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第205回:世界初、DVD-R DL対応レコーダ「パイオニア DVR-555H」
~ 東大先端研と共同開発のGUIを試す ~


■ この夏、レコーダはDL?

 DVDメディア2層記録の実現は、記録技術として昨年の大きなポイントであったろう。2004年夏にDVD+R DLドライブが発売され、それから約半年遅れて年末にDual Layer DVD-Rドライブが発売された。ただしいずれもPC用ベアドライブの話で、DVDレコーダに搭載という話は見送られたままであった。

 だがこの5月から状況が一変、DL記録がこの夏のトレンドとなりそうな気配である。まず今月初めから発売開始されたパイオニア「DVR-530H」がDual Layer DVD-Rに対応、その上位モデルDVR-555Hが6月上旬に発売される。一方DVD+R DLは、6月21日発売のソニー「スゴ録」シリーズ4モデルが対応している。

 地デジ放送の受信可能世帯数の伸びに連れて、ユーザーの関心は次第にHD記録のほうに傾き始めているが、裏を返せばアナログ放送のみの世帯もまだ半分近くある。次世代DVD規格関連ではなにやら違った動きも見られるようで、まだ手を出すには不安が残る現在、SDではあるものの従来の倍近いビットレートで保存できるDLレコーダが、この夏商戦の隠れた目玉となる可能性は高い。

 今回はパイオニアの6月発売モデル、DVR-555H(以下555H)をいち早くお借りすることができた。パイオニアの5ナンバーと言えば、ラインナップ中でもエントリーモデルにあたる。まずそこからDLに対応したと言うことは、それに続く上位モデルでもDL記録は当たり前、という時代に突入しつつあると考えていいだろう。

 また今回のモデルからは、GUIを東京大学先端科学技術研究センターと共同開発したという。レコーダはますます多機能になり、操作面でもわかりやすさが重視される時代になってきている。その成果もじっくり試してみよう。


■ 前面と背面にUSB搭載

 まずは外観からチェックしていこう。ボディはパイオニアが以前からこだわっている薄型で、フロントパネルは以前のモデルよりもアクが少なく、左右対称を意識したシンプルで親しみやすいデザインとなっている。ちなみに以前のモデルでは型番の最後にSが付いていたが、今回のモデルからは付いていない。筆者はSlimのSかと思っていたのだが、SilverのSだったそうである。当初はカラーバリエーションでも考えていたのだろうか。

 DVDドライブは左側に寄せられ、トレーを開けるとPioneerのロゴごとせり出してくる。ロゴを乗せるスペースを稼ぐために、ベゼルが左側に出っ張っている。ドライブは同社のDVR-A09相当だが、DVD-Rの記録速度は安定性確保のために、12倍速に抑えられている。また再生互換としては、DVD-R/RW以外にも、DVD+R/RW、DVD-RAMも再生可能。

 搭載HDDは250GBで、先に発売されるDVR-530Hよりも50GB多い。ステータス表示部は数字が大きく、認識性もいい。ボタン類は、再生・録画ボタンに若干のアクセントが付けられている他は、停止、録画停止、ワンタッチダビング、チャンネルアップダウンというシンプルさだ。

得意の薄型ボディを継承 Pioneerロゴごとせり出してくるトレイ ボタン類をシンメトリックに配置

 今回のモデルは、端子類に注目したい。フロントパネルにはアナログ外部入力のほか、USB端子とDV端子が付けられている。本機は前面のUSB-A端子を使ってデジカメからの写真取り込み、背面のUSB-B端子にPictBridge対応プリンタを接続し、PCレスでデジカメプリントするという機能を搭載している。またUSB-A端子には、USBキーボードを接続して、タイトル入力などに利用できる。ただしマニュアルには、PS/2-USB変換コネクタを使ったPS/2キーボードは接続しないように、注意書きがある。

前面にUSB-A端子を装備 タイトルのUSBキーボード入力にも対応

 背面を見てみよう。アナログAV入力は前面と合わせて3系統、アナログAV出力は2系統。そのほかD1/D2端子とオプチカルのデジタルオーディオ出力がある。USB端子がある以外は、オーソドックスだ。

 リモコンも見てみよう。前モデルの525H-Sと基本テイストは同じだが、若干ボタンの配列が変わっている。番組表や、新機能「気がきくナビ」ボタンが十字キーの下に配置され、メニュー操作の流れの中で利用できるようになっている。

シンプルな背面端子群 若干ボタン配置が変更されたリモコン


■ 新しいGUIが魅力

 ではさっそく使ってみよう。気になるのはGUIの変化だが、一番端的に表われているのは、録画番組を一覧表示する「ディスクナビ」画面だろう。従来のモデルでは、番組のテキスト情報よりもサムネイルが大きく表示され、何かの機能を使うためには左側にカーソル移動していく必要があった。しかし今回のGUIは、縦に番組情報を配置することで、テキスト表示エリアが広くなっている。

新しくなったディスクナビ画面、4タイトル表示 8タイトル表示にも切り替え可能

 また十字キーを左に1回押すと表示方法を変更するメニューに、右に1回押すと編集そのほかの機能にアクセスできるようになった。いちいちメニューエリアまで何度も十字キーを押して移動していく手間が省けたのは大きい。また機能の表示中に「気がきくナビ」ボタンを押せば、ヘルプがポップアップする。

左移動で表示スタイルの変更 右移動で再生・編集機能にアクセス 気がきくナビボタンでヘルプがポップアップ

複数選択モードで一括削除も可能

 録画番組の複数選択機能が付いた点も新しい。まとめて番組を消去したりする際に便利だ。しかしいちいち複数選択モードに入る必要がある点は、PCユーザーにとってはまだまどろっこしい感じもする。

 編集画面も新GUIになっている。チャプタ編集では、分割、消去、結合が縦移動で選択でき、サムネイル表示の有無などそれぞれ違ったGUIに変化する。また操作実行は、GUI内の「実行ボタン」に移動して押すのではなく、リモコンの「実行」ボタンだけで行なえるようになった。機能が整理されたこともあり、全体の作業がスピーディに行なえる。操作感としては、以前のパイオニア製レコーダからまったく別物に生まれ変わったと言っていいだろう。

チャプタ編集では、機能を縦に配置してすぐに切り替えられる 機能ごとにサムネイル表示なども切り替わる

GガイドのEPG画面は大きな変化はない

 EPGまわりも見てみよう。Gガイドの番組表表示は以前からと大きな変化はないが、画面下部に操作ガイドが表示されている。また1つのタイトルで複数の番組がまとめられているものには、それを示すアイコンが付けられている。

 本機では、番組表の表示よりもむしろ、検索機能を駆使して番組を見つけることに重点を置いているようだ。「録画辞典」は前シリーズから搭載された機能で、特定のキーワードに対して類推しながら番組を自動録画する機能だ。

 また検索機能はジャンルだけでなく、新番組だけを探す機能や、パイオニア独自のジャンル分けで検索する「おまかせ検索」を搭載した。これらの検索機能は、「録画辞典」の機能をある程度プリセット化したものと言えるだろう。

 録画予約に関しては、パイオニア独自の工夫がいくつかある。番組表からドラマを予約すると、毎週録画にするかどうかをウィザードで問い合わせてくる。次に進むと、最終回などで放送時間が変わる場合に自動で追従する「連ドラ延長録画」の設定もできる。詳細設定にある「更新録画」は、先週のファイルに上書きして今週のドラマを記録するという機能だ。ちなみにドラマ以外の番組を予約するときには、このようなウィザードは出てこない。

録画辞典以外にも検索機能を強化 連ドラ録画機能もウィザード形式なので、設定し忘れがない


■ 注目のDLダビング

 続いて録画とダビングについてまとめておこう。プリセットの録画モードは、1.01MbpsのSEPから、約10MbpsのXPまで6段階。マニュアル設定ではMN1から32までのほか、音声をリニアPCMで録るLPCMと、15Mbpsで録画するXP+が新たに追加されている。XP+では当然DVD-Video規格から逸脱するので、HDDにのみ録画可能。DVDへ直接録画する際は、XP+に設定しても自動的にMN32に変更される。

 内部的には、昨年のハイエンドモデルDVR-920H、720Hで内部的なDA-AD変換部分を減らした構造になったが、その考え方を継承した新エンジンとなっている。またエンコーダも新しくなっており、管理情報部分を小さくすることで、同ファイルサイズでも画質の向上が見込めるという。画質のサンプルを以下に掲載しておく。

DVR-555H録画サンプル
画質モード 解像度 音声 サンプル
YNR/CNR OFF・GRT OFF
XP 720×480ドット DD
ezsm01.mpg(27.1MB)
LPCM PCM
ezsm02.mpg(27MB)
SP DD
ezsm03.mpg(13.3MB)
LP 352×480ドット
ezsm04.mpg(7.9MB)
EP 352×240ドット
ezsm05.mpg(5.2MB)
SLP
ezsm06.mpg(3.9MB)
SEP
ezsm07.mpg(3.1MB)
MN1
ezsm08.mpg(2.4MB)
YNR/CNR最大・GRT OFF
XP 720×480ドット DD
ezsm09.mpg(27.3MB)
MN1.0 352×240ドット
ezsm10.mpg(2.3MB)
編集部注:DVカメラ「FV500 KIT」で再生したCREATIVECAST Professionalの映像をAV変調機「VMD3M」でRF信号に変換し、録画した。(c)CREATIVECAST Professional

MPEG-2の再生環境はビデオカードや、ドライバ、OS、再生ソフトによって異なるため、掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。

 DVDへのダビングの仕方だが、操作方法は1つではなく、いくつかのステップが用意されている。単純に番組をダビングしたいだけならば、録画番組を再生しておき、リモコンの「ワンタッチダビング」ボタンを押すだけでダビング可能。自動CMスキップもこの方法でできる。最初に番組再生するときに、「スキップ」ボタンを2秒以上押してCMオートスキップモードにしておけばいい。

 複数の番組をまとめたり、CMカットを行なう場合は、ホームメニューから「ダビング」を選んで専用のGUIで操作していく。最初にビデオモードかVRモードかを選択する必要があるが、DLメディアはビデオモードのみで使用できる。

 ここでのCMカットは、大きく分けて2つの方法がある。1つは「自動CM選択」機能を使うことだ。これは録画時にCMを自動検出して打たれたチャプタを元に、CM部分を自動的に判断して削除対象にしてくれるというものである。映画など音声モードではっきり分けられるものなどは、これでCMカットすると楽だろう。ただし手動で削除候補に加えたり外したりすることはできない。

 もう一つは、部分消去を使って自分で不要部分を消去する方法だ。ここはGUIにしてもディスクナビの部分消去と同じだが、ディスクナビでは本当にファイルの一部を削除するのに対し、ダビングモード内の部分削除はダビングリスト内の編集である。こちらでは、部分削除しても、実ファイルはそのままの形で残る。したがって編集するならば、ダビングモード内で行なった方が安全なのだが、そのあたりのアピールが今ひとつ足りないのではないかと思う。

ワンタッチダビング以外でも、自動的にCM部分を選択、カットできる ダビング時の部分削除も、実ファイルの部分削除と同じGUI

 編集方法としては、ビデオモード互換とフレーム編集が選択できる。ビデオモードを使用すれば、GOP単位での編集となるためフレーム単位ではカットできないが、DVDへのダビングに高速ダビングが使えるというメリットがある。試しに1時間35分の映画をDLメディアに高速ダビングしてみたところ、LPCMモードでの画質と音質のままで、およそ25分程度でダビングできた。再圧縮なしで映画がすっぽり入ってしまうのは、やはりDLメディアの魅力だろう。

 気になるのは録画したDLメディアの再生互換である。編集部が身の回りにあるプレーヤーで互換テストしてくれたので、参考にして欲しい。なお、パイオニアでは同社製のDVDレコーダやDVDプレーヤーでの互換性リストを公開している。

再生互換テスト
レコーダ
ソニー PSX
DESR-5000
×
スゴ録
RDR-HX10
×
三菱 DVR-HG765
東芝 RD-X4EX ×
RD-X5 ×
プレーヤー
パイオニア DV-578A
(2層目再生できず)
ビクター XV-D721
※結果は編集部がテストした個体によるもので、同機種でも個体によって結果が変わる場合があります。編集部では結果を保証できません。


■ そのほかの付加機能

 レコーダとしての基本機能以外にも、555Hはユニークな機能を搭載している。まずはフォトビューワー機能を試してみよう。手前のUSB端子にデジカメやUSBカードリーダーを接続し、写真があることが認識されるとフォトビューワー機能が使えるようになる。試してみたところ、Imation製の「FlashGO! LITE」という若干古めのUSBカードリーダーは認識しなかったが、デジカメ(Panasonic SV-AS10)を直接接続したら認識した。PCでは使えても、555Hでは使えないデバイスもあるようだ。

【5月26日 編集部追記】
 パイオニアに「FlashGO! LITE」での動作確認を依頼したところ、「貸出機のファームウェアのバージョンでは対応できていなかったが、製品版のファームウェアを搭載した555Hでは認識できた」との回答を得ました。市場に出荷される製品版では、各社製品との相性問題も改善されているとのことです。

 普通は「デジカメまるごと取り込み」を選択するとHDDにコピーしてくれそうだが、そうではない。これはDVDメディアへ直接ファイルを書き込むだけである。HDDへの取り込みは、「USB機器内の写真を見る」でどれでもいいから写真を選択して、「決定」ボタンを押してメニューを出すという、変な方式だ。東大もここのGUIまでは面倒見てくれなかったらしい。

デジカメを直接接続してフォトビューワー機能を起動 HDDへの取り込みは、適当に写真を選んでからメニューを出す

 USBから直接では、サムネイル画像の表示にも結構時間がかかる。しかも次のページにスクロールして戻ると、また最初からサムネイルの作り直しになるので、レスポンスが悪い。一方HDDに取り込んでからだと動作自体は同じだが、速度は圧倒的に速くなる。

 筆者宅にはPictBridge対応プリンタがあるので、試しにプリントしてみた。プリンタ設定などのようなものは全くなく、用紙選択や縦横指定すら出てこないのだが、それでもL版のフォト専用紙にうまく縁なし印刷できた。PictBridgeはデジカメを直接繋いでもいけるのだが、写真を撮ってその都度印刷するよりも、555H上にフォトライブラリを作ってそこから印刷する、というのは、PCがない家庭にとっては便利だろう。

 もう一つの機能、「ジュークボックス」を試してみよう。これは音楽CDをHDDに取り込んで聴こうという機能だ。555Hのジュークボックス機能は、リッピングとは言うもの、実時間をかけてAC3 256kbpsにエンコードする。取り込み方は簡単で、音楽CDを再生して「ワンタッチダビング」ボタンを押すだけ。するとCDの再生が頭に戻り、録音が開始される。

 しかしCDDBなどに接続できるわけでもなく、曲名やアルバム名などは自分で入力しなければならない。また取り込んだ音楽はCD-RやDVD-Rに書き出せず、単に再生できるのみである。

たったこれだけのダイアログ後に、いきなり印刷が始まる あまり使い道がないジュークボックス機能

 過去にもNEC AXシリーズやソニーPSXなど、CDライブラリ機能を搭載したレコーダはあったが、その使い勝手の悪さから、未だに差別化機能として確立していないのが実情だ。何か違うことがやりたい気持ちはわからないでもないが、PCを超えてこそ、単体機の存在意義だと思う。


■ 総論

 多機能なレコーダとしてもっとも重要なGUIを、大幅に改良したDVR-555H。チューナはアナログ地上波しかないが、Dual Layer DVD-Rにも対応し、再生はついにDVD-RAMにも対応するなど、意外に見所が多いマシンだ。また価格も8万円台と、買いやすい価格に収まっている。

 気になるところといえば、目玉であるDual Layer DVD-Rの再生互換性の低さだ。規格が固まった昨年秋以降に発売されたレコーダ、プレーヤーでは再生可能なものもあるそうだが、それ以前の特にレコーダは全滅に近い。単純にファームウェアのアップデートで再生可能になるモデルあるはずなので、ぜひDVDフォーラム各社協力してファームウェアのリリースなどを積極的に行なって欲しいところだ。

 また本機は、静止画保存、プリント、音楽ライブラリなど、従来同社がやってこなかったレコーダの多機能化に挑戦した第一歩でもある。日本のコンシューマでは、デジタル機器は緩やかにノンPCの世界へ移行しつつあり、これもその動きを敏感に察したものであろう。プリントアウトを苦手としていたので、PictBridgeが想像以上に上手く動作して、驚いた。

 一方音楽に関しては、等速取り込みでその間予約録画も実行されないというのは、勘弁して欲しい。AC3へのエンコードは確かに珍しいが、逆にそれから先の展開が望めない。クリエイティブ方向に振るならば、もう少し柔軟性が必要だろう。

 むろんこれらの付加機能を使わなくても、レコーダとしての使い勝手は昨年のモデルから大幅に向上しており、「これぞ普及機」たる要素を外していない。特にドラマ録りにこだわる人には、録りっぱぐれがないよう各機能が強力にサポートしてくれるので、安心だ。

 地上波アナログ停波まであと6年。それまでに使い潰すレコーダとしては、手頃なところではないだろうか。


□パイオニアのホームページ
http://www.pioneer.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.pioneer.co.jp/press/release480-j.html
□製品情報
http://www.pioneer.co.jp/dvd/lineup/555.html
□関連記事
【3月31日】パイオニア、世界初の2層DVD-R対応レコーダ
-メディア1枚に最長24時間録画。実売7万円から
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050331/pioneer.htm

(2005年5月18日)


= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]



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