なぜ、松下、シャープはDVDレコーダでシェアを急拡大したのか ~ 「リンク」で変化したデジタル家電の新勢力図 ~ |
ベンダー名 | 2006年2月 | 2007年2月 |
松下電器 | 19.0% | 26.2% |
シャープ | 16.7% | 25.8% |
ソニー | 19.2% | 20.4% |
東芝 | 19.0% | 15.1% |
■ 上位2社の共通項は?
現在、トップシェアを争っている2社には共通のポイントがある。それは「リンク機能」である。
松下電器は、「VIERA Link」(ビエラリンク)によるリンク機能を提案、シャープは「AQUOSファミリンク」の名称で提唱。HDMIによって薄型テレビとDVD/HDDレコーダ、オーディオ機器などを接続。DVDレコーダにディスクを挿入するだけで、薄型テレビの電源が自動的に入り、映像が視聴できたり、ひとつのリモコンで、接続された機器の映像、音響環境を最適な設定にできるといった使い方ができる。
2006年4月発売モデルより導入されたリンク機能「VIERA Link」 | シャープの「AQUOSファミリンク」は9月発売モデルから搭載 |
松下電器 平原重信副本部長 |
「2006年度のパナソニックは、画質とリンクにこだわった。年度初めに『操作革命』を宣言したのも、ひとつのリモコンで複数のAV機器を操作するVIERA Linkによって操作性を大きく変える狙いがあった」と、松下電器産業パナソニックマーケティング本部・平原重信副本部長は語る。
メーカーの囲い込み戦略ともいえるが、両社ともプラズマ/液晶テレビでの高いシェアを背景に、DVD/HDDレコーダでも高いシェアを獲得しているという構図だ。
■ 薄型テレビとの連動提案が影響?
実際、量販店店頭では、こんな会話がやりとりされている。
DVD/HDDレコーダ売り場で機種選定に悩んでいるお客さんを見て、まず店員がかける言葉は、「薄型テレビをお持ちですか」だ。
もし、持っている機種が、「VIERA」や「AQUOS」といえば、「それならばこれがいいですよ」と店員は、VIERAユーザーには「DIGA」、AQUOSユーザーには「AQUOSハイビジョンレコーダ」を勧める。
また、液晶テレビを購入する人にも、一緒に同一メーカーのDVDレコーダを勧めるケースが増えている。
カメラ量販店では、液晶テレビの購入で得た「ポイント」を利用して、DVDレコーダ購入の一部に引き当てるという提案もできるため、機器のセット購入が増加。その際には、やはり同一メーカー同士の組み合わせ提案が多くなる。
2006年9月発売のプラズマテレビ「VIERA PZ600」シリーズ | 量販店などでは、VIERAユーザーに「DIGA」シリーズを提案し、セット購入が増加している |
さらに、地域専門店でも同様の提案が相次いでいる。
「松下電器には、SPS(スーパー・プロ・ショップ)と呼ばれる全国約8,000店舗の地域専門店があるが、これらの店舗では、VIERA購入者のうち、約3割がDIGAを同時に購入するという結果が出ている」(松下電器産業パナソニックマーケティング本部・平原重信副本部長)という。
4月1日付けで次期社長への就任が決定しているシャープの片山幹雄専務取締役は、「DVD/HDDレコーダのシェア拡大の要因をひとつあげるとすれば、それはリンク機能に尽きる。液晶テレビで高いシェアを持っているからこそ、DVD/HDDレコーダのシェアも高まる」と断言する。
3月発売の新型「AQUOS」と4月より就任する片山新社長 | AQUOSユーザーには、レコーダ「AQUOSハイビジョンレコーダ」を勧める |
■ ソニーはどう巻き返すのか
こうしたなか、出遅れ感があるのがソニーだ。
ソニーでは、無料コンテンツのストリーミング再生が行なえる「BRAVIA Internet Video Link」(インターネットビデオHDTV)をCESにて参考展示 |
「HD World」の提案をいち早く行ない、ハイビジョン対応機器の連動提案を行なったり、今年1月に米CESでは、「BRAVIA Internet Video Link」を展示してみせたが、シャープや松下電器のリンク提案に比べると、機能面での踏み込みが弱いといわざるを得ない。
夏のボーナス商戦向けの液晶テレビ新製品が、3~4月に発表されるのはほぼ確実。ここで、ソニーがどんな連動提案をしてくるのかが注目される。
昨年9月の「ソニーディーラーコンベンション2006」では、DLNAによる機器接続を前面に打ち出していたことを振り返ると、ソニーは独自のリンク機能をどう提案しようとしているのかが気になるところだ。
このリンク戦略によって、スゴ録のシェア順位の引き上げ策が注目される。
■ 加速するリンク機能
今後、各社のリンク提案は、ますます加速することになるのは間違いない。
シャープのBDプレーヤー「BD-HP1」はリンク機能により録画機能が利用できる |
シャープは、3月より発売するチューナ非搭載のBlu-ray Disc(BD)プレーヤー「BD-HP1」で、リンク機能を活用することで、液晶テレビAQUOSのチューナを使ってBlu-rayに録画できる「ハイブリッド録画」機能や、AQUOSハイビジョンレコーダに蓄積したコンテンツを録画できる「かんたんBDダビング」といった機能を実現した。
プレーヤー本体からチューナ機能を排除することで、低コスト化を図ることができるのも、こうしたリンク機能による補完が可能なためである。
シャープの今後のリンク機能の広がりについて、片山専務取締役は、具体的な言及を避けるが、「考えていることの5合目を越えたところ。まだまだリンク機能は広がる」と語る。
また、松下電器産業パナソニックマーケティング本部・平原重信副本部長は、「デジタルAV機器の2007年のキーワードは、リンク。薄型テレビのVIERAを軸に、様々なAV機器を接続したリビングでの新たな提案を推進する」と意気込む。
VIERA Link対応の2.1chサラウンドシステム「SC-HT2000」など、松下電器では様々な機器の提案が可能としている |
松下電器では、HDMIによるリンク機能だけでなく、リンクの定義を幅広く捉えている。
SDカードを中心とした3Dバリューチェーンや、デジタルカメラ「LUMIX」を中心としたLUMIX Linkなど、いくつものリンクを提案しようとしている。
「松下電器の強みは、幅広い製品ラインアップにある。Blu-ray DIGAも、SDメモリーカードムービーも、LUMIXブランドのデジタルカメラもある。シアターを実現するためのオーディオ機器も揃っている。これをセットで提供できる数少ないメーカーの1社だといえる」と同社では語る。
■ 薄型テレビの価格下落を補完する役割も
メーカー各社がリンク機能を強化することで、顧客単価の上昇に直結するという目論見もメーカーや販売店にはある。
リビングの主役といわれる薄型テレビが、年率25~30%で価格下落しているなかで、顧客あたりの単価を上昇させることは販売店にとっても大きな課題となっている。
その回答として、販売店が取り組んでいるのが、薄型テレビのサイズアップの提案とともに、リンク機能によるセット提案というわけだ。
「薄型テレビの後ろには、沢山の端子がある。これらは何かに繋がるからこそ存在している。つまり、言い方を変えれば、販売店にとっては、端子の数だけビジネスチャンスがあるともいえる。薄型テレビを中心としたリンクによって、ビジネスチャンスが広がることに、販売店が気がつき始めている」(松下電器・平原副本部長)という。
デジタル家電メーカーの戦いのステージは、製品単品の争いから、リンクの争いに確実に移行している。そして、それに追随するように、販売店のリンク提案も加速することになるだろう。
□松下電器産業のホームページ
http://panasonic.co.jp/
□シャープのホームページ
http://www.sharp.co.jp/
□関連記事
【3月1日】松下、新番組自動録画対応「ハイビジョンDIGA」
-1080p出力対応1TBモデルなど5製品
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【1月18日】BCN、薄型TVなどの'06年末商戦を総括
-液晶テレビのフルHD比率は約2割に
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070118/bcn.htm
【2006年10月26日】テレビ/レコーダを連動操作「AQUOSファミリンク」を試す
-レコーダ側からの新提案。VIERA Linkとの違いは?
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20061026/sharp.htm
【2006年4月13日】テレビが全ての中心に。「VIERA Link」を試す
VIERA/DIGAをHDMI接続。HDD内蔵TV的な操作感
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060413/viera.htm
(2007年3月15日)
= 大河原克行 = (おおかわら かつゆき) |
'65年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を勤め、2001年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。BCN記者、編集長時代を通じて、15年以上に渡り、IT産業を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。 現在、ビジネス誌、パソコン誌、ウェブ媒体などで活躍中。PC Watchの「パソコン業界東奔西走」をはじめ、Enterprise Watch、ケータイWatch(以上、インプレス)、nikkeibp.jp(日経BP社)、PCfan(以上、毎日コミュニケーションズ)、月刊宝島、ウルトラONE(以上、宝島社)、月刊アスキー(アスキー)などで定期的に記事を執筆。著書に、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社)、「松下電器 変革への挑戦」(宝島社)、「パソコンウォーズ最前線」(オーム社)など。 |
[Reported by 大河原克行]
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