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第212回:ターゲットを絞った東芝の新シリーズ「AK-G200」
~ 手軽に使える「カンタロウ」は本当に簡単か ~


■ RDが抱える潜在的な問題

 日常的に使うもののインターフェイスには、いろいろな考え方が成り立つ。ほぼ毎日使うものであれば、多少操作が難しくても繰り返し操作することで覚えてしまう。多くのメーカーは、その「慣れればOK」というところで進化が止まってしまうのである。一方ユーザー側は、手順の煩雑さとわかりにくさゆえに、「めんどくさいキカイ」という評価を下しているものなのだ。

 それでいながら日本では、「オタクのキカイ難しいじゃないか」とメーカーに文句を言うケースは少ない。うまく使えないのは自分の能力のせいだと思ってしまうし、またそういうものを選んでしまった自分の責任というものを感じてしまうのであろう。

 では本当の意味で、操作が簡単とはどういうことだろうか。筆者の考えでは、「こうすればこう動くだろう」と予想した通りに動くことだろうと思う。つまり操作法が暗記に頼らず、見ればわかる作りになっているということだ。こういう機材は、安心して長く使えるものなのである。

 東芝のレコーダ「RDシリーズ」は機能の豊富さで人気が高いが、操作が簡単かという点に関しては、以前から疑問を呈している。実はRDシリーズを自宅に2台導入して、家内と娘が1台ずつ使っているのだが、ちょっと踏み込んだことをやろうとするたび、すぐに呼び出されてしまう。

 そんな調子でも一応日々使えてしまうというので、問題を問題らしく見せていないだけなのである。「さすがパパねー」などとおだてられて喜んでるうちは、問題が露呈しないわけだナ。

 東芝でもそのあたりの問題意識はあって、今年6月からRDシリーズとは別に、年配層や20代女性層をターゲットとした新「AK-G」シリーズを展開する。「アレよりかんたん」を自認する、通称「カンタロウ」はどこまで簡単なのだろうか。ここはひとつ20代女性の気持ちになってレビューしようと思ったのだが、キモチワルイだけなのでやめて、年配者のつもりになってテストしてみよう。



■ シンプルさが光る、綺麗なデザイン

思い切った薄型のデザイン

 「カンタロウ」の1号機となるのが、「AK-G200」(以下G200)だ。一般に流通するのはこのモデルのみで、別途東芝特約店専用に、HDDの容量をG200の250GBから160GBに減らして価格を下げた「AK-G100」というモデルも存在する。今回はG200の方をお借りした。なお、G200の実売価格は7万円程度だ。

 まずはいつものように外観だが、同じレコーダとはいってもRDとは型番も違うこともあって、デザイン的にはまったく違ったテイストになっている。特徴的なのはその薄さで、高さ58mm。

 レコーダの薄型化というのはパイオニアが早くから取り組んでいて、デッキ棚に後から追加するためには狭い部分に収まることが重要、という戦略を取ってきた。G200はそのパイオニアDVR-555Hよりも1mm薄いため、現時点で世界最薄のDVD/HDDハイブリッドレコーダとなっている。

 ただ高さが低いが面積は普通で、幅430mm、奥行きが333mm。前回のRD-XS57より数㎜小さい程度なのだが、本体が薄い故に奥行きが長く感じる。

 フロントパネルはアルミ風の塗装が施された樹脂製で、横に刻まれたラインをアクセントに、左側には電源ほか操作ボタン類、中央部にDVDドライブ、右側に表示の大きなディスプレイ部がある。ボタン部分の下部には、外部入力端子があるのだが、完全にデザインと一体化しており、フタがあることになかなか気がつかない。

横に貫くセンターラインがアクセント 左側のボタン下に外部入力端子がある 右側のディスプレイ部。イジェクトボタンが右端にある


DVDドライブは東芝製で、DVD-RAMカートリッジにも対応

 なぜかドライブのイジェクトボタンだけが、地味に右端にある。操作感としてはドライブの側にあるのが筋だと思うが、デザイン的なこだわりだろうか。端に孤立していることで、見る人によっては電源ボタンと誤認することもあるだろう。

 DVDドライブは東芝製で、DVD-R/RW/RAMに対応。DVD-R CPRMメディアには対応しているが、二層メディアには対応していない。HDDは250GB。

 背面に回ってみよう。実はG200のコンセプトがもっとも現われている部分が実はここではないかと思うのだが、これ以上シンプルにできないぐらいのシンプルさだ。RF入力は、アナログ地上波のみで、そのほかアナログAV入力が1系統ある。前面にもう1系統あることは既に述べた。

入出力はこれ以上ないほどにシンプル 電源ケーブルも直出し

 出力はアナログAVが1系統、D2端子、そして市販DVD再生用に光デジタル出力がある。AV出力には別途大きく「テレビの入力へ」と書かれており、接続も極力わかりやすくするための工夫が見られる。電源ケーブルも直出しで、これもわかりやすさ、あるいは設置後のトラブル防止の意味もあるだろう。

設置に関する巨大な説明書が同梱されている

 設置に関してはさらに、「接続・設定早わかり」という巨大な文字で書かれた巨大な紙が付属しており、年配者が自分で設定する際の便宜を図っている。ただ、DVD-R/RWのVideoモード設定にまでこの紙で踏み込んでいるが、そもそも年配者にはここに記されている用語がわからないのではないか。免責の意味合いもあろうかと思うが、説明しない方が幸せな場合もあるだろう。

 説明書はもう一つ、「基本操作早わかり」というハードコーティングされた紙が付属する。日常的な使用においては、この紙をいつも手元に置いて操作してくれというわけである。本当はこの紙が必要ないぐらい簡単なのが理想だが、配慮という意味では評価できる。もちろん従来型のマニュアルも付属している。

 最近はリモコンの見直しも各メーカーの重要な取り組みポイントとなっている。ソニーはベガシリーズを中心に、ジョイスティックのみで操作できるリモコンとGUIを採用するなどの動きが広がっている。松下は通常リモコンのほかにボタンの大きな簡単リモコンを付属する製品があり、年配者に支持されている。以前レビューしたDMR-EX300でも、ボタンの大きなデザインを採用したばかりだ。

本体デザインを継承したリモコン

 G200のリモコンは、本体のフロントパネルのデザインを継承し、ボタンをセンターラインが貫くシンメトリックなスタイルとなっている。再生、停止、一時停止、録画の4ボタンが大きく縦にフィーチャーされ、文字も大きい。だがDMR-EX300のようなコテコテ感はなく、底部には東芝ロゴを縦向きにあしらうなど、デザイン的には高度だ。

 早送り/早戻しなどの映像操作ボタンは、センターのボタンを軸にして、左右に大きく離れている。わかりやすいとは言えるが、使いやすいかどうかは意見の分かれるところだろう。またこの映像操作系のボタンは、リモコン横のスライドスイッチを切り替えることで、数字キーになる。ボタンを減らすアイデアとしては面白いが、年配者にはこういう部分がトラブルの元ではないかという気がする。

 メニュー操作用の十字キーの上には、番組表、メニュー、HDD、DVDと4つのボタンが並ぶ。これがRDであれば、見るナビ、編集ナビといったナビボタンが並ぶところだが、カンタロウシリーズではこの切り口をやめて、トップメニューから機能を選ぶスタイルとなっている。またRDの特徴であったクイックメニューボタンはそのまま継承されている。

 リモコン下部のフタをスライドさせれば、使用頻度の低いボタンが現われる。とはいえ、DVDソフトを見るときに使うボタンや本体設定に使うボタンなどが混在した形になっている。このあたりは色分けするなど、「要するに今どれが使わなくていいボタンなのか」を明確にすべきだろう。わかりやすさとかっこよさのバランスが難しいところだ。



■ 初期設定はやさしいが...

 では使い勝手を見ていこう。初めてデジタルレコーダを買う人が戸惑うのが、初期設定である。そうそう年に何度も買い直すものでもないし、一度設定したら二度と使うことがない部分なだけに、今まであまり注目されてこなかった部分だ。

質問に順次答えていくだけで、初期セットアップは完了

 G200では、購入して最初に電源を入れると、設定ウィザードが表示される。リモコンで質問に答えていくと、最低限の初期設定は完了する。

 一方それでは設定できない部分は、従来のRDのように設定ボタンで初期設定画面を出すことができる。だがこの部分ももう少し整理できるのではないかという気がする。例えば再生NRの設定などは、どうするのかをユーザーに任せるのではなく、低ビットレート時には自動でONになるといったアルゴリズムもあっていいだろう。良かれと思うことを自分で考えて設定できるユーザーならともかく、そうでない人が今回のターゲットであるならば、必要ない機能や設定などもまだまだ沢山ある。

 「メニュー」ボタンを押すと、トップメニューが表示される。機能を選ぶと、各機能の説明が右側に表示される。既にRDでは廃止方向にあるGコード予約を残しているあたり、この製品のターゲットとしては正しい判断だろう。

細かい設定は、従来のRDのような設定画面で行なう G200のトップメニュー。電源を入れるといつもこの画面が起動する

 番組表を見てみよう。本機に搭載されたEPGはADAMSのみで、ネットワーク経由のiNETには対応しない。従って一部テレビ朝日系列がない地域ではEPGが利用できないが、その分をGコードでカバーするという考え方もできる。

RDユーザーにはお馴染みの番組表メインメニュー

 トップメニューから「番組表から探す」を選ぶと、RDと同じ番組表メインメニューへ移動する。だがここで「戻る」ボタンを押しても、大元のトップメニューには戻らないのはわかりづらい。最初のメニューがトップであるならば、間違って選んだ場合を考慮して、「戻る」ボタンでそこに戻るべきだ。

 操作性で評価できるのは、「終了」ボタンが「戻る」ボタンと対象位置に付いたことだ。今までのRDの作法では、例えば設定画面を出したのならば、それを閉じるために同じく「設定」ボタンを押す必要がある。見るナビを閉じるときは見るナビボタン、編集ナビを閉じるには編集ナビボタンと言った具合に、それぞれの機能ボタンを押さなければ画面が閉じないのである。

 だがG200では、この「終了」ボタンを押せば、どんな画面でも閉じるようになった。もちろん従来どおり、各機能ボタンをもう一度押しても閉じる。ここは操作法を暗記せずに、期待した動作をする点で評価したい。

検索画面などもRDとほぼ同じ操作系

 本機にはキーワード自動録画機能はないが、スポーツ延長やドラマ延長機能は装備する。検索機能など、できることはRDとほぼ同じだ。文字の入力画面も同じだが、例えば「モード切り替え」という表現1つとっても、これがひらがな、カタカナ入力切り替えであることがわかるだろうか。レコーダにはとにかく、モードと名の付くものが沢山ある。このあたりは、ターゲットに合わせて「入力文字切り替え」のような、もう少し丁寧な表現にすべきだろう。

 リモコンの「番組表」ボタンを押すと、ダイレクトにEPG画面に行ける。RDと違って各チャンネルの表示が2行になっており、番組名が把握しやすくなっている。2行になったぶんだけ同時に表示できるチャンネル数は減るのだが、BSもCSもチューナがないわけだから、その点の不便は感じない。

番組表は2行になって読みやすくなった 番組予約画面もRDの操作性を継承

 番組の予約画面も、RDと同じだ。だがここもまだまだ改良の余地がある。例えば毎週予約を行なう場合は、日付部分を下ボタンで「毎日」「月-土曜日」「月-金曜日」「毎土曜日」……といった具合に送っていかなければならない。

 帯番組を録画するケースは別にして、普通EPGから予約して毎週予約するといったら、その番組の同じ曜日の同じ時間を録画するに決まっているのである。それなのに、それを一発で設定できる機能がない。このあたりの設定の面倒くささはVHS並みなわけだが、「VHS並みならVHSでいい」と思っている人にこれからレコーダを売っていかなければならないことを考えれば、この仕様も考え直す必要がある。

 なお、予約録画を途中で停止する場合は、RDでは本体の停止ボタンを2回押す、という、マニュアルを読まなければ絶対に想像すらできない方法が取られていた。だがG200ではリモコンの停止ボタンで録画を中断するかが決められるようになった。



■ 改善点が多い再生操作系

HDDボタンを押しただけで自動的に録画番組タイトル画面になる

 では再生・ダビング系の機能を見てみよう。DVDとHDDのレコーダには、メディア切り替えのためのボタンがあるわけだが、G200ではHDDボタンを押しただけで、自動的にHDDに録画された番組が表示される。RDで言えば、メディア切り替えと見るナビを1ボタンにまとめた形だ。

 同じくDVDボタンを押すと、何か録画されたディスクが入っていればサムネイルが、市販DVDの場合はメニューが表示される。またDVDメディアを入れただけで自動的に再生が始まるなど、メディア選択とその後の挙動がうまくまとめられている。

 録画時にトピックの変わり目で自動的にチャプタを打ってくれる「マジックチャプター」は、なかなか面白い。単に音声モードの切り替えポイントではなく、絵柄を解析しながらチャプタを打つため、コマーシャルだけでなく内容的に分かれていると思われる部分ごとにスキップして再生することができる。番組を録画しても全部のコーナーを見るわけではない場合は、いままでなら早送りしていたところだが、それがスキップで代用できるので、時間短縮になる。

 番組の削除は、リモコンに削除ボタンが付いたため、楽になった。またクイックメニューから「ごみ箱へ移動」を選べば、あとで一括で削除することもできる。

 プレイリストの作成機能では、クイックメニューから奇数・偶数チャプターの一括選択ができる。マジックチャプターでうまくCMが分かれているときには、有効だろう。ただ自分でチャプタを選ぶ場合は、結構難しい。サムネイルが再生されるわけでもないし、そのチャプタ部分の内容が確認できない。今や多くのレコーダがサムネイル再生に対応しているが、この部分はG200の苦しいところだ。

 DVDの作成については、高速ダビングとレート変換ダビングが自動で切り替わるようになっている。そのままで入れば高速ダビング、再圧縮が必要になれば勝手にレート変換ダビングになるわけだ。ただしこの機能が使えるのは「HDD→DVDダビング」機能を使ったときだけで、最初から「DVD-Video作成」機能を使ったときは、容量を超えた追加はできない。

うまくチャプタを分ければ、偶数チャプタを一括で選択、追加できる DVDメディア1枚に入らない場合は勝手にレート変換ダビングになる

 トラックの構成などが違うものの、最終的には「HDD→DVDダビング」機能でもファイナライズすればDVD-Videoになる。メソッドの違いでできることに差がある点は、余計な混乱を招くだろう。

 録画品質に関しては編集部がまとめてくれたので、一覧でご覧いただこう。なお、RD-XS57/37とは異なり、録画モードごとの解像度変更は行なえない。LPモードの場合、解像度は720×480ドットに固定されている。

AK-G200録画サンプル
画質モード 解像度 音声 サンプル
MN9.2 720×480ドット DD1(192kpbs)
ezsm01.mpg(25.7MB)
XP
ezsm02.mpg(25.7MB)
MN8.0 PCM
ezsm03.mpg(26.1MB)
SP DD1(192kpbs)
ezsm04.mpg(14.1MB)
MN3.8
ezsm05.mpg(11.9MB)
LP
ezsm06.mpg(8.2MB)
MN1.4 352×240ドット
ezsm07.mpg(5.1MB)
MN1.0
ezsm08.mpg(4.2MB)
編集部注:DVカメラ「FV500 KIT」で再生したCREATIVECAST Professionalの映像をAV変調機「VMD3M」でRF信号に変換し、録画した。(c)CREATIVECAST Professional

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■ 総論

 年配者や女性をターゲットに、簡単操作を売りにして別ラインナップで立ち上がったAK-G200だが、電源を入れただけで立ち上がるトップメニューの存在がRDとは違うものの、中味はほとんどRDと同じだということがわかる。

 例えば画質設定などでRDと同じくマニュアルモードを残しているが、これも本当に必要だろうか。いくつかのプリセットと、自動でDVDの空き1枚分に調整してくれるATモードがあれば、十分ではないかと思うのだが。

 もちろん開発リソースを考えると、今までのRDのソフトウェア資産を生かさない手はないわけだが、同じGUIでもターゲットユーザーによって捉え方が全く変わってくる。わかりやすい作りを目指す心意気は買うが、そもそも「機能を減らせばRDの操作画面は難しくない」というところがスタート点であること自体に無理がある。

 いろんな判断をユーザーに任せたRDは、それはそれで非常に優れたキカイなのだが、逆に初心者をターゲットにした場合は、ある程度メーカー側が良かれと思って機能を自動化して行く必要がある。そしてその部分こそがメーカーのカラーであり、そこに納得できるかどうかで購入するかを判断していくという図式になるわけだ。

 個人的には、DVDの黎明期から積み上げて複雑怪奇な構造になったRDのソフトウェアをいったんリセットして、もう一度シンプルな構造に再構築して欲しかった。現時点のG200では、まだうちの両親には勧められないという印象だけが残ったのは、残念だ。

 ただ機能的には、RDに組み込んでもいいんじゃないかと思える機能がいくつか出てきている点は収穫だろう。各メーカーともユーザーインターフェイスの見直しが計られる中、東芝なりの方向転換が必要な時期に来たという事なのかもしれない。


□東芝のホームページ
http://www.toshiba.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.toshiba.co.jp/about/press/2005_05/pr_j1801.htm
□製品情報
http://www3.toshiba.co.jp/hdd-dvd/products/hdd/kantaro/ak-g200/index.html
□関連記事
【5月18日】東芝、ハイブリッドレコーダ「カンタロウ」
-LAN機能などを省いた簡単操作の新シリーズ
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050518/toshiba2.htm
【5月18日】【EZ】第210回:デジタル放送対応レコーダ、松下「DMR-EX300」登場
~ デジアナ同時録画が魅力のハイビジョンDIGA ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050622/zooma210.htm

(2005年7月6日)


= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]



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