~ レコーダ市場が一気に拡大すると業界筋が予測する理由 ~ |
2006年11月発売の松下製BDレコーダ「DMR-BW200」は発表時の実売価格が30万円前後。下位モデル「DMR-BW100」は24万円前後だった | 2006年12月発売のソニー製BDレコーダ「BDZ-V9」は実売30万円前後。下位モデル「BDZ-V7」は25万円前後 | 2006年7月発売の東芝製HD DVD/HDDレコーダ「RD-A1」は39万8,000円 |
■ 課題が一気に解決した年末商戦
だが、今年の年末商戦で、これらの問題が一気に解決したともいえる。
DVDにハイビジョンを録画するという点では、MPEG4 AVCエンコーダ技術により、4倍の長時間録画を実現。松下電器や東芝がこの規格を採用したレコーダを年末商戦から投入している。DVDディスクにも、ハイビジョン映像を録画することができ、しかも、4.7GBで約1時間40分、9.4GBのディスクでは約3時間20分のハイビョン録画可能になる。4倍録りをコミュニケーションメッセージとして強調した松下電器のDVDレコーダ「DIGA」は、前年同期比2桁増という好調な売れ行きを見せ、一部製品は品薄という状況になっている。
11月発売の松下製「ブルーレイDIGA」新モデルはいずれもAVC記録に対応する | 同じく11月発売のソニー製BDレコーダ新モデルも、AVC記録に対応。価格設定もDIGAより安く、人気を集めている |
2つめの次世代光ディスクレコーダの価格の影響については、今年の年末商戦から実売価格で10万円前後の新製品が登場してきたことで解決されようとしている。
この年末商戦からレコーダ新製品をBlu-rayに一本化したソニーは、最下位モデルの市場想定価格を14万円前後に設定。年明けには10万円を切る実売価格になると見込まれている。また、シャープがHDDを搭載しないBlu-rayレコーダを10万円を切る価格設定で投入。東芝も同様に、HD DVD/HDDレコーダ「RD-A301」を14日から市場投入。同モデルは10万円以下の実売価格への下落も見込まれる。
シャープのBDレコーダ新モデル「BD-AV1」はHDDを搭載せず、10万円以下で販売 | 東芝のHD DVDレコーダ「RD-A301」はAVC記録で、DVDに「HD Rec」が可能に |
このように次世代光ディスクレコーダが、DVDレコーダの中位機と同等の価格帯からのラインアップとなり、購入しやすい価格帯にまで下がってきているのだ。
さらに、行方が混沌としていた次世代規格の行方についても、国内のレコーダ市場では、BDが90%を上回る圧倒的シェアを獲得。BCNの調べでも、次世代光ディスクの10~11月のシェアは、BDレコーダ陣営のソニーが57.1%、松下電器が32.3%、シャープが8.7%%となったのに対して、HD DVDの東芝が2.0%。12月中旬以降、東芝のHD DVDレコーダであるRD-A301が戦略的価格で発売されたことで、シェアの変動があるだろうが、これだけの差から、BD陣営をひっくり返すのは難しいといえそうだ。
そして、最後のダビングの問題についても、コピー9回、ムーブ1回というダビング10が、来年以降、正式にスタートすることになると見込まれ、年末商戦の主力製品でも、ダビング10への準拠をネットワークアップグレードなどを通じて明らかにしている機種もある。
コピーワンスの環境が大幅に緩和され、テレビの視聴者が、デジタル録画を行う上で、かなり敷居が下がることになるといえよう。
10月+11月のメーカー別次世代DVDレコーダ台数/金額シェア | コピーワンス(上)とダビング10(下)の運用ルール比較 出典:電子情報技術産業協会 |
■ 北京オリンピックを追い風に成長曲線描く
こうしたDVDレコーダの需要を阻害していた要因が、いよいよ解決すると見られるのに加えて、2008年は北京オリンピック需要が見込まれる。これも、DVDレコーダ需要を促進する材料になるだろう。
こうした課題解決と、需要を喚起するトピックスが加わったことで、業界筋では強気の見通しを立てている。
調査会社であるMM総研は、先頃、DVDレコーダの国内出荷台数見通しを発表。2006年度には、前年比16%減の360万台に留まっていたDVDレコーダ市場は、2007年度には2年ぶりにプラスに転じて410万台になると予測。さらに、北京オリンピック需要が見込まれる2008年度には18%増の485万台、2009年度には9%増の530万台に達するものと予測した。2009年度には次世代光ディスクの構成比が55%と、過半数を越えるものと予測している。
主要なDVDレコーダメーカーの予測値も、同様の成長曲線を描いており、業界全体が、この方向で一致している。
2002年度 | 2003年度 | 2004年度 | 2005年度 | 2006年度 | 2007年度 (予測) |
2008年度 (予測) |
2009年度 (予測) |
2010年度 (予測) |
|
国内出荷台数 (万台) |
75 | 217 | 443 | 430 | 360 | 410 | 485 | 530 | 600 |
成長率 | - | 189% | 104% | -3% | -16% | 14% | 18% | 9% | 13% |
2006年度 | 2007年度 (予測) |
2008年度 (予測) |
2009年度 (予測) |
2010年度 (予測) |
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DVD | 99% | 86% | 65% | 45% | 40% |
次世代DVD | 1% | 14% | 35% | 55% | 60% |
とはいえ、まだ年末商戦の動きだけを見ると、その回復曲線を描ききれてはいない。一部メーカーでは、DVDレコーダが品薄となっているが、生産台数がそれに追いつかず、年末商戦を慎重な姿勢で見ていたメーカーのうれしい誤算が、業界予測ほどの成長曲線を描けない要因のひとつともなっている。
これがいつから動き出すかが、メーカー各社にとって焦点といえる。つまり、オリンピック需要に向けた戦略的提案とそれに向けた強気の量産体制がいつから敷かれるのかが注目点であり、そこからDVDレコーダ市場の本格的回復が踏み出されることになる。
かつてのVTR時代に比べると、年間300万台程度の需要が顕在化できていなかったともいえるDVDレコーダ市場。年末商戦から来年初めの需要期をきっかけに、「正常」な市場規模に戻ることができるだろうか。
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【12月5日】年末商戦の次世代レコーダ台数シェアはBDが98%
-BCN調査。「東芝のレコーダ商戦はこれから」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20071205/bcn.htm
【7月12日】「コピーワンス」見直しは「コピー9回」へ
-10回目でムーブ。地デジ録画の運用ルール見直し
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070712/soumu.htm
= 大河原克行 = (おおかわら かつゆき) |
'65年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を勤め、2001年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。BCN記者、編集長時代を通じて、15年以上に渡り、IT産業を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。 現在、ビジネス誌、パソコン誌、ウェブ媒体などで活躍中。PC Watchの「パソコン業界東奔西走」をはじめ、Enterprise Watch、ケータイWatch(以上、インプレス)、nikkeibp.jp(日経BP社)、PCfan(毎日コミュニケーションズ)、月刊宝島(宝島社)、月刊アスキー(アスキー)などで定期的に記事を執筆。著書に、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社)、「松下電器 変革への挑戦」(宝島社)、「パソコンウォーズ最前線」(オーム社)など。 |
[Reported by 大河原克行]
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