■ ディープ・ブルーが、ついにBlu-ray化!
DVD版については、本編ディスクに加え、特典ディスクとロケーションマップなどを収録した「ディープ・ブルー スペシャル・エディション」(TBD-1104)が2005年5月に4,935円で発売され、翌月に出荷枚数が20万枚を突破するという、ドキュメンタリー映画としては異例なヒットを記録。 それを受けて、2006年6月23日に特典ディスクを省いて2,310円に低価格化した「スタンダード・エディション」もリリースされた。現在までに両エディション累計で40万枚を達成し、オリコンのDVDチャートにおいて、ドキュメンタリー映画としてはチャート創設以来初となる1位を記録している。 DVD版のレビューでは、「高画質で圧巻の海の真実」と紹介した。しかし、その時はまだ、HD DVDやBlu-rayのパッケージソフトのリリース時期が見えていなかったため、「これをハイビジョンで見ることができたなら、どれほどすごいのだろう」とも書いていた。 その希望が、1年半以上かかって、やっと実現したことになる。ハイビジョンで出るなら、HD DVDでも、Blu-ray Discでもどちらでもよいと思っていたのだが、予想以上に早い9月に「11月にBlu-ray Disc版を発売」と表明された。結局、12月8日発売に少し延期されたが、メジャー映画でもないのでハイビジョン化されるのは先だろうと考えていたので、思いのほか早く発売されたという印象だ。またBlu-rayで出たことによってタイトルについても、「ディープ・ブルー ブルーレイ・エディション(DEEP BLUE Blu-ray edition)」と、非常に語呂がよくなった。 ただ、残念なのはブルーレイ・エディションは、DVD版で言えばスペシャル・エディションではなく、スタンダード・エディションに当たり、スペシャル・エディションに添付される特典ディスクやカラー56ページの小冊子「ディープ・ブルーパーフェクトガイド」、特製ロケ地MAPが省かれている。特典ディスクや小冊子は、本編を理解する上で非常に優れた内容だったので残念な限りだ。 恐らく、ブルーレイ・エディションを購入する人は、すでにスペシャル・エディションをすでに持っているだろうという判断もあるのだろうが、小冊子はすでに持っているのでいいとしても、特典ディスクは是非ともハイビジョンで見たかった。 その代わりというわけではないが、価格は3,980円と、DVD版よりは高価だが、Blu-ray Discの最初に購入するタイトルとしては手にとりやすい価格となっている。実際、かなり売れ行きはいいようで、Amazonの「Blu-ray トップセラー」で、しばしば1位になっているほか、弊誌の「【Blu-ray/HD DVD】Amazonアフィリエイト注文数 Best5」でも3位にランクイン。発売日を過ぎて、店頭に行ってみると何処も売り切りで、オンラインショップでも納期が1週間以上になっていた。 Blu-rayやHD DVDソフトは、大手量販店でないと、取り扱いがないショップも多く、大手量販店でも次世代DVDコーナーは小さく、注目タイトルについては、発売直後に姿を消すことが多いようだ。たとえば、「イノセンス」、「M:i-3」なども、発売直後はかなり入手困難になっていた。しかし出荷自体はそれほど少ないわけではなく、発売後1週間ぐらいすると、それなり在庫を見かけるようになる。 ということで、ディープ・ブルー ブルーレイ・エディションも、発売日に買いに行けなくて、その後、ショップをいくつも回っても入手できなかった。しかし、発売1週間後に行ったら、大量に入荷していて、購入することができた。やはり、「見つけたら、即買い」が基本のようだ。
パッケージを手にして、面白かったのは、「PS3再生確認済み!」の丸いシールが貼られていたこと。『AIR』Blu-ray Disc BOX」の件(AIRでは、PS3で不具合があったと明言されれいるわけではないが)もあるので、実機で検証済みというのは、安心感はある。ただシールには、「実機にて基本的な動作を確認済みです」とあり、どうせ確認するなら、1機種だけなのでフル機能を確認してほしいと思ってしまった。
■ 期待は禁物?のハイビジョン映像 今回も視聴はソニーの40型フルHD液晶テレビ「KDL-40X2500」とPLAYSTATON 3をHDMI接続して行なった。音声については、光デジタルでAVアンプに接続した。11月11日にPLAYSTATON 3が発売されて、約1カ月が経過し、供給も徐々にではあるが増えてきて、「探して、待てばなんとか買える」状態になってきた。 世間一般ではPLAYSTATON 3は、ゲーム機として捉えられ、WiiやXbox 360と比べて、「勝った」、「負けた」と騒がしいのだが、Blu-ray Discプレーヤーとしては、日本市場では、これしかないのが現状だ。それも、AV機器市場とはビジネスモデルが異なるゲーム機市場に投入されたものだから、20GB版が49,800円と破格値になっている。 PLAYSTATON 3の価格や性能を考えれば、日本でそれに対抗するレコーダ以外のBlu-ray Discプレーヤーが登場するのは、かなり先だろう。ゲーム機として勝とうが負けようが、しばらくの間は、レコーダが不要な人がシンプルにBDを再生しようと思うと、PLAYSTATON 3を買うしか選択肢がない。いい意味でも、悪い意味でも、PLAYSTATON 3がBlu-ray Disc市場に与えた影響は甚大だ。 ディープ・ブルーの内容については、DVD版の時にレビューしているので、そちらを参照してほしい。簡単におさらいしておくと、英国のTV局BBCの自然史部門(NHU)が、初めて製作した映画であり、海洋ドキュメンタリー映画だ。 製作に7年、ロケ地200カ所、撮影フィルムは7,000時間に及び、地球の表面積の70%を占めるといわれる海の実態に迫る。深海5,000mの深海や、お腹をすかした子供のために、自分より大きなイルカを狙って氷の海に飛び込むホッキョクグマ、氷点下50度の氷上で3カ月間絶食して卵を守るコウテイペンギン、危険を察知して巨大な竜巻となって泳ぐイワシの群れなどなど……。ロケ地は地球中に広がり、様々な生き物が登場する。 映像だけではなく、音楽はジョージ・フェントンが作曲し、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団が初めて映画音楽を手掛けたことも話題となった。
ディスクの仕様は片面1層で、本編の収録時間は約91分。映像はビスタサイズで、1,920×1,080ドット(インタレース)で収録する。プログレッシブ収録ではないのが残念ところだ。なお、PS3は1080iを1080pにプログレッシブ化する機能はないので、KDL-40X2500には1080iで入力している。 フォーマットはMPEG-2。仕様面での特徴は音声が従来のドルビーデジタルに加えDTSで初収録された。オリジナルの英語がDTS、日本語がドルビーデジタル 5.1ch、ミュージック&効果音がドルビーデジタル 5.1chとなっている。なお、ジャケットなどには、「英語 ドルビーデジタル 2.0ch」という表記があるが、これは予告編のみで、本編には入っていなかった。 リニアPCMのマルチチャンネルといった、新しいフォーマットは採用されていないのは残念だが、光デジタルで普通のAVアンプに接続すれば、全ての音声がマルチチャンネルで再生できるというメリットもある。 再生して、まず最初に気づくDVD版との違いは映像上の文字と、字幕の文字の解像度の高さ。解像度が高いだけでなく、擬似輪郭も発生せずに、くっきり、はっきりしている。ビットレートは20~35Mbpsをダイナミックに推移する。 本編映像は、元々フィルムグレインのような粒状感のある映像が多かったので、その点ではCGアニメのハイジョン映像のような「シャープで、くっきり、鮮やか」という映像を期待していると、かなり肩透かしを食らう。ただDVD版では、DVDとしては高画質とはいえ、ビットレートの制限上、MPEG-2のブロックノイズがでるシーンも多かった。それが、Blu-ray版ではほとんど解消されているので、DVD版よりは安心して見ていられる。とはいうものの、イワシの大群のシーンなどでは、かなりギリギリな印象を受けたが……。 もちろん、ソース由来のグレインは消えるわけもないので、コメツキガニや、ホッキョクグマの映像はBlu-ray版でも、物凄いノイズまみれだ。しかし、過酷な条件で撮影していることを考えれば仕方のないところだろう。 実際のところ、Blu-ray版を最初に再生したときは「こんなものかな?」と思ってしまったのだが、DVD版と同時に再生して見比べてみると、やはり解像度には大きな差を感じた。特に、液晶やプラズマのような固定画素のディスプレイでは、ソースの解像度の差は大きい。
画質面での一番の見所は、深海の映像(チャプタ17)。DVD版でも画質がよかったが、どうしても輪郭や背景部分にブロックノイズがまとわりついていた。Blu-ray版では、より鮮明に深海生物が浮かび上がり、必見の映像となっている。
■ DTS音声を初収録。DDもDVDよりビットレートが向上 音声のビットレートは1.5Mbps、ドルビーデジタル 5.1ch(日本語/ミュージック&効果音)が640kbps。ちなみに、DVD版はドルビーデジタル5.1chのビットレートが448kbpだったので、ドルビーデジタル 5.1chについてもBlu-ray版でビットレートが向上している。 期待したDTSだが、ドルビーデジタル 5.1chと聞き比べてみると、どうもドルビーデジタル 5.1chの方が、サラウンドの包囲感が高く広がりを感じ、音のつながりもよい。加えて、普通はDTSの方が音圧が高いのだが、このディスクでは、ドルビーデジタル 5.1chの方が音圧が高い。 全体的にDTS音声はサッパリ、すっきりとしている。そのため、一聴するとドルビーデジタル 5.1chが好印象な人が多いだろう。しかし、ずっと聞き比べてみると、DTSの方が、オーケストラの楽器の一つ一つや、環境音の音の分離がよく、解像度が高いことがわかる。 ただ、サラウンド感といった違いはあるものの、DTSと、ドルビーデジタル 5.1chで音質の差は、ほとんど感じられなかったのが残念なところ。ベルリン・フィルハーモニーや、動物の声、自然の音など、音も重要な作品なだけに、是非ともリニアPCMなど、より高音質なフォーマットでも聴きたかった。 Blu-ray版のチャプタ数は20で、DVD版と構成もまたく同じ。映像特典は、オリジナル(約2分)と日本版(2分40秒)の予告編のみと寂しい。予告編も映像はMPEG-2の1080i収録なのはうれしいが、確かに文字は綺麗だが、映像自体はSDからのアップコンのようで、本編映像よりかなり落ちる。 また、Blu-ray版ということで、ポップアップメニュー機能を装備。こういうジャンルの作品なので、映像を再生しながら、ポップアップメニューで各チャプタに飛べるのはありがたい。しかし、ポップアップメニューの動作がもたつくのが気になった。フルメタル・ジャケットなど他のBlu-rayソフトでは、ポップアップメニューもきびきび動いたので、ディープ・ブルーのオーサリングがPS3と相性が悪いのかもしれない。
■ 「いかに大スクリーンに映えるか考えて制作された」 「TVではなく、いかに大スクリーンに映えるか考えて制作された」と、DVD版スペシャル・エディションの特典ディスクで語られていた作品だけに、Blu-ray化で本領発揮といえるだろう。ただし、最近のノイズレズでシャープかつ鮮やかな映像を高画質と認識する傾向からすると、高画質だとは思えないかもしれない。 しかし、映画自体のすばらしさは、DVDより高まったことは間違いない。また、3,980円と、最初に買うBlu-rayタイトルとしても手ごろだ。ハイビジョンとして最高画質なタイトルとはいえないが、価格分の価値は十分ある。 これで、1年半前のハイジョンで見たいという希望は叶えられたわけだが、改めてBlu-ray版で鑑賞して、「音声をリニアPCMを収録して、ハイビジョン化した特典ディスクも付属する『ブルーレイ・スペシャル・エディション』も発売してほしい」と、さらに欲深く願わずにはいられなかった。
□東北新社のホームページ (2006年12月19日) [AV Watch編集部/furukawa@impress.co.jp]
AV Watch編集部 av-watch@impress.co.jp Copyright (c)2006 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved. |
|