|
“ジャケ写”表示が魅力的 フォトビューワ機能を搭載したiPod アップルコンピュータ 「iPod Photo 60GB」 |
|
発売日:11月上旬発売 AppleStore価格:70,140円(60GB) |
■ フォトストレージじゃなくてフォトビューワ
オーディオプレーヤーとして着実な進化を遂げてきたiPod。日本のHDDオーディオプレーヤー市場でのシェアは「7~8割(米Apple 前刀禎明マーケティング担当バイスプレジデント)」という独占に近い市場を作り上げつつある。
パッケージは第4世代iPodと同様のキューブ型 |
先日発売されたiPod Photoは、第4世代iPodの基本仕様を引き継ぎつつ、220×176ドット/65,536色表示の2インチカラー液晶を採用。さらにフォトビューワ機能を追加した製品。従来のオーディオプレーヤーとして進化していたiPodの流れからはやや異質な製品に思える。
また、“Photo”といっても、iriverのH300シリーズのようにUSBのホスト機能を持っおらず、直接デジタルカメラから画像を取り込めるような仕組みは備えていない。
Belkinの「Media Reader for iPod」や「Digital Camera Link for iPod」などのサードパーティ製の読み込みカードリーダやUSBホストデバイスを利用すれば、デジタルカメラ画像の読み込みは可能だが、読み込んだ画像をiPod Photoでは利用できない。なぜならばiPod Photoで再生するためにはiTunes上で最適化を行なう必要があるからだ。
iPod Photoで表示できるのは、パソコンのiTunes 4.7から転送された写真データ。さらに、MacintoshのiPhotoもしくはWindowsのPhotoshop Elements/Albumのライブラリとの同期ができるほか、フォルダを指定して転送することも可能だ。このiTunesからの転送時にオリジナルの画像データから、iPod Photoでの表示に最適なサイズの画像に変換している。
そのため、デジタルカメラで撮影した写真のバックアップ用途には適さず、あくまでiPodに最適化した画像をストレージし、ビューワとして楽しむというスタイルの製品なのだ。
個人的には、ニュースリリースを読んだ時、そのセールスポイントがイマイチ伝わってこなかったし、誰にとって魅力的な製品がわからなかった。説明会でiPodプロダクトマーケティングのStan Ng氏によるコンセプト「Share Your Life Anywhere,Anytime」の解説により、ようやく「いつでもどこでも写真を共有しよう」という製品の目標とするイメージはつかめた。
しかし、価格も57,540円(40GB)/70,140円(60GB)と第4世代iPod(40GB 44,940円)と比較しても割高感がある。Appleの考えるデジタルミュージックプレーヤーの方向性、先進性というのはどういった部分にあるのか? 実際に使って検証してみた。
■ やや厚く/重くなった本体
同梱品 |
パッケージは第4世代iPodと同様のキューブ型で、カラフルな外箱をはずすと、おなじみの折りたたみ式の中箱が現れる。中箱を開くと誇らしげな「Designed by Apple in California」の文字が現れるなど、「箱を開ける楽しみ」の演出は相変わらずAppleならでは。
同梱品は本体のほか、USB 2.0ケーブル、FireWire(IEEE 1394)ケーブル、ACアダプタ、CD-ROM、ヘッドフォンに加え、AVケーブルやiPod Photoドックが付属する。第4世代iPodでは40GBモデルにしか付かなかったDockが付いており、さらにこのDockにはAV出力端子とS映像出力端子も備えている。
本体サイズは61×19×104mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は181g。第4世代iPodの40GBモデルと比較すると、1.5mm厚く、5g重くなっている。20GBモデルと比較すると、4.5mm厚く、23g重い。これはHDDのプラッタ枚数が増えた60GB HDDを収めるためと、バッテリ容量を増やしたためという。
液晶は220×176ドット/65,536色表示の2インチカラー液晶を採用。第4世代iPodと同様に、再生/停止などの操作ボタンをホイールに取り込んだ「クリックホイール」を装備する。上部にはHOLDボタンとヘッドフォン出力/AV出力兼用端子を装備、底面にドックコネクタを備えている。
本体前面 | ヘッドフォン/AV出力を装備 | 底面のDockコネクタ |
厚みは19mm | iPod Photo Dock。AV出力やS映像出力を装備する |
第4世代iPodとの比較 | |
カラー液晶以外のデザインはほぼ共通 | iPod 20GBと比較すると4.5mm厚い |
■ iTunesで転送。高速な画像表示と優れた検索性
iPod設定アシスタント | iTunes上でiPod Photo用ファイルを変換 |
iPod Photoとパソコンを接続するとオーディオの同期を行なうほか、iTunes上で指定したフォトライブラリの同期が可能となる。MacintoshのiPhotoもしくはWindowsのPhotoshop Elements/Albumのライブラリとも同期ができるほか、フォルダを指定して転送する。
iPod Photoの対応フォトフォーマットはJPEG/BMP/GIF/TIFF/PNG。転送時にはiTunes上でiPod Photoの220×176ドット液晶に最適化したデータと、サムネイル用データ、テレビ出力用データを作成し、転送する。設定のチェックボックスをONにすることで写真データそのものを転送することも可能だ。
「ソニー サイバーショット U」や「キヤノン PowerShot G2」、「オリンパス E-1」などで撮影した200~500万画素のデジタルカメラ画像を217枚を3つのフォルダに分類し、ThinkPad X31(Pentium M 1.3GHz)から転送を行なった。変換に4分強、転送に30秒程度かかり、転送開始から終了までの時間は約4分50秒となった。
転送後にはパソコンの指定フォルダ以下に[iPod Photo Cache]というフォルダが作成され、.itmbという独自形式のファイルが作成されている。1ファイルあたりの容量は775KB程度。また、iPod PhotoにPCからアクセスするとサムネイルのデータベースファイルなどが作成されており、これらのファイルを利用してiPod Photo上に画像表示を行なっているようだ。
パソコン上にiPod Photo Cacheが作成される | iPod Photo上にサムネイルのデータベースなどが作成される |
メインメニューの[写真]から写真データを見ることができる | 転送したアルバムが表示される |
転送が完了すると、iPod Photoのメインメニューの[写真]からアルバムにアクセス可能。フォルダ指定の転送の場合、フォルダ名がアルバムとして認識される。下層フォルダは認識せず、指定フォルダ以下は全て1つのアルバムとして登録される。
アルバムを選択すると5×5枚の画像サムネイル表示が行なわれる。ここでクリックホイールをクルクル回すと左から順にファイルを選択。任意の写真を選択することで、写真の表示が可能で、クリックホイールの左右を押すことで、写真の戻し/送りが行なえる。非常にシンプルな操作体系だが、レスポンスも良く、直感的に移動できるため画像ビューワとしての基本性能は非常に高いといえる。
ただ、ホイールをくるくる回す以外の写真検索手段は無いため、1アルバムの登録枚数が200枚を越えたあたりから、後ろのほうに登録されている写真を検索するためにかなり時間がかかる。また、1,000枚を超えると時間がかかる上に指がつりそうになるので、アルバムの登録枚数は300枚以下ぐらいにしておいたほうがいいだろう。
画質については、2型の液晶で見る分には充分満足いくクオリティ。転送前に最適化されているだけあって、不自然な輪郭の崩れなどはほとんどなく、強いて文句をつければ架線などが込み入っている写真で、線の乱れが感じられる程度。楽しみながら写真を見る分には充分なクオリティだ。
ただ、ズーム機能は備えていない。「なにか映っているけれど見えそうで見えない」という時や、人物の多い集合写真など、拡大したいシチュエーションもあると思う。次のモデルがあるならばぜひ実装して欲しい機能だ。
サムネイル表示画面 | 写真表示画面。クオリティは充分 |
また、スライドショーでは、スライドまでの時間やトランジションエフェクトのON/OFFが適用できる。エフェクトはトランジション1種類のみというのがやや残念なところだが、iPod上のプレイリストをBGMに指定して再生できるのが面白い。
スライドショー設定。トランジションのON/OFFやBGM設定が可能 | スライド時間やプレイリストからBGMを選択可能 |
テレビ出力機能も搭載する |
テレビ出力機能も搭載する。ただし、出力できるのはスライドショー表示時のみ。つまり、大画面テレビに出力しながらサムネイル表示して写真を選んだり、ソリティアなどのゲームを楽しむ、といったことはできない。このあたりはやや残念なところだ。
ヘッドフォン出力部がビデオ/音声出力もかねており、付属ケーブルでテレビに接続するだけでビデオ出力が可能だ。テレビ出力用の写真データも作成されているため、29型テレビで確認したところ、PC上の元データと比較すると若干の色滲みと解像感の乏しさは感じるものの、充分に高画質といえる。
また付属のiPod Photo Dockでは付属のケーブルによるコンポジット出力のほか、S映像出力も可能となっている。29型のCRTテレビに出力したところ、S映像の方が若干色滲みなどは少ないようだが、大きな画質差は無い。
設定で「テレビ出力 確認」としておけば、スライドショー開始時にテレビ出力のON/OFF確認ダイアログが現れる | テレビ出力中にiPod Photoの液晶で確認や先送り、戻し、停止などの制御も行なえる |
■ ジャケ写表示機能は魅力的
iTunes上でジャケット写真を登録 |
音楽プレーヤーの機能については、従来の第4世代iPodと基本的には同じ。音質的にも同傾向だ。唯一大きく異なっている点は、iPod Photoではジャケ写の表示が可能となったこと。iTunesでは、アルバムを選択して、ジャケットの画像をアートワークの登録画面にドラッグアンドドロップするとiTunesのライブラリでジャケット写真を利用可能となる。
その後、iTunesとiPod Photoと同期するとジャケット情報がiPod Photoでも表示可能となる。カラー液晶の特徴を生かした機能で、楽曲を再生開始するとジャケットも曲情報の左脇に表示される。ホイール中央を押し込むとジャケットの拡大表示も可能だ。個人的にはiTunes上にはほとんどジャケットを登録していなかったが、一度ジャケット表示に慣れてしまうと、ジャケットがないと寂しく感じ、全てのジャケット情報を登録したくなってしまう。
例えばシャッフル再生で、「聞き覚えがあるけれど、この曲なんだっけ?」的な曲が出てきた際に、曲名やアーティスト名に加えて、ジャケットを見るとイメージがしっかりわく。筆者のようにアルバムや曲名などが覚えられず、「黄色いジャケットの4曲目ぐらい」と、いった具合で曲を認識している人間には非常にうれしい機能だ。
再生画面。ホイール中央を押し込むとジャケット写真のみ表示する |
残念なのは、せっかくジャケット写真が登録可能で、写真データのサムネイル表示機能もあるのに、ジャケットの検索表示機能が無いこと。ジャケットを見ながら気分でアルバムを選ぶというのもなかなか面白いと思うのだが……。
今までもVAIO Pocketなどジャケット写真表示対応機種はあったが、いずれも登録が面倒だったりあまり使う気の起きないものであった。iPod Photoのジャケット表示機能はiTunesでの画像登録の容易さも含め、かなり魅力的。旧来のパッケージメディアの良さをしっかりデジタルプレーヤーに取り入れた好例とえいえそうだ。
音楽再生時間は第4世代iPodの12時間に対し、バッテリ容量を強化したことで、iPod Photoでは15時間となっている。iPod PhotoでBGM付きのスライドショーを再生した場合は最大5時間の駆動が可能。
ソリティアなどのゲームもカラー化されているがテレビ出力はできない |
■ フォト機能は約13,000円。手軽に写真を持ち歩きたい人には最高
オーディオプレーヤーにフォトビューワを加えたことで、エンターテインメント端末としての魅力はかなり高まっている。フォトビューワとして、とにかく「手持ちの全ての写真をいつでも、どこでも見たい」という人にとっては他に比べるものが無いほど良くできている。完成度は非常に高いので、既にこの機能が魅力的と感じたユーザーは買いだろう。
単純に価格と機能の比較で言えば、40GB iPod(44,940円)と40GB iPod Photo(57,540円)の価格差は約13,000円弱。フォト機能に、それだけの価値を見出せるのか、という点が購入時のポイントとなるだろう。
ただ、今後のHDDオーディオプレーヤーのトレンドとして、カラー液晶が挙げられるのは、「gigabeat Fシリーズ」や「M:robe MR-500i」などの他社製品を見ても明らか。そう考えれば、フォトビューワ機能は無くても、iPodが正常進化するとカラー/ジャケット表示対応は必須となってくるようにも感じるし、ぜひそうして欲しいと思うくらいiPod Photoのジャケ写表示機能は魅力的だ。
ともあれ、さまざまな機能を搭載したiPodの上位モデルと考えると納得できる製品だ。個人的にはHDD容量が30GB程度でも、第4世代iPod 20GB程度の厚みに抑えてくれると、普段持ち歩く製品としてはより魅力的に感じるのだが……。
□アップルのホームページ
http://www.apple.com/jp/
□製品情報(iPod Photo)
http://www.apple.com/jp/ipodphoto/
□関連記事
【11月1日】アップル、iPod Photo/iPod U2 Special Editionの説明会を開催
-iPod PhotoやU2との協力関係を解説。iTMSの年内開始は困難か
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20041101/apple.htm
【10月27日】米Apple、カラー液晶搭載の40/60GB「iPod Photo」
-フォトビューワ/テレビ出力機能などを装備
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20041027/apple1.htm
【10月27日】アップル、iPod Photoの日本出荷を11月上旬より開始
-40GBモデル57,540円、60GBモデル70,140円
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20041027/apple2.htm
(2004年11月12日)
[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
00 | ||
00 | AV Watchホームページ | 00 |
00 |
Copyright (c) 2004 Impress Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.