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第87回:成熟の第2世代42型フルHDプラズマ
~ 主戦場42型のプラズマVIERA。「松下電器 TH-42PZ750SK」 ~


 今年の春、世界初の42V型フルHDプラズマテレビ「TH-42PZ700」の製品投入を行なったばかりのパナソニックが、早くも2世代目の42V型フルHDモデルを投入してきた。型番は春モデルの700から750になっただけだが、プラズマパネルも一新され、実質的にはフルモデルチェンジに近い画質性能向上が図られている。

 価格は実勢販売価格で40万円前後。同サイズのフルHD液晶よりもやや高いとはいえ、十分競合できるレベル。前回の「KURO(PDP-5010HD)」に引き続き、熟成を始めたフルHDプラズマの実力を検証した。



■ 設置性チェック
 ~静粛性に優れ、映り込みにも配慮。消費電力に要注意

VIERA「TH-42PZ750SK」

 PZ750シリーズはいずれもサイドスピーカーモデルとなり、今回評価した42V型以外に50V型、58V型、65V型がラインナップされている。サイズや消費電力など以外の基本的な機能や画質傾向はシリーズで統一されている。

 本体の外形寸法は1,077×113~137×689mm。サイドスピーカーモデルながら横幅は同型のアンダースピーカーモデルと比較しても5~6cmしか変わらず、サイドスピーカー型だからといって設置性が劣っているわけではない。

 額縁は黒の光沢処理が施されており、インテリアとしての高級感はある。プラズマというデバイスの特性上、表示面はガラスになるのだが、PZ700系から導入された「低反射クリアパネル」技術により、液晶に近いレベルまで外光の映り込みを低減している。ただ、映り込みが皆無というわけではないので、照明の位置や窓の位置などが表示面に入り込まない場所に配慮したい。

 本体重量はディスプレイ部だけで36kg。今回も成人男性2人で階段を上って2階まで運んで設置できた。なお、背面には運搬用の際にしっかりと持つためのくぼみが設けられている。

 スタンドが別売り設定なのは、PZ700シリーズと同じ。これは設置環境にあわせたスタンドや金具をユーザーが自由に選択できるようにするための配慮からだ。今回の評価機には、据え置きスタンドとして「TY-ST42D1-JG/JM」(24,150円)がセットされていた。なお、これは前モデルのTH-42PZ700と同じスタンドだ。

 スピーカー内蔵の“ラックシアター”「SC-HTR200-K(実売9万円前後)」も用意。壁掛け設置用の取り付け金具も、TH-42PZ700シリーズと兼用で、取り付け角度固定式の「TY-WK42PV3U」(44,100円)、取り付け角度可変式の「TY-WK42RP3U」(44,100円)の2種類が用意されている。


サイドスピーカー型の割にはコンパクト。とはいえ、最近の狭額縁競争が著しい同型液晶と比較すると画面に対する額縁は太い 「TY-ST42D1-JG」は左右±20度のスイーベル機構を搭載し、首振り角度角度調整が行なえる。上下方向の調整はできない SC-HTR200-K

 消費電力は前モデルと同じ約498W。42V型/フルHD液晶のシャープのAQUOS「LC-42GX4W」は約235Wなので、TH-42PZ750SKの半分以下。同サイズで比較してしまうとやはりプラズマの方が消費電力は高い。「目には優しい」が、「電気代には厳しい」のがプラズマで、このあたりはユーザーになろうとしている人は理解が必要だ。

 動作音は非常に静かだ。先週評価したパイオニアのPDP-5010HDと比較しても、「ジー」というプラズマ特有の動作音が明らかに低減されている。背面には4基の冷却ファンが常時回転しているが、この回転ノイズはほとんど聞こえない。静粛性に関しては液晶と同等といっていいと思う。

電源ケーブルは脱落防止機構付きの専用タイプ 4基の冷却電動ファンは常時稼働。ただし、その動作音は静粛そのもの


■ 接続性チェック
  ~ディスプレイ製品顔負けの高い接続性。SDカードスロットも装備

 入出力端子も充実している。HDMI入力は背面に2系統、前面に1系統の合計3系統を装備。ビデオカメラだけでなく、最近は次世代ゲーム機が軒並みHDMIに対応してきている。「前面HDMI」はゲームユーザーにとっても、かなり歓迎される要素だ。

 コンポーネントビデオ系はD4入力端子を2系統装備。アナログビデオ入力端子は背面に、Sビデオ/コンポジットビデオ排他仕様(どちらか一方のみ有効)入力が2系統、コンポジットビデオ入力専用端子が1系統、さらに前面にもSビデオ/コンポジットビデオ排他仕様入力が1系統ある。

背面の接続端子パネル。D4×2、HDMI×2を装備 フロントにもHDMI端子を備えている

 PC入力はD-Sub 15ピン端子によるアナログRGB入力にのみ対応し、DVI端子は実装していない。ただし、HDMI-DVI変換アダプタを用いて、HDMI経由でPCをデジタルRGB接続させることは可能だ。

 HDMIを除くすべての入力系統に対応して、アナログステレオ音声入力端子(RCA)も配されている。PC入力については、対応する音声入力はコンポジットビデオ入力用端子と兼用仕様になっている。このあたりは利用頻度、コスト、接続端子のレイアウトスペースについて妥協した結果だろうが、それほど不便さはない。

 モニタ出力端子としてはS映像、コンポジット、ステレオアナログ音声、光デジタル音声が実装されており、TH-42PZ750SKのチューナ等からの受像映像がバイパス出力される。この他、i.LINK端子 2系統や、アクトビラ接続用のネットワーク端子などが実装されている。

フロントパネルにある2つのイヤホン端子は2画面機能で大活躍

 前面パネルにはイヤホン端子が2系統あり、左側がメインの端子で、右側は2画面表示時の右画面側の音声出力に対応している。

 VIERAシリーズの定番機能といえるSDカードスロットは正面右側に実装。SDカードに記録した約1,000万画素までのデジカメJPEG写真、SD-VIDEO1.2のMPEG-1/2動画、AVCHDのH.264動画の再生に対応している。スロットはSDHC規格対応なので4GB超の大容量SDカードに対応しているのも心強い。静止画再生に対応した機種は最近は多くなってきているが、SD-VIDEOやAVCHDなどの動画再生にまで対応しているのはユニークだ。このあたりはDIGAやSDカードムービーカメラを有する総合AVメーカーのパナソニックらしい機能設計だといえよう。

 TH-42PZ750SKは紛れもないテレビ製品だが、ディスプレイモニタ的な活用にも十分耐えうる接続性を身につけている。コンポーネントビデオとDVI入力はないが、コンポーネントはD4で、DVIはHDMIで代用できるため、ユーザーにとって不都合はほとんどない。

正面前面右側にはSDカードスロットを装備 デジカメで撮影した写真を記録したSDカードをスロットに差し込んだときの画面



■ 操作性チェック
 ~アクトビラ・ビデオ・フルにも対応。テレビ機能の最先端を行く

 電源オンから地上波デジタル放送の映像が表示されるまでの所要時間は約6.5秒。最近のテレビ製品としてっは標準的な起動速度だが、TH-42PZ700よりも若干だが改善されているようだ。チャンネル切り替え所要時間は地上波デジタルで約2.0秒。こちらも早いとはいえないが標準的な速度だといえる。

リモコン上のボタンは比較的大きく、ボタンの印字の文字も大きくて見やすい。操作のレスポンスもまずまず。ほぼ正面に向けていればちゃんと反応はしてくれる

 リモコンは、TH-42PZ700とほぼ同じデザインのものをそのまま継承。オーソドックスな縦長のバータイプのデザインだが、左上部にアクセントデザイン的に、アクトビラボタン、SDカードビュアボタン、ヘルプボタンなどをせり出してレイアウトしているのが特徴的。

 放送種別切り替え用の[アナログ][デジタル][BS][CS]ボタンは、押すとLED発光するが、それ以外のボタンは発光しない。TH-42PZ700の時も指摘したが、プラズマテレビのリモコンには、使用頻度の高いボタンに発光機能を盛り込むといった工夫が欲しいと思う。「明るすぎないプラズマ」だからこそ、部屋を暗くして視聴することが多くなるはずだ。

 リモコンの下部には開閉式の扉があり、ここには追加の機能操作系ボタンがレイアウトされている。ハイビジョンレコーダの「DIGA」をコントロールするための再生制御ボタンや2画面機能の制御ボタン、字幕切り替え、主音声/副音声切り替えボタンなどがここに実装されている。

 2画面機能はここの[2画面]ボタンを押すだけで、その瞬間に表示が2分割される。2画面機能は最近の機種としては珍しく、映像を横に並べて表示するサイド・バイ・サイド(SBS)表示モードのみに対応。親子画面表示のピクチャー・イン・ピクチャー(PinP)表示モードには対応していない。SBS表示のみであっても、リモコン最上部の[画面モード]ボタンを押すと左右に並べた2画面の大きさのバランスを変化させることは可能だ。

 TH-42PZ750SKはデジタルダブルチューナ仕様(地上アナログは1基のみ)のため、2画面表示時、左右画面に任意のデジタル放送を表示できる。左右の画面に対応した音声を2基のヘッドホン端子から聴くこともできるので、2画面機能の実用性は高い。

 ただし、いくつかの制限もある。HDMI入力、i.LINK入力、SDカード写真再生画面、データ放送の画面は左画面への表示に限定され、PC入力、SDカード動画再生、アクトビラ、電子説明書は2画面に組み込むことができない。ちなみにHDMIとデジタル放送の2画面は許容されるので、PCをHDMI接続すれば、PCを使いながらのデジタル放送視聴は行なえる。制限はあるが、実用上それほど大きな制約とは感じなかった。

 入力切り替えは[入力切換]ボタンで順送り式に行なう方式。基本は順送り式なのだが、[入力切換]ボタンを押した瞬間に画面右上に切り替え可能な入力系統名と数字がペアでリスト表示されるので、リモコン上の数字キーを押せばダイレクトに希望する入力へ切り換えることもできる。これはなかなかうまい操作設計だと思う。切り換え所要時間はHDMI→地デジ放送で約2.0秒と速度的には標準的といったところ。

 アスペクト比切り換えも[画面モード]ボタンを押して順送り式に行なう。内蔵されているアスペクトは以下の5モード。これはTH-42PZ700と同じラインナップだ。切り換え所要時間は約0.6秒でかなり早い。

セルフワイド最適なアスペクト比に自動的に切り換える
ノーマルアスペクト比4:3映像のアスペクト比を維持して表示する
ジャストアスペクト比4:3映像の外周を伸張して表示する疑似16:9モード
ズームアスペクト比4:3映像にレターボックス記録されたアスペクト比16:9映像を切り出してパネル全域に表示するモード
フルパネル全域に映像を表示する

 画調パラメータの調整は「画質の調整」メニューから行なう。プリセット画調モードの切り換えも、画調パラメータの一環として取り扱われており、ここで切り換える。

 なお、画調モードの切り換えは相変わらずリモコンから一発操作切り替えできず、「画質の調整」メニューを開いてから行なわなければならない。TH-42PZ750SKはディスプレイ製品としての能力が高いだけに、ぜひとも、次期製品には画調モードの切り換えボタンは欲しいと思う。

 調整可能な画調パラメータは「ピクチャー(コントラスト)」「黒レベル(ブライトネス)」「色の濃さ」「色あい」「シャープネス」といった基本的なパラメータのほか、「色温度」の調整ができる。色温度はK(ケルビン)指定ではなく「低-中-高」の3段階切り換え式。計測したわけではないが見た目では、5,000K、6,500K、8,000K程度だ。

メニュー画面 「画質の調整」メニュー。プリセット画調モードは「映像メニュー」項目を変更することで切り換わる ビビッド・カラー・クリエーションの設定等も「画質の調整」から

 この他、VIERAの映像エンジンの機能制御に関わる高度な画調調整項目の設定も行なえる。記憶色に近づける「ビビッド」モードの設定、部屋の明るさに動的に適応させて輝度調整を行なう「明るさオート」のオン/オフ設定は、画調パラメータの1つとして取り扱われていた。

「テクニカル」メニュー

 「シネマ」「ユーザー」の2つの画調モードに限り、上級ユーザー向けの高度な画質調整が可能な「テクニカル」メニューが利用できる。「テクニカル」階層下には、画面の輝度を設定する「輝度設定」、縦線の輪郭強調度合いを設定する「輪郭強調」、ガンマカーブの変更を行なう「ガンマ補正」、中明部よりも暗い階調の沈み込ませ加減を設定する「黒伸張」、赤(R)と青(B)の発色におけるオフセットとゲインの設定を行なう「R・Bドライブ/R・Bカットオフ」、最明部の階調補正を行なう「明るさ補正」といった調整項目が並ぶ。プリセット画調モードがそれなりに完成度が高いので、一般ユーザーがここにお世話になる機会は少ないはずだ。

 基本的には、「スタンダード」「シネマ」「ダイナミック」「リビング」という4つのプリセット画調モードを選択し、そこから各パラメータをお好みに調整していく、というスタイルになるが、プリセット画調モードは全入力系統で共有されている点には留意したい。つまりHDMI入力で「シネマ」モードを調整すると、その調整結果は、デジタル放送視聴時に選択した「シネマ」モードにも影響するということだ。

 一方、ユーザー画調モードに相当する「ユーザー」モードは各入力系統ごとに個別管理されるので、他の入力系統には影響を及ぼさない。特定の接続機器専用の画調モードを作り込みたい場合には「ユーザー」モードを利用すべきだ。

 TH-42PZ750SKは、サウンドも強化されているので、この点にもふれておこう。

「音質の調整」メニュー。テレビ視聴には意外に「ニュース」モードが聞きやすい 「システム設定」メニュー

 TH-42PZ750SKのスピーカーは左右にステレオ設置されただけでなく、TH-42PZ700の2ウェイ式から3ウェイ式に強化されている。新たに高音域用のツイーターが追加。さらに、最大出力は前モデルの31Wから36Wに強化された。

 それだけでなく、「ナノベースエキサイター」と呼ばれるカーボン素材の空気分子緩衝材をウーファに組み合わせたことにより、同口径ユニット比較で従来比1.4倍サイズ相当の大型ユニットと同等の出力が得られるように改善している。振動板はTH-42PZ700と同じ竹繊維材。

 実際のサウンドも、3ウェイならではの高音域がうまく統合され、各ユニットのクロスオーバーもうまくバランスされているので、聴き味は非常にナチュラルだ。再生特性はフラットでクセがない。重低音はパワフルではあるが、ドンシャリ感はそれほど強くなく高音域との一体感があって心地よい。ナノベースエキサイターは、音量を上げたときにもビビらずにちゃんと狙った再生特性で出力よう活用されている感じだ。サイドスピーカーレイアウトにも広がりある音像造りに貢献している印象。

 音場プログラムは「スタンダード」「スタジアム」「ミュージック」「シネマ」「ニュース」といったものが用意されており、常用は「スタンダード」で不満はないが、ニュース番組やバラエティ番組などの人間の音声主体の番組は「ニュース」が非常に聞きやすい。

 最後に現時点ではVIERA PZ750シリーズのみがフル対応している「アクトビラ・ビデオ」についても少々ふれておこう。

 アクトビラ・ビデオは登録不要、入会費、年会費不要で利用できるインターネットを利用したビデオ・オン・デマンド(VOD)サービスだ。9月1日から開始されており、10月末までは完全無料で利用でき、11月以降も多くのコンテンツが無料配信される予定となっている。利用の仕方は簡単で、背面のEthernet端子からインターネットに接続し、あとはリモコンで[アクトビラ]ボタンを押すだけで呼び出せる。

 インターネットを活用した情報配信サービスの「Tナビ」をベースに、2006年に新体制で「アクトビラ」と改称され現在に至っている。9月1日以降開始されたのはビデオサービスで、従来の文字/図版情報配信サービスは「アクトビラ・ベーシック」と名称変更している。SD映像相当の「アクトビラ・ビデオ」には6Mbps程度の回線速度が要求され、ハイビジョン相当の「アクトビラ・ビデオ・フル」には12Mbps相当の回線速度が要求される。

 実際にアクトビラ・ビデオおよび同フルを再生してみたが、アクトビラ・ビデオはビデオレコーダの標準画質程度、同フルはハイビジョンではあるが若干、デジタル放送よりブロッキーな感じであった。操作そのものは非常に簡単なので、TH-42PZ750SKの設置環境でインターネットに接続できるなら、繋いで損はない。

アクトビラ・ビデオのトップメニュー アクトビラ・ビデオの右上には各テレビメーカーごとのオリジナルコンテンツへのリンクが置かれている。パナソニックは「Panasonic TVスクエア」としてファミリー製品を映像にて多数紹介している

□関連記事
【8月8日】アクトビラ、9月に有料動画配信「アクトビラ ビデオ」を開始
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070808/actvila.htm


■画質チェック
 ~ネイティヴコントラスト10,000:1。プラズマ画質はここまできた

 TH-42PZ750SKのパネル解像度はフルHDの1,920×1,080ドット。新たにTH-42PZ750SKではプラズマパネルが改良されており、前モデルTH-42PZ700からフルモデルチェンジに等しいくらいの画質向上を果たしている。

画素の高密度感は見た目的には液晶と同等の印象。サブピクセルの分離感は感じられない

 最大の改良点はネイティヴコントラストがPZ700の4,000:1に対し、PZ750SKでは2倍以上となる10,000:1を達成した点だろう。

 前モデルでも画素セル内の放電速度を高速化させる技術により黒表示の予備放電が抑えられ、暗部表示のさらなる沈み込みを実現していたが、TH-42PZ750SKでは、この予備放電の駆動電圧の最適化を推し進め、さらに予備放電の“火種”を低減させることに成功したという。

 実際に映像を見てみると、黒の沈み込みはすばらしく、液晶とは一線を画した「黒さ」を醸し出せていることがよく分かる。

 逆にピーク輝度は先代からほとんど変わっていない印象なので、同型液晶と比べるとやはり暗い。つまり、コントラスト向上は暗部の沈み込み強化によって実現されているということが分かる。

 明るさは前回紹介したパイオニア「KURO PDP-5010HD」と同程度という印象で、部屋をやや暗くすれば不満のない明るさだ。「明るすぎない目に優しいプラズマ」とはいうが、蛍光灯照明下の日本の家屋ではもうちょっと明るさが欲しいとは思う。店頭で液晶機と並べられると辛いかもしれない。

 黒の沈み込みは確かに一般的な液晶より優秀だが、パイオニア「PDP-5010HD」と比べるとやや明るく感じる。PDP-5010HDのコントラスト20,000:1と、TH-42PZ750SKの10,000:1の差は感じられるか?、と問われれば、「ある」と答えられる。とはいえ、TH-42PZ750SKの黒の沈み込みと暗部の表現力に不満は無い。様々な薄型テレビを見てきたが、ここ2年くらいのプラズマ画質の成熟に確かな手応えを感じる。

 階調表現は、暗部から明部にかけてのグラデーション表現のアナログ感はお見事としかいいようがない。時間積分式の明滅頻度による階調表現が行なわれているはずのプラズマ画素ではあるが、PDP-5010HD、そしてTH-42PZ750SKでは、あのプラズマ特有のざわつき感がほとんど分からないレベルに到達している。暗色の発色も不満のないレベルで、ちゃんと暗い色の中に色味が感じられている。プラズマの暗部表現は、昨年から今年モデルにかけての製品で一気にブレークスルーを果たし、液晶のそれに追いついてきた。

 発色は非常に鮮烈。鋭い伸びのある純色表現が特徴的なプラズマVIERAのお家芸はTH-42PZ750SKでも健在。なお、色域はハイビジョン色域規格(ITU-R BT.709)のカバー率100%を達しているという。

 赤、緑、青ともにバランスのよいチューニングで明色でも暗色でも色味に素直さがある。プラズマが苦手とする赤も朱色っぽさは皆無ではないが、それほど目立たない。色のチューニングは全体的にブラウン管発色を意識したイメージになっていると感じる。

 色深度は先週のPDP-5010HDに優るとも劣らぬ深さ。2色混合カラーグラデーションや単色カラーグラデーションともに疑似輪郭がほとんどなく、非常になめらか。目を近づけてみればたしかにざわつき感はあるのだが、数十センチも顔を離せば色の出方は液晶と変わらない。色深度が深いので、自ずと色ディテール表現も優秀。人肌の肌理表現から、石畳やアスファルトの微細凹凸の陰影なども克明に描き出してくれていた。

 人肌表現も黄緑感が少なく自然でリアルに見える。光が染み入ってから再び出てくるような、肌のハイライト付近の輝きは、肌特有の透き通るような質感がうまく再現されている。人肌の暗部も、小汚いざわついた茶色ではなく、なだらかな肌色の階調が表現できており、全体として顔の立体感が伝わってくる。

 先週のPDP-5010HDといい、プラズマの階調表現、色表現のリニア感、アナログ感は液晶にかなり近いレベルまで到達しているといってよさそうだ。


【各種高画質化機能のインプレッション】
 
●ビビッド・カラー・クリエーション

 人肌、青や緑を記憶色再現方向に調整してあでやかにする機能で、「画質の調整」の「ビビッド」にてオン/オフが可能となっている。動的に明るさと色合いのバランスを吟味してリアルタイム調整するので“嫌み”な感じは意外とない。緑や青は深い方向に若干シフトしシーンに奥行きが出て見える。やや技巧的な印象がなくもないが、見慣れると違和感はそれほどなくなってくる。

 ゲーム画面、CG映画、アニメなどとの相性はよいと感じた。

ビビッド=OFF ビビッド=ON。色合いはこのように艶やかになる
 
●NR
NRとHDオプティマイザーの設定は「画質の調整」ではなく「画面の設定」から行なう。このあたりのメニュー設計は分かりにくい
 画面全体がざわつくような高周波ノイズを低減させる効果をもつ。「画面の設定」の「NR」から調整ができ、オフ/弱/中/強の4段階設定が可能となっている。

 地上アナログ放送やVHSなどのアナログビデオソースの映像にかけるとざらつきが消えて見やすくなるが、強くかければかけるほどシャープネスが甘くなり、解像感が眠くなってくる。デフォルト設定は「弱」。デジタル放送やデジタルソースでは「オフ」でもよいと感じた。

 
●HDオプティマイザー

 デジタル放送やDVD、次世代DVDなどのMPEG映像に起こりがちなモスキートノイズやブロックノイズを低減させる機能。

 実際に、ネット配信されているような低ビットレートのMPEG映像を再生して試してみたところ、その効果は予想外に大きく、モスキートノイズの揺らめき感、ブロックノイズの疑似輪郭感、その両方によって生じるギラツキ感がかなり目立たなくしてくれていた。ただし、きつめにかけるとぼやけ感が強くなってくる。

 デジタル放送では「弱」から「中」がちょうどよく、アクトビラビデオは結構MPEGノイズが強いので「強」設定も“あり”だ。

 

【プリセットの画調モード(ガンマモード)】
 1,920×1,080ドットのJPEG画像をPLAYSTATION 3からHDMI出力して表示した。撮影にはデジタルカメラ「D100」を使用。レンズはSIGMA 18-200mm F3.5-6.3 DC。撮影後、表示画像の部分を800×450ドットにリサイズした。

 
●スタンダード

 「スタンダード」というモード名の割には色温度設定が「高」であるため、白は青白い感じで、ややPC液晶モニタライクな色合いとなっている。ビビッド・カラー・クリエーションがデフォルトでオンとなるために発色はどちらかといえば鮮烈で記憶色再現志向のチューニングだ。

 階調表現は「スタンダード」の名のとおりのリニアリティ志向だが、若干、最暗部は強めに沈み込ませ、最明部はやや飛ばし気味にして、コントラストを稼いでいるような印象がある。

 「ダイナミック」と「リビング」の中間モードという感じで、個人的にはあまり好みではなかった。

 
●シネマ

 色温度は「低」設定となり、白は赤みを帯びる。

 ビビッド・カラー・クリエーションはデフォルトではオフとなるので「スタンダード」と比較すると色の鮮烈さは無くなるが、落ち着きのあるナチュラルな色合いとなる。

 階調は「スタンダード」よりもさらにリニアリティ重視となり、最暗部の階調と最明部の階調はより見分けやすくなるように調整されている。コントラスト感は「スタンダード」に及ばないが、映像表示時の情報量は「スタンダード」よりも多いと思う。

 人肌の表現も柔らかく、血の気が感じられる味わいになる。スタンダードよりも汎用性は高い。

 
●ダイナミック

 色温度は「スタンダード」と同じ「高」設定。ビビッド・カラー・クリエーションもオン設定で、見た目の印象は「スタンダード」に近い。

 ただし、ピーク輝度の高さや色の派手さは「スタンダード」よりも強めで、全体的に鋭い画作りになる。純色は鮮烈度を増し、見た目に濃厚な印象になる。

 階調の傾向は「スタンダード」と同程度。「ダイナミック」という割には「黒沈ませ」と「白飛ばし」はさほど派手ではなく、映像表現としては悪くない。

 シャープネスはかなり強めで、中暗部以下の暗色領域は若干ノイジーだ。

 
●リビング

 色温度は「中」、ビビッド・カラー・クリエーションもオフ設定。白は純白よりも若干赤い感じもあるが、4モード中ではもっとも自然な印象。

 階調表現は「シネマ」と同程度のリニア感があり、輝度もちょうどよい設定で、ダイナミックレンジ的にも申し分なし。

 発色に派手さはないが、「シネマ」ほど渋くもない。人肌の色乗りも良好だ。階調性とコントラスト感のバランスもパネルの能力を必要十分に活用している印象。

 TH-42PZ700でももそうだったが、リビングモードが一番汎用性が高いと思う。常用はこれでいいだろう。

 
 

【映像ソースごとのインプレッション】

●Sビデオ(NEC PK-AX20、Sビデオ接続)

 インターレース映像のプログレッシブ化品質は良好。左右パン・シーンでもコーミングが起こらない。

 SD映像はTH-42PZ750SKでは画素数比で6倍の拡大表示となるわけだが、そのアップスケール品質も良好だ。画素のぼやけ感は少なく、エッジ描写もまずまず及第点。インターレースSD映像の固定画素系への表示品質としては平均点以上はある。


●DVDビデオ(デノンDVD-2910、HDMI接続)

 「スターウォーズ・エピソード2」を視聴した。

 階調表現能力が高く、色ディテールの描写力が高いためDVDのSD映像ながら非常に高い解像感を伴って見える。NR設定、HDオプティマイザー設定はともにデフォルトの「弱」で違和感は感じない。GOP切り替わりの違和感もうまく低減されており、DVD映像の表示品質としては合格点だと思う。

 おすすめの画調モードは「リビング」。「スタンダード」よりも暖かみがあり、「シネマ」よりもダイナミックレンジが高く映画には相性がよいと感じる。


●ハイビジョン映像(BD=PLAYSTATION3/HDMI接続)

 BD版の「ブラッド・ダイヤモンド」を視聴した。

 フルHDリアル対応の解像感はやはりすばらしい。色ディテール描写能力も高いので見た目的にはフルHD解像度以上の情報量すら感じるほど。動画応答性も良好で、プラズマ特有の左右パン時の色ずれは最小限であった。この点は見た目的にもPDP-5010HDと全く拮抗していると感じる。

 画調モードは「リビング」で不満なし。ところで、PS3におけるBD視聴にあたって、いくつか気になる現象に遭遇したのでここに記載しておくとしよう。

 RGB接続の場合、TH-42PZ750SKではHDMI RGBカラーレンジを16~235としており、メニューからは変更できないので、暗部が沈み込み気味で明部も若干暗い印象になる。これを回避するにはPS3側の「ディスプレイ」設定にて「RGBフルレンジ(HDMI)」設定を「リミテッド」にする必要がある。

 また、TH-42PZ750SKは1080p 24Hz入力に対応していないようで、この再生モードで再生すると映像が表示されなかった(PDP-5010HDは対応)。これを回避するにはPS3の「BD/DVD設定」の「BD 1080p 24Hz出力(HDMI)」再生を「自動」設定にしておく必要がある。


●PC(Windows Vista/NVIDIA GeForce8800GTX
デジタルRGB接続=HDMI接続、アナログRGB接続=D-Sub 15ピン接続)
入力解像度 DVI-D(HDMI) D-Sub 15ピン
(アナログRGB)
640×480ドット ○*1
720×480ドット ○*1 ×
720×576ドット ○*2 ×
848×480ドット ○*2
800×600ドット ○*2
1,024×768ドット ○*2
1,152×864ドット ○*2
1,280×720ドット ○*2 ×
1,280×768ドット ○*2
1,360×768ドット ○*2
1,280×960ドット ○*2
1,280×1,024ドット ○*2
1,920×1,080ドット ×

 TH-42PZ750SKでは、PCとの接続はD-Sub 15ピン端子を使ったアナログRGB接続を標準仕様としているが、市販のHDMI-DVI変換アダプタ等を用いて、HDMI端子経由でデジタルRGB接続が可能だ。

 ただし、標準ではTH-42PZ750SKの表示設定はオーバースキャンとなっているため、PC画面のデスクトップ最外周がクリップアウトされてしまう。これを回避するには「画面の設定」メニューの「HD表示領域」を「フルサイズ」に変更すればよい。

 また、ノイズリダクション関係の機能はオフにしないと表示遅延や滲みが発生するので「NR」や「HDオプティマイザー」の設定はオフとした方がよい。


※ドット・バイ・ドット……、正常表示……、表示はされるが一部に違和感あり……、表示不可能……×
*1オーバースキャン、*2 16:9固定

 HDMIではほとんどの画面モードでアスペクト比が基本的には16:9に設定されてしまっていた(サイドカットは行なえる)。

 アナログRGB接続では表示フレームが画面からずれていることが多く、しかもこれを自動的に調整する機構が無い。ズレの調整は「PC画面調整」メニューにして手動調整しなければならない。次期モデルには自動調整機能はほしいところだ。なお、筆者の環境ではアナログRGB接続では1,920×1,080ドットのドット・バイ・ドット表示は行なえなかった。ドット・バイ・ドット表示にこだわるのであればHDMI接続の方をお勧めする。

HDMI経由のPC接続の際には「画面の設定」メニューにて、オーバースキャン設定をキャンセルする PC画面はもともとノイズが乗らないので「画面の設定」でノイズ低減機能は全てオフに

●ゲーム(Xbox 360、アナログRGB接続/PLAYSTATION 3、HDMI接続)

 PS3はHDMI接続で何の問題もなく接続できた。

 三人称/一人称視点タイプの、視点を自由に動かせるタイプのゲームでは、視点が動いた際に背景部の色割れが一瞬見えるが、ゲームプレイに差し障るほどではない。

 Xbox360のアナログRGB接続は、1,360×768ドットモードの場合、「PC画面調整」の「入力解像度」設定にて「WXGA」モードを選択して「水平位置」や「垂直位置」を手動調整する必要がある。

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■ まとめ

 プラズマの特性を生かし、弱点を克服し、液晶を寄せ付けない10,000:1という超ハイコントラスト性能を身につけたことは確かに素晴らしい。液晶とはひと味違った発色性能を持ち、さらには苦手とされてきた階調性能も液晶に追いついた感もあり、TH-42PZ750SKはテレビ製品としての完成度は高い。

 「現在、唯一のアクトビラ・ビデオ・フル対応機」というポイントは現状、うまくアピールしきれていないが、総じて「春モデルのTH-42PZ700から大幅にグレードアップした」印象だ。

 価格についてはどうだろう? 42V型の最新フルHDテレビという括りでは、例えば競合他社の最新型の42V型フルHD液晶は40万円前後で拮抗している。この冬、42V型であれば、フルHD薄型テレビも画質の好みを軸に、液晶かプラズマか選択できるようになったのだ。

 ではどちらを選ぶべきか。今や液晶も完成度は高く、これまで指摘されてきた弱点をかなり克服してきている。今年のモデルを見る限り、プラズマ優勢だったはずの動画性能は、液晶は倍速駆動をはじめとした新技術でかなり克服してきており、逆に液晶優勢とされてきた階調表現は、プラズマは放電速度の高速化技術で克服した感がある。ただ、原理的特性によるアドバンテージはそれぞれに残っている。例えばネイティブ・コントラスト重視ならばプラズマ、輝度重視ならば液晶といった感じになるだろうか。

 最後に画面サイズの差や、価格差はあるものの、同じフルHDプラズマとしてパイオニアのKURO「PDP-5010HD」との違いについても触れておこう。

 暗部の沈み込みや黒の締まりについてはPDP-5010の方が優れていると感じる。本文でも触れたが部屋を完全暗室にしたときの黒はPDP-5010HDの方が深い。総じてコントラスト感はPDP-5010HDの方が高いといえる。スペック通りにPDP-5010HDに2倍のコントラストがあるかというとそこまでの差は無いが、ただ違いは感じる。

 しかし、一方で、色再現性、階調性能については両者ほぼ互角という印象を持つ。去年の時点ではフルHDプラズマのVIERAは、色再現性、階調性能でパイオニアのPDP-5000EXに及ばないという印象があったのだが、PZ750型番では互角となったといってよいと思う。両社共に、今年モデルでは、純色の鮮烈度や色域の広さは素晴らしくなっている。輝度性能については両者共に同程度。同サイズ液晶と比べるとだいぶ暗いという点も同じだ。

 細かく見ていけば、ダイレクト・カラー・フィルターの恩恵で映像のフォーカス感は、PDP-5010HDが上回っている。この違いの一番分かりやすい確認方法は、斜めから映像を見ることだ。TH-42PZ750SKでは斜めから見れば見るほど色味は変わらないまでも映像が眠くなっていく。実際の視聴とはかけ離れているのであまり意味はないかもしれないが、それでも、この違いは正面から見た場合にも若干現れているようで、画素描画のクリア感はPDP-5010HDの方が上だと感じる。

 たが、実勢価格にして20~30万の価格差を、この画質の差に見出せるかというと難しい。やはり、コストパフォーマンスに関してはVIERA PZ750シリーズが優れている。

□松下電器産業のホームページ
http://www.panasonic.co.jp/index3.html
□ニュースリリース
http://panasonic.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn070809-2/jn070809-2.html
□VIERAのホームページ
http://viera.jp/
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(2007年9月21日)

[Reported by トライゼット西川善司]


西川善司  大画面映像機器評論家兼テクニカルライター。大画面マニアで映画マニア。本誌ではInternational CES他をレポート。僚誌「GAME Watch」でもPCゲーム、3Dグラフィックス、海外イベントを中心にレポートしている。渡米のたびに米国盤DVDを大量に買い込むことが習慣化しており、映画DVDのタイトル所持数は1000を超える。

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