■ 地アナレコーダの完成形を目指す 本格的な普及期を迎えたDVDレコーダ。各社必死の差別化を図り、売り上げを伸ばしつつも、低価格競争に歯止めがかからず、厳しい市場環境となっている。 VHSデッキでは画質や機能に高い評価を獲得していた三菱電機は、昨年4月に「楽レコ」というキャッチーな名前で市場に本格参入(その前にハイエンド機のDVR-DS10000を発売しているが)。大手メーカーでは最後発になるにも関わらず、高いシェアを獲得した。 もっとも、市場の低価格化圧力により、「大きな利益が出せない反面、赤字も出ない、トントンという状態が続いていた(大草文夫 リビング・デジタルメディア事業本部長)」とのことだが、最後発で10%を超えるシェアを獲得しているあたり、同社のこの市場への意気込みが伝わってくる。 その「楽レコ」がモデルチェンジし、4月11日より新モデルが発売された。最近のデジタルレコーダのトレンドといえば、デジタル放送対応や、HDMI端子の搭載、2層DVD±Rへの対応といったところが目新しいが、新「楽レコ」にはそうした“派手な”セールスポイントはない。しかし、EPGの改良による「テレビdeテレビ欄」や、検索機能の強化、追跡録画機能「録り逃さないザー」の追加など、地道な録画機能の強化が図られている。 ネーミングセンスに引っかからないでもないが、アナログ放送用録画レコーダとして相当の使い勝手向上を図った模様。さらに、上位モデルのDVR-HG865/HG765では「Dimossiveモジュール」と呼ばれる高画質化回路を搭載している。個人的には、特に旧モデルのチューナのスルー画質がイマイチと感じていただけに、その画質向上にも期待がかかる。
■ シンプルな外観
外観はオーソドックスで、従来の「楽レコ」のイメージを踏襲している。コスト競争の激しい最近のDVDレコーダは、見た目でコスト減が一目瞭然の製品が多いのだが、DVR-HG765の外装は思いのほかしっかりしており、高級感がある。重さも約5.5kgとなかなか重量級だ。 正面左下には外部入力端子を装備するほか、右下にはDV入力を装備。DVダビングボタンも装備しており、DVで撮影した映像をHDDやDVDに簡単にダビングできる。DVDドライブの書き込み速度はDVD-Rが8倍速、DVD-RWが6倍速。DVD-RのVRモード記録には対応していない。HDD容量は250GB。上位モデルのDVR-HG865ではHDD容量が400GBとなるほか、ボディカラーがブラックとなる。 背面はすっきりと端子類が整理されている印象で、地上波アナログ入力とスルー、BS入力とスルーが右側、あとはアナログAV入力が背面に2系統、前面に1系統で計3系統。出力はAVが2系統のほか、D2出力と光デジタル音声出力が各1系統と至って普通。
リモコンも従来モデルを踏襲しており、下面が角張った独自の形状ながらホールド感はなかなか良好。HDDとDVDの切り替えボタンのほか、ビデオコントロール系のボタンを中央に配しており、どことなくビデオデッキ用リモコンを思わせる雰囲気。 一方、リモコン下部には、AVセレクトや画面表示、画質モードといった細かい機能ボタンを集約している。イージーオペレーションを謳い、ボタン数を削減減らす傾向にあるレコーダ用リモコンではかなりボタン数が多い部類に入るだろう。
■ 充実した録画機能 それでは早速利用してみよう。まずチャンネル設定については、従来モデルでは地域番号をマニュアルを見ながら選択するという面倒な仕様となっていたが、今モデルからは県名-地域名を選択するだけで設定が行なえるようになった。前モデルの発売時でも、すでに他社製品では当たり前の機能だったとはいえ、地道に進化していることが伺える。
基本機能の利用は、リモコンの「機能一覧」ボタンでメインメニューを表示することで、各機能が利用できる。録画設定や機能設定はここで行なえるが、番組表や録画予約などの、よく使う機能はリモコンからダイレクトに呼び出すことが可能だ。 まず、大きく改善されたEPGについて見てみよう。ベースとなるEPG情報は従来と同様にGガイドだが、従来の1画面に2時間3チャンネル分の番組表を表示する機能に加え、1画面に5チャンネル、5時間分のデータを表示させるモードを追加した。同社では「テレビdeテレビ欄」と呼んでいる。 EPGにGガイドを利用する場合、必ず広告表示が入ってしまうため、一覧できる番組が少なくなりがち。テレビdeテレビ欄ではリモコンの左右矢印(コマ送り)を押すことで、EPG表示モードを切り替える。従来の2時間3チャンネルは1番組の情報量は多いが、一覧性が低いので、一気に予約したい時などは5チャンネル5時間のモードの方が便利だ。 5チャンネルにすると一覧性は高いが、1行に4文字しか入らないので、番組表画面で確認できる情報はかなり乏しい。しかし、ステレオ放送を表す[ス]といった表記など、番組予約にあまり関係ないと思われる情報を省いて表示するなどの工夫を凝らしているという。じっくり読みながら考えたい人やEPG予約になれていない人は、従来の予約画面のほうがいいかもしれないが、個人的には5時間5チャンネル画面だけでも十分録画予約が可能だ。また、EPGに入りきらない15分番組などは、カーソルをその番組の部分にあわせることで、ポップアップする形となっているなど、使い勝手はなかなか良好。ただ、NHK教育の15分番組などを探すときにはやはり2時間3チャンネルの方が使いやすいと感じる。
EPG表示は確かに良く工夫されており、一覧性はかなり向上する。新番組の多いクールのはじめは番組名をきちんと確認できる2時間3チャンネルで、その後録画番組が決まってきたら5時間5チャンネル表示に切り替えるというのもアリだろう。しかし、ここまで情報が整理されてしまうと、でかでかと表示されるGガイドの広告情報がより疎ましく感じるのも事実だ。 番組表の上には従来モデル同様に選択した番組の詳細情報が表示され、EPGの選択自体はシンプルで戸惑うことはないのだが、現在の日時がイマイチわかりにくいのが気になった。現在の日時がEPG情報の左上、EPG番組上の日時がEPG情報の右上にあるのだが、慣れるまでは、いま自分が何日に何をしようとしているのかよくわからなくなってしまった。 また、リモコンの「青ボタン」を押すと、「番組表」、「ジャンル検索」、「トピックス」、「キーワード検索」に切り替えることができる。さらに後述するが、このジャンル検索では任意のユーザーごとのおすすめ番組検索もできるなど、うまく使いこなすことでかなり使い勝手が向上できる機能が集約されている。 この機能の呼び出しボタンが、リモコンの青ボタンなのだが、リモコンには「青/A-B」と表記されているなど、細かい機能を使おうとするときのナビゲーションが今ひとつだ。一応番組表の下に青ボタンが「機能選択」と表示されてはいるのだけれど、おすすめ番組表がここで出せるとは取説を見るまでわからなかった。
録画予約自体はシンプルで、番組表を選んで、後は確認するだけ。記録モードは基本設定で行なっておくと自動的に引き継がれるが、予約確認画面で変更することも可能だ。毎週予約設定などもここで行なえる。 また、従来モデルでは、番組表の「延長」という言葉に反応して自動的に録画時間を延長(30分/60分選択可能)する「スポーツ延長対応録画」を搭載していたが、今回新たに新機能として「録り逃さないザー」を装備している。 録り逃さないザーでは、EPGの放送時間枠の変更を自動的にチェックし、予約番組を追跡、放送時間が変更された場合でも自動的に録画時間を変更し、録画を行なうというものだ。 実際は、録画予約を行なった後にEPG情報の変更があったかどうかイマイチわからなかったりするので、録画が終わった段階で確認することができないのだが、EPG情報が直前まで不確定な深夜枠のアニメや、連続ドラマに最終回のみ放送時間を拡大するといった場合の応用には最適だ。
高速な起動やレスポンスの良い操作性などはDVDレコーダの中でもかなり優秀。従来モデルと同様に、約1.5秒で起動し録画する「1.5秒録画」も搭載しているが、DVD-RWへのVRモード記録が省略され、新モデルではHDDのみとなったという。これは旧モデルでは、ほとんどDVD-RWへの1.5秒録画が利用されていなかったため、コスト減のために削ったとのこと。すぐに録画したい時にDVD-RWメディアが入っているとは限らないことを考えれば、HDDだけで全く問題ないだろう。
■ 細かい気配りが嬉しい番組管理機能
録画したデータには、[番組名鑑]からアクセスできる。管理自体はシンプルで、初期設定では録画順でソートされているが、番組名などでのソートも行なえる。さらに複数の番組を選択して一括削除する機能も搭載している。 また、新たに20個までのユーザーアイコンを選択して、録画番組を任意のユーザー単位で管理可能となっている。番組管理画面で、リモコンの矢印キーを押すとユーザーの切り替えが行なえる。録画する番組や、ドラマなどのジャンルごとに利用してもいいだろう。 このユーザーごとの録画情報を元に、録画予約時に番組のおすすめ検索も行なってくれ、番組表の[ジャンル検索]から呼び出し可能。ユーザーの録画履歴の学習機能を備えており、独自のおすすめ番組を作成してくれるなど、結構重宝する機能だ。なお、おすすめ番組の自動予約機能や、各ユーザーの録画履歴のパスワードロックなどは備えていない。
また、管理画面で便利なのがフォルダ機能を搭載したこと。フォルダ機能といっても、任意のフォルダをユーザーが作成できるわけではなく、同一の番組と楽レコが判断した場合、自動的にフォルダ分けしてくれるというものだ。 パスワードロックなどは付けられず、任意のユーザー名を付けることもできないのだが、1クールの番組をとり続けて、後で編集からDVD化したいといったときや、朝ドラなど毎日録画しておいて、一気に見ると行った用途には最適。勝手に楽レコがフォルダを作ってくれるので、余計なお世話と感じる人もいるかもしれないが、個人的には新楽レコで、もっともよくできていると感じた機能の一つだ。
■ チューナ品質は大幅向上 画質については、録画品質よりもまずはチューナのスルー画質の方が気になるところ。従来モデルでは、S/Nの悪さややや黄色に転びがちな色調が気になった記憶があるが、新モデルではそうした不満は全て払拭されている。 パイオニアの新レコーダDVR-530Hと比較してみたが、色味の傾向が若干異なっているものの、輪郭の表現がしっかりしており、顔の影側の階調などがしっかりと感じられる。 録画モードは、XP/SP/LP/EPの4モード。録画品質については、サンプルを参照されたいが、通常の利用についてはSPで十分だろう。ただ、25型以上のテレビでは、若干輪郭のざわつきやノイズも見られる。DVDへの書き出しや、チューナスルーと遜色ないを画質を求めるのであれば、XPが最適だろう。
DVD書き込みは、番組名鑑からダビングを行なうだけ。編集機能は従来モデルと同様で、プレイリストを作ってCMカットなどを行なう。 プレイリスト作成は、まず作成画面内にシーンを登録し、さらにそのシーンからプレイリストに登録したいものを選ぶ、という2段階で、シーンの登録は、番組丸ごと登録する「全体をシーンに登録」か、部分的に抜き出して登録する「一部をシーンにする」の2つの方法が用意されている。「一部をシーンにする」を選択すると、映像のIN、OUTを設定する編集画面となる。 また、録画予約時に「録画予約オートカット」を選択しておくと、ステレオ/モノラル判定によるCMを除いたプレイリストを自動的に作成してくれる。音楽番組などのステレオ番組を外せば結構動作精度は結構高い。 番組名鑑に登録される際もCMをカットして、番組視聴が行なえるので、DVD化を前提としなくてもオートカットをONにしておくといいかもしれない。 また、14bit/108MHzのビデオDACなどからなる「Dimossiveモジュール」による高画質化も図られているということから、DVDビデオの再生画質にも期待がかかるところ。再生モードはノーマル/シネマのほかユーザーカスタム設定も行なえる。 「スパイダーマン 2」、「ミスティックリバー」などのDVDを視聴してみたが、暗部ノイズの抑えがしっかりと効いており、色のりの良い人肌表現などが印象的。プログレッシブ出力時の字幕の処理などもしっかりとしており、DVDプレーヤーとしての能力もかなり高い。ただ、単体DVDプレーヤーとしてはリモコンにキーが多すぎるので、MENU操作などには慣れが必要かもしれない。 なお、正式サポートは謳っていないが「DVR-530H」で作成した2層DVD-Rを再生してみたところ、特に問題なく再生できた。
■ “録画の基本”をしっかり抑えたレコーダ 前モデルの弱点だったチューナ品質も大幅に改善され、Dimossiveモジュールによる高画質化などの、着実なアップデートも嬉しいところだ。録画機能も充実しており、アナログ放送の録画機としての完成度は高い。 気になる点としては、基本機能から少し深い機能を使おうとすると、そのナビゲーションがわかりにくいところ。例えばおすすめ番組の検索は青のA-Bボタンで、GUIでもその旨の表示はされているのだが、どうも直感的に理解できない。機能自体は誰にでも使いやすいのだが、そのナビゲーションがうまくないので、せっかくの機能を生かせないという印象が残る。 ともあれ、使い込んでいくうちにに、「録画予約の手間を省力化しながら、録り逃しを極力なくす」という録画の最も基本的な機能がよく考えられていることが実感できる。高速でストレスを感じさせない操作感は「楽レコ」の名前のとおりだ。高度な編集機能などによるDVD化に注力する人より、“録って消す”タイムシフト的な使い方で力を発揮するだろう。
□三菱電機のホームページ (2005年4月28日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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