは注意が必要だろう。

 最大の難点はリモコン。シャモジ型のデザインはさておき、質感もホームセンターで売っているDVDプレーヤー用リモコンのようで、10万円クラスのAVアンプ用にしては全く高級感が感じられない。本体と並べて置いた時のデザインマッチも全然図れていないのが悲しいところ。また、小さな文字で機能名が書いてあるので、それを見ながらでないと操作ができないうえ、キーが込み合っていて押しずらい。

 同社では「マルチブランド対応やDVDプレーヤーの操作対応などで、キー数が多くなっている」と説明する。ネットワーク機能など多機能化ゆえ、機能ボタンが増えてしまうのはわかるのだが、価格に見合うだけの高級感が欲しいところだ。



■ 登録作業がやや面倒だが、AVアンプならではのネットワーク機能

KENWOOD PC SERVER

 「VRS-N8100」の最大の特徴とも言えるネットワーク機能は、付属ソフトの「KENWOOD PC SERVER」との連携により、LAN接続したパソコン上の映像/音楽/画像データをリモコン操作で出力できる。

 「KENWOOD PC SERVER」はJAVAベースのアプリケーションで、対応OSはWindows 2000/XP。対応フォーマットはビデオがMPEG-1/2/DivX/XviD、オーディオがMP3/WMA/Ogg Vorbis/WAV、静止画がJPEG/BMP/GIF/PNG。最新のLinkPlayer/LinkTheaterではWMVの再生に対応しているが、VRS-N8100ではWMVは非対応となっている。

 ほかのネットワークオーディオプレーヤーと異なっている点は、AVeL LinkPlayerなど従来の製品だとサーバー上のコンテンツ用フォルダを指定するとそのフォルダ内のファイルを自動的に共有してくれたが、KENWOOD PC SERVERでは利用するコンテンツを登録する必要がある。

 具体的には、MOVIE/MUSIC/PHOTOなどのコンテンツ種別に登録するファイルを選択し、各コンテンツを[DRAMA]、[SPORTS]などのジャンルごとに登録するというもの。ジャンルは任意に作成できる。ほかの製品と比較して登録の手間が余計にかかるは残念だが、ここで登録を行なうことで独自のDBを作成し本体前面のFL管にコンテンツの情報を表示可能としている。

4行表示に対応し、本体ディスプレイのみでの操作可能 FLディスプレイでは漢字情報の表示が行なえず[*]となってしまう

 FLディスプレイは4行表示が可能となっており、きちんとDBを作成していれば再生時にはテレビを起動してOSDを立ち上げることなく、操作を行なえる。ただ、FLに漢字情報は表示できないので、日本語ファイル名のコンテンツを扱う人にとってはやや使い勝手が悪い。

 “登録の手間”か“AVアンプならではの使い勝手”のどちらを優先するか? という判断でVRS-N8100の場合はAVアンプならではの利用法を選択したといえるだろう。このあたりをどう評価するかで、本機のネットワーク機能の評価が分かれそうだ。

 一応従来のネットワークプレーヤーと同様に、フォルダ指定しての利用にも対応している。しかし、その場合はジャンル区分が行なえず、各コンテンツの[Temporary]フォルダに一括して格納される。

ネットワークモードのトップ画面

 VRS-N8100からは同一ネットワーク上であれば自動的にPCが認識される。[VIDEO]を選択して、MPEG-2やDivXのビデオファイルを再生してみたが、通常のネットワークプレーヤーと同様に特に問題なく再生でき、早送り/戻しも行なえる。対応解像度は最大720×576ドット。

 できることはAVeL LinkPlayerやLinkTheaterなどとほぼ同じだが、AVアンプにネットワークプレーヤー機能を搭載したことによるメリットとしては、ドルビープロロジックIIxなどのサラウンド機能を各コンテンツに適用可能なこと。たとえば、地上波のドラマやスポーツ番組などをPCで録画して、そのファイルをバーチャルサラウンド化して楽しむことができる。

 オーディオ形式に依存することなく、録画したコンテンツにあわせたサラウンド適用などが行なえる。ドラマなどを視聴する際に積極的にプロロジックIIを適用し、センタースピーカーを活用することで、セリフの聞き取りやすさなどが向上するなど、メリットは大きいといえそうだ。

 MUSIC利用時にも同様にファイルの登録が必要。ビデオと同様にプロロジックIIなどのサラウンドが適用可能なほか、同社独自の圧縮音楽用の補間機能「Supreme」により高音質化を図っている。

 SupremeはON/OFF設定が行なえないので実際の適用による効果のほどを比較することはできないのだが、AirMac Express経由でAVC-3890に入力したときに比べると、高域のツヤが感じられる。128kbpsのMP3ではボリュームを上げるとさすがに情報量の薄さは感じられるが、ソースが圧縮オーディオと考えれば満足いく。登録さえ終えてしまえばかなり活用できそうだ。ただ、プレイリスト作成機能など、PCの特徴を生かした機能が無いのが残念なところ。

MOVIEモードの選択画面 MUSICモードの選択画面。プレイリスト再生などは行なえない

 PHOTO機能ではJPEG静止画の表示が可能。また、本体前面にはPCカードスロットも備えており、PCカードアダプタなどを用いてデジタルカメラの画像を読み込むことができる。動画や音楽の再生は行なえない。

 本体前面のGAME用端子は。ゲームの音声を検出すると自動的に入力をゲームに切り替え、DSPによる音場効果も「Gameモード」に自動変更し、直ぐにゲームで利用できる。

 ヘッドフォン出力がミニ端子なのがやや残念だが、ドルビーヘッドフォン機能によりヘッドフォンでもサラウンド再生を楽しむこともできる。また、ヘッドフォン出力とスピーカー出力など、2つのソースを別々に出力できる「Dual Source」機能も搭載しているので、ゲームをヘッドフォンで聞きながら、DVD音声をスピーカー出力するといった利用も可能となっている。


■ 一風変わったこだわりのAVアンプ

 ネットワークメディアプレーヤーは数あれど、AVアンプならではの切り口でネットワークAV機能を実装したという意味で非常に面白い製品だ。データ登録の手間でパソコンを意識させてしまうことや、逆にプレイリスト作成などパソコンらしさを活かせる機能が寂しい気もするが、オーディオメーカー的なアプローチを随所に感じさせる。

 実売価格は85,000円程度と薄型AVアンプとしては高価な部類に入るが、基本性能はしっかりしている上、魅力的な機能も豊富。また、ネットワーク機能が必要なければ約3万円以上安価で実売価格で58,000円程度の「VRS-7100」を選ぶのもいいだろう。

□ケンウッドのホームページ
http://www.kenwood.com/jhome.html
□製品情報
http://www.kenwood.com/j/products/home_audio/avcc/vrs_n8100_7100/
□関連記事
【6月25日】ケンウッド、TI製デジタルアンプ採用のネットワーク対応AVアンプ
-PC上のMPEGファイルの出力や2系統同時音声出力に対応
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040625/kenwood1.htm

(2004年10月29日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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