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第286回:Rolandが小型音源「SonicCell」など新製品発表
~ ネット配信向けの機能を追加したSONAR 6低価格版も ~



 6月13日、東京・渋谷でRolandの新製品発表会が開催された。今回発表された大ものは、久しぶりの音源モジュール「SonicCell」、DAWの「SONAR Home Studio 6、および「6 XL」、そして低価格なエレクトリックドラムの「V-Drum Lite HD-1」の3種類だった。


発表会の様子



■ オーディオインターフェイス機能搭載の音源モジュール「SonicCell」


SonicCell

 会場は、今回も渋谷のライブハウス「O-EAST」で行なわれた(正確にはO-EASTの1F Shibuya Duo Exchange)。ただ今回はやや地味目で、発表されたのは大きく3製品。とはいえ、SD-90以来といってもいいコンパクトな音源モジュール、SonicCellの発表には多くの注目が集まった。

 7月下旬の発売で、オープン価格だが実売は80,000円前後とのこと。SD-90の発表は2001年なので、そこから数えれば6年ぶり。ただし、このSonicCellは単なるMIDI音源モジュールではなく、オーディオインターフェイス機能やプレーヤー機能なども備えたかなりオールマイティーな製品となっている。したがって、DTMユーザーに限らず、ステージでのライブ用やスタジオに持ち込んでレコーディング用に使うなど、さまざまな人がターゲットとなる音源だ。

 簡単に説明すると、このSonicCellはFantom-Xクラスの音源エンジンに、アコースティック系を中心とした新規波形を数多く収録した音源モジュール。16bitリニア換算で128MBのウェーブテーブルメモリを搭載した音源だ。プリセットの音色数は768+GM2対応の256種類。またリズムも20+GM2対応の9種類。さらにパフォーマンス音色として64種類が搭載されている。またエフェクトも豊富に搭載しており、まずは3系統78種類を持つマルチエフェクト。またそれとは別にコーラス3種類、リバーブ5種類、インプットエフェクト6種類、マスタリングエフェクトとして3バンド・コンプレッサを搭載している。

 16マルチティンバーの最大同時発音数128音というスペック。スペックから見ると、ややボディーが大きいなと思ったら、ロゴがついている部分が六角レンチを使うことで取り外しができ、ここに2枚のカードが挿さるようになっている。カードは、Fantom-Xなどで用いるウェーブ・エクスパンジョンボード「SRXシリーズ」。これを追加することで、音色を増やすことができるというわけだ。


ロゴ部を外すと2枚のカードが装着可能に

 なお、音色のエディットはPC側からも行なえ、そのためのエディタツールもバンドルされている。ちなみに、このエディタツール、WindowsのVST、MacのAUのプラグインに対応したものとなっている。またそれを動作させるプラットフォームという意味も兼ねて、Windows用にSONAR LEもバンドルされている。


音色エディタツールもバンドル
現在開発中のバージョンで、製品版とは異なる可能性があります


背面端子部

 しかし、SonicCellの機能は、MIDI音源モジュールに留まらず、さまざまな機能が備わっている。まずは、USB 2.0対応のオーディオインターフェイス機能。といっても、それほど派手なものではなく、入力1系統、出力1系統というもの。この1系統という表現がちょっと微妙だが、入力はコンボジャックかステレオの標準ジャック入力の切り替えとなっているから、モノラルなら1ch、ステレオなら2chという意味なのだ。

 サンプリングレート、ビット数は、最大で24bit/96kHzで、入出力を同時に行なうことができる。ファンタム電源にも対応しているからコンデンサマイクの接続もでき、コンボジャックでの標準プラグ入力はHi-Z固定となっているためギターやベースを直結できる。

 さらに、これまでにないユニークな点は、USBメモリをここに接続すると、USBメモリに入っているMP3ファイル、WAVファイル、AIFFファイルそしてMIDIファイルを再生することが可能。たとえば、バックトラック、カラオケを用意しておけばステージ上などで即利用できるというわけだ。この再生のためのプレイリスト作成はPC上で行なえ、そのためのツールもバンドルされている。


USBメモリ接続すると、メモリ内のMP3/WAV/AIFF/MIDIを再生できる PCでのプレイリスト作成ツールもバンドル
現在開発中のバージョンで、製品版とは異なる可能性があります


□製品情報
http://www.roland.co.jp/products/jp/SonicCell/index.html


■ VST/VSTiネイティブ対応のSONAR Home Studio 6/6 XL

 2つ目の製品はSONAR 6のローエンドバージョン、SONAR Home Studio 6とSONAR Home Studio 6 XLだ。いずれも6月28日の発売でオープン価格。実売は6が15,000円前後、6 XLが20,000円前後と、SONAR 6 Producer EditionやStudio Editionからみるとかなり安い価格設定といえる。

 これまでのSONAR Home Studio 4および4 XLの新バージョンといえる。製品名からも分かるとおり、旧ソフトはSONAR 4がベースになっていたのに対して、今回はSONAR 6がベースとなっている。つまり、オーディオエンジンなどが進化するとともに、ユーザーインターフェイスもSONAR 6を踏襲し、より洗練されたものになっている。もちろん機能面でも、SONAR 6ベースのものをより多く取り込んで進化している。


SONAR Home Studio 6とSONAR Home Studio 6 XL SONAR 6がベース

 具体的にいうと、VST/VSTiにネイティブ対応するとともに、各トラックにSonitus:fx EQを搭載したのは大きなポイントだろう。音作りという面で、Sonitus:fx EQはかなり評価の高いEQだが、それがそのままHome Studioにも搭載されたのは嬉しいところだ。

 同様にフィジカルコントローラを簡単にそして効率よく使うACT(Active Controller Technology)も搭載され、ミキサー画面やソフトシンセ画面、エフェクト画面など現在アクティブなウィンドウに合わせてフィジカルコントローラの各コントロール素子が自動的にアサインされるようになった。そのほか、フリーズ機能が使えるようになったり、GM2音源のTTS-1、Project5譲りのRoland GrooveSynthなども搭載された。


各トラックに「Sonitus:fx EQ」を搭載 GM2音源の「TTS-1」

 さらにSONAR 6 Producer Editionや、Studio Editionにもない機能がいろいろと加わっている。その1つがCakewalk Publisherという機能。これはMP3ファイルなどをまとめて、自分のWebサイトへアップして、簡単に再生できるようにするものだ。つまり、必ずしもSONARで作ったデータに限られるわけではないが、公開したいMP3ファイルなどを並べ、タイトルや画像などをつけたうえで、FTPサーバーへ接続し、アップするところまで自動的に行なってくれる。

 またプラグインエフェクトでも、Project5系のエフェクトが4つ、その他Cakewalkオリジナルのエフェクトが新たに追加されている。


ファイルのアップロードが可能な「Cakewalk Publisher」 Project5系エフェクトは4種類追加 Cakewalkオリジナルのエフェクトも追加された


Boost 11 Peak Limiter

 ここまではSONAR Home Studio 6、6 XL共通だが、XLにはさらに強力なプラグインが追加されている。ひとつは、Boost 11 Peak Limiterというマキシマイザ。これは、BOOSTとOUTPUTという2つのパラメータだけで簡単に操作できるマキシマイザで、先読みピーク・リミッティング・アルゴリズムとPDR(Program Dependent Release)というものによって、不自然なレベル変動をなくし、パンチの効いたサウンドを作り出すことを可能にしたエフェクトだ。ファイナライズ用として誰でも簡単に使えるようになっている。

 一方、先日PCR-300/500/800のバンドルソフトとして紹介したプレイバックサンプラー、D-Pro LEもSONAR Home Studio 6 XLに付属している。ここにはさまざまなサンプリングデータも入っているが、これにはさらにフル・オーケストラ音源として評価の高いGarritan Orchestraのサブセットも搭載されている。Garriten Pocket OrchestraというD-Pro LE専用のものだが、ストリングスや金管楽器、木管楽器、パーカッションなど、さまざまな音源が入っているため、いろいろと活用できそうだ。

 なお、現在「Super Drum Loops DVD for SONAR Series」プレゼントキャンペーンを行なっており、上記2製品を含めSONARシリーズを購入すると、ローザ・ルクセンブルグのドラマーであったことで知られる三原重夫氏監修のドラムループ集がもらえる。4GBを超えるループデータ集なので、これだけでも大きなデータ資産になりそうだ。


プレイバックサンプラー「D-Pro LE」 フル・オーケストラ音源「Garritan Orchestra」のサブセットを用意 ドラムループ集「Super Drum Loops DVD for SONAR Series」プレゼントキャンペーンも


□製品情報(SONAR Home Studio 6)
http://www.roland.co.jp/products/jp/SONAR_HOME_STUDIO_6/index.html?page=qoa
□製品情報(SONAR Home Studio 6 XL)
http://www.roland.co.jp/products/jp/SONAR_HOME_STUDIO_6_XL/index.html



■ メッシュパッド採用/実売8万円の「V-Drum Lite」

 3つめの製品が10周年を迎えたというRolandのV-Drumのエントリー製品、V-Drum Lite。電子ドラム市場は、RolandのV-DrumとYAMAHAのDTXが2大勢力となっている。V-Drumの最大の特徴はアコースティックドラムのような自然な演奏感を実現したメッシュパッド。高いモデルだとスネアはもちろん、タムも含めてすべてメッシュパッドが採用されているため、フルセットで50万円以上になる。一方でエントリーモデルは10万円以下で購入できるものの、自慢のメッシュパッドがなため、YAMAHAのDTXPLORERに押されていた。

 そこへ今回投入したV-Drum Liteはメッシュパッドを採用しつつ実売価格を8万円程度に抑えたエントリーモデル。しかも、それ以外のパッドを小ぶりなものにしたこともあって、占有面積が非常に小さくなっているのも大きなポイントだ。またキックペダルをビーターレス化したことで、キックでの振動・騒音を大幅に軽減している。また通常は左ペダルがハイハット、右ペダルがキックだが、設定によって両方をキックにするツーバスも可能だ。なお、このキックペダルもセットになっていることで、トータル価格が安くなっているのも見逃せない。

 音源モジュールに内蔵されるドラムキットは10種類。従来機種に比較すると少なめだが、練習用と考えれば十分すぎるといえるだろう。

 写真には中央にシルバーのモニターアンプPM-01が写っているが、ドラムスローン(イス)と同様、これは別売となっている。デザイン的にピッタリマッチするが、マンションなどでの使用で、できるだけ小さい音で使うというのなら、ヘッドフォンで十分かもしれない。


V-Drum Lite ドラムキットは10種類 モニターアンプ「PM-01」は別売

□製品情報
http://www.roland.co.jp/products/jp/HD-1/index.html


□ローランドのホームページ
http://www.roland.co.jp/
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(2007年6月18日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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