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第211回:アナログ放送用レコーダの完成型、東芝「RD-XS57」
~ W録/自動録画/番組追っかけ/2層DVD-R/HDMI ~


■ 人気の「W録」最新モデル登場

 マニア受けするレコーダとして人気の高い東芝RDシリーズだが、普及タイプのXSシリーズ登場以来、機能面の豊富さとリーズナブルな価格設定で、マニアだけに留まらない人気を博している。

 特に昨年「RD-XS53」で、2番組同時録画を可能にした「W録」という単語は、強力な番組を同時間帯にぶつけたがるテレビ局の編成から視聴者を解放する解決策として、一般にも広く普及した。デジタルカメラが「デジカメ」で通じるように、2番組同時録画機能という意味で「W録」が使われ始めており、今日も量販店の店頭では「W録できるDIGAはどれでつか」のような不毛な会話が行なわれているはずなのである。

 さてそんなXSシリーズの5ナンバーに、新モデルが登場した。今月中旬から発売が開始された「RD-XS57」(以下XS57)は、デジタルチューナこそ搭載していないものの、現時点で考えられる機能のほとんどを搭載していながら、既に価格はネットで7万円台まで下げているという、この夏注目のモデル。

 ざっと機能を上げるならば、W録は当然のこと、WEPG、おまかせ自動録画、番組追っかけ、スポーツ延長、2層DVD-R、CPRM対応DVD-R、おすすめサービス、ネットdeナビなどを搭載しており、録画機能面、DVD-Rの新規格面、ホームネットワーク面で隙のない構成となっている。

 ではさっそくRDの超お買い得モデル、XS57の使い勝手をチェックしてみよう。


■ オーソドックスで落ち着いた外観

 RDシリーズは一時期コストダウンを外観に求めた結果、デザイン面で面白みのない機体が続いた時期もあったが、XS57はそこから持ち直して、割と落ち着いて見られるデザインとなっている。

落ち着いたフロントパネルのデザインが魅力 アルミの緩やかなラウンドがノスタルジックなかっこよさを演出

 フロントパネル上部には肉厚のアルミをヘアライン仕上げで配し、軽く湾曲を持たせている。下半分は樹脂製の扉になっており、上部よりも明るさを落としたガンメタリック塗装でコントラストを出している。

 ボタン類は以前から東芝製品では多く使用されてきた小型のポッチで、ボタン周囲がLEDでカラフルに光るタイプ。DVDドライブを挟んで左側には電源とメディア、チューナ切り替えボタン、右側には再生録画など操作系のボタンが横一列に並ぶ。またRD初のHDMI搭載モデルということで、パネルのHDMIロゴの横にはブルーのLEDが埋め込まれており、ここも1つのアクセントとなっている。

小型のボタンの周囲を囲むLEDライトが綺麗だ DVD-RAMカートリッジ対応のDVDドライブ

 DVDドライブは、DVD-Rが16倍速、DVD-RWが6倍速、DVD-RAMが5倍速で、DVD-R DLメディアは4倍速。ドライブは他社製としているが、過去の経緯から考えて松下製だと思われる。HDDは300GB。

 FL管のディスプレイ部は小型で、チャンネルと時間表示が大きく、他のステータスは小さく表示される。また表示部が多少奥まって取り付けられているので、上から覗き込んだときなどは、ディスプレイ上部のステータス表示が見えないこともある。

 下部のパネルを開けると、左にはアナログAV入力とDVカメラ接続用のDV端子。右側にはチャンネルのアップダウンとスキップボタンがある。最近の機材には珍しく、映像操作系のボタンが充実している。

パネル内左側には外部入力端子 本体の操作ボタン類は充実している


いまどききちんとコンポーネント端子まで装備しているのは珍しい

 背面に回ってみよう。搭載チューナはアナログ地上波が2系統だが、RF入力端子は1つだ。ほかBSアナログを1系統装備している。アナログAV入力は、前面と合わせて3系統。D1入力端子もあり、スカパー! 連動端子もある。

 また入力3は、本体電源がOFFの状態でもスルーの映像が出せる「入力3スルー機能」を備えている。ただしD1入力の信号はスルーできないので、接続には注意が必要だ。


Gコード予約で使っていた液晶がなくなったリモコン

 出力は、アナログAVが2系統のほか、コンポーネント出力、D2端子を備えている。デジタル音声は、コアキシャルとオプチカルの両方だ。またHDMI出力が1系統ある。価格の割には、豊富な出力形態を装備している。

 ただケーブル類は、コンポジットとオーディオLRの1セットしか付属しないので、D端子やHDMI、スカパー! 連動端子を接続したい場合は、別途ケーブルを用意する必要がある。

 リモコンは基本的には以前からもスタイルを踏襲したものだが、今回からGコード予約機能がなくなっており、そのあたりの機能がリモコン上から消えている。

 今やRD名物となり始めている分厚いマニュアルにも、工夫が見られる。「操作編」のマニュアルが124ページに薄くなり、別途RD-Styleガイドブックという別冊が付属するようになった。こちらは操作編マニュアルでフォローしきれない部分を中心に、やりたいことから逆引きができるようになっている。



■ 新機能はもう一歩?

 従来からのW録予約やWEPGなどの機能は、RD-XS53RD-X5あたりのレビューを参考にしていただくとして、今回の目玉でもある「おまかせ自動録画」を中心に見ていこう。

 以前からRDシリーズには、キーワードを設定して番組を検索できる「お気に入り」機能があったが、今回はこの機能を拡張して、お気に入りで見つけた番組が自動録画されるというスタイルになった。

「お気に入り」の設定ごとに自動録画ができる

 まず「お気に入り/キーワード設定」で、お気に入りのセットに対してキーワードの設定を行なう。キーワード1と2は「and」の関係となり、キーワード3は「not」になる。だが「or」がないというのは、過去の例からするとちょっと心配だ。

 例えば大リーグの野球を自動録画したいと思うならば、キーワードは「大リーグ」だけでなく「メジャーリーグ」とか「松井秀喜」とか「イチロー」とかも「or」条件として入れておきたい。番組検索というのは、なかなかこちらが意図したとおりには引っかからないものなのである。現状では複数の条件に対して動作させるためには、別途「お気に入り」のセットを消費することになる。

 自動で録画する番組に関しては、一日の録画量を1/3/6時間の中から選ぶという、珍しいアプローチを取っている。本機はW録が可能なので、普通のレコーダと違って放送時間がかち合った場合でも、2つの番組を録ることが可能だ。あまりにも沢山録画されすぎないようにという配慮だろう。もっとも容量が足りなくなれば古いものから順に削除される機能があるので、録れすぎても心配はないのだが。

 ただキーワードを設定したからといって、すぐに番組が検索されるわけではない。iNETの番組情報を使っていても、次回の番組情報ダウンロードまで待たなければならないのである。ADAMSなど放送波を使うEPGならともかく、いつでも更新可能なのがiNETのメリットだろうと思うのだが、このあたりの使い勝手にはもどかしいものがある。

 自動録画された番組は、お気に入りのフォルダに振り分けられるようになっている。お気に入りやフォルダは3セット単位でまとめられているところから、ジャンルや傾向ごとにお気に入り3つ単位でまとめたほうが使いやすいだろう。

お気に入りをセットしても、すぐに番組を探すわけではない 自動録画された番組は、専用のフォルダに格納される

 もう一つ気になる新機能、番組追っかけとスポーツ延長を見てみよう。番組予約時の詳細設定で、この2つの機能を設定することができる。設定とはいっても、「番組ナビ設定」で初期値を「入」などに設定しておけば、予約時に両方とも自動設定されているため、わざわざ改めて設定しなおす必要はない。

「番組ナビ設定」で動作のデフォルト値を決める 予約時には両機能がデフォルト値に従ってセットされている

延長時間は予約時に設定し直すことができる

 番組追っかけ機能は、毎週録画や毎日録画といった予約の際に働くもので、予約実行前にEPGのデータを再度チェックし、放送時間の変更があったら自動的に録画予約の時間を変更してくれる機能だ。最終回だけ後ろに伸びるドラマの最終回も、この機能で追従する。

 一方スポーツ延長機能は、延長する可能性がある番組が予約の前にある場合には、あらかじめ後ろを余分に録画するというものだ。したがって延長された場合は、録画の先頭に野球の後半が録画されるが、目的の番組は最後まで録画されている。手動で時間を設定する場合は、30/60/120分から選択できる。


■ ネットワーク家電の先陣的存在

 東芝はAV機器メーカーの中でも、ホームネットワークに対して積極的に取り組んでいる会社だ。テレビにネットワークを搭載してNASで録画できるようにしたり、RDシリーズでは「ネットdeナビ」をいち早く搭載し、PCとの連携を図ってきた。今回のXS57でも、ネット回りの機能が強化されている。

 まず目新しいところでは、番組ナビの番組リストに新しく「おすすめサービス」がお目見えした。これは全国のRDユーザーによる録画予約ランキングなどが参照できる機能だ。

全国のRDユーザーによるランキングを見ることができる

 ランキングでは、総合のほかにもドラマ、バラエティ、アニメ/特撮、音楽、その他といったジャンル別のランキングも参照できるようになっている。ランキングは1位から32位まで表示されるが、クイックメニューから並び替えや絞り込みを行なうこともできる。もちろんここから番組を選んで予約することも可能だ。番組表を丹念にチェックする時間はないが、話題の番組を見逃したくないという人にはうれしい機能だろう。

 非常に興味深い機能ではあるのだが、難点はランキング画面から「戻る」ボタンを押すと、番組ナビのメインメニューまで一気に戻されてしまうところだ。総合ランキングからドラマのランキングに移行したいだけなのに、またメインメニューから「おすすめサービス」に入り直さなければならないので、不便だ。

 おすすめサービスの中には、「あなたのおすすめ」という機能がある。これは今まで自分が予約した番組の傾向などを分析して、同じような番組を探してくれる機能。この手の機能はソニーが得意としてきたところだが、東芝も追いついてきたといったところだろうか。

 もう一つ「みんなからのおすすめ」は、自分の予約の傾向と同じような人が、どんな番組を予約しているのかがわかるという機能。「あなたのおすすめ」がサーバのパーソナル分析による結果だとしたら、「みんなからのおすすめ」は分析後に他の人のデータと照らし合わせた結果だと言えるのかもしれない。

「あなたのおすすめ」の順位。正確に言うならば「あなたにおすすめ」か? 「みんなからのおすすめ」の順位。「あなたの~」とは違ったラインナップになっている

 わかったようなわからないような違いだが、実際にやってみると確かに違った結果になっている。今回はレビューとあって、個人的な好みとはまったく無関係に予約してしまっており、プロファイリング的には最悪のデータを提出した恰好だが、ちゃんと好みの番組を予約し続けた結果がどのようになっていくのか、興味深い。

 なおここではあくまでもお勧めを推薦してくれるだけで、自動で録画してくれるわけではない。ランキングも含めて「ここを覗くのが楽しみ」といったアプローチになっているようだ。このあたりは、録りすぎてわけわからなくなるよりも、一歩引いて自分で状況を把握するタイプの使い勝手になっており、RDらしいと言えるだろう。


■ DLや両面メディアに対応した画質設定

 録画機能に関しては、以前からRDはマニュアルビットレート中心の設計となっており、マニアには受けが良かったが、一般の人にはややこしかった。そして今回はまた新しいアプローチが増え、さらにややこしくなった。

「設定メニュー」で「高解像度モード」への切り替えができる

 最近のレコーダの傾向として、MPEG-2エンコーダの向上により、LPモードがD1解像度にシフトしてきているが、XS57もその例に漏れず、低ビットレートでも解像度をD1サイズから下げない「高解像度モード」への切り替えが付いたのである。

 ビットレートと解像度の関係は以下のようになっているので、サンプル画像とともに参考にして欲しい。なおRDシリーズには以前から、最高ビットレートで録画しながらもシーンに応じてレートを下げる「最高画質レート節約モード」もある。


RD-XS57録画サンプル
画質設定 高解像度
モード
最適VR
モード
最適Video
互換モード
サンプル
ノイズリダクションOFF・3次元YC分離ON
MN9.2-SP-MN4.0 720×480ドット
MN9.2(25.7MB)
MN3.9-MN3.0 720X480
ドット
544X480
ドット
352X480
ドット

MN3.8
【高解像度モード】
(12.3MB)

MN3.8
【最適Video互換モード】
(11.8MB)
MN2.9-LP-MN2.0 720X480
ドット
480X480
ドット
352X480
ドット

LP
【高解像度モード】
(8.3MB)

LP
【最適Video互換モード】
(8.4MB)
MN1.9-MN1.0 352X240ドット
MN1.0(4.3MB)
ノイズリダクションON(強)・3次元YC分離ON
MN9.2-SP-MN4.0 720×480ドット
MN9.2(25.7MB)
MN1.9-MN1.0 352X240ドット
MN1.0(4.2MB)
編集部注:DVカメラ「FV500 KIT」で再生したCREATIVECAST Professionalの映像をAV変調機「VMD3M」でRF信号に変換し、録画した。(c)CREATIVECAST Professional

MPEG-2の再生環境はビデオカードや、ドライバ、OS、再生ソフトによって異なるため、掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。

 予約時の画質設定で面白いのが、DVD-RAMの両面メディアやDVD-R DLメディアを使用する前提での録画モードが増えた点だ。A1モードは、従来の4.7GBメディアにピッタリ収まるようビットレートを調整する。以下A2モードは両面メディアや2枚組に収まるビットレートで、中間点で映像を分けられるように、チャプタが打たれている。DLモードは2層メディアに収まるビットレートに自動調整する。

両面やDLメディア用の画質設定モードが付いた A2モードで録画してみたところ、中間点に「ここからB面」というチャプタが打たれていた

 CMなどをカットすればさらに余裕ができるわけだが、もともとDLメディアならば、大抵の映画はほとんどDVD-Video規格の最高レート近くで録画できる。そこまで目くじら立てて節約する必要はないだろう。


■ 総論

 「ホームネットワーク」なるスローガンが叫ばれて久しいが、ヘタすれば「それってBフレッツマンションタイプと無線LANのことでした」なーんてことになりかねない昨今、唯一家電分野で気を吐いているのが東芝だろう。

 特に今回のRDでは、ユーザー情報を集計した「おすすめサービス」の面白さが光る。AV機器を使ったコミュニティという意味では、ソニーのエアボードコクーン、NECのAX300などが果敢にトライしたものの、時期尚早というか笛吹けど踊らずのような結果になった。

 だが人対人のコミュニティというよりも、完全に番組紹介データベースとして狙いを絞り込んだRDの戦略は、別に見ず知らずの他人とコミュニケーションしたいわけじゃないんだよめんどくせえじゃん、というイマドキのユーザーの有り様にマッチしているのではないかという気がする。

 さらに「ネットdeナビ」もバージョンが2.0に上がり、GUIが大幅に変更されるなど、PCとの連携にも積極的な姿勢を見せている。ただ「お気に入り」の番組検索機能に関しては、もう少しネットらしい即時性の高い作りに改良すべきだろう。

 相変わらずDVDフォーマットへの対応も早い。DVD-R DL用の録画設定を設けるといったアプローチは、2passで高画質化を図る他社に比べて、「録画時にうまく録ってDVDへは高速ダビング」という部分へのこだわりを見せている。ただ現状、DLメディアのCPRMには対応していないので、外部入力から録画したデジタル放送の番組からDLメディアには記録できない。

 RD-XS57は、デジタルチューナ非搭載、MPEG-2 TS録画機能もないということで、もはやレガシーとも言える領域のレコーダだが、アナログ放送の自由度を最後の最後まで楽しみ切りたいという人にはピッタリのマシンだ。アナログ放送に特化したマシンとしては、もはや最終形に近づきつつあると言っていいだろう。

□東芝のホームページ
http://www.toshiba.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.toshiba.co.jp/about/press/2005_05/pr_j1801.htm
□製品情報
http://www3.toshiba.co.jp/hdd-dvd/products/hdd/rd-xs57.html
□関連記事
【5月18日】東芝、自動録画やスポーツ延長に対応した「RD」
-2層DVD-Rにも対応。上位機にHDMIも装備
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050518/toshiba1.htm
【2004年6月9日】東芝、ダブルチューナ/エンコーダ搭載「RD-XS53/43」
-RD間コピー機能搭載。スカパー! 連動モデルも
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040609/toshiba.htm
【2004年8月4日】第165回:録画マニア垂涎の「W録」機能、東芝「RD-XS53」
~ ダブルチューナ、ダブルエンコーダの威力を見よ ~
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【2004年12月1日】第181回:こだわる人に向けた東芝の最上モデル「RD-X5」
~ 独自進化を続けるRDの「全部入り」 ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20041201/zooma181.htm

(2005年6月29日)


= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]



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