■ MGシリーズ最高峰? 前作のEverio「GZ-MG67」のレビューからまだ3カ月あまりしか経っていないが、早くも次期モデルが登場した。3CCD搭載モデルの「GZ-MG505」(以下MG505)である。 MG67の時に取材してわかったのだが、Everioシリーズには2つの流れがある。一つは従来のビデオカメラの進化型という発想の「MGシリーズ」、もう一つはビデオカメラの面倒だとか不便だとか言われていた部分を自由な発想で払拭していこうとする、「MCシリーズ」である。 Everioも初期のコンセプトは、MCシリーズで象徴されてきたわけだが、第2世代としてオーソドックスなスタイルのMGシリーズを出したところ、大幅にシェアを伸ばした。現在ビクターの事業の中でも、Everioは一つの柱となっている。 さて、今回のMG505の特徴は、MGシリーズで初めて3CCDを搭載したところにある。もっともこれまでEverioの3CCD搭載モデルは、2005年に発売された「GZ-MC500」しかなかったので、「3CCDはMCシリーズ」と決まっていたわけでもないのだろう。だが稼ぎ頭のMGラインナップにコストが厳しい3CCDモデルを投入するあたり、やはり少しでもいいもの、面白いものを出していきたいという思いが伝わってくる。 型番もMC500に近いMG505ということで、事実上1年ぶりの後継モデルという見方もできそうだ。ではさっそく試してみよう。
■ 1CCD機とほとんど変わらないボディサイズ まずデザインだが、MG505にはクリアシルバーとソリッドブラックの2色がある。今回はクリアシルバーのほうをお借りしている。 全体的なサイズ感は、これまでの1CCDモデルとあまり変わらない。実寸ベースでは、従来機MG67が68×109×69mm(幅×奥行き×高さ)であったのに対し、MG505は74×125×73mm(同)と、ほんの少し大きいだけだ。奥行きだけだいぶ違うのは、MG505には標準でレンズフードが付いているからである。 つまり従来モデルとほとんど同じスペースに、3CCDユニットを入れ込んだことになる。小型の3CCD機が欲しかった人には、かなりのアピールポイントだろう。
ただEverioのサイズ面の弱点は、バッテリがかなり出っ張ることである。Everioも行楽地や運動会などでよく見かけるようになったが、大抵は大型バッテリを装着しているため、後ろに真っ黒い四角い物体が4~5cmも飛び出しているような不格好なルックスになってしまっている。 カタログなどでは、「こんなにコンパクト」みたいな絵柄で、バッテリを外した状態で手のひらに乗せているカットを見かけるが、こういう広告は誠意がないと思う。 そのバッテリだが、付属のものでは実撮影時間25分、連続撮影時間50分となっている。多くのビデオカメラでは、付属バッテリで実撮影時間が1時間弱であることを考えると、バッテリ込みのデザインセンスと、低消費電力化は今後の課題だろう。 話を元に戻そう。搭載レンズは開放F値1.8の光学10倍ズームレンズ。1CCDEverioでは、F1.2の明るいレンズが売りになっているが、さすがに3CCDでも同じというわけにはいかないだろう。 画角は動画で46.2~462mm、静止画43~344mm、いずれも35mm換算である。静止画ではズーム倍率が8倍になるのは残念。手ブレ補正のON/OFFで画角が変わらないのは、従来機と同じだ。
注目の3CCDは、1/4.5 型133万画素。有効画素数は動画時で69万×3、静止画時で123万×3となっている。3CCD機では静止画撮影時に高解像度にならないという問題があるが、MG505では画素ずらしにより、5Mピクセルの静止画撮影を可能にしている。 また3CCDのチューニングには、フジノンと共同開発した独自の「クサビガラス固着方式」を採用。前後/水平/垂直の位置と、X/Y/Z軸の回転方向で、3つのCCDの位置を正確に調整できる。
実際には、モワレのようなパターンを使って色ズレを1台ずつチューニングしたのち、調整用のクサビガラスごと接着剤で固定するのだというから、大変な手間だ。だがそのおかげで、画素ずらしでも良質な静止画撮影ができる。このあたりはあとで見ていこう。 液晶モニタは、前作から採用された2.7型ワイドの11.2万画素のもの。液晶の横にジョイスティックが付けられているのも同じだ。ただ今回は、ジョイスティックのプッシュですぐにマニュアルフォーカスの調整ができるよう、改良されている。以前はマニュアルモードのメニュー内から呼び出さなければならなかったので、不便だったのだ。 電源ボタン、液晶内部のボタン類やコネクタ、LED表示なども、MG77/67と変わりない。HDD容量は30GBで、最高画質のウルトラファインでも約7時間10分の動画撮影が可能となっている。 ボディ上部にはハイエンドモデルらしく、アクセサリーシューが設けられている。外部マイクなどを使用するときに便利だろう。マイク入力は、前面レンズ脇にある。
またグリップ部の滑り止めも、指の形に凹ませてフィット感が良い。このあたりは過去のMCシリーズのデザインに戻った感じだ。
■ フルオートの色味は改善 あいにく関東地方も梅雨入りしてしまったため、あまり晴れ間のない日が続いている。撮影日も曇りがちで、若干日が差す程度であった。 前作のEverioでは、ホワイトバランスをオートにするとやけに緑が強調されて、映像に不快感が残った。詳しくは前回のレビューを見ていただくとして、今回は改善されただろうか。 ホワイトバランスのモードを変えながら撮り比べてみたが、オートでのバランスは暖色系にチューニングされたようだ。人肌としては悪くないが、今度は全体的に赤が被っている感じがある。なお、サンプルとして、動画から切り出した静止画を掲載している。
一方「晴れ」と「くもり」では、光線の加減が微妙なことも考えなければならないものの、やはり緑っぽく感じる。MG67をテストしたときには、「晴れ」ではここまで緑が強くなかったように思われるのだが。マニュアルでホワイトバランスを取ったときには、ナチュラルなカラーが出ているようだ。 つまり性能としてはちゃんとホワイトバランスが取れるわけだが、プリセットの絵作りが今ひとつ上手くない感じがする。だが少なくとも、前回のオートのバランスよりは、今回のオートのほうが好まれる傾向になったと言えるだろう。 花などの色味は、3CCDだけあって曇天の中でもかなり発色よく撮影できている。またSD画質ながらも、解像感が非常に高い映像が撮れる。このあたりも、クサビガラス固着方式の恩恵だろうか。このサイズでこの発色ならば、満足度は高いだろう。
ボケ味は、テレマクロを使えばなかなかいい感じの絵が撮れる。今回はマニュアルモードに、絞り優先モードが付いたことは大きな変化だ。背景によってひし形絞りの形がうるさく感じられるときは、開放で撮ることが可能だ。
ただヌケが綺麗な構図を作ると、オートフォーカスが手前か背景か迷ってフラフラする。16:9画角の構図では、どうしてもヌケの面積が広くなるので、構図に合わせられるスポットフォーカス機能が欲しいところだ。 なおシャッター速度もマニュアルで変更できるが、絞り優先とは排他仕様になっている。ここまでやったのなら、両方ともマニュアルで動くようにしてくれても良かったのだが、残念だ。
■ 3CCDでも良好な静止画 MG505の売りとして、3CCDながら5Mピクセルの静止画が撮れるという特徴がある。昨年、一昨年あたりは、3CCDのビデオカメラでも画素ずらしによって高解像度の静止画を撮るという機能を備えたものが登場したが、上手く行っているメーカーは少ない。 ビクターはその中で数少ない、上手くやっているメーカーの一つだ。1年前のMC500もなかなか高解像度の静止画が撮れたが、今回のMG505は輪郭部分のジャギーもかなり抑えて、完成度を上げてきている。
コントラストも高く、なかなか見栄えのする絵だ。パソコンのモニタ上でオリジナル解像度で見ると若干S/Nが悪い感じもするが、縮小するなり印刷するなりすると、かなり綺麗。 また記録媒体がHDDなので、連写やブラケット撮影などがいくらでも撮れるというのは魅力だ。この大容量を生かして、JPEGだけでなくBMPやTIFFなどの非圧縮フォーマットで撮れるモードがあっても面白いだろう。
■ 使い勝手には課題も 動画、静止画機能を見てきたが、使い勝手の面にも言及したい。 撮影していて感じたのは、液晶モニタの見え方に不安があるという点だ。というのも、若干映像を飛び気味で表示してしまうようで、白い部分のディテールがよく確認できない。また、上下の視野角が狭く、真正面から見たときよりも、若干下からの角度のほうが、良好なようだ。
通常ビデオカメラというのは、目の高さより上に構えることはまれだろう。そういう意味では、下よりも上から見たときに良好な視野角となるほうが、多くのユーザーにメリットがある。現在のように、やや下から見ると言うことは、それだけ液晶を水平方向に倒さなければならない。そうなると太陽光線の影響を受けやすくなり、さらに見づらくなるという悪循環に陥ってしまう。 懸念されたバッテリだが、液晶を閉じれば電源OFFになる機能をうまく使えば、散策しながらちょっと気に入った風景を撮るような撮影スタイルができ、それほど困らない。今回の約1時間の撮影では、付属バッテリ1本でちょうど足りた。ただ運動会みたいに、長時間の撮影では大型バッテリは必要だろう。 また、そろそろ見栄えのしないGUIにも、手を入れてしかるべき時期だろう。現状のメニューは各項目がループになっており、下にスクロールしていくと、ぐるぐると何回転もする。これが使いやすいというユーザーはどれぐらいいるのだろうか。筆者はどこまでも限りなくメニューがあるような気がして、どこに必要な設定があるのか、なかなか覚えられない。
また電源が切れてしまうと、以前設定を変えたメニューのポジションを忘れてしまう点は、使いづらい。たとえばテレマクロを使用したあとに液晶もニタを閉じてしまうと、元に戻すのにまたメニューを探っていかなければならない。 本当のことを言えば、テレマクロなど撮影時に切り替えて使う機能は、ハードウェアスイッチにして欲しいのだが、ビデオカメラとはいえコストのことを考えると、なかなか難しいのだろう。電源スイッチや動画・静止画切り替えスイッチのあり方も、今のままがベストなのか、考えどころだろう。
■ 総論 GZ-MG505は、これまでとほぼ同じ筐体に3CCDを搭載した、意欲作である。前モデルMG67では、専用外付けDVDドライブを直接接続して、DVDのライティングまでこなしたが、MG505も同様の機能を装備している。 約1年ぶりの3CCDモデルで、完成度は上がっている。ただ最近のEverioは、オーソドックススタイルにしたことで、次に何をやったらいいのかがメーカー側でわからなくなっているような印象を受ける。今回のMG505にしても、3CCDにすれば発色が良くなるのは昔から知られた手法で、それほど目新しいアプローチではない。 MC500が登場した時のような驚きがないのは、いささか残念だ。例えばレンズ部が回るといった機能は、結構便利だと思っていたのだが、だんだんそういうカメラも無くなって、オーソドックス路線一色になってしまっているのは寂しく思える。ただあの回転機能というのは、強度といい内部結線といい、実現するのはそうとう大変な機構らしいので、今後もあまりトライするメーカーは現われないかもしれない。 そういう意味では、自由な発想で作っていたMCシリーズは、封印して欲しくないと思っている。次期MCシリーズは、ハイビジョン仕様だろうか。今からやるならAVCHD規格に乗らない手はないだろうと思うのだが、このフォーマットでHDD搭載機は相当強力なものになるのではないかと、今から期待する次第である。
□ビクターのホームページ (2006年6月21日)
[Reported by 小寺信良]
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