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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第303回:NAB2007 レポート
-時代はいよいよシリコン記録?



■ わかりやすい出展へと変化

いつも通り横に長いPanasonicブース

 NAB2007開幕初日の本日は、LVCCセントラルホールとノースホールの模様をお送りする。会場マップを俯瞰してみてわかったのだが、今年まで例年同じだったメーカーのブース配置がかなり変わっている。

 大きな変化としては、これまでなんとなくホールで別れていた棲み分けがさらに細分化され、照明器具エリア、三脚エリアといった形で、出展がまとめられたことだ。歩いてても有象無象という感じではなく、目的を持ってすっきり見て回れるというスタイルになった。

 とかなんとか言ったものの、サウスホールの方はどうも相変わらずごちゃごちゃしているようだ。こちらはIT系ソリューションが多いので、区分が難しいのだろう。


■ AVC-Iで気を吐くPanasonic


AVC-Iオプションカードが装着可能な「AJ-HPX2000」

 セントラルホール入り口すぐの巨大なブースが、Panasonicだ。まずはここから見るという人が圧倒的に多いため、月曜の朝は特に混雑するブースである。

 以前から発売がアナウンスされていたP2 AVC-Iのカムコーダだが、遂に実働モデルが出展された。AJ-HPX2000(日本名は2100)は、すでにカメラ自体は発売されているが、今回AVC-Iのオプションカードが装着された状態で出展された。

 オプションカード自体は今年8月発売予定で、現時点ではもっとも早く世に出るAVC-Iのカメラということになる。


AVC-IとMPEG-2 Long GOPのダビング特性比較を展示

 そのAVC-Iだが、ブースではMPEG-2 Long GOP 25Mbpsと、AVC-I 50Mbpsとのダビング特性についての画質比較が展示された。具体的には、XDCAMとの差を意識したものと思われる。1stジェネレーションでの画質と、5回ダビングした画質それぞれについて、AVC-Iの画質の優位性を証明するというスタイルだ。

 漫然と見た感じでは、どちらもあまり変わりなく、1stテイクでの全体的な解像感では、MPEG-2 Long GOPのほうが若干勝っているような印象も受ける。だが5回ダビング後の映像を見ると、黒にフェードアウトする部分や速い動きの部分でブロックノイズが見られるのは、MPEG-2のほうだ。

 ただすでにこの手のMPEG-2のノイズは、デジタル放送によりほぼ慢性化しており、よっぽど強力に視聴者がそれ以上を望んでいかなければ、なかなか業界自身では改善に乗り出さないという問題は残る。またMPEG-2 25MbpsとAVC-I 50Mbpsが、メディアの経済性や編集のハンドリングまで含めて同じ土俵に乗せることが妥当であるかどうかは、ソニー側にも別の言い分があることだろう。


P2 HD CAMの新モデル「AG-HPX500」

 新しいカムコーダとしては、P2 HDカメラの新モデルとしてAG-HPX500(日本名は555)が発表された。レンズ交換可能なショルダータイプで、マウントは2/3インチ、撮像素子はプログレッシブ3CCD。記録フォーマットはDVCPRO HD/50/25とDVで、AVC-Iはサポートしない。グレード的には初のP2 HD CAM「AG-HVX200」の上位モデルという位置付けになるようだ。

 P2カードスロットは4基で、1080では60i、50i、 30p、 25p、24pでの撮影が可能。また720pではバリアブルフレームレート撮影も可能なので、バリカムのメモリー版としても使えそうだ。発売時期は5月で、価格は14,000ドル。日本での価格は、168万円となっている。

 一方AVCHDのほうは、すでに日本で発売されている業務用機「AG-HSC1U」が初お目見えということで、人気を集めていた。

 またモックアップではあるが、AVCHDのショルダータイプ大型機も参考展示されていた。今後は業務用DVクラスからの乗り換えをAVCHDで押さえるという戦略が垣間見える。

 肝心のP2カードだが、今回のNABで16GBタイプの価格が発表された。日本ではオープン価格だが、米国では900ドル。8GBタイプが発売当初日本で16万円ぐらいしたことを考えると、かなり戦略的な価格設定だ。また32GBタイプも年内の発売が予定されいる。こちらの価格は未定だが、単純に2倍ではユーザーも納得しないだろうから、こちらも価格設定に期待したいところだ。


小型業務用機として注目度が高い「AG-HSC1U」 参考出品されたAVCHDのショルダータイプ P2カードも順調に容量を拡充


P2カードレコーダ「AG-HPG10」。SDカードスロットもある

 P2関係で面白い製品としては、「P2 ギア」こと「AG-HPG10」だ。これはバッテリ駆動も可能な、小型P2カードレコーダ。IEEE 1394入力が可能で、従来のDVCPRO HDの出力を受けることもできる。これまでのカメラ資産をそのままP2ワークフローの中に取り入れることができる点で、コンセプチュアルな製品だ。

 液晶モニターも付いており、内容が確認できる。さらにこの液晶モニターは、波形モニター表示にも切り替え可能なため、収録中の映像監視にも使うことができる。出力はHD-SDI、コンポーネント、コンポジット、アナログ音声(RCA)を装備。

 またUSB端子もあり、P2 ギアに市販の外付けUSB HDDを接続することで、P2カードのバックアップが行なえる。P2 ギアをPCに繋げば、マスストレージとして認識するので、PCを使ったバックアップや編集にも利用できる。

 発売は今年の夏を予定しており、米国での価格は3,995ドル。日本での価格は未定となっている。


■ Ikegami、東芝と協業でメモリー型カメラソリューションを出展


多くのカメラマンでにぎわうIkegamiブース

 カメラ、そしてモニタメーカーとして知られるIkegamiは、以前からHDDタイプのカムコーダを製品化してきた。今年のNABではいよいよメモリの時代に突入ということか、メモリ型カメラ「HDS-V10」(仮称)を参考出品した。

 まだ参考展示の段階だが、システム全体で「GF」というコードネームが付けられている。

 メモリは東芝と共同開発した「GF PAK」という新規格のもの。カメラ本体には、GF PAKスロットは1つ。記録フォーマットはMPEG-2 Long GOP 50Mbpsと、MPEG-2 Iフレームオンリー 100Mbpsの2つをサポート。

 GF PAKは16、32、64GBというラインナップになる予定。GF PAKのカメラとのインターフェースはSerial ATAだが、パック自体にUSBポートも備えており、PCなどに直結して使えるよう工夫されている。

 一方でスタジオデッキの方は、東芝主導で開発が進む「GF Station」(仮称)。こちらのスペックは未定となっている。東芝ブースはサウスホールにあるので、そちらの取材が進めばもう少し詳しいことがお伝えできるかもしれない。

 カメラ本体は25,000ドル、GF PAK 32GBで950ドルの予定。今年のInterBEEで実働モデルを出展、来年のNABで製品化というロードマップのようだ。

参考展示されたメモリ型カムコーダ「HDS-V10」 GFフォーマット対応スタジオデッキ「GF Station」


□NAB 2007のホームページ
http://www.nabshow.com/
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-対照的な両社のプレスカンファレンス
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070417/zooma302.htm
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-HD当たり前の時代、放送が選択する道とは
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【2006年5月1日】【EZ】NAB2006レポート その2
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【2006年4月26日】【EZ】NAB2006レポート
~ HD当たり前の時代へ向けての猛ダッシュ ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060426/zooma254.htm

(2007年4月17日)


= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]



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