【バックナンバーインデックス】



第253回:2006楽器フェスティバルレポート
~ Roland「SONAR 6」や「R-4 Pro」などを発表 ~



 10月7~8日の2日間、池袋のサンシャインシティで「2006楽器フェスティバル」が開催された。ギターを中心とした弦楽器、管楽器、打楽器など、楽器の展示会ではあるが、もちろんデジタル機器も展示されており、各社からは初お披露目となる新製品も出ていた。今回は、こうしたデジタル機器にのみ絞って紹介する。

2006楽器フェスティバル



■ YAMAHAのFireWireオーディオI/F「GO46/44」

 ここ1年、DTM・デジタルレコーディングという分野での新製品がやや枯渇気味であったが、この夏以降各社から急に面白いものがたくさん登場してきている。今回の楽器フェスティバルでは、そうした新製品がいろいろと展示され、注目を浴びた。すでにDigital Audio Laboratoryで取り上げたソフト、機材などもあったが、それぞれを簡単に紹介していこう。

 まず、オーディオインターフェイスとしては、開催日の10月7日に発売になったというのが、YAMAHAのFireWireオーディオインターフェイス「GO46」。24bit/192kHzに対応したコンパクトな製品でアナログ入力はコンボ×2、バランス/TRSフォン×2、インサートI/Oとしてアンバランス/TRSフォン×2、またアナログ出力はバランス/TRSフォン×4、それにS/PDIF光入出力、MIDIの入出力を装備するという仕様。また、下位モデルとなる「GO44」は、すでに発売中だ。スペック的にはGO46からアナログのコンボ入力(ファンタム電源を含む)とインサートI/Oを省くとともに、アナログ出力をバランス/TRSフォン×2としたものになる。

 GO46/44ともに6月6日発表、8月発売ということだったが、かなり遅れてようやく発売されたという状況。価格はともにオープンプライスで、店頭予想価格はGO46が40,000円前後、GO44が35,000円前後の見込み。

GO46 GO44


□関連記事
【6月6日】ヤマハ、FireWire接続のモバイルオーディオI/F
-マイクプリ内蔵の上位モデル「GO46」など
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060606/yamaha.htm


■ t.c.electronic

 オーディオインターフェイスとして目新しかったのはt.c.electronicが発売を開始したばかりの「konnekt 24D」。こちらもFireWire接続の製品だが、競合が多いなか、かなりユニークな機能を満載した製品となっている。

 まず基本スペックでいうと24bit/192kHzに対応し、14in/14outを実現する。内訳としてはフロントにコンボジャックの入力を2つ装備し、リアにアナログのバランス/TRSフォンを入出力ともに4つずつ持つ(アナログ入力のうち2つはフロントと切り替え)。さらにS/PDIFの入出力を1つずつ用意し、adatの入出力を備えることで14in/14outを実現している。

konnekt 24D

 内部にはDSPを装備し、PCに負荷をかけずにエフェクトを実現できる。「MINTテクノロジー」と呼ぶこのエフェクトでは、Fabrik Cチャンネル・ストリップとFabrik Rリバーブが標準装備されている。さらにPowerCoreのプラグインとして知られる周波数バランスを取るためのソフト「Assimilator」をKonnekt 24D用に設計しなおした「Assilikator Konnekt」も無償ダウンロード可能となっている。

 もうひとつ非常にユニークなのが、JETジッタ排除テクノロジーを採用したTC Applied Technologies製のDICE IIインターフェイス・チップを搭載していること。これはデジタル信号のジッタを取り除いて音質を向上させるというもので、konnekt 24Dでは、そのジッタ除去が自動的に行なわれるという。特に設定項目があるわけではなく、S/PDIFの入力に対して自動的に機能し、それをそのまま出力すれば、キレイな信号に変換できるのだという。実際にその効果を確認したわけではないが、これはなかなか面白い機能だ。

 価格はオープンプライスで店頭予想価格は6万円前後の見込み。11月にはadatを取り除いた下位バージョン「konnekt 8」が店頭予想価格40,000円程度で発売される見通し。konnekt 8にもジッタ除去機能は搭載されている。

DSPを内蔵し、Fabrik Cチャンネル・ストリップやFabrik Rリバーブなどのエフェクトがかけられる 下位モデルのkonnekt 8



■ USBオーディオ内蔵エレキギター「iAXE393」

 そのほかのオーディオインターフェイスとしては先日レビューしたTASCAMの「US-144」、「US-122L」が展示されていた。またオーディオインターフェイスそのものではないが、USBオーディオの非常にユニークな応用例であるBEHRINGERの「iAXE393」も人気を呼んでいた。

USBオーディオ「US-144/US-122L」 iAXE393

 iAXE393は、普通のエレキギターにUSBオーディオインターフェイスを組み込んでしまったというもの。ギターのボディにUSB端子を備え、これをPCやMacに接続すると、ギターのサウンドがUSBオーディオとして入力されるのだ。

 しかも、アンプシミュレータソフトであるNative Instrumentsの「GuitarCombos」がバンドルされており、ギターからの音にエフェクトをかけることが可能。そのエフェクトがかかった音はUSBで再度ギター側へ戻り、USB端子の隣に装備されたヘッドフォンジャックでモニターすることができるのである。

底面にUSB端子を備え、PC/Macなどと接続できる アンプシミュレータソフト「GuitarCombos」をバンドル

 実は先日これを借りて試してみたが、かなり使える。18,750円というギター単体としても安い設定ながら、USB機能が搭載され、エフェクトまで使えるのだから、かなりのコストパフォーマンスだ。多少安っぽいボディーという気もするが、この価格なら十分満足できるし、弾いてみた感じも悪くない。

 USBからの電源供給で動作するから、本体にバッテリーを装備する必要はなく、ギター出力端子も装備しているので、普通のエレキギターとして使うことも可能だ。デザインはまったく違うけれど、感覚的にはFERNANDESの「ZO-3(ゾーサン)」の対抗といったところだろうか。



■ KORG

 KORGブースで見つけた新製品は3つ。独特な操作法のリアルタイム・エフェクトとして人気のKAOSS PADの新製品、「KAOSS PAD KP3」。コンパクトな黒いボディで、タッチパッドには赤いLEDを搭載し、PAD MOTION機能で記録した指の軌跡やエフェクト・ホールド時の指の位置などを表示できる。またSDカードスロットを搭載したり、MIDIクロック・アウト機能なども搭載し、10月下旬に42,000円で発売される。

 USB接続可能なMIDI鍵盤として人気のあるK-SERIESにも新機種「K61P」が新登場。鍵盤数は61でピアノ音源も内蔵。フィジカルコントローラなど不要という人にはとてもシンプルで良さそうだ。価格は38,000円で、こちらも10月下旬の発売予定。

 もうひとつは、内部にPCのマザーボードがそのまま搭載されているという、まさにコンピュータそのものともいえる強力なシンセサイザ「OASYS」の新バージョン1.2。ユニゾンによる分厚いサウンドでのポリフォニック演奏を可能にする「ポリフォニック・ユニゾン」、ユニゾン・サウンドの広がり感を調整できる「ユニゾン・ステレオ・スプレッド」、指一本で自由なコード演奏を可能にする「コード」をはじめとする新機能が搭載された。なお、既存ユーザーは無償でバージョンアップ可能だ。

KAOSS PAD KP3 K61P OASYS 1.2



■ Roland、SONAR 6を発表

 メイン会場とやや離れた別のフロアで大きなブースを構えていたRolandでもいろいろな新製品を見つけることができた。大々的に新製品発表していたのが、CakewalkのDAW、「SONAR 6」。従来どおり、Producer EditionとStudio Editionの2つ。それぞれオープンプライスで、店頭予想価格は「SONAR 5」と同様85,000円前後と50,000円前後の見込み。

使い勝手が大幅に向上したSONAR 6

 今回のバージョンアップでの最大の特徴は使いやすさの向上。これまでも十分使いやすかったが、今回とても強力なのがACT(Active Controller Technology)というもの。これは、フィジカルコントローラ付きキーボードなどを積極的に活用する技術で、ミキサー画面で利用できるというだけでなく、ソフトシンセを使っているときは、ソフトシンセ用に、エフェクトを使っているときはエフェクト用にと、アクティブ・ウィンドウが切り替わるごとに、コントローラの機能が自動アサインされる。これはなかなか便利だ。

 また、右クリックした際に何のメニューが表示されるのか、シチュエーションごとに自由に設定できるというのも今回追加された新機能。完全に自分だけのDAWへとカスタマイズすることが可能だ。

 一方、プラグインのほうも充実。VC-64 Vintage Channelは独立2基の4バンドEQ/コンプレッサを核にゲートやディエッサーも備えたチャンネル・ストリップ。計10種類の内部ルーティングを選択でき、コンプレッサはVCA/Optoの2つのモードを切り替えることができるようになっている。

 「Session Drummer 2」はかなり強力なドラム音源。SmartLoops製のサンプリングデータを読み込むことで、ドラム音色がドラスティックに変わるとともに、さまざまなジャンルのフレーズが登録されているのも特徴。このフレーズを予め読み込ませておくことで、リズムマシンのように、リアルタイムにパターンを切り替えながら演奏させることが可能だ。

VC-64 Vintage Channel Session Drummer2は強力なドラム音源

 なお、製品の発売に先立ち11月11日の14:00~18:00に、秋葉原UDX 4FのAkiba 3D Theaterで、ユーザー向けのSONAR 6デビューイベント「MEET THE SONAR 6 Premium Day」が開催される予定。

 Cakewalk製品では、そのほかに「DJ BEAT CREATOR」、「MUSIC CREATOR Recording Pack」の2製品も登場。DJ BEAT CREATORはクラブ系の音楽制作ソフトで、直感的に使えて、さまざまな音ネタが入っているというもの。従来からあったKINETICの新バージョン、「KINETIC 2」のパッケージ名という位置づけだ。10月末発売で価格はオープンプライス、店頭予想価格は10,000円前後の見込み。

 MUSIC CREATOR Recording PackはSONARのエントリー版の位置付けの「MUSIC CREATOR 2」にEDIROLのUSBオーディオインターフェイス「UA-1EX」をバンドルしたもの。こちらも、10月末発売で、価格はオープンプライス、店頭予想価格は15,000円前後の見込みとなる。

DJ BEAT CREATORはKINETICの新バージョン MUSIC CREATOR Recording Packには、UA-1EXをバンドル



■ 24bit/192kHz対応の「R-4 Pro」

 もうひとつ、Rolandとしては国内初デビューとなったのがポータブルレコーダ「R-4」の上位機種、「R-4 Pro」だ。

 R-4を24bit/192kHzに対応させ、内蔵HDDを40GBから80GBへ増やすとともに、いくつかの機能が追加された。従来は対応していなかった88.2kHzに対応させたり、S/PDIFをAES/EBUに変更したりもしている。USBメモリを接続して、外部へバックアップできるようにしたほか、TimeCodeの入出力も可能となり、2台のR-4 Proもしくは他のレコーディング機器、さらにはビデオ映像機器と並べてシンクロさせることが可能となっている。

 R-1やR-09などと異なり、業務用として映像の世界で使われているR-4だが、映像用としてより使いやすくしたのがR-4 Proの特徴だ。映像用の機材でよく利用される外部バッテリーとの接続端子を共通化させたのも大きなポイントだ。

R-4 Pro 側面のUSB端子にUSBメモリなどを接続し、データのバックアップが行なえる 外部バッテリ用の接続端子を映像機材と共通化

 同時期に開催されたCEATECと比べれば、2006楽器フェスティバルはだいぶ小規模なイベントという感じはしたものの、ブースをよくのぞいてみれば面白い製品がいっぱい揃っていた。今後、ここで見つけたkonnekt 24DやSONAR 6などその詳細についてレビューする予定だ。


□2006楽器フェスティバルのホームページ
http://musicfair.jp/
□関連記事
【10月2日】【DAL】バスパワー駆動に対応したUSBオーディオ
~ 実売23,000円でCubase付属のTASCAM「US-144」 ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20061002/dal252.htm
【2005年11月7日】【DAL】楽器の国内最大イベント「楽器フェア」レポート
~ MIDI機能を強化したProTools7などが登場 ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20051107/dal211.htm

(2006年10月10日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


00
00  AV Watchホームページ  00
00

AV Watch編集部av-watch@impress.co.jp
Copyright (c) 2006 Impress Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.