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第88回:黒に磨きをかけてフルHDの世界を身近に
~ 実売40万円のSXRDプロジェクタ。ソニー「VPL-VW60」~


 2006年はフルHDプロジェクタ元年だったが、各メーカーは、今年もこぞって新製品を投入してきた。中でもソニーは自社独自開発の反射型液晶(LCOS)素子「SXRD」を採用したプロジェクタ「VPL-VW50」の後継機「VPL-VW60」を発売。11月にはSXRDプロジェクタのハイエンド機「VPL-VW100」の後継となる「VPL-VW200」の発売も控えており、俄然気合いが入っている。

 ソニー以外の製品も含めて、各社の新製品を紹介予定だが、今回は、SXRD普及機の「VPL-VW60」を取りあげる。


■ 設置性チェック
  ~ボディデザインはVW50から変更無し

ボディデザインはVW50と同一だがボディカラーがブラックとなり高級感が増した

 最初に言ってしまうと、VPL-VW60はVW50からのマイナーチェンジモデルだ。とはいえ、多くの改良が行なわれており、商品としての魅力は向上している。

 なんといっても価格が劇的に下げられたことが最大の変更点といえるだろう。VW50の735,000円から約40%低価格化され、441,1000円となった。現在、40万円前後の実勢価格となっており、LCOSのフルHDプロジェクタが現実的な選択肢となってきた。

 本体筐体のデザインはVW50とほぼ同じで、外形寸法にも変更はなく、395×471×174mm(幅×奥行き×高さ)。ただし、ボディカラーを黒系に一新しており、見た目のイメージがシックな印象になった。本体重量は11kg。決して軽くはないが、1人でも持ち運びできるだろう。

 設置金具類の変更も無く、純正オプションの天吊り金具は「PSS-H10」(80,850円)と「PSS-610」(52,500円)が設定されている。ちなみにこれらの金具はVPL-VW100/VW50/VPL-HSシリーズ兼用となっており、近年のソニー製プロジェクタからの買換えが行ないやすい。これは地味ながらありがたい。

 投射レンズは1.8倍電動ズーム/フォーカス/レンズシフト機構付きを採用しており、この価格帯の製品にしてはかなり贅沢な設置性能だ。

 レンズシフト調整やズーム調整はマニュアル調整式でも我慢できるが、フォーカス合わせはやはりスクリーンに近づいて行ないたいもの。電動フォーカス機能では、スクリーンに超接近して投射画素を凝視した状態でフォーカス合わせができるため、とにかく便利。設置と撤去を頻繁に行なうようなユーザーにもこの機能はありがたい。

 レンズシフト幅は垂直方向に上65%まで。下方向には動かない。今回も、部屋の高さの中央あたりに設置して視聴したが、レンズシフト機能を活用することで問題なく天吊りの高い位置のスクリーンに投射ができた。

 左右方向へのレンズシフトはなし。ただし、プラスドライバを用いてのマニュアル操作でレンズを左右に±1mmずらすことができる。これは100インチ(16:9)投射時において±15cmの左右シフトに相当するが、基本的には微調整用という位置づけであり、あまりこの機能に頼るべきではない。

 100インチ(16:9)の最短投射距離は約3.1mで、ホームユースプロジェクタとしては標準的な焦点距離だ。これならば8~12畳程度の部屋でも100インチ画面の設置が可能だ。一方、100インチ(16:9)の最長投射距離は約5.3mであり、プロジェクタ本体を16畳以上の部屋に設置しても、投射画面が大きくならずに済む。

 騒音レベルも先代と同じ約22dBを継承。本体に近づかない限りは動作音は聞こえない。この静音設計は相変わらず優秀だ。光源ランプも変更無し。VPL-VW50と同じ「LPM-H200」が純正交換ランプとして設定される。ランプ価格は42,000円。鮫のエラのような排気スリットが投射レンズから側面にかけてあるが、光漏れはない。


電動レンズフォーカス/ズーム/シフトをこの価格帯モデルに実装させたことの意義は大きい フロントのスリットは排気用。吸気は底面側のスリットから 奥行きが471mmと同クラス製品よりやや長いので、設置時には注意したい


■ 接続性チェック
  ~HDMIを2系統実装。HDMI CECにも対応

側面に接続端子をまとめている。HDMIは2系統

 HDMI端子は2系統。HDMI端子は1080/24p入力をサポートするほか、HDMI CEC(Consumer Electronic Control)機能に対応し、他のAV機器やAVアンプなどとの電源連動が可能となった。

 アナログビデオ系はコンポジット、Sビデオ、コンポーネントビデオ(D4入力まで)がそれぞれ1系統ずつ。PC入力はアナログRGB入力(D-Sub 15ピン)入力を正式サポート。変換ケーブルを用いることでコンポーネント入力としても利用可能だ。

 DVI-D端子はないが、市販のHDMI-DVI変換アダプタを使うことでPCとのデジタルRGB接続も行なえる。今回は詳細な検証は省いているが、この接続方法で1,920×1,080ドットでのドットバイドット表示は確認できた(NVIDIA GeForce8800GTX/Windows Vista)。

 この他、PCからのリモート制御用のRS-232C端子、電動スクリーン/シャッターとの連動用のトリガ端子も実装されている。



■ 操作性チェック
 ~ついにリモコンがフルモデルチェンジ。操作感も向上

ついにリモコンが一新。[LIGHT]ボタンは最上段でちょっと押しにくい。できれば押しやすいサイド配置を希望

 電源オンからHDMI1の映像が表示されるまでの所要時間は約49秒。これは最近の機種としてはかなり遅め。ちなみに、この遅さは先代VW50から変わらない。

 ソニーの普及価格帯プロジェクタでは約5年間同じリモコンが付属していたが、ついにVPL-VW60でフルモデルチェンジされた。

 リモコンは、全ボタンが自照式にライトアップされるギミックを有しており、左上の[LIGHT]ボタンを押すことで点灯になる。

 入力切り替えは[INPUT]ボタンを押すことで順送り式に行なう。「入力オートサーチ」機能をメニューにて設定しておけば、未接続端子をスキップできる。とはいえ、全てに接続していると一周するまで時間が掛かるので、HDMI系、アナログビデオ系、PC系などカテゴリ別の入力切り換えボタンは欲しい。入力切り換え所要時間はHDMI1→HDMI2で約2.0秒、HDMI2→コンポジットビデオで約3.0秒とやや遅い印象。


「画質設定」メニュー 「画質設定」以下の「アドバンスアイリス」 「画質設定」以下の「シネマブラックプロ」 「画質詳細設定」メニュー 「スクリーン設定」メニュー。PCやゲーム機のHDMI接続時はオーバースキャンを「切」としよう

「初期設定」メニュー 「機能設定」メニュー 「機能設定」メニュー階層下の「HDMI設定」 HDMI CEC関連設定はここで 「設置設定」メニュー 「設置設定」メニュー階層下の「パネルアライメント」メニュー。RGB各プレーン位置を1ピクセル以下の精度で調整する

パネルアライメント調整画面

 新リモコンの特徴は、比較的調整頻度が高いと思われるパラメータ群の調整を一発で呼び出せるショートカットキー的なボタンが増えている点。

 用意されているのは「色域モード」(後述)の選択用の[COLOR SPACE]ボタン、「色温度」変更用の[COLOR TEMP.]ボタン、「黒補正」調整用の[BLACK LEVEL]ボタン、「ガンマ補正カーブ」選択用の[GAMMA CORRECTION]ボタン、「絞り機構調整」のための[ADVANCED IRIS]ボタン、「レンズ・フォーカス/ズーム/シフト」調整用の[LENS]ボタンなど。

 そうした調整項目に簡単にアクセスできるボタンが用意されているためか、実際、VPL-VW60を使っている中で、結構、色域モード、色温度の変更を行なう癖が付いた。「リモコンのボタン設計の影響でプロジェクタの使い方が変わってくる」というという体験は、自分にとっても発見であった。地味ではあるがこうしたプロジェクタの使い方を提案する機能設計は面白いと思う。

 アスペクトモードの切り替えは[WIDE MODE]ボタンで順送り式に行なう。切り換え所要時間は約1.0秒とまずまずの早さ。用意されているアスペクトモードは以下の通り。

ワイドズームアスペクト比4:3映像の疑似16:9化
ノーマルアスペクト比4:3映像のアスペクト比維持表示
フル4:3映像にレターボックス記録された16:9映像を切り出してフル表示する
ズーム4:3映像にレターボックス記録された16:9映像を切り出してパネル全域に表示する
アナモーフィック
ズーム
シネスコ2.35:1記録された映像をアスペクト比を無視してパネル解像度でフル表示する

 ユニークなのはアナモーフィックズームモード。一部の映画ソフトは劇場公開に近いアスペクト比2.35:1で1,920×1,080ドット記録しているものもあり、これをフル記録解像度で、なおかつ正しいアスペクト比で表示するためのモードがアナモーフィックズームモードになる。これを正しく表示するためには市販されているアナモーフィックレンズが必要になる。アナモーフィックレンズは、純正オプションにはないので、PANAMORPH製UH380などの市販品を組み合わせる必要がある。

 画調モードの切り替えは[DYNAMIC]ボタン、[STANDARD]ボタン、[CINEMA]ボタンのそれぞれの独立ボタンを押すことで一発で希望の画調に切り換えられる。切り換え所要時間は約1.0秒。

 調整可能な画質パラメータとユーザーメモリの仕組みとその仕様はVPL-VW50/VW100と同一なので詳細は本連載VPL-VW100の回を参照して欲しい。VPL-VW60にも、他の色に一切の影響を与えずに特定の色を選択式に調整できる画調調整機能「RCP:Real Color Processing」機能は搭載される。こちらについてもVW100の回を参照して欲しい。

 リモコン最下段にはシャープネス、コントラスト、ブライトネスを直接上下調整できる[+][-]ボタンが実装されている。先代までのリモコンにはなかった「シャープネス+/-」ボタンが新設された格好になる。

黒補正:切 黒補正:強 黒補正を入れると暗部階調の沈み込みが鋭くなるのでコントラストは向上するが情報量は減る ガンマ補正:切
ガンマ補正:ガンマ1 ガンマ補正:ガンマ2 一番明るいモード ガンマ補正:ガンマ3 一番暗くなる


■画質チェック
 ~さらに向上したコントラスト。最大輝度もアップ!

 映像パネルはソニーが誇る「SXRD(Sony Crystal Reflective Display)」パネルを採用する。パネル自体はVPL-VW50に採用されたものと同じ0.61型フルHD対応のSXRDパネルだ。

 反射型液晶パネルは、同解像度、同サイズパネルで比較した場合、透過型液晶パネルに比べて開口率が2倍近く高いのが特徴。数値でいうと最新世代フルHD透過型液晶パネルの開口率が約52%、VW60のSXRDパネルの1画素あたりの開口率は約90%となっている。

Windows Vistaの「フリーセル」のアイコンを画面最外周において表示したものを撮影。画素格子の細さ、フォーカス力はなかなかのもの

 この開口率の高さが、実際の投射映像で画素を仕切る格子線が極めて細く映ることになり、映像全体としてみれば粒状感の少ない見た目に貢献する。

 実際に今回の評価で100インチ程度に映した際も、かなり近寄って見ても画素の格子が見えなかった。これは、透過型液晶パネルを採用したプロジェクタにはないLCOSプロジェクタの決定的なアドバンテージだといえる。

 投射レンズは先代VPL-VW50のものと同じARC-F(オール・レンジ・クリスプ・フォース)レンズを採用。VW50の評価の時にはそのフォーカス性能に驚かされたものだが、VPL-VW60にもちゃんとあの性能が受け継がれていることを確認。画面中央から外周まで、1画素1画素の形状がかなりくっきりと投射されており、不満はない。

 色収差についても同様で、画面中央では色ズレはほとんど知覚されず、最外周画素においても色ズレは最低限に収まっている。このフォーカス性能と低色収差性能のおかけで投射映像の解像感とシャープさは相当なもので、フルHD映像を見慣れている人でも「その光学的な高解像感」に驚くと思う。

 公称最大輝度は1,000ルーメン(アイリス開放時)。そして最大コントラストは35,000:1を達成している(ダイナミックアイリス使用時)。基本スペックがほとんどVW50と同じVW60だが、最大輝度と最大コントラストの部分だけは大幅に向上している。ちなみに、VW50の最大輝度は900ルーメン、最大コントラストは15,000:1であった。

 「光源ランプは同一だし、アイリス機構にも変わりがないのにどうして?」という疑問が湧くことだろう。これはVPL-VW60に新搭載された「ハイコントラストプレート」によるところが大きい。これは光源ランプ後段に配される偏光ユニットで、光学系へ導く光を高品位に線光源に変換するもの。これにより光の利用効率が高まり、迷光も低減される。つまり、最大輝度が上がり、同時に黒も締まることになり、結果最大コントラストも向上するというわけだ。

 明るさについては、先代から大きく変わったという印象は受けなかったが、確かに黒の沈み込みは向上しているのが分かる。映像の最暗部と、スクリーン上の投射光があたっていないところの暗さが一層近くなっており、それだけ黒の沈み込みが深いのだ。

 暗部階調表現のダイナミックレンジの高さもさらに進んだ印象で、暗いシーンの細かい陰影表現にリアリティがある。今回の評価ではBD「300」、HD DVD「ザ・シューター」を視聴したが、夜のシーンや、間接照明の屋内シーンなどの全体的に暗いシーンでも見た目として情報量が多いと感じられる。自発光ではない投写型映像機器でここまで暗部表現ができるようになったとは、凄い時代になったものだ。

 35,000:1という最大コントラストはダイナミックアイリス(動的絞り)を組み合わせたときのものだが、これを使わない状態でも十分ハイコントラストが実感できる。特に絞り開放時には最明部の輝度が高く、屋外シーンの映像などはかなりリアルに見える。絞り開放状態でも、ハイコントラストプレートのおかげなのか、黒は十分黒く見えるのでコントラストが下がったようには見えにくい。筆者個人の印象としては動的絞り機構は普段の視聴でOFFにしていてもいいと思う。おそらくネイティブコントラストは平均的なDLPプロジェクタを上回っているだろう。

 この動的絞り機構についても少し触れておこう。「オートアイリス」という名前がつけられており、VPL-VW50と同等のオートアイリス1とオーアイリス2の2モードが備わっている。両方とも暗いシーンでは絞りを絞って迷光を減らして黒をさらに沈み込ませてコントラストを稼ぎ、明るいシーンでは絞りを開いて輝度ダイナミックレンジをふんだんに使う画作りとする動作コンセプトは同じ。オートアイリス1と2との違いは絞り幅で、1が絞り幅が大きく、2では絞り幅が小さい。この絞り変化速度は「通常-早い-遅い」の3段階設定が行なえるが、ちょっと使ってみた感じではデフォルトの通常設定がベストと感じる。

 また、この絞り機構を固定式に設定することも可能。なお、固定式絞りでは最小絞りから開放絞りまでの状態を100段階設定できるようになっている。

アイリス:固定50% アイリス:切。切設定でも十分ハイコントラストが得られている アイリス:オート1 アイリス:オート2

 発色も良好。光源ランプは超高圧水銀系を採用しているが、水銀系の青緑の強いクセはうまく抑えられており、非常に自然だ。赤青緑の純色からは均等なパワーが感じられる。

 人肌も再現度は高く、水銀系の肌の黄緑感がなく良好だ。肌に乗る白いハイライトと血の気の感じられる赤みを帯びたところの微妙な色乗りの変化も的確に描き出せている

 色深度もかなり深い。明色から暗色へのグラデーションも自然で二色混合のグラデーションも実に自然だ。映像で見ると色ディテール表現の細かさとして見え、階調表現能力の優秀さと相まって非常に情報量の多いフレームとして目に映る。微妙な色の描き分けができなければリアルな表現が難しい植物の葉の筋、人肌の肌理、空の雲の細かいモコモコとした陰影なども正確に出ている感じで「視力が良くなったのか」と錯覚するほど。

色温度:高 PC液晶ディスプレイライクな感じ 色温度:中 白が純白に近いホワイトバランス 色温度:低 赤みを帯びた落ち着いた感じ

 ソニーならではの独自機能である「色域モード」は、VPL-VW60にも搭載されている。デフォルトの「通常モード」に加えて、水銀ランプの光スペクトルを最大限に活かして再構成した色域を用いる「色域ワイドモード」が選択できる。

 色域ワイドモードでは、特に赤と青の色ダイナミックレンジが拡大され、彩度が強めの、やや記憶色再現指向の強い発色になる。特に色域ワイド時の赤は鮮やかで素晴らしく、炎の表現が非常にリアルに見えていた。そして、かなり暗部でもちゃんと色味を残した暗部階調表現になるのがいい。

 VPL-VW50よりも色域ワイド時の“どぎつさ”は低減されたように見え、実用度は高くなったと思う。VW50では色域ワイドでは人肌が赤くなりすぎていたが、VW60ではそういう不自然さを低減されていると思う。

色域ノーマル 色域ワイドモード。赤の深みが写真でもワイドモードの方が深いことが分かる


【プリセットの画調モード(ガンマモード)】
 1,920×1,080ドットのJPEG画像をPLAYSTATION 3からHDMI出力して表示した。撮影にはデジタルカメラ「D100」を使用。レンズはSIGMA 18-200mm F3.5-6.3 DC。撮影後、表示画像の部分を800×450ドットにリサイズした。

 
●ダイナミック

 オートアイリスは「オート1」、ランプコントロールは「高」、色温度は「高」、黒補正は「弱」、ガンマ補正は「ガンマ2」となる設定。

 明部に輝度ダイナミックレンジを多く割くが、それでも最暗部から最明部までの階調はしっかり描き出せている。全体的に、立体感が強く出る画調になり、ゲーム、アニメ、CG映画と相性がいいと思われる。人肌はやや黄色やオレンジに寄る傾向があるが、全体的な色調もモードの名前ほど派手ではないので実用性は意外に高いと思う。

 シャープネスは強すぎるので見る映像によってはちょっとノイジーに感じることもある。その場合はシャープネスを弱めるといい。

 
●スタンダード

 オートアイリスは「オート1」、ランプコントロールは「高」、色温度は「中」、黒補正は「切」、ガンマ補正は「切」となる設定。

 輝度ダイナミックレンジを暗部から明部に渡って均等に振り分けたような素直な階調特性で、「シネマ」よりも階調再現のリニアリティはいい。

 発色特性のバランスも一番素直で、人肌の色合いも自然で実用性は最も高い。色域ワイドモードとの相性も良好であった。

 
●シネマ

 オートアイリスは「オート1」、ランプコントロールは「高」、色温度は「低」、黒補正は「切」、ガンマ補正は「切」となる設定。

 中明部以下に多くの輝度ダイナミックレンジをふった階調特性。

 暗部表現が持ち上がって階調情報が把握しやすくなるモード。その意味では全3モード中、最も情報量が多い画調モードだといえる。しかし、意外にも暗部から黒への階調カーブは結構急激で、このあたりはコントラストを稼ごうという意志を感じるので、調整の余地はあるかも。

 色温度が低となる関係からか、人肌はもっとも暖かく自然に見える。

 



■ まとめ
 ~初心者にも嬉しいフルHD LCOS機

 VPL-VW60は、前モデルのリファイン版といえる製品。基本スペックに大きな差がないためVPL-VW50ユーザーが買い替える動機付けは弱い。

 しかし、それはもともとVW50の完成度が高いためであって、その完成度の上にさらにコントラストを向上させ、最大輝度も上げるなど、洗練度は増したことで、絶対的な製品の魅力はさらに極まったと思う。ましてや、4割も安くなった意欲的な価格設定にはソニーに拍手を送りたい。

 VPL-VW60は、これまで透過型液晶プロジェクタを使ってきて、そのコントラスト性能に不満を持ってきたユーザーにこそお勧めしたい。720p透過型液晶プロジェクタからのアップグレードはもちろん、フルHDの透過型液晶からの「改宗」派にもお勧めできる。

 価格は決して安くはないが、LCOS機としては現実感のある価格。「初めてのプロジェクタ」として初心者にもお勧めできる。

□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.sony.jp/CorporateCruise/Press/200708/07-0821/
□製品情報
http://www.ecat.sony.co.jp/visual/projector/products/index.cfm?PD=28587&KM=V
□関連記事
【8月21日】ソニー、44万円のSXRD/フルHDプロジェクタ「VW60」
-コントラスト35,000:1。ブラビアエンジン内蔵
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070821/sony.htm
【2006年11月24日】【大マ】ようやく買える? フルHD SXRDプロジェクタ
~ SXRD三兄弟の末っ子は“できる子”「ソニー VPL-VW50」 ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20061124/dg75.htm
【2006年8月30日】ソニー、73万5,000円のフルHD SXRD採用プロジェクタ
-「VPL-VW50」。高圧水銀ランプ採用で小型・低価格化
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060830/sony5.htm

(2007年10月18日)

[Reported by トライゼット西川善司]


西川善司  大画面映像機器評論家兼テクニカルライター。大画面マニアで映画マニア。本誌ではInternational CES他をレポート。僚誌「GAME Watch」でもPCゲーム、3Dグラフィックス、海外イベントを中心にレポートしている。渡米のたびに米国盤DVDを大量に買い込むことが習慣化しており、映画DVDのタイトル所持数は1000を超える。

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AV Watch編集部

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